神奈川【高校受験2021】湘ゼミに聞く、公立難関校の特色検査対策と私立校選びのポイント

 選考要素が多い神奈川県の公立高校入試。入試本番まで受験生はどのように過ごすべきか。また保護者が気を付けるべきことは何か。湘南ゼミナール 教務支援部 特色検査対策責任者の渡邉豪氏と、同教務支援部 進路支援グループ長の秋山清輝先生に話を聞いた。

教育・受験 中学生
PR
湘南ゼミナールの秋山氏・渡邉氏
  • 湘南ゼミナールの秋山氏・渡邉氏
  • 出題範囲から除外される内容(令和3年度神奈川県公立高校入試)
  • 神奈川県公立高等学校の入学者の募集及び選抜の主な日程
 内申点、学力検査、面接、特色検査と選考要素が多岐にわたる神奈川県の公立高校入試。コロナ禍もまだ続く中、入試本番まで受験生はどのように過ごすべきか。また保護者が気を付けるべきことは何か。湘南ゼミナール 教務支援部 特色検査対策責任者の渡邉豪氏と、同教務支援部 進路支援グループ長の秋山清輝先生に話を聞いた。

コロナ禍で例年と異なる点と出題範囲の影響



--コロナ禍において各都道府県でさまざまな対応が発表されています。神奈川県の公立校入試について例年と異なる点を教えてください。

秋山氏:来春の入試と例年とで異なる点は3点あげられます。

1.コロナ禍の配慮から出題範囲の削減


2.県立神奈川総合高等学校単位制普通科国際文化コースにおける特色検査(自己表現検査)のグループディスカッションで変更点
従来:実施30分前にテーマを掲示 →2021年度:出願時に掲示

3.コロナに罹患した生徒に対して追加の学力検査を実施



 1は以下の表をご確認ください。2は、感染リスクを高めないための配慮ですが、事前対策が講じられるので受験生にとっては大きな変更です。3の日程については、県立高校入試日は2021年2月15日(月)の学力検査から、15、16、17日の面接・特色検査まで休みなく2~3日連続で会場に行って試験を受けることになります。万が一インフルエンザなどの疾患にかかった場合の対応として、「追検査」という振替日程が2月22日(月)に用意されていますが、昨年同様、新型コロナウイルス罹患への対応として特別追検査が別に用意されています。こちらは3月10日(水)に学力検査、3月17日(水)に合格発表となっています。どちらの追検査も、面接と特色検査に追検査はないので、健康管理には例年以上に気を付ける必要があるでしょう。


--出題範囲削減の影響はありますか。

渡邉先生:影響はあまりないと考えています。社会では「私たちと国際社会の諸課題」が除外されますが教科書のページ数は多くありません。数学も「資料の活用(標本調査)」は学校の授業では1か月もなく、過去の入試をみても数年に一度の出題です。理科はそれぞれ3年間のまとめ的なもので、そこだけの出題はほぼありません。社会・数学・理科ともに、おそらく入試問題に関してはほぼ変わらず、過去問は効果のある学習方法になるでしょう。

 国語と英語は、漢字や英単語を問う問題で、中学3年生で学ぶものが除外されています。長文の中で出る場合は、注釈などの対応があると思いますが、この削減内容があるからといって、これまでの勉強のやり方は変わらないと思います。高校入学後は中学の内容は基本的に終わっている前提で学習が進むので、入試に出なくても学ぶ必要はあると伝えています。

 特色検査は、基本的に科目横断的な問題が特徴ですが、中学3年生の除外範囲を問題に紐付けて利用する場合には、おそらく注釈をつけるなどの対応があると思います。あまり出題範囲を気にせずに、過去問でしっかりと勉強を進めることがやはり冬休みの学習の中心になるでしょう。

神奈川県公立高等学校の入学者の募集及び選抜の主な日程

5教科を確実にして特色検査に挑む



--今春の入試の出題傾向に変化はありましたか。

秋山氏:学力検査の内容では、ここ数年で5教科と特色検査における問題の役割が変化してきています。5教科の問題は基本的な力を問うものになって平均点が上がってきました。一方で、いわゆる筆記型の特色検査はトップ校を受ける生徒でも平均点が45~50点になるような難しいレベルでした。5教科は基本を問うもの、特色検査は応用問題で差がつくものと役割が変化してきたのが明らかになったといえるでしょう。この傾向は今後も続くと見ています。

