「現代の子供たちは遊び不足になっている」というショッキングな調査結果が発表になった。レゴグループがこのほど行ったグローバル調査*によると、大人がスマホを使用するのが週平均で26時間なのに対して、子供たちが遊びに費やすのは週平均7時間しかないことが判明。さらに調査対象となった子供の約3分の1は、週に3時間未満しか遊んでいないことも示された。(*2023年9月22日レゴジャパン発表資料より)
保護者の70%は、自由な遊びよりも、スポーツクラブや語学学習、家庭教師などの達成感のある活動を優先することを選んでいる。現代の忙しい子供たちは自由に遊ぶ時間が非常に短くなっているが、子供たちにとって「遊び」はいったいどういう意味をもつのだろうか。
レゴジャパンシニアマーケティングマネジャーの橋本優一氏に、子供が自由に遊ぶことの大切さや、遊びを通して育まれる「力」、保護者の遊びへの関わり方などについて話を聞いた。
「遊びの中で子供が自然と学ぶ」価値を伝えていく
--レゴグループが実施したグローバル調査にて、子供の遊び時間が非常に短いという衝撃的な結果が発表されました。今回の調査の経緯と結果概要をあらためて教えてください。
レゴグループは世界でおもちゃのレゴ ブロックを販売しておりますが、基本的な概念として「遊び」の価値を大切にしているブランド・会社です。遊びの中でさまざまな力を使いながら、人間として大切になる基礎の力が自然と育まれていくというのが重要な価値だと思っておりますので、そうした中で、遊ぶブロックを提供している会社として、「今のお子様方がどれくらいの時間を使って遊んでいるのか」を今回グローバルレベルで調査しました。
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同調査は、弊社がビジネスを展開している世界130か国以上の中から22か国、欧州をはじめ、日本を含むアジア、アメリカなど大きな市場で行いました。世界的な傾向として「保護者が1週間で使っているスマホの時間よりも、子供が遊びに割いている時間の方が短い」「子供の遊び時間がかなり減っている」という結果が得られました。中でも日本は、相対的に見てかなり遊び時間が少なくなっている現状が浮き彫りになりました。実際に日本では、レゴ ブロックのメインターゲットとなる小学生のお子さんたちはかなりお忙しく、学校が終わってから2~3つの習い事に行くのが普通の時代です。
--そうした調査結果を受けて、どのように感じましたか。
かなりショッキングでした。遊び不足だろうとは思っていましたが、ここまで少ない時間なのだと。我々は、いわゆるただ遊ぶだけではなくて、そこから生まれる学び、人生で大切な力を築いていくことを遊びの価値だと信じていますので、ブランドとして信じるものと調査結果で明るみになった現実に大きな乖離がありました。この事実を危機感をもって受け止めています。この要因としては、「遊びも学びと同じように価値がある」ということがあまり認知されていない影響が大きいのではと思います。この状況をそのまま放ってはおけず、「遊びの中で子供が自然と学んでいく」ことの認知を進めていくことを使命として、今回「Rebuild the World - 創造力が、世界を変える 遊びって最高だ!」と題したキャンペーンを行っています。
忙しい生活の中で、「遊び」は「余暇」や「サボっている」というものになってしまっていて、〝勉強やスポーツと対立構造として存在している〟と受け取られているのはレゴグループとしては「違う」とお伝えしたいです。遊びはただ「遊んで楽しかった」だけではない、人生で大切な力を育むものだというメッセージをもっと伝えていきたいですね。
想像力や空間認識力など24の力が育まれる
--「遊び」を通して、育まれる力とはどのようなものでしょうか。
レゴグループは、「24の力」が遊びから育まれると考えています。その力とは、自己評価や他者視点取得、社会適応機能、模倣、視覚、ふりをする、想像力、心的イメージ、注意、長期記憶、自己制御、感情制御、自己効力感、視覚探索、象徴的な表現、運動感覚の認識、空間可視化、感覚運動技能、心的回転、作動記憶、空間認識能力、微細運動技能、短期記憶、認識の柔軟性です。
