九州大、学生向けメンタルヘルスアプリ開発…疑わしい疾患をチェック

 九州大学は2020年10月7日、大学生向けメンタルヘルスアプリを開発し、その効果を検証したことを公表した。試作アプリを大学生に実際に使用してもらい、ブラッシュアップを重ねて完成させた。

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 九州大学は2020年10月7日、大学生向けメンタルヘルスアプリを開発し、その効果を検証したことを公表した。試作アプリを大学生に実際に使用してもらい、ブラッシュアップを重ねて完成させた。

 大学生向けメンタルヘルスアプリは、九州大学キャンパスライフ・健康支援センターとサイバーセキュリティーセンターの研究グループが開発。日々の健康状態(食事、運動、睡眠、気分)をカレンダー方式で入力していくアプリで、入力はピクトグラムを採用し、ユーザーにわかりやすく表現している。また、精神疾患の簡易診断機能も備えている。

 使い方は、アプリの「きろく」で日々の心身の状態を記録する。「しんだん」は2段階で構成され、簡易診断(スクリーニング)の結果に基づき、疑わしい疾患についてさらに詳しく症状をチェックすることが可能。疾患の重症度に応じて、セルフケアサイトへの誘導、キャンパスライフ・健康支援センターの紹介、近医クリニックの表示(Google Mapと連携)がされている。また、診断された疾患をタップすると、それぞれの疾患について説明を見ることができる。「マイカルテ」では過去1週間の記録に応じて、簡単な助言・コメントを表示。自己の心身の状態に意識を向けさせることが、メンタルヘルスの維持・向上につながるという。

 開発されたアプリを使用した大学生は、使用期間が2週間と短期間であるにもかかわらず、精神健康度の尺度(GHQ-12:General Health Questionnaire-12)が、非使用群と比べて有意に改善することがわかった。また、アプリのデザインについては93%が、使用感についても86%のユーザーが、「満足」「やや満足」と回答している。アプリのダウンロードは学内LANのみ可能。使用時に専用のIDとパスワードが必要となり、学外の人はアプリをダウンロードできない。

 コロナ禍で大学生のメンタルヘルスが心配なことから研究グループは、「大学生目線で作成されたこのアプリが将来的に多くの大学で利用され、学生支援に役立てばうれしい。まずは学内での運用を目指したい」としている。研究は、「大学生向けのアプリ開発からその効果の検証までを、精神医学と芸術工学という異分野の協力によって行った点」が世界的にもユニークで、研究成果は2020年9月26日に国際雑誌PLOS ONEに掲載された。
《田中志実》

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