学生はアメリカ(ボストン)、イギリス(オックスフォード)、オーストラリア(シドニー)、フランス(南仏・パリ)、韓国(ソウル)、台湾(台中・台北)、ベトナム(フエ・ハノイ)の7か国・地域の研修先から個々の関心・専門領域に合わせて1か所を選択。事前学修を経たのち各研修先へ飛び立ち、語学研修、文化体験、芸術鑑賞、現地の学生との交流など、さまざまな体験をする。
多様な国際文化に触れ、総合的な「越境力」を育むことを学部の理念として掲げる国際文化学部のカリキュラムの中で、4年間の学びの土台づくりの役割を担うSAP。初年度となる2023年度に参加した学生の中で各プログラムの代表7名に、準備から現地での体験・学びまで、話を聞いた。
「1年生で“越境体験”必修」が魅力
--国際文化学部を選んだ理由を教えてください。
日野さん :私の高校はIBDP(国際バカロレア・ディプロマプログラム)認定校だったため、留学生と交流したり、海外の文化を学んだりする機会がありました。こうした経験から多様な文化に興味をもち、ボーダーフリーに美術や哲学、映像などの文化を学べる国際文化学部を志望しました。海外での学びの機会があることも魅力的でした。
成澤さん :私は漫画やアニメなど日本のポップカルチャーが大好きで、こうした日本文化を海外の視点から考察してみたいと思い、国際文化学部を志しました。
多田さん :私は高校の授業で、第二外国語としてドイツ語を選択していたので、大学でも学びを継続したいと考えていました。国際文化学部は、英語学習の環境が整っているのはもちろん、第二言語も必修として学ぶ点に惹かれました。
野辺さん :子供のころから海外に興味があり、留学を積極的に推奨している国際文化学部を選びました。「越境」がテーマの学部なので、さまざまなジャンルを横断的に学べる点にも惹かれました。
田代さん :私は語学の学修環境が整っていることが魅力的だと感じました。国際文化学部は履修できる授業の幅が広く、「在学中に自分の興味・関心を見つけるには最適な学部」だと説明会で聞き、語学以外に学びたい分野が見つかっていない私にとって、最適な学部だと感じました。
宮田さん :私は、留学や実践的プログラムが充実していて楽しそうだと思いました。実は私の両親は留学にはあまり賛成ではなかったのですが、SAPは必修授業(の一環)なので、両親もサポートしてくれて良かったです。
斎藤さん :私も「越境」というテーマに魅了されて、国際文化学部を選びました。国や文化を知り、理解することで、未知の領域を探究したいと思ったからです。
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成澤さん :私は中学3年生のときにカナダ留学をしたのですが、国際文化学部を志望したきっかけは母が強く勧めてくれたからでした。大学生になると、中高生のころよりも自分で行動する必要があると思いますが、大学生活は留学以外の選択肢が多く、ぼんやりしていると留学の機会を逃してしまうかもしれません。ですから、留学が必修になっているのはとても良いと思いました。
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宮田さん :大学在学中に一度は海外留学を実現させたいと思っていたので、SAPはとても楽しみにしていました。1年間の留学だとハードルが高く感じますが、2週間という短期間なのは丁度良いと感じました。
野辺さん :私も非常に楽しみでした。幼いころから海外に憧れていたものの、高校3年間はコロナ禍で海外への修学旅行も中止となってしまい、SAPでやっと夢を叶えられると思いました。一方で、1年生という早い時期に留学を体験できることには驚きました。
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七者七様の行きたい国・地域への思い
--みなさん1年生ですぐに海外へ行くことができるSAPに魅力を感じて入学したのですね。それぞれの研修先を選択した理由について教えてください。
成澤さん :私は文学や演劇、ファッションに興味があるので、文学系プログラムやフィールドワークが充実しているイギリスを選びました。特にオックスフォード大学は、私が大好きな『不思議の国のアリス』の著者ルイス・キャロルの出身校なので、「彼が見た世界を私も見たい」と思いました。
野辺さん :中学・高校時代からフランス文化や歴史、文学に興味がありました。特にヴィクトル・ユゴーの作品が好きで、彼について深く知るために、いずれ現地を訪れたいと考えていたので、迷わずフランスを選びました。
日野さん :私は美術に関心があったため、英語で美術を学べるボストンのプログラムに魅力を感じました。また、ハーバード大学やボストン大学、女子大学のマウント・ホリヨーク・カレッジやウェルズリー・カレッジなど、多くの大学を訪問し、それぞれの大学の特色を感じられることもおもしろい経験になりそうだと感じました。
