情報過多時代の保護者に捧ぐ「子育てベスト100」加藤紀子さんインタビュー

 日々、時間に追われながら「我が子にどんなことをしてあげればいい?」と悩む保護者のために、今すぐできる「一番いい100のメソッド」を収録した加藤紀子さんの初著書「子育てベスト100」(ダイヤモンド社)。今だからこそ伝えたい子育てに関する話を聞いた。

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  • 「子育てベスト100」(ダイヤモンド社)
 家庭学習、習い事、読書、英語、スマホ、受験、スポーツ、食事、睡眠…。ネット上にあらゆる子育て情報があふれる現代社会。日々、時間に追われながら「我が子にどんなことをしてあげればいい?」と悩む保護者のために、今すぐできる「一番いい100のメソッド」を収録した加藤紀子さんの初著書「子育てベスト100」(ダイヤモンド社)。今だからこそ伝えたい子育てに関する話を聞いた。

学校は家族以外の社会との大事な接点



--プレジデントファミリー、リセマム、さまざまなメディアでご活躍中ですが、あらためて、教育ライターを始めたきっかけを教えてください。

 以前から執筆の仕事はしていたのですが、子育てに専念していた時期もありました。下の子が小学校を卒業して再開する際に教育をトピックにしたのは、それならブランクがあっても自分自身の経験を生かせると思ったからです。プレジデントファミリーやリセマムなどの教育系メディアではその経験を認めていただき、読者目線を生かした記事づくりをお手伝いしています。

--日本中が自粛生活を求められるという未だかつてない状況の中で、加藤さんはどのようにこの3か月を過ごしていましたか。何か新しい発見がありましたら教えてください。

 私自身は普段から家で仕事をしているので大きな変化はありませんでしたが、やはり子どもたちの生活は大きく変わりました。学校のカリキュラムに沿って家庭学習を進めていましたが、やはり友達に会いたい、新しいクラスで過ごしたい、学校が恋しいと言っていました。子どもにとって、学校は友達や先生とのコミュニケーションの場所。学校って、勉強をするだけではなく家族以外の社会との大事な接点の役割なんだということを再認識しました。

目指したのは「子育て版家庭の医学」



--この本を執筆することになったきっかけは何でしょうか。

 これは教育メディアの関係者、専門家の先生方と共通していることなのですが、今は、子育てや教育に関する情報があふれすぎているなと感じています。子どものためになる情報もたくさんある一方で、子どもに過度な負担をかけたり、子どもの気持ちをないがしろにしていたりする情報もあり、それって本当に子どものためになっているの? というモヤモヤがありました。

 最近では21世紀型スキルと呼ばれる創造力や表現力など、テストでは測れない非認知能力が注目されていますが、受験があるから学力だって大事。さらに子どもの体力、体づくりや食のこと、スマホやゲームとの付き合い方…。子育てって親目線で見たらいろいろなことを気にしなくてはいけない。そんな中で本もいっぱい、ネットの情報もいっぱいあって、数ある意見に耳を傾けすぎて振り回されたり、逆に、1つの意見に偏ってしまっている方がたくさんいるのではと感じていました。

 一方で、私はライターとして非認知能力の取材もするし、受験についての記事も書きます。こうして幅広い取材を通じてさまざまな分野の専門家からたくさんの知恵をご教授していただいた経験を生かせば、むしろ教育のプロでもカリスママザーでもない私だからこそ、普通の親目線で有用な情報をまとめることができるのではないか、と思ったのが執筆のきっかけです。

 本書で紹介する「100のメソッド」では、専門家が研究してきたエビデンスベーストな情報と、子どもにとって本当にためになること、大切なことだけを厳選しています。さらにそれがなぜ大事かという知識だけではなく、具体的に何をすればいいのかにこだわり、子どもとの接し方について「今すぐおうちでできること」を盛り込みました。子育てで迷ったときにパッと開けばベストな方法が見つかる。目指したのは、これ1冊で子育てに本当に大切なことが網羅できる“子育て版家庭の医学”です。

