少数精鋭で手厚い指導、千代田高等学院が医学部進学MIコースを新設

 千代田高等学院は、2019年4月からの入学者を対象に、医学部医学科への進学希望を実現するための「MI(メディカル・インテリジェンス)コース」を新たに開設する。荒木貴之校長とアドバイザーの米山公啓医師に話を聞いた。

教育・受験 中学生
PR
医学部医学科への進学希望を実現するためのMIコースについて語る荒木貴之校長(右)とアドバイザーの米山公啓医師
  • 医学部医学科への進学希望を実現するためのMIコースについて語る荒木貴之校長(右)とアドバイザーの米山公啓医師
  • 武蔵野大学附属千代田高等学院の荒木貴之校長
  • MIコースのアドバーザー米山公啓医師
  • MIコースについて語る荒木貴之校長(右)とアドバイザーの米山公啓医師
 2018年春より共学化し、国際バカロレア認定校となった武蔵野大学附属千代田高等学院。荒木貴之校長の「学校にはさまざまな知性が集まってこそ、集団知として育っていける」という信念のもと、同校には、IB(国際バカロレア)、IQ(文理探究)、GA(グローバル・アスリート)、LA(リベラル・アーツ)、MS(メディカル・サイエンス)と、生徒の個性を伸ばすための多彩なコースが設置されている。

高2で選択する医学部医学科進学コース



 これら5つのコースに加え、2019年4月からの入学者を対象に、医学部医学科への進学希望を実現するための「MI(メディカル・インテリジェンス)コース」を新たに開設する。

 MIコースは、IQコースまたはMSコースの生徒が高校2年時から選択することができ、定員20名の少数精鋭で手厚い指導を行う。

 さらに荒木校長が一貫してこだわる「ホンモノ」の教育がここでも実現する。神経内科医であり、数多くの著書でも有名な作家・米山公啓氏をアドバイザーに迎え、現役医師の視点を積極的にカリキュラムに取り入れていくというものだ。

 同校のIQ(文理探究)コースは理系と文系に分かれ、オールラウンダーではなく「尖った」人材を集め、各々の生徒が多様な好奇心を突き詰める経験を通じて、予測困難なグローバル時代を生き抜く力を育む場所だ。一方、MS(メディカル・サイエンス)コースは、看護学部・薬学部への進学志望者に特化したカリキュラムが組まれ、併設の武蔵野大学看護学部・薬学部での専門科目を高校からいち早く学べるなど、先端のライフサイエンスに触れることができる。

 荒木校長は当初、医学部医学科進学に特化したコースの設置は想定していなかった。ところが現在高校1年生にあたる1期生に進路志望を聞いたところ、医学部医学科を希望する生徒が複数名乗り出てきたことで、新たな思いが芽生えたという。

 「医師になるということは人間に向き合うということ。だからこれは理系でも文系でもないな、と。また、僕自身も医師を志した時期があり、自分なりに精一杯努力はしたものの、受験の結果は全敗でした。そのため、“そう簡単には医師にはなれない”というハードルの高さも実感としてわかっています。だからこそ、医師になりたいと申し出た生徒たちと向き合ったとき、改めて“医系”に特化した探究コースをつくるべきだと思うようになったのです」(荒木校長)

武蔵野大学附属千代田高等学院の荒木貴之校長
荒木貴之校長

 今回新たに設けるMI(メディカル・インテリジェンス)コースは、IQコースとMSコースの“発展系”という形を取り、それぞれのコースに在籍する生徒が入学後に選択し、高校2年生からの2年間、独自のカリキュラムで学ぶことになる。

少人数クラスで国公立進学にも対応



 医学部医学科への進学に特化したカリキュラムは英語、数学、理科教育を重視し、特に理科では物理、化学、生物の基礎から応用までをしっかりと学ぶとともに、化学、生物では数多くの実験や探究学習を行う。20名という少人数クラスで、国公立大学医学部受験に必要な新テストや各校独自の個別試験対策にもきめ細やかに対応していく。