 特色検査が差の付きやすい難しいものになった年は、特色検査で高得点を出すと合格に結び付く場合があります。先ほど申し上げたように、今春の5教科は易化して平均点は80点近くになりました。特に横浜翠嵐や湘南などのトップ校では各科目90~95点を取って天井に近くなるため5教科での差が付きません。それが特色検査では横浜翠嵐の平均点でおよそ45~47点程度。ここで10点分多く取れた生徒は一気に上位にくるパターンはあります。特色検査の点数は最終的に2倍の比率が掛けられて200点分として計算されるので影響が大きいです。1問の配点が大きく、1~2問が解けるか、解けないかで合否が変わるパターンはあり得ます。

特色検査について


 令和2年度神奈川県公立高等学校入学者選抜における特色検査(自己表現検査)は、すべての学力向上進学重点校(横浜翠嵐、柏陽、湘南、厚木)とすべての学力向上進学重点校エントリー校(川和、希望ケ丘、横浜平沼、光陵、横浜緑ケ丘、多摩、横須賀、鎌倉、茅ケ崎北陵、平塚江南、小田原、大和、相模原)の全17校の県立高等学校において、共通問題と共通選択問題を用いて実施する。そのほかには、神奈川総合国際コース、横浜国際をはじめとする専門学科、県立以外では横浜市立サイエンスフロンティア高校が実施。


渡邉氏:今春は特色検査で挽回した生徒も確かにいましたね。ただし特色検査は狙って点数を取れるものでもないので、5教科をしっかりと取らないといけません。5教科で一定の点数を取り、特色検査で大失敗をしない、一定でなんとか踏みとどまることが必要です。難度が高い問題では、60分間で得点が取れる問題をまずしっかり取るような時間の使い方が大事です。問題の最後の方にとても簡単な問題があったりもしますので注意が必要です。

秋山氏:5教科と特色検査の傾向で1校だけ例外があります。横浜市立サイエンスフロンティア高校では、特色検査を非常に簡単にして90点以上取れるように近年切り替えました。ですが、内申や5教科の点数が低くて、特色検査だけ高得点で合格した生徒は実際に入学後に伸び悩むケースもあるようです。市立の高校なので、県立とは違って学校独自で毎年問題を作成できて改善の動きは早いので、注視していく必要があるでしょう。湘南ゼミナールのWebサイトの「特色検査の高校別分析と対策」では、2018年度から2020年度の問題の詳しい解説を掲載していますので、ご参考にしてください。

コロナ禍で私立志願者が増える可能性



--公立と私立、志望校選びに変化はありますか。

秋山氏:公式なデータはありませんが、弊塾の場合は公立に進学する生徒が圧倒的に多い中で少しずつ私立専願が増えており、特に今年は例年以上です。何か不安な出来事が起きると、公立を避けて私立に流れることが昔からあり、たとえば公立の入試制度が変わった2013年は私立に流れる生徒が増えました。コロナ禍でもきちんと授業をできる環境が整っている私立校は選ばれていくのではないでしょうか。弊塾では定期テスト対策も行っているので、これまで高めてきた内申点を使って有利に進めていくケースも見られます。

--公立の人気校を教えてください。

秋山氏:ここ数年、大きな変化はありません。上位校はどこも人気で、特に横浜翠嵐や湘南のようなトップ校から順に倍率が高くなります。また人口が増加している川崎地区の新城や市立高津、市立南などでは倍率が高くなる傾向があります。横浜市立の学校では、市立桜丘や市立戸塚といった学校の倍率が高止まりしていますが、これらの高校では先生や校舎が良いといった口コミで人気が出ています。普通科以外では、横浜国際のIBコースや川崎市立橘の国際科などの英語と第二外国語も学べる学校の倍率が近年高止まりしています。

 自分のやりたいことを見つけられる神奈川総合の個性化コースも人気があります。大学生のように色々なカリキュラムから選んだり、時間割を自由に組んだりできるのが特徴で、ここ数年で県下屈指の高倍率になりました。昔から、単なる大学進学実績だけではなく、自分に合った進路を探したいというご家庭はありましたが、それが顕在化した形です。

