脱標準化への期待と挑戦…ベネッセ「みらいキャンパス」で学びをアップデート

 ベネッセコーポレーションは2023年3月、昨夏から準備を進めてきた「みらいキャンパス」をついに開講した。各分野の一流の講師陣と一緒に楽しく学ぶことができる。第1回保護者セミナー「みらいキャンパスでかなう『自己決定力』を育む学び方」に参加してみた。

教育・受験 小学生
PR
第1回保護者セミナー「みらいキャンパスでかなう『自己決定力』を育む学び方」
  • 第1回保護者セミナー「みらいキャンパスでかなう『自己決定力』を育む学び方」
  • 先行き不透明な未来に必要な学びとは
  • これからの教育は学習者中心の自分の軸を太くしていく学び方に変わっていく
  • 「社会で自分らしさを発揮しながら活躍する」ために必要な力とは?
  • 大学入試は人物・自分軸を問われる試験での入学者が増えている
  • 「みらいキャンパス」開講までのスケジュール
  • 登壇した矢萩邦彦氏の新刊

 ベネッセコーポレーション(以下、ベネッセ)は2023年3月、オンラインでの新たな学びサービス「みらいキャンパス」を開講した。2022年夏に実施し、多くの家庭から好評を得たサマープログラム「みらいキャンパス~Summer Discovery Camp 2022~」をリニューアルしての常設化となる。

 「みらいキャンパス」は、少人数、対話型のライブレッスンで、各分野の一流の講師陣と一緒に楽しく学ぶことができる小中学生および保護者向けのオンライン講座だ。筆者の息子も、ちょうど小学校高学年。さまざまな分野の専門家のレッスンを自宅で手軽に受けられる点に大きな魅力を感じ、1月下旬に開催された第1回保護者セミナー「みらいキャンパスでかなう『自己決定力』を育む学び方」に参加してみた。

親子で学びをアップデートする「みらいキャンパス」とは

学びの変革期にある今、自分軸で将来を考えることが大切

 セミナーの第1部・特別講演には、「探究×受験」をコンセプトに、統合型学習塾「知窓学舎」にて塾長を務める矢萩邦彦氏が登壇。矢萩氏は、教育を考えるうえで、現場を知ることが大切という思いから、幼児教育から社会人教育のすべての現場に関わり、さまざまな教育活動を行っている。

 講演のテーマは「未来をひらく学び」。矢萩氏はまず、新入社員に求められる能力が昔と今では大きく変わっていることに言及した。矢萩氏曰く、今は知識や資格等は必ずしも重要視されているわけではなく、他者と協力できるか、新しく学ぶ力や応用力があるか、クリエイティブな発想ができるかといったコミュニケーション能力の高さが求められているとのこと。社会で求められる能力の変化により、子供たちの学びに求められるものも変わってきているという。

セミナーに登壇する「知窓学舎」塾長の矢萩邦彦氏と「みらいキャンパス」総合責任者の城座多紀子氏

 矢萩氏の講演で特に印象に残ったのは、「(大人の自分も)答えを知らない問いを子供と一緒に考えることが大切」だということ。課題に対する着地点が決まっている学校の授業とは違って、答えのわからない問いを一緒に考えることで対話が生まれ、同じテーマであっても対話の流れによってさまざまな展開に発展する。問いを通した親子の対話は、自己肯定感、自己有用感、自己効力感の醸成に直結するという。

 また、子供とともに問いを探究するとき、大人が「今見るべき(考えるべき)ポイントはどこなのか」を子供に示すことで、体験がより効果的になるという。

 このお話を伺って、筆者は宿題をする息子の姿が思い浮かんだ。息子は高学年になってから毎日「自主学習」という宿題が出ている。自分でテーマを決めてノートにまとめることを目的とした宿題で、学力だけでなく創造力やまとめる力などが身に付くことを密かに期待していた。しかし、実際はテーマや内容、まとめ方に至るまで、筆者からすると気になるところばかり。つい口を出しては、反抗期に差し掛かった息子と言い合いになり、なかなか宿題が進まずイライラしていた。

 矢萩氏の講演を聞き、従来の教育の既成概念にとらわれている自分に気付くことができた。息子に対し「宿題としてやるのならこのテーマであるべき」「このテーマならこのようにまとめるべき」という着地点を勝手に期待し、押し付けていたのではないか。親は、あくまでも子供が楽しく取り組むための「矢印(ポイント)」を示唆する役目であることを意識して、声をかけていこうと省みることができた。「大人の考えは絶対」「大人だから知っていて当然」という気持ちは捨てること。答えのわからない問いを一緒に考えること。これからの子供たちの学びには、大人の覚悟と思考の柔軟さも必要なのかもしれない。

先行き不透明な未来で「よく生きる」ために必要なこと

 セミナーの第2部では、「みらいキャンパス」総合責任者の城座多紀子氏による講座説明が行われた。「みらいキャンパス」を企画運営するのは、「未来を生きる子供たちのために何ができるか」という課題について志を高くもったベネッセ社内の有志メンバー。2021年にメンバーが集まり「未来の学びプロジェクト」を発足し、保護者やさまざまな分野の専門家等、社内外の幅広い意見を取り入れながら構想を進めたという。

 Benesseとは、ラテン語で「よく生きる」という意味。ベネッセは「人のよく生きるを支援する」をコーポレートフィロソフィーに掲げ、人々の「よく生きる」を支援しながら社会のウェルビーイングに真の意味で貢献することを目指している。今の子供たちが生きていくこれからの未来は、曖昧で、不確かで、多様性が入り混じり、より情報化・デジタル化が進む社会となる。「このような先行き不透明な未来において、『よく生きる』の意味も大きく変わっていくのではないかとの考えがプロジェクトの発端だった」と城座氏は語った。