 また、特別講座として病院や福祉施設の見学のほか、実際に臓器に触れたり、アドバイザーをつとめる米山医師の臨床の現場に立ち会うなど体験を重視する。医師に必要な体力を増進するため、部活動を通じたスポーツの推進や、医師としての奉仕精神や使命感を養う意味でボランティア活動を必修化する。

「なぜ医師を目指すのか」という気持ちの原点が原動力に



 アドバイザーとしてMIコースのカリキュラム編成に携わる米山医師は、医学部に入学する前の高校生の段階から、医療現場のリアリティを聞く機会に触れることが重要だと唱える。

 「特に今は『頭がいいから医者になる』といった風潮があって、医学部入試を突破した“後”のことを考えていない人が多いように感じます。かくいう私も、医学部入学後は国家試験に受かるかどうか自信がもてず、“医者になれなかったらどうしよう”という不安にばかりとらわれていました。そのため6年間、国家試験合格だけを目標に、ただひたすら目の前の勉強を懸命こなす日々でした。ところが6年後、無事に医者になれたにもかかわらず、当時感じたのは達成感というよりも喪失感でした。現場に出て患者さんを前にし、医者として何ができるのかを考えたとき、言い様のない虚しさを覚えてしまったのです。

 ドラマ“ER”や映画“ジュラシック・パーク”などで有名なベストセラー作家、マイケル・クライトンも、ハーバード大学出身の研修医として実習をしていた際、患者から『なんで自分はこんな病気になったんだ』と言い寄られ、返事ができなかった。そこに医学の虚しさを感じて作家という道を選んだとエッセイに書いています。

 彼が言うように、知識と臨床はまったく違う世界です。なのに授業では誰も教えてくれない。珍しい病気については試験で問われたりする一方で、医師としての全体像を語ってくれる人はほとんどいません。ですが本来は、臨床の現場にいる人たちの話こそがリアリティ、“現実”なんです」(米山医師)

 荒木校長の「医学部進学は単純に理系探究を発展させたものの先ではない」という直感どおり、米山医師は、医学は理系ではないと言い切る。

 「科学は誰がやっても同じ結果が出るけれど、医学はそうではありません。ある病気に対し、外科医は切るべきといい、内科医は薬で治そうという。とりわけ現代の医療は、患者さんにできる限りの選択肢を提示し、最後は自分で決めてくださいというスタンスです。けれどそんなふうに言われても患者さんは困ってしまう。『先生、正解を教えてくれ』と。でも残念ながら、どれが正解かは明確にはわかりません。実際の臨床の現場は例外も非常に多いのです。

 つまり、一部の先端医療の研究者なら論理的に説明がつく、科学的な世界を追究し続けることが可能ですが、実践の臨床ではそうはいきません。

 たとえば私の診療所ではこんなことがあります。90代の高齢の患者さんがあちこち不調を訴えながら『先生、もう死にたい』と。こんなに長生きしたって仕方ないとこぼすんです。でもね、今の時期になるとちゃんとインフルエンザの予防接種を忘れず受けにくる(笑)。その『死にたい』という言葉を額面どおりに受け取らず、その言葉の裏側にある『寂しい』という思いを汲み取れるかです。薬で治るわけではなく、『ここへ来ると元気になる』と言ってくれるのはそういうことです。

 最近の医者はモニターばかり見て患者を診ないともよく言いますよね。医者の横顔しか見たことがない、と。ある日、お腹が痛いと訴えたら医者が『この辺ですか?』とマウスで画面の絵の腹部をなぞるので、思わずその医者の手をつかんで、自分の患部までその手を引っ張り『ここです!』とやったなんて話も聞きます(笑)。

 このような患者さんの不安や不満、またそれを支える家族の苦労や困り事を取り除いてあげられるか。そのためのコミュニケーション力、対話力というのはAI(人工知能)には代替できないでしょう。

 そうした医学書に沿って論理的にやってきたことが常にまかり通るわけではないという現実と、だからこそ人を診ることは奥深く、面白いのだという医師という仕事の魅力を、高校生にどんどん伝えていきたいと思います」(米山医師)