--私立は大学附属校人気は継続でしょうか。

秋山氏:大学の附属校への志望者は増加傾向です。法政二高や駒澤、國學院、日大の系列校などの人気は継続しています。青山学院などGMARCHは変わらず人気です。1人の生徒の出願校が1~2校から3~4校に増える理由としては、私立の優先度が高くなったことと、絞り切れていないという2つが考えられます。数多くの選択肢があるがまだ決められていない。説明会にも行けていない。学校の情報を集め切れていないなど、単なる私立人気だけではなくコロナの影響も感じます。

渡邉氏:説明会が少なく、公立も含めて志望校を絞る材料がなかったんですね。説明会に行こうにもやっていない場合もあって、最終的に何を基準に決めるかを生徒本人と相談することもあります。例年とはかなり違うので、生徒たちの大変さを感じます。

秋山氏:実際に学校の近くに行ってみるのは良いかもしれません。部活動をしている先輩たちがどんな会話をしているのか雰囲気や生徒のようすをリアルに感じるのも良いでしょう。湘南ゼミナールのWebサイトには「私立高校情報オンラインナビ」があるので、紹介動画などで検討している学校の情報を見るのも良いと思います。

--ほかに注目している高校はありますか。

秋山氏:まず横浜創英です。千代田区立麹町中学校の校長として宿題の廃止などの改革を進めた、工藤勇一先生が校長に就任しました。人気に火がつくのは1、2年後かもしれませんが、どう改革していくのか楽しみです。もう1校は北鎌倉女子学園です。こちらは開成の校長だった柳澤幸雄先生が新たに学園長として就任されましたので、こちらもどう改革を進めるのか注目しています。

 もともとの人気校が改革に着手しているのも神奈川の特徴で、上位の国公立大学への進学実績を高める動きもあります。たとえば山手学院では、国公立を目指す特進コースとそれ以外の進学コースに再編。それ以外も一定の人気がある横浜高校が共学化されるなど、学校の再編は活発です。私立は就学支援金を大きな契機として、しっかりとした体制を整えて多くの生徒を迎えようと取り組んでいます。逆に公立の中堅以下の学校は非常に苦しい状況で、2020年度では定員割れが50校を超えて過去最高となりました。少子化が進んでいますので、生き残りをかけた学校改革は避けられないでしょう。

志望校選びの時期と学習アドバイス



--志望校を決める時期についてアドバイスをお願いします。

渡邉氏:私立は定期テストに入る前の今のうちに決めてほしいと生徒に話していますが、実際には定期テストが終わって12月に入るまでの1週間で学校の見学に行くという状況になると思います。公立は、合格判断だけでいえば、やはり1月の模試がポイントです。それまではしっかりと勉強を進めて、志望校を考えるのが良いと思います。

--ラストスパートにおける学習のアドバイスをお願いします。

渡邉氏:中学3年生の内容をしっかりやれていない場合があるので気を付けてほしいです。また、中学1、2年生の内容もしっかりおさえる。 神奈川は偏らずに均等に出題されますので、もれなくムラなく勉強することが必要です。

秋山氏:生徒たちがよく勘違いしているのは、難しい問題が解けないときに、そこばかりに時間をかけようとすることです。それは逆で、ほかの人も得点を取れるような問題をしっかり取ることのほうが大事です。テストの見直しで難しい問題の見直しに時間をかけて、やさしい問題のケアレスミスを見落とすことのないように、普段の勉強でも気を付けてもらいたいですね。

渡邉氏:5~6年前の難しい過去問が解けないことに不安になって志望校を変更するのは、合理的な判断ではないでしょう。正答率が掲載されている過去問集や教育委員会のホームページで実際に何パーセントの正答率かを確かめてほしいです。塾に行かずに勉強している場合は、その年の合格点のイメージや5教科での得点の目安を把握することが大切です。

--最後まで学力を伸ばし切る生徒にはどのような特徴がありますか。

渡邉氏:目的意識をもって勉強していることです。塾で課題をやっていればどうにかなるという勉強の仕方ではなく、自分の弱点にフォーカスして潰していく勉強、志望校に合格するにはどうすればよいかという勉強の仕方を自分で考えて選べる力がある生徒は最後まで伸びます。また1月の模試で満足せずに、その後の1か月半をいかに有効に使えるかですね。