ビジネス書を意識した装丁の理由



--「英語を得意にさせたい」「スマホのルール決め」「思考力をつけるには」…保護者の気になる内容が完全網羅されています。どれもエビデンスに基づいた説得力のある文章で、すぐに役立つ内容だと感じました。加藤さんはこの本を、どういう人たちに届けたいですか。

 子どもに関わる人なら、どなたでも読んでほしいです。特に今回、「今すぐおうちでできること」にこだわったので、普段は仕事が忙しくて子育てや家事に関われる時間が少ないお父さんたちのお役にも立てたら嬉しいです。表紙のデザインもビジネス書っぽい装丁にして、男性でも手に取りやすくなるように意識しました。この本を読んで、子どもとお父さんが楽しく関われるようになったら、そのぶんお母さんの負荷も減って家族みんながハッピーになれるんじゃないかと期待しています。もうお子さんが中高生…という方にも、思春期で親子間のコミュニケーションにうまくいかないことがあったときに、原因に立ち返って悩みを解消する手助けになるのではと思います。

--今回発売になった「子育てベスト100」では、200以上の資料×膨大な取材から一番いいメソッドを厳選されたということですが、特に苦労された点は何でしょうか。

 大変だったのはそれぞれの資料、情報を集めることですね。ひとつのメソッドは読むと一瞬なのですが、それぞれのテーマごとに結構な数の文献に当たっています。海外のデータの場合は、オリジナルのソースにまで遡って内容を確認するようにしていたので、気の遠くなるような作業でした。膨大なリサーチをもとに切り口や内容を考えて、データや文献を確認しながら執筆を進めたので、ひとつのテーマを書くのにものすごく時間がかかりました。

スーパーキッズの家庭は、子どもを乗せるのが上手!



--数多くの取材経験のなかで、加藤さんにとって印象に残る取材を教えてください。

 スーパーキッズとしてメディアに出てくるような、さまざまな分野で卓越したお子さんたちとそのご家族もたくさん取材してきましたが、この本にある「おうちでできること」を上手にやってるなぁと感心する親御さんによく出会いました。そういうご家庭は、子どもたちがおしゃべりでとても賑やかなんです。スーパーキッズって両親が優秀だからとか、もともと才能があったからなどと思われがちですが、それよりも、親御さんやおじいちゃん、おばあちゃん、先生方など、周りの大人からの自然な働きかけがあって、のびのびとその才能を伸ばすことができている、ということも大きな要因ではないかと思います。

 ある国語が抜群に得意なお子さんは、幼児のころに過去にタイムスリップする戦隊ヒーローが好きだったので、お母さんはタイムスリップして過去に行くマンガを見つけてきました。すると子どもは昔の暮らしに興味をもつようになり、今度は家族旅行でお城巡りをすることに。そうして、歴史や地理にハマっていくにつれて読書量が増えていき、“本の虫”になったそうです。ご自宅は、いつでもどこでも好きな時に手が届くよう、リビング、廊下、トイレにまで、至るところに本が置いてありました。。

 こんなふうに子どもの興味に親が自然に働きかけることで、“わらしべ長者”的に力を伸ばしていくケースをたくさん見てきました。ジュニアトップアスリート、ITの神童、中学受験で上位の成績のお子さんなど色々お会いしましたが、そこに共通する家庭の雰囲気は、親御さんが子どもを乗せるのが上手なんです。

 常にトップの成績で最難関校に進んだお子さんのお母さんは、「塾のカレンダーが配られたら、まず先に決めるのは家族旅行の予定」と笑って話していました。旅先で勉強させようなんていう気はさらさらなく、遊園地でたっぷり遊んでから、ご当地料理を食べたり、路線図をもとに子どもに移動手段を考えてもらったり。まずは親自身が楽しんでやっていることが、子どもにとって、とてもいい教育的アプローチになっているんです。