 多様な生き方が尊重されるべきこれからの社会において、教育は、従来のように子供たちを一律に同じレールに乗せて、同じペースで、同じゴールに向かって走らせるような「標準化」を目指すものから、子供たちがより主体的、意欲的に取り組めるような学びにとってかわる必要がある。

 そこで肝になるのが、主体的、意欲的に学ぶための「自分軸」だ。従来型の教育では養えなかった「自分軸」をいかに養うかを考え、行き着いたのが、実社会で活躍しているロールモデルとなる大人から学ぶという手法。今の世の中には、信念や想いを貫いて活動をし、生きがいを仕事にしている大人たちがたくさんいる。このような社会の変化、価値観の変化を受けて、そうした大人たちをロールモデルに据え、自分軸をもち、ダークホースとして社会で活躍することの可能性を伝えるための新講座が「みらいキャンパス」なのである。

これからの教育は学習者中心の自分の軸を太くしていく学び方に変わっていく
2023年春開講の「みらいキャンパス」講座ラインアップはこちら

小さなうちから自分の「好き」を知り、学びを深めていくことの大切さ

 「よく生きる」という意味が未来に向けて少しずつ変わってきている中、個人の幸せを色とりどりに追求しながら、個人の力を社会に向けて発揮していき、世の中をより良くしていく人を育てる教育の土壌を作っていくことが必要だ。未来の社会で自分らしさを輝かせながら活躍するために必要な力を、「子供のうちに学びや日常の中で自然と身に付けられるようにしてあげることが良いのではないか」と城座氏は語った。

「社会で自分らしさを発揮しながら活躍する」ために必要な力とは?

 大学入試も昔から大きく変わり、昨今は国公立大で約2割、私立大で約6割に上る受験生が、学校推薦型選抜や総合型選抜で入学している。学校推薦型選抜や総合型選抜の場合、成績だけではなく人物や自分軸、将来の展望、それに向けて高校時代をどのように過ごし、これからの大学生活をどう使っていきたいかという自分のプランを描くこと、そしてそれを明確に人に伝えることが大切になる。そのためにも、小さなうちから自分の興味関心や好きなことを敏感に感じ取り、自分の好奇心に基づいた学びを深めていく経験を重ねることは、大きな強みになると言えよう。

大学入試は人物・自分軸を問われる試験での入学者が増えている

子供の興味関心を引き出す、バリエーション豊かな授業

 「みらいキャンパス」では、サイエンス、テクノロジー、アート・表現、生きる力、数・図形、グローバル、よのなかの7つの分野の講座を開講。最先端科学やデータサイエンス等、学校の教科の授業ではあまり学べないようなテーマが並ぶ。実社会で活躍する一流の講師陣による少人数の対話型ライブレッスンは、子供の個性を引き出す、濃密で、刺激に満ちた、アクティブラーニングの時間だ。

 授業は平日の夕方や土日を中心に開講する。「この先生が好き」「このテーマを学びたい」「新しいことをやってみたい」など、受講するきっかけは人それぞれ。城座氏は「固定観念にとらわれず、さまざまな切り口から講座を選んでほしい」と話す。子供向け講座の他にも親子講座や大人向け講座が用意されている。

 授業の申込みは3月1日より開始しており、3月23日からライブレッスンがスタートする。授業はリアルタイム参加型のオンラインレッスンだが、受講者が欠席した場合は後日録画を視聴することも可能だ。料金は1レッスンあたり1,650円~3,000円程度。1回のみのレッスンや複数回がセットになったコースがあり、複数回レッスンのコースの場合は1セットをまとめて申し込む。入会金や固定の月会費はなく、必要となるのは申し込んだ講座の授業料のみ。

 また、4月2日には開講を記念して、受講申込サイトへのアカウント登録者限定で特別イベントが開催される。登壇するのは教育学者で哲学者の苫野一徳氏。「対話と学び」をテーマに、まさに「みらいキャンパス」で実現される新たな学びの形について考える時間になる予定だ。

「みらいキャンパス」開講までのスケジュール

「みらいキャンパス」を通じて自分の世界を広げて

 「わが子にはいろいろな体験をさせたい」と思う一方で、コロナ禍で実際の体験の機会が大きく減り、もどかしく思っている保護者の方は多いだろう。そんな中で開講する「みらいキャンパス」に寄せる筆者の期待はとても大きい。ホームページで公開されている講座一覧を見ると、面白そうなものばかり。息子と講座のラインアップを一緒に見てみると、さっそく興味をもった講座があったようだ。親としても「こんなジャンルにも興味があったんだ!」と子供の興味に関する新たな発見があった。 

 月会費制ではなく受講する講座の料金のみで受講できること、ライブレッスンが受講できない場合でも申込者は録画映像を視聴できる点も魅力的だ。受講に際しての自由度が高いので、現在の習い事や友達と遊ぶ時間を大きく変えることなく、現在の生活スタイルに取り入れやすいと感じた。

 「みらいキャンパス」では、「教科」というカテゴリー分けの中では得られない新しい学びがあるように思う。息子には「みらいキャンパス」を通じて、自分で世界を広げていってほしいと期待している。そこから自分の好きなもの、夢中になれるものを見つけることができたら、親としてはこれ以上ない喜びだ。筆者自身も大人向け講座で自分の情報や価値観をアップデートし、新しい発見をしたいと思っている。

2023年春開講の「みらいキャンパス」詳細はこちら
登壇した矢萩邦彦氏の書籍もあわせて手にとってみてはいかがだろうか
《外岡紘代》

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top