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遊びの価値や遊びから学べるものは、根本的には年齢差はなく、たとえば家族や友達と遊ぶ中で自然と交流が生まれるコミュニケーションの力や、気持ちを共有する力。レゴグループの遊び方においては、「Pride of Creation(創造の達成感)」という考えがあるのですが、1つのものを作ったときに「できた!」と達成感を抱き、誇りに思って、他の人に「見てみて」と伝播する。それを見た他の人が「すごいね」と褒めてくれると「認められた」気持ちが芽生えて、「もっと作りたい」となる。また、周囲からも「あの人はすごいものを作る」と認められたり、さらに周囲の心にも「自分もやってみようかな」「ここをこう改造したらもっと良くなるのでは」とポジティブなマインドセットが伝播していく。周囲の人も巻き込んで、遊びの中で価値を共有することが生まれやすいのがレゴ ブロックの特別なところです。
--未就学児や小学生のうちに遊びから身に付く力にはどのようなものがありますか。
未就学児向けの商品では、「レゴ デュプロ」という誤飲しにくい大きめサイズのシリーズを出していますが、子供にとって身近なもの、家や公園や動物園などを製品化しているんですね。公園に行き始めた1~2歳の子供の場合、身近にあるものにものすごく興味をもつんです。たとえば家のトイレや、公園の滑り台、お友達。レゴ ブロックでも人形を使って、滑り台があれば滑らせるなど、自分が体験したことを手の中で再現しようとするんです。行動範囲が狭い未就学児でも、レゴ ブロックがあることによって、自分の中で起きているストーリーとして再現し、その子の世界観が成立しているのだろうと思うのです。
小学生になると、レゴ ブロックのパーツが増えて、複雑性が高まります。24の力のうち「空間認識能力」が年齢とともに高まるので、より複雑なものを作り、難しくても自分の力で解決しようとする力が出てきます。レゴ ブロックで遊び続けているお子さんは、小学生から保護者のサポートが一切なくても、自分でなんでも作っていく子が増えるんです。
--保護者はわが子の遊びは放っておいて良いのでしょうか。
我々としては子供の遊びにおける保護者の関わりを非常に大事にしていまして、親子で遊ぶことで親にとっては「この子はこんなことを考えているんだ」「こんなのがもうできるようになったんだ」といろいろな発見や成長を見る機会にもなるし、それを褒めてあげる、認めてあげるのが子供の成長のプロセスの大切なポイントになるとお伝えしています。忙しくてたとえ作業を一緒にできなくとも、親が見守りながら、「ここまでできたんだね」と声をかけるだけで、子供が創造を続けていく気になるのです。
子供の遊び不足を解消するためにも、やはり大人が「遊びを勉強・教育に対立するものとして捉えない」「遊びに価値を置く」ことが重要になると思います。そういう意味では、一緒にやってみる、作る楽しさを親子で感じてみる。「一緒に遊ぶと楽しい」を親子で経験する環境を整えることが大事ではないかと考えます。
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大人も子供も一緒に楽しめるレゴ ブロックの豊富なバリエーション
--大人も惹きつけられるデザインのものが多くありますよね。大人も子供も夢中になるレゴ ブロックのバリエーションをご紹介ください。
はい。レゴ ブロックの商品を大きく分けると、(1)ホームグロウンIPというレゴオリジナルのキャラクターやコンセプトで作っている商品と、(2)他社さんのIPによる商品、(3)ライセンス商品の3種類があります。
(1)は、いわゆる「レゴ シティ」や「レゴ フレンズ」などオリジナルのキャラクターや世界観のシリーズになっています。たとえば、この「レゴ フレンズ ハートレイクシティ コミュニティーセンター」は、中がさまざまなタイプの部屋になっていて、ソーラーパネルや屋上庭園があったり、ギターのある音楽室があったり、キャラクターごとの個性や生活感を感じることができます。お子さんによっては縦ではなく横に部屋をつなげたり、車の上に載せてキャンピングカーのようにしたりと自由に遊ぶことができます。
先ほどの24の力のうち、メインとなる「想像力」を使って、子供によっては「羽を付けたら飛べるんじゃないか」と思い、さらに「羽がないけど、この辺のパーツを使えばなんとかできるかも」と臨機応変に考える力を学んでいく。そうやって他者とアイデアを出しあったり、やる気を高めあったりというのも遊びを通した学びになります。