秋山氏:目的意識の高い生徒以外にも「先生、次に何やればいいの。はい、これやって来た。じゃあ次」と安定して課題をやり続けて勉強時間を多く確保しながら、ひたすら伸び続ける場合もあります。この2つのタイプの共通点は、やはりメンタル的に安定していることかもしれませんね。

渡邉氏:下位の生徒は物量をやるとニョキニョキと伸びる場合がありますね。上位の生徒は今できている問題に取り組むよりも明確な弱点を潰しに行く取捨選択が必要です。もちろん生徒によって異なりますが、メンタルの安定は確かにあります。

保護者は集中できる環境をつくり「見守る」



--メンタルのサポートは保護者の役割でしょうか。

秋山氏:塾でも生徒に面談をしますが、メンタルサポートは何が有効なのか、塾内のようすだけではわからない場合もあって、状況確認に時間がかかることがあります。色々な対応策があると思いますが、ご家庭と協力していくのがいちばん良いと考えています。親子の信頼関係も大事ですね。

渡邉氏:保護者は不安でどうしても子どもに口酸っぱく言うこともあると思いますが、得てしてそれが効果的ではない場合もあります。受験前はできるだけ本人が自分事でやっている状態を作り、主体的に自分の道を決めて、そこに対して努力していく。それを保護者には見守り続けてほしいですね。家庭では特に健康に気を付けて、毎日ご飯を食べて、おやすみなさいと挨拶を言い合うことも大切だと思います。

秋山氏:お子様のできていないことをチェックしだすと保護者の方の気持ちがもたないのではないでしょうか。受験生のお子様以外の家族も見なくてはいけないでしょうし、何よりご自身もお仕事をされていたりすると気が休まらないと思います。大事なのは「チームを組む」ことで、頭の中のチェックリストをチームメイトに渡す、という感覚です。勉強に関しては塾のプロに任せ、ご家庭では体調や表情などの変化をつかんでいただく。我々もそういったご家庭内の情報をご連絡いただけるとありがたいです。ダブルチームで情報共有しながらしっかりと対応できることが望ましいと思います。

渡邉氏:集中力を保つのは大人でも大変です。実際の入試は1科目50分か60分ですので、試験の時間を乗り切ることは必要だと話しています。たとえば50分勉強したら10分休むというサイクルを作る。時間の枠を丁寧に取って、今日はこれ、次はこれとスケジューリングすると勉強も自然とはかどります。キッチンタイマーなどを利用している生徒は多いです。

秋山氏:私は「何分ならば集中できる?」と生徒に聞く場合もあります。その生徒が15分集中できるなら、15分ずつで勉強を組み立て、集中が切れたときには、頭の中に何を考えてしまうのかを聞いて、試行錯誤しながら学習計画をつくっていきます。ただ関係性が構築できていないと正直に答えてくれません。まずいちばん大事なのは本音を話してくれる間柄であり続けること。何が集中できない原因なのかがわかれば対応策も出てきます。塾の自習室など集中できる環境に移動するのもひとつの手です。保護者は、子どもは半分も約束を守れないという心構えでいると良いでしょう。中学3年生にもなると自分が言い出したことはやらなければならないという気持ちはもっています。生徒にはトライアンドエラーを繰り返しながらセルフコントロール力を磨いてほしいと思います。

--ありがとうございました。

 いよいよラストスパートを迎えるこの時期は、保護者と塾のサポートのあり方もさらに重要なものとなるだろう。受験生自らが自分のできることをしっかりと確認しながら心技体を整えて入試本番に臨む姿を見守りたい。

2021年以降の入試に備える冬期講習・模試情報



冬のスペシャルキャンペーン 冬期講習+1月


対象:小学4年生~中学2年生
日程:2020年12月26日(土)から2021年1月6日(水)
冬期講習+1月 授業料無料

第2回神奈川公立高校志望校判定模試
対象:神奈川県にお住いの中学1年生・中学2年生
科目:中学1年生(国語、数学、英語)/中学2年生(国語、数学、英語、理科、社会)
※湘南ゼミナールに通っていない方限定
第2回神奈川公立高校志望校判定模試(無料・自宅受験可能)

《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

+ 続きを読む

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top