阪大、新型コロナが引き起こす代謝異常のメカニズムを解明

 大阪大学大学院医学系研究科のシンジフン助教らの研究グループは、新型コロナウイルスが代謝異常をきたす理由に、組織修復や代謝制御に重要な物質が障害されるためである可能性を発見した。研究成果は2022年6月7日、医学情報誌「Metabolism」オンラインで公開。

生活・健康 その他
SARS-CoV-2感染による組織損傷や代謝異常の病態形成メカニズム
  • SARS-CoV-2感染による組織損傷や代謝異常の病態形成メカニズム
  • Metabolismに公開した研究成果
 大阪大学大学院医学系研究科のシンジフン助教らの研究グループは、新型コロナウイルスが代謝異常をきたす理由に、組織修復や代謝制御に重要な物質が障害されるためである可能性を発見した。研究成果は2022年6月7日、医学情報誌「Metabolism」オンラインで公開。

 大阪大学大学院医学系研究科のシンジフン助教(糖尿病病態医療学)、下村伊一郎教授(内分泌・代謝内科学)らの研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染が組織ダメージや代謝異常をきたすメカニズムを解明。その理由として、SARS-CoV-2感染により、細胞内転写因子である「IRF1」の発現が誘導され、組織修復や代謝制御に重要であるインスリン/IGFシグナリング経路の障害が誘導されることが原因である可能性を見出した。

 IRF1は、ヒトではウイルスの感染や炎症性サイトカインによって発現が調節され、さまざまな標的遺伝子の転写活性化因子または抑制因子として機能することが知られている。今回、研究グループは、IRF1の発現がCOVID-19の危険因子として知られている高齢や男性、肥満、糖尿病の環境で高発現していることを明らかにした。また、重症化した患者では、IRF1の発現の上昇とともに、インスリン/IGFシグナリング経路にかかわる遺伝子の発現が低下していることも発見した。

 さらに、デキサメタゾンやジヒドロテストステロンを用いたホルモン療法の効果・可能性を提唱。IRF1発現抑制およびインスリン/IGFシグナリング経路の改善に効果的であったことから、今後、COVID-19の予防や治療への応用に期待が寄せられる。

 研究成果の発表にあたり、シンジフン助教は「この研究内容が全世界に広まっているCOVID-19パンデミックの世界的危機に少しでも貢献できればと願っています」とコメントを寄せている。

《川端珠紀》

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top