E判定から東大へ「逆転合格」を決めた受験生の共通点

 志望校合格に向けて、1つの指標になるのが模試の合否判定だ。一方、E判定が出ていても、最難関の東大に合格する受験生もいる。そんな逆転合格を果たす人に共通する特徴とは何なのか。駿台予備学校お茶の水校3号館・東大コースの担任を務める堤政文氏と、人気漫画『ドラゴン桜2』の担当編集をつとめ、自身も偏差値35から2浪を経て逆転合格を果たした西岡壱誠氏に話を聞いた。

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E判定から東大へ「逆転合格」を決めた受験生の共通点
  • E判定から東大へ「逆転合格」を決めた受験生の共通点
  • 「マインドを変える勇気」こそ東大合格につながるカギだと語る堤氏と西岡氏
  • 人気漫画『ドラゴン桜2』の担当編集をつとめ、自身も偏差値35から2回の浪人を経て逆転合格を果たしたカルペ・ディエム代表取締役の西岡壱誠氏
  • 人気漫画『ドラゴン桜2』の担当編集をつとめ、自身も偏差値35から2回の浪人を経て逆転合格を果たしたカルペ・ディエム代表取締役の西岡壱誠氏
  • 駿台予備学校お茶の水3号館 東大対策クラス担任の堤政文氏
  • 駿台予備学校お茶の水3号館 東大対策クラス担任の堤政文氏

 志望校合格に向けて、1つの指標になるのが模試の合否判定だろう。その判定で一喜一憂する受験生へのメッセージとして、本記事を届けたい。

 模試でE判定が出ていても、絶望するにはまだ早い。最難関の東大でも逆転合格は不可能ではないのだ。

 逆転合格を果たす人に共通する特徴とは何なのか。受験の天王山と言われる夏休みを最大限に活かすには、何をすれば良いのか。東大に最も近いと言われる駿台予備学校お茶の水校3号館 東大コース担任の堤政文氏と、人気漫画『ドラゴン桜2』の担当編集をつとめ、自身も偏差値35から2回の浪人を経て逆転合格を果たしたカルペ・ディエム代表取締役の西岡壱誠氏に話を聞いた。

今回話を聞いた駿台予備学校 東大コース担任の堤政文氏と、カルペ・ディエム代表取締役の西岡壱誠氏

2浪目で気づいた逆転合格の秘訣

--西岡さんは現役、1浪、2浪と3度の東大受験を経験していますね。どのような受験生だったのですか。

西岡氏:一言で表現すると、性格の悪い受験生でした。まったく素直さや謙虚さがなかったんです。

 僕の高校は当時偏差値50程度で、東大を受ける人は誰もいませんでした。僕が東大を目指し始めたのは高2からですが、その年は生徒会活動が忙しく、高2の最後に受けた模試の英語はたったの3点でした。それを受けて、高3から勉強を本格化するときに心に決めたのは、「勉強時間だけは誰にも負けない」ということでした。

 しかし当時の僕は、毎晩遅くまで受験勉強をしていることを言い訳に、学校の授業ではずっと居眠りをしていたり、体育の授業をサボったり、学校行事の最中に内職をしたり…。学校の担任の先生から「このままでは合格できないぞ。謙虚にならないとダメだ」と忠告されても、「東大受験生の指導なんて、したことないくせに」と反発していました。

 迎えた現役時代の受験は不合格。自分としては誰よりも勉強しようと頑張っていたつもりだったので、「(浪人生という)何者でもない身分になってしまった」とひどく落ち込みました。

 しかしこの段階では自分自身が犯した「大きな失態」に気づくことができず、浪人して予備校に通い始めても、「この授業は出なくて良いや」と自分で勝手に切り捨てたり、自習のためにサボったりすることもしばしば。予備校では友達も作らず、1浪目もあえなく不合格。

 そこでやっと「このままではいけない。自分を変える必要があるのでは?」と気づくことができました。ようやく謙虚になれたんです。

--2浪目にして謙虚になれた、と。その謙虚な気持ちを、どのように行動に移したのでしょうか。

西岡氏:2浪目で初めて自分からクラス担任に話しかけました。わからないことがあればすぐ先生に質問しに行って顔を覚えてもらったり、合格した人からノートを借りて勉強法を研究したりするうちに、同じ東大を目指す友達もできました。

 得意科目に関しては、友達に教えたり、自作の過去問ノートをコピーして配ったりもしましたね。受験のライバルに世話を焼くなんてお人好しすぎるように聞こえるかもしれませんが、現役や1浪のときは苦しさが先行していたのに対し、2浪時代はとても充実していて、今でも良い思い出になっています。

「苦しさが先行していた現役・1浪時代に比べ、マインドを変えて以来、非常に充実していた」と話す西岡氏

勉強の「量」だけで合格はできない

--堤先生にお聞きします。もし堤先生が当時の西岡さんの担任だったとしたら、西岡さんのいちばんの課題はどこにあったと思いますか。

堤氏:1浪目の時点でも、勉強の「量」については十分だったのではないかと思います。問題は、勉強の「質」と「マインド」にあったのではないでしょうか。一方で、2浪目の西岡さんは、理想的な受験生です。同じ目標をもつ友達と教え合いながら切磋琢磨し、解決できない問題は必ず先生に質問する。これは典型的な「合格する集団」です。3年かかったとはいえ、自分の課題が何かを素直に認め、直すべきところを直しながら合格にたどり着いた好例だと言えるでしょう。

