プログラミング教材は何を使えばいい?PTA会長のエンジニアパパが解説(5)

 PTA会長、エンジニアかつ父親の視点で「プログラミング教育」とは何かを紐解くシリーズ。今回はプログラミングに興味を持った子どもに与える、“適切な環境”について。

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 PTA会長、エンジニアかつ父親の視点で「プログラミング教育」とは何かを紐解くシリーズ。5回目は、子どもがプログラミングに興味を持ったときにどのような環境を与えるべきかについて。具体的な教材名なども紹介する。

学びたい・知りたいという知的好奇心に対して、必要なものを提供する



 子どもたちが、新しいことに興味関心を持つと、その知的好奇心はとどまることを知りません。もっと新しいことを試したい、実行したいと思うようになります。

 新たに学ぼうとしているその段階で保護者からダメ出しされてしまうと、せっかく抱いた知的好奇心を失ってしまうことになりかねません。特に「プログラミング教育」について理解のない場合は、「得体の知れないものに時間やお金を割けるほど、わが家には余裕がない」と感じたり「ゲームばっかりやってるじゃないの」とよくない印象を受けてしまうかもしれません。また、「新しいことをやらせたいけど、プログラミングってパソコンを買って、教室に通わせないといけないんじゃないかしら…」と拡大解釈に及んでしまうかもしれません。そういった考えをめぐらせる前にまず、子どもが興味を持っているのはどのようなことなのか、保護者の方が正しく理解し、知識を得る必要があります。

 プログラミング教育は、学年や学習レベルによって学べることが変わってきます。学習レベルが上がるにつれて、より本格的なコンピューターや環境が必要になる場合が大半です。ですが、小学生の子どもたちが、「プログラミングに触れてみたい」と思う入り口の段階においては、時間も労力も、そしてお金もあまりかけずに学習に必要なものを準備できます。保護者の方は、お子さまの学習レベルを確認しつつ、それにあった環境を提供できるよう、前向きに検討してください。

子どもがプログラミングに興味を持ったら?適切な環境を準備する



 それでは、プログラミング教育の学習レベルについて概要を紹介します。個々のレベルに沿った、具体的な準備については、第6章(「子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業」(翔泳社)本書内)で詳細を説明します。

1.プログラミング学習用に準備された絵本など(アンプラグド)
2.ビスケットやScratch などのビジュアルプログラミング(ビジュアル)
3.実際にデバイスや機器を操作する(ロボット)
4.プログラミング言語を学ぶ(テキストコーディング)

 また、「学習レベル」とは記していますが、必ずこの段階で進めていかなければならないわけではありません。できるところから子どもたちを支援し、環境も準備していけばよいでしょう。

1.プログラミング学習用に準備された絵本など(アンプラグド)



 翔泳社から「ルビィのぼうけん(*注1)」という絵本が出版されています。プログラミング教育の第一歩として、多くの方に読まれている絵本です。内容は普通の絵本と大きく変わりませんが、主人公の女の子の冒険を通じて、プログラミング的なものの考え方を学ぶことができる絵本となっています。絵本なので、小さなお子さまでも読むことができます。難しい内容ではありませんから、これからプログラミングを学ぼうと考えている保護者の方にもおすすめです。
(*注1)http://www.shoeisha.co.jp/book/rubynobouken/

 こういった、プログラミング的思考を身につけられる絵本や教材は、徐々に増えてきています。ご家庭でお子さまと読み進め、わからないことを一緒に考えていくのはいかがでしょうか。もし、プログラミングに詳しい保護者の方でしたら、さらにお子さまに考えてもらう問題を準備されてもよいかもしれません。

2.ビスケットやScratchなどのビジュアルプログラミング(ビジュアル)



 実際のプログラミングを、キャラクターを操作するなどの形で学んでいく教材になります。ご自宅にインターネット環境と、タブレットやパソコンがあれば、いつでも始めることができます。「コードスタジオ(*注2)」はWebブラウザがあれば、すぐに利用できます。「ビスケット(Viscuit)(*注3)」と「Scratch(*注4)」もパソコンからなら、そのままWebブラウザで試せます。タブレットであれば、無料のアプリケーションを追加して実行することもできます。ご自宅に環境がない場合でも、図書館で無料のパソコンとインターネット環境を利用できることがありますので、お住まいの地域の図書館に問い合わせてみてください。
(*注2)https://studio.code.org/
(*注3)http://www.viscuit.com/
(*注4)https://scratch.mit.edu/

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コードスタジオの公式ページ。コースが分かれており、レベルを選んで学習できる(出典:https://studio.code.org/courses


 ビジュアルプログラミングの特徴は、「文字が読める」お子さまであれば、いつでもすぐに始められることです。また、キャラクターを使って「右を向く」「左を向く」「前に進む」といった、普段何気なく行っている動作を、実際に命令するとはどういうことか、いわゆる「プログラミング的思考」を体感できるという点で優れています。

3.実際にデバイスや機器を操作する(ロボット)



 次は、コンピューターにロボットなどのデバイスを接続して、実際にそのデバイスを動かすためのプログラミングを行います。

 ビジュアルプログラミングでキャラクターを動かしているだけだと、「プログラムで制御できる(動かせる)ことって、ゲームみたいなものだけなの?」と思われるかもしれません。ですが、機械の制御や自動運転もコンピューターの重要な役割です。ロボットを制御するのはそういった利用用途に近いため、プログラムを通じてロボットを実際に動かしてみることで、命令にどのように反応しているのか体験することができます。