MIコースのアドバーザー米山公啓医師
米山公啓医師

 MIコースでは、勉強のサポートはもちろん、こうしたモチベーションの部分をしっかりと支えていきたいと荒木校長は語る。僻地での医師不足など地方での厳しい現実の理解には、研修旅行を通じて経験させたり、浄土真宗の宗門校として仏教を通じた生命倫理に向き合ったりする機会もつくる。米山医師の体験にもあるように「なぜ医師を目指すのか」という気持ちの原点が、厳しい医学部入試を突破する大きな原動力になるからだ。

医療は世界基準で考える



 医学部入試が難化する一方で、社会保障費の増大や人口減少、AIよる省人化の進展など、医師という職業を取り巻く環境は今後厳しくなるのではないか、という見方もある。だが、米山氏は医師の活躍の場は未だ伸び代があると見る。

 「医療現場ではまだまだ医者は足りません。特に地方は全然足りていない。実際に私が診療所をやっている東京都のあきる野市でも、緊急医療が医師不足のために受け入れてもらえないことがあります。さらに広く世界をみれば、医師が足りないところはまだまだたくさんあります。特にアジアは今後も需要は大きいでしょう。もうこれからは、医療は世界基準で考えればいい。今はあらゆる大学で留学の機会が増えているし、それによって英語も堪能になれるはず。だから海外で医師をやるというのは特別なことではなく、一般的な選択肢の一つになると思いますよ」(米山医師)

 荒木校長は、進学先として海外の医学部も視野に入れる。ハンガリーやチェコをはじめとした東欧の国立大学医学部は、国内の私立医学部に比べて費用面での負担を抑えられるという理由からも人気が高まっている。こうした最新の医学部進学に関する情報も積極的に提供していくという。

 医師免許を取得したところが終点ではない。その先にいろいろな道がある…MIコースでは、難関入試の突破にとどまらず、その“先”を見据えた大きなビジョンで医学部進学をサポートしたいと荒木校長は意気込む。

 「ドラマで見る難しい外科手術や救命医療などというのは医師の仕事全体のほんの一部に過ぎません。ドラマのような格好いい、スマートな現場ばかりではなく、泥臭いこともたくさんあれば、患者さんとのとりとめもない日常が続いたりもしている。けれどそこに、“人を診る”という医師の仕事の魅力がたくさんあります。そのリアリティを身近に感じてもらいながら、生徒さんたちの高い志を応援していきたいですね」と米山医師はその思いに応える。

MIコースについて語る荒木貴之校長(右)とアドバイザーの米山公啓医師
MIコースについて語る荒木貴之校長(右)とアドバイザーの米山公啓医師

 MIコースは高2から。「思春期だからこそいろいろやってみたい、という思いもあるはず。だからこそ高1の1年間はさまざまな可能性を追求し、迷うことがあってもいい」と荒木校長は言う。決して焦らない。ビジョンはいつも大局的だ。「そして医学部を目指す2年間では、人のために自分に何ができるかを突き詰めて考えてほしいのです」ーー生徒ひとりひとりが納得のいく人生を選べるよう寄り添う。何よりその人生の充実と幸福を願う思いがそこにはある。

米山公啓氏プロフィール


作家、医師(医学博士)
1952年山梨県甲府市生まれ、東京都福生市育ち。 聖マリアンナ大学医学部卒。
聖マリアンナ医科大学で超音波を使った脳血流量の測定や、血圧変動からみた自律神経機能の評価などを研究。老人医療・認知症問題にも取り組む。外勤先の天本病院(東京都多摩市)にて在宅医療にも10年以上参加。健康管理部に於いて、ニコチンガムを使った禁煙教室を実施した。
1998年に内科助教授を退職。本格的な著作活動を開始。
現在も週3日、東京都あきる野市にある「米山医院」で診療を続けている。
専門:神経内科。脳卒中、認知症、老人医療、健康論、医療経済。
《加藤紀子》

加藤紀子

京都市出まれ。東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、海外大学進学、経済産業省『未来の教室』など、教育分野を中心に様々なメディアで取材・執筆。初の自著『子育てベスト100』(ダイヤモンド社)は17万部のベストセラーに。現在はリセマムで編集長を務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top