 この本をまとめるにあたって、今までの取材をいろいろ思い返しましたが、「子どもにとって本当に大切なこと」と、そうした親御さんのあり方の点と点が線で繋がった感じがしました。

自分を客観視する「メタ認知」の大切さ



--心理学、教育学、精神医学、脳科学…さまざまな学術領域で研究の最前線に立つ大学の先生方などにも取材をされていますが、特に印象的だったものはありますか。

 まず、私のような無名のライターの取材に快く応じてくださったことに感謝しています。どの先生の取材にも共通しているのは「子どもってこんなにすごいんだよ、こんなに面白いんだよ」っていうことを改めて教えてもらえたことです。“子どものため”というのをとことん追い求めて研究している人たちが世界中にいる。それを知っておくだけでも心強いし、自分も子どもも救われることがたくさんあります。

 このことを法政大学教授の発達心理学者、渡辺弥生先生が「メタ認知」という言葉で教えてくださいました。それは、「子どもの成長にとって本当に大事なことを知識として知っておくと、うまくいかなかったり、イライラしたり、怒りっぽくなったり、感情がネガティブに働いたときでも、自分を客観視することができる」というもの。そもそも子育てなんてうまくいかないことの連続ですから、それでも怒りが収まらずに子どもに当たってしまうこともありますよね。でもそういうときも、あぁ悪いことしてしまったと思う自分がもう1人いることで、冷静になることができるんです。子どもの感情コントロール法については本書で触れていますが、自分の感情を客観視することは、子どもと関わる親にとても有効です。

親はどれだけ子どもを信じて応援できるか



--緊急事態宣言が解除されました。保護者の教育・子育てへの関わり方は変わっていくと思いますか。変わっていくこと、変わらないことについてご意見をお聞かせください。

 変わるものとしては、リモートワークが普及して、今後もITの進展でさまざまなものが無人化にシフトしていき、産業構造は変わっていくことになるでしょう。

 一方で、忘れてはいけないなと思うのは、どんな時代であっても子どもの本質は変わらないということです。

 オンライン授業など教育のICT化も進展する中で、より大事になってくるのは子どもの主体性だと思います。今までは、学校に行けばお膳立てされた時間割のなかでやっていればよかったけれど、いざ学校から離れたときに、与えられたものをこなすより、自分で選んで自分でできる子は強いでしょうね。子どもの内面から湧き出る、自分からやりたいと思う気持ちを伸ばすには、子どもの楽しい! をどれだけ応援してあげられるか。親から見て「ちょっとそれは…」と思うようなことでも、応援できるかどうかが鍵になるのではないでしょうか。

--親がやったほうが良いことがたくさん詰まった本ですが、反対に「これはやってはいけない」ということはありますか。

 「子どもの将来を心配するあまり、子どもの“今”を無視してしまわない」ことです。児童青年精神科医の佐々木正美先生の「子どもというのは、小さければ小さいほど、今、幸福でなければ、将来に夢や希望は絶対にもてない。今、苦しくても将来は幸福なんだ、というのは大人の感情」という言葉にもあるように、これは教育熱心になればなるほど陥りがちな落とし穴です。私自身も見事にその穴に落ちてしまった経験に今でも後悔が残っています。「子どものため」と思っていても、それは実は「親の安心のため」ではないのか。親の方が一生懸命になり過ぎている時ほど、子どもの“今”の幸せを奪ってしまっていないか。少し冷静になってみる必要があると思います。

親の幸せではなくて、子どもの幸せ



--親として加藤さんご自身が悩んだときに、一番勇気付けられた言葉を教えてください。

 本書の「おわりに」に書いたのですが、修道女であり教育者でもあった渡辺和子さんの著書「置かれた場所で咲きなさい」(幻冬舎)にある一節。「雨の日、風の日、どうしても咲けないときは根を下へ下へと伸ばしましょう。次に咲く花がより大きく、美しいものとなるように」という言葉です。子育てをしていると「うまくいかない」と感じることのほうが多いかもしれませんが、そのときも子どもはきっといつか花を咲かせるために下へ下へと根を張っているはず。そんな子どもの力を無条件に信じようと思わせてくれる言葉です。