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宮田さん :韓国を選択したいちばんの理由は、K-POPや韓国ドラマが大好きだからです。中学生のころからYouTubeなどで韓国語を学び、一度は韓国に行き、現地でコミュニケーションを取ってみたいと思っていました。
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田代さん :私は親の仕事の関係で2歳から7歳まで台湾に住んでいました。台湾の人々や文化に良い印象があり、台湾が大好きです。いずれは言語を習得して、食文化や伝統、習慣、国民性について理解を深めたいと考えていましたので、SAPで台湾の大学に留学できるのは、絶好のチャンスだと感じました。
事前準備も必修授業、大学のサポートも万全
--渡航前の準備、事前学修はどのように進めたのでしょうか。大学のサポートについて教えてください。
野辺さん :「留学準備演習」という授業を履修し、SAPで訪問する南仏とパリの歴史や文化について詳しく学びました。1人ずつ「地域」「建物」などからテーマを選び、プレゼンテーションを行う課題もあり、勉強になりました。また、事前学修では文化、歴史だけでなく現地の慣習やマナーなどの知識を増やすこともできました。全体を通してサポートは手厚かったと感じています。
田代さん :確かに渡航前のサポートは充実していましたよね。私も「留学準備演習」では、中国と台湾に関する地理や歴史、産業を学びました。その国や地域について知っておくべき基礎的な知識から、現地の人でもあまり知らないような応用的な情報まで、幅広く学ぶことができました。授業の最後には、台湾で大きなムーブメントとなっている「文化創意産業」についてプレゼンテーションを行いました。
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日野さん :現地で鑑賞できる絵画や、訪問する資料館について教えていただきました。特にハーバード大学に所蔵されている「ガラスの花」は、事前に知識をインプットできていたため、現地で目の前にしたときは感動しました。また、渡航前に現地スタッフとZoomで顔合わせもできましたし、危機管理や生活の仕方についても教えていただけたため、安心して渡航することができました。
多田さん :事前学修はとにかく課題が多かった印象です。オーストラリア大使館のWebサイトの要約、オーストラリアの歴史についてまとめられた英文の要約などを行いました。
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旅行会社の説明会では、荷物準備に必要なものから、空港内の説明まで詳しく教えていただきました。出発当日も旅行会社の方が手続きを見守ってくださったので、心配することはありませんでした。
斎藤さん :ベトナムは他の研修先とは違って文化体験がメインなので、現地での語学研修はないのですが、事前学修では簡単なベトナム語を教えてもらいました。また、ベトナムの宗教についてなど、渡航前に国に関する基礎知識をおさえておくことができました。ベトナムは参加人数が少ないので先生との距離が近く、質問しやすい環境だったと思います。
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成澤さん :イギリス英語に慣れるために、イギリス英語の映画を英語音声・英語字幕と英語音声・日本語字幕の交互で観ました。この勉強法は、アクセントの違いを学ぶだけではなく、文法や単語の勉強、会話練習にもなるのでお勧めです。
日野さん :普段からアメリカ英語を聞いたり、話したりする機会が多いため、アクセントには慣れていましたが、英語力をつけるために、私も英語のドキュメンタリー番組や映像作品を観るようにしました。また、私にとってはSAPが初めての海外だったため、海外経験がある友人にお金の使い方や買い物の仕方など、日常生活に必要なことを教えてもらいました。
多田さん :私はオーストラリアの歴史についてさらに調べ、もともとは流刑地であったオーストラリアが、今の多人種国家になるまでの歴史を知ることができました。現地の授業で、オーストラリアの歴史や国民性を学んだときに理解しやすく、準備していたことが生きたと感じました。
野辺さん :私は日本についても聞かれると思ったので、聞かれそうなことを事前に調べておきました。また、パリはスリが多いので、身の安全を守る方法についてもよく調べました。
--大学側の事前学修も(必修で)充実していたうえに、ご自身でもさまざまな準備をして臨んだのですね。いよいよ各国・地域へ飛び立った後、皆さんがどのような体験をしたのかお聞きするのが楽しみです。
「これもできる、あれもできる」自分のリミッターを外した先へ…日本女子大学国際文化学部1年生必修の留学プログラムの中身<後編>へ続く。
【学生インタビュー】
動画で知るスタディ・アブロード・プログラム(SAP)
キャンパスを飛び出して経験を積む、多文化共生視点を持つ人材の育成
日本女子大学 国際文化学部 国際文化学科