問題を解くために必要な3種類のインプット
ここでインプットに関する当たり前だけれど、とても大事なことを述べます。
問題のパターンを正しく判断するには、パターンを覚えることが必要
問題を解く手順を思い出すには、解く手順を覚えることが必要
手順を実行するのに必要な知識を引き出すには、知識を覚えることが必要
要するに、問題を解く上では最低限覚えないといけないことがあり、それを定着させるインプットの時間が必要であるということです。最初から何の知識もないまっさらな状態で問題が解ける人はいません。基本的な事項を誰かから教わったり、自分で勉強したりする時間があるから、問題が解けるのです。
ではどうやってこの3つのインプットを行ったらいいのでしょうか?具体例を交えながら、一緒に見ていきましょう。ここから私が勉強において大事だと思う点が凝縮されているので、注意して読んでもらえたら嬉しいです。
1.問題のパターンをつかむために共通点を探す
問題のパターンを覚えるには、基本的には教科書・塾のテキスト・参考書・配布されたプリントなどの例題を「問題状況を整理しながら読む」というので十分です。ある種類の問題に共通する要素を探しながら読んでいきましょう。
どういうことなのか、「つるかめ算」の例題で説明していきます。
例1:「100円玉と500円玉を合わせて10枚持っています。合計額は3,800円です。100円玉と500円玉の枚数はそれぞれ何枚でしょう」
例2:「つるとかめが合わせて5匹います。つるとかめの足の本数の合計は14本です。つるとかめはそれぞれ何匹いるでしょう」
この2つの例題に共通する要素を探してみましょう。
図を見てください。

今回の共通点は、「2つの異なるものの数を問うている」「解くためのヒントとして、それぞれの個別の数量とその合計が与えられている」ということが分かりますでしょうか?
実はこれこそが「つるかめ算」の特徴なのです。こうやってある問題の共通点を見抜くことが、例題の問題状況を整理しながら読むという作業になります。この作業をたくさんすることで、問題のパターンの把握と分類がすらすらとできるようになります。
なぜかというと、見つけた共通点こそが「問題のポイントとなる要素」であり、それを見抜くことが解くためのパターンを把握することにつながるからです。
そうやって問題のパターン化ができると、新しい問題と出合ったときでも自分の知っているものに引き付けて解けるので、正答率が上がります。教えられた例題だけは解けるのだけれど、似たような練習問題が全く解けないということがよくあります。なぜこうなってしまうかというと「何を問うているのか、どんな情報が与えられているか」という問題のパターンを特徴付ける要素がつかめていないからです。
つまり、既に知っている問題と同じ解き方ができるのに、数値や書き方が変わってしまうと新しいパターンだと勘違いしてしまった状態なのです。でも、問題のポイントとなる要素さえ知っていれば、どのパターンか、自分が知っているものか、知っている問題の中では何に似ているか、という判断が正しくできるようになります。教科書・塾のテキストの例題をインプットの材料としてオススメしている理由は、一番基礎的な問題なので最低限知っておくべきパターンを網羅するのにちょうどよいからです。また、例題の文章はとても簡潔で、解く上で最低限必要な情報のみが記載されている場合が多いですよね。ということは、問題のポイントとなる要素の抜き出しが一番行いやすいのです。ですので、最小限の労力で一番基本的な部分をインプットすることができます。
2.最初は完コピで解く手順を身につける
問題を解く手順も例題を使って覚えましょう。例題を何も見ずに自力で解けるようにするというので十分です。そうすると手順が自然と身につくようになります。ここでカギになるのは、初めて習うパターンの問題は、最初からムリに自力で最後まで解こうとしなくていいということです。1分ぐらい考えてみて解き方が全く見えない場合は、すぐに問題集の解答や先生が黒板に書いた解説などを見てしまって大丈夫です。なぜなら、例題という基本的な問題が解けない場合には、時間をかけて考えても適切な解き方が浮かぶとは考えにくいので、長時間考えるメリットがないのです。
たとえば、料理をしたことのない人にレシピもない状態でビーフシチューを作りなさいと言っても、時間をかけたところで作れることはなかなかありませんよね。ちょっと考えて、ビーフシチューの作り方が全く分からないと思ったら、レシピを探して一度作ってみればいいということなのです。そうしてレシピを見ながら実際に作ってそれを覚え、また作ろうと思ったときに思い出せるようになればいいというのが、今回伝えたいことです。
最初はそのようにやってみてから、最終的には解答を見なくとも1人で例題が解けるように復習はしっかり重ねましょう。そうすれば問題のパターンに対応する手順はしっかりおさえられるはずです。
3.必要な知識は出合う度に覚える
解くために必要な知識を覚えるには、2と同じで基本的な例題を何も見ずに自力で解けるようにします。例題を解く中で必要になった公式・知識などはその度ごとに覚えれば十分です。たとえば、古文の現代語訳を行う場合、品詞分解を行ってから、分解した部分を現代語に訳していくという手順を行う必要がありますよね。
この「古文の現代語訳をする」という手順をたどるには、「単語の現代語での意味」や「動詞の活用形」などの知識も必要になります。そうやって、例題を解くために必要な知識が出てきたら、覚えたいところにマーカーなどで印をつけましょう。そして、それを自分でゆっくり暗記をする時間を取ることが大事です。これを繰り返すと基本的な知識が身についていきます。たとえば私の場合は、古文の教科書の活用を全部緑のマーカーで塗ってひたすら覚えていました。このように、最低限覚えるべきポイントに注目しながら問題を解き、その部分に印をつけて暗記することを愚直に続けると知識がついてきます。ここまでで、重要なインプットの3種類の方法は分かりましたでしょうか?
いつでも読み直して、しっかり理解するとみなさんの力になると思います。ちなみに、1~3のインプットは好きな順番でやってかまいません。自分のやりやすい方法、また問題によっても変えながら試してみてください。
まとめ
ある種類の問題同士に共通する要素を探しながら例題を読む
1分考えて、解く手順が思いつかないなら解説を見る
最初は何度解説を見てもいいけれど、最後には1人でできるように復習する
必要な知識は出合う度に印をつけて覚える
友達と一緒に勉強するメリットは?鈴木光さんお勧めの勉強法と注意点
発行:KADOKAWA 著者:鈴木光
<著者プロフィール>2021年3月、東京大学法学部卒業。1998年東京都生まれ。2014年、松本清張記念館中高生読書感想文コンクールで優秀賞受賞。2015年、アジア太平洋青少年リーダーズサミット参加、Stanford e‐Japanプログラムで最優秀賞受賞。2017年、国立筑波大学附属高校を卒業し、東京大学文科1類に現役合格。同年5月瀧本ゼミに所属。2019年司法試験予備試験合格。「夢を叶えるための勉強法」が初の著書。