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また、我々はレゴ ブロックのデザインをするときにパッションポイント、関心のポイントを大事に商品設計を行っています。お子さまが好きなものとして代表的なものだと、車、音楽、自然、動物、建物、アートなどがあり、そうしたものは商品として多く存在しています。今、大人に人気なのはお花系です。
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(2)は任天堂さんとコラボ開発したレゴ スーパーマリオ シリーズが革新的なモデルとして注目を集めています。この商品の優れたところはテレビゲームと同じ体験が人形でできるんですね。カメラがバーコードを読み取ってコインを集めたり、敵を倒したり、ジャンプしたり、最後はゴールをして、コインを何枚取ったかというゲームが遊べるんです。さらに、自分の好きなマリオのコースが作れて、お友達と競うことができる。Bluetoothもついているので、タブレット・スマホ専用アプリでコイン収集を記録したり、セーブしたりすることもできます。マリオのあるべき姿をレゴ ブロックで再現したもので、見て楽しいだけでなく、新しい遊びのご提案をしている商品として、発売の時からのロングセラーになっています。
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(3)のライセンスは大人向けの商品に多いですね。非常に忠実に再現していて、たとえば「レゴ アーキテクチャー 姫路城」は城の内部も台座から組んで再現しています。また、レーシングカーなどはタイヤとボディーを連動させていて、サスペンションが付いているなど技術設計的なところも細かく再現しているモデルが多いので、「作りながら車の構造を学べる」と車好きな人に人気が高いですね。
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「6つのパーツだけで作るアヒル」にスタッフが挑戦…達成感が楽しい!
取材の最後に、「ぜひ皆さんにも遊びを通して使っている力を感じてもらいたいんです」(橋本氏)ということで、リセマムスタッフ3名が「6つのパーツを使って1分でアヒルを作る」体験にチャレンジ。まったく同じ6つのパーツで一斉に作り始め、「正解がない」工作に戸惑いながらも手を動かし、思い思いのアヒルを作り上げ、「Pride of Creation(創造の達成感)」を味わった。
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橋本氏は「今作っている中でいろいろな力を使っていました」と指摘。「『アヒルってどんなんだったっけ』と想像して、立体的に思い描く空間能力、できたものを比較して会話するコミュニケーション力など。できあがった3つとも全然違うという多様性もありました」としたうえで、「今やってもらったのがまさに遊びであり、『楽しかった』という経験です。この気持ちを届けていくのが我々のミッションです」と語り、遊びの価値をさらに広く発信していくとした。
「遊びって最高だ!」を親子で味わえる無料イベントを開催
レゴグループは誰もが「遊びって最高!」を味わう時間を過ごせるように、遊び不足を解消し、遊ぶことの楽しさを再発見するブランドキャンペーン「Rebuild the World - 創造力が、世界を変える 遊びって最高だ!」を始動している。プレイアンバサダーには渡辺直美さんも就任。キャンペーンの一環として、10月28~29日には都内のTBS赤坂BLITZスタジオで、遊びの価値を再発見し体験できる無料イベント「レゴ プレイデー さぁ遊びつくそう!」を実施する。自分だけのレゴミニフィギュアが作れる体験をはじめ、アプリで動くレゴテクニックカーを操縦できるカーレース、レゴブロックをスキャナで読み込むとスクリーン上で動き出すデジタルアトラクションなど、ブロックとデジタルを掛けあわせたコンテンツも多く用意している。もちろん、フリープレイゾーンで自由にブロック遊びも可能だ。親子でレゴ遊びに夢中になる時間を過ごしてみてはいかがだろうか。
Rebuild the World - 創造力が、世界を変える 遊びって最高だ!