 そしてもうひとつ、ちょうど3年前、リセマムの取材で教育ジャーナリストのおおたとしまささんと対談させていただいたときのことなのですが、「子育てで成功した人」という表現を使った私に、「子育てで成功した人って誰ですか?」と、質問を返されて言葉に詰まりました。「子どもが『幸せな人生だった』と思えて死ねるかどうかは親には知りようがない。自分が生きているうちに、子どもが世の中で高く評価されている姿を見たい、というのは親のエゴ。親のエゴを叶えてあげるという目的ならば近道はあるような気がするけど、本質はそこではないです」と。この言葉はそれ以来ずっと私の根っこにあり、この本をまとめているあいだも「子どもにとっての幸せ」をいつも考えるようにしていました。

忙しくても、子どもの話を聞いてあげて



--この本を手に取る方は保護者を含め、先生や教育関係者など「子どもにとって何が良いか」を考えている方々だと思います。最後に読者にメッセージをお願いします。

 たくさんのメソッドや具体策を紹介していますが、「全て実践しなければ!」とけして気負わないでください。むしろ、「これならできそう!」ということがあったら、ひとつだけでも試してみようかというくらいの気持ちで、子どもと楽しく向き合うきっかけにして頂けたら嬉しいです。

 ただ、ひとつ挙げるとすれば、本の冒頭にある、「子どもの話を聞く」というのは大事なことかなと。先の佐々木先生は「人は正しいことをたくさん伝えてもらうと安心するわけではなく、たくさん聞いてもらうことで安心する」と言っています。臨床心理学者の河合隼雄先生も「ゆっくりと待って子どもの声に耳を傾けたら、子どもはもっと素晴らしいことを言ってくれます」という言葉を残しています。確かに子どもって実はびっくりするくらい深く考えていたり、大人がハッとするようなことを言ったりもしますよね。

 親子でたくさんコミュニケーションをとり、そこに絶対的な信頼関係ができることで、子どもは安心して社会に出て他者と生き生きと交わることができるといいます。もっぱら恨まれ役のゲームだって、一緒にプレイしたり攻略法を聞いたり、コミュニケーションツールとして活用することで、親子の会話が増えて信頼関係を強くすることだってできます。

 だから、これから世の中が本格稼働して忙しい毎日になっても、子どもとの対話の時間は大切にしていきたいですね。

 子どもによって成長のスピードはさまざま。たとえ立ち止まっているように見えても、その子なりに絶対に成長しているはずです。情報が溢れる世界で、信じるということ自体が難しくなってきていますが、この本がお子さんとのコミュニケーションを増やし、お子さんの持っている力を信じる足がかりになれたら嬉しいです。

--ありがとうございました。

 加藤さんの想いであり、本書の原点となっているのが「子どもを信じること」、そして「親のためではなく子どものため」という視点。長い休校が明け、滞った学習機会や生活の乱れを取り戻そうと、子どもたちを前へ前へと向かわせがちな親たちに「もっと子どものことを信じて、もっと肩の力を抜いて」と、温かく、的確なアドバイスをくれる「子育てベスト100」。子どもと親が心から笑顔になれる、子どものことを考えるすべての人に手に取ってほしい1冊だ。

 ※リセマムでは、加藤紀子さんの著書、ダイヤモンド社「子育てベスト100」を、抽選のうえ3名さまにプレゼントする。応募は2020年6月25日(木)まで

子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり

発行:ダイヤモンド社

<著者プロフィール:加藤紀子(かとう・のりこ)>
1973年京都市生まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、子どものメンタル、子どもの英語教育、海外大学進学、国際バカロレア等、教育分野を中心に「プレジデントFamily」「NewsPicks」「ダイヤモンド・オンライン」「ReseMom(リセマム)」などさまざまなメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。一男一女の母。


《吉野清美》

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