子ども向けロボット「mBot」
子ども向けロボット「mBot」。Scratch をもとにしたプログラミング言語で操作できる(出典:http://store.makeblock.com/jp


 たとえば、「目の前にあるりんごを持つ」という動作を考えてみましょう。人がその行為をする場合には、ほとんど何も考えずに実現できるでしょう。しかし実は、その行動の過程では、「りんごの位置を視覚情報から計測して分析し、その場所まで腕を持っていって、りんごを持つのに適切な力でつかむ」という動作を行っています。ロボットプログラミングでは、これらのデータを計測、分析して動きにつなげていく必要があります。

 このように、複雑な機構のものを制御することで、普段の何気ない動作でも、実際には多くの細かな動作の組合せで行っている、ということを体感し理解できることが、ロボットプログラミングの特徴です。

4.プログラミング言語を学ぶ(テキストコーディング)



 そして、最終的に行き着く地点は、皆さんのイメージするプログラミングでしょう。ほとんどのプログラミング言語は、英語のキーワードと算術記号を中心に構成されています。これらを文法規則にしたがって記述し、コンピューターに命令を行う「テキストコーディング」と呼ばれる分野に、ステップアップしていくことになります。

 初めての方には、見慣れない英単語と数式の列を見て、それらがどのような動作につながるのか、すぐに理解することは難しいでしょう。ですから、実際に学んでいくには、ハードルが高いと思われるかもしれません。

 たしかに複雑で難解な言語もありますが、初学者用に開発されたBASIC言語や、複雑な手順を踏まなくとも利用できるように作られているスクリプト言語なども多数あります。本書の第4章、第5章では、平さんが実際にお子さまとのテキストコーディングを学習していった体験記をつづっています。子どもたちにテキストコーディングを教えるうえで参考になるでしょう。

 また、こういったプログラミング言語を学習するためには、パソコン一式と開発するためのソフトウェアが必要になるのではと思われるかもしれません。本格的にプログラミングを始めようとすると、たしかに必要かもしれません。しかし最近では、タブレットやスマホ上でテキストコーディングを行って、実際に動くアプリケーションを開発することができるようになってきています。ほかにもニンテンドー3DSをお持ちでしたら、「プチコン3号 SmileBASIC(*注5)」を購入すれば、3DS上でBASIC言語を使ってゲームを開発することができます。
(*注5)https://www.nintendo.co.jp/titles/50010000027755

 テキストコーディングを学習できるWebサイトも充実していますし、ある程度の学習が済んだお子さまであれば、以前よりもチャレンジは容易になりました。テキストコーディングは、ビジュアルプログラミングやロボットプログラミングと比べて制約が少なくなります。自由な発想で、コンピューターで実現できるいろいろなものを開発できるようになります。

 とは言え、このレベルまでやってくると「何を作りたいか」といった目的が重要になってきます。ビジュアルプログラミングやロボットプログラミングでは、ゴールが与えられており、また動かすこと自体が面白いので、あまり「目的」について考えることがなかったのではないでしょうか。

 実際に、プログラミング言語で何かを開発してみよう、という段階になると「何を作ったらいいかわからない」ともなりかねません。「テキストコーディングでは何ができて、何ができないのか?」「市販のゲームみたいなものを作りたいけど、どうやればいいか?どのくらいで作れるのか?」といったことがわからないでしょう。自由度が高い分、目的を見失うケースがあります。

 「さらにステップアップしたいけれど、何を作ればいいかわからない」というお子さまは、まずは学習サイトなどで基礎を学びながら、作りたいもののイメージをつくりあげていくことが重要になるでしょう。多くの学習用サイトがありますから、自分が楽しく学べるところから順番に、より深い内容へ移っていけるように準備していきましょう。

 こういった、学習のレベルアップについては工夫が必要なところなので、第6章でもう少し具体的に紹介していきます。

2.5 子どもと一緒に保護者も学んでいく姿勢が大事



 子どもたちだけが興味・関心を持って、その環境を保護者が提供をすればそれでいい、ということはありません。重要なポイントは、わからないからと敬遠せずに、一緒に学んでいくことでしょう。

 プログラミングは、課題を認識して、その課題を解くことの繰り返しです。学習を進めていけば、やがて難しい課題にあたり、子どもたちは投げ出してしまうかもしれません。保護者の方も一緒に学習をしながら、ともに考え、課題を解決していくことで、子どもたちはさらに難しい課題に取り組むことができ、課題が解けた喜びをともに感じられるようになります。プログラミング教育に限らず、保護者の方も子どもたちと一緒に学習し、理解できたら褒めることで、子どもたちはより大きな達成感を得ることができるでしょう。

 子どもたちが興味関心を持って学習を1人で進めていけるようになるまでは、そうして、保護者の方が一緒に学んでいく姿勢でいることが重要ではないかと、私自身の4人の子どもたちを見て感じています。

子どもに読んで伝えたい!おうちではじめるプログラミングの授業

発行:翔泳社

<著者プロフィール:阿部 崇>
外資系IT企業で、コンピュータシステムのアーキテクチャをデザインする仕事に従事。2017年度より区立中学校のPTA会長に就任。教育委員会や教師の方々と接する機会も多く、これまでの経験を活かして、プログラミング教育を広げていく活動を進めている

<著者プロフィール:平 初>
北海道滝川市出身。国内企業のSE(システムエンジニア)、外資系コンピュータメーカーを経て、レッドハット株式会社にてシニアソリューションアーキテクトとして活躍中


《リセマム》

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