--西岡さんは2浪で合格されましたが、どうすれば1浪で合格できたと思いますか。

堤氏:2浪のときの「マインド」を1浪の時に備えられていれば、充分に勝負できたと思いますね。シンプルに勉強の「量」をこなすだけで合格につながるなら、浪人を重ねれば合格確率は上がるはずです。でも現実はそうではありません。「量」から「質」、そして合格する「マインド」へと、自分を成長させていく必要があります。

 特に東大入試には、重箱の隅をつつくような問題は一切出ません。その代わり、教科書を中心とした基礎的な学びを自ら深めたり広げたりと、学ぶことを面白がり、楽しめるような「マインド」が求められていると感じます。2浪の時の西岡さんは、友達に教えたいと思えるくらい、勉強を楽しめていましたよね。この前向きな「マインド」こそ、実は東大に合格する人たちのベースになっていると思うんです。

西岡氏:「マインド」という指摘にはすごく納得感があります。確かに1浪までは、前向きな気持ちが一切ありませんでした。僕が東大を目指したのは高校の音楽の先生に「東大を目指せ」と言われたことがきっかけなのですが、浪人してからもその先生に何度か会いに行ったんです。そうしたら、「もう母校に戻ってくるな。前を向け」と言われまして。そのときはショックでしたが、後から振り返ると、先生には浪人生としてのスタートダッシュの遅さを見抜かれていたのだなと思います。

堤氏:浪人しても、高校時代に気持ちが残っている人の特徴ですね。漠然と「東大に行きたい」と思うだけではフワッとし過ぎています。東大に合格するとはどういうことか。その解像度を上げて、ゴールのイメージを明確に描くことができれば、そこから逆算して今の自分が何をするべきかがわかります。となると「後ろを振り返っている時間はない」という前向きな姿勢になるはずなんです。

--1浪のときの西岡さんのような生徒さんには、どのような言葉をかけて指導されますか。

堤氏:難関大を目指す受験生はプライドが高い傾向にあるように思いますので、まずはそれを大事にして、「ここまでよく頑張ってきたね」と認めてあげます。その上で、「もう1つ上のステージに行くには、何が足りなかったと思う?」と聞くことで、本人に「マインドを変える必要がある」と気づいてもらいます。また、自分のマインドを変えることで合格を勝ち取った卒業生と、変われずに厳しい結果になった受験生のエピソードをロールモデルとして伝え、「あなたはどっちを選ぶ?」と問いかけると、必然的に向かうべき道に進んでくれます。

西岡氏:現役時代、そして1浪時代の僕も、精一杯努力している自負があったのに、結果も出ないし、誰もそれを認めてくれない。そう思ううちに、どんどん自分を悲観して、心を頑なにしていったんだろうなと、今振り返ると思います。まず頑張ってきた努力や苦労を受け止めてもらえていたら、その後のアドバイスもまっすぐ心に刺さっていたかもしれません。担任の先生とのコミュニケーションはすごく大事ですね。

「今までの頑張りを十分に認めつつ、次のステージに行くためのアドバイスをする」と話す堤氏

東大合格に近い人・遠い人の差は?

--堤先生は多くの東大合格者を見届けてこられました。西岡さんのように、E判定から東大に合格していく人に共通する点はどこにあると思いますか。

堤氏:1浪でEやD判定からのスタートでも、東大に受かる生徒は結構います。こうした生徒の特徴は、過去の自分を否定する勇気、変わる勇気があることです。

 たとえば数学では、解き方がどうであれ、答えが合っていると先に進みたくなります。けれど、不合格になる生徒には「何となく解けている」だけで原理原則が抜け落ちている子が多く、一度基礎に戻った方が効率的な場合もあります。なのに、「自分のやり方である程度の結果を残してきた」という思いが足かせとなって、いくらこちらが話をしても、「これまでのやり方を貫きたい」と意固地になってしまう。

 合格できなかったということは、考え方なり勉強方法なり、どこかに原因があるはずです。裏を返せば、それを変えない限り合格にはたどりつきません

西岡氏:同じように、英語であれば、基礎基本の語彙や英文法を理解できていないまま進んでしまうと、英文解釈でつまずきます。僕も現役や1浪とのときは、「東大を受験するのだから」とレベルの高い問題集をがむしゃらに解いていましたが、結局、自分の穴がどこにあるのかわからないままでした。教科書レベルの内容からしっかり押さえるべきということも薄々わかりはしたものの、プライドも高く、これまでの自分のスタイルを変えるのは勇気がいることでした。

堤氏:その点駿台では、4月から7月まではインプットの時期と捉えて、基礎レベルの学習からしっかり進めていきます。先ほど西岡さんが「1浪のときは授業を切り捨てていた」と言っていましたが、私は生徒には「だまされたと思って授業には全部出た方が良い」と伝えています。もちろん、基礎レベルなのですでに知っていることもあると思いますが、とにかく真面目に授業に出ていれば「こういうことか」という新しい発見があったり、東大入試とは関係ないと思っていたようなことも実は重要な知識とつながっていたり、勉強自体が面白くなっていくんです。

西岡氏:現役時代の僕がそうだったように、伸び悩む人ほど、学習時間や勉強法に関してもすぐに答えを出したがる傾向がありますね。「何時間勉強したら東大に合格できますか」という質問が最たる例。この問いに正解を求めてくる時点でまだまだかなと思います。世の中の大抵の物事には正解なんてない。東大入試では、そうした一問一答では答えられないような問題への対応力が問われますから。

堤氏:「何時間勉強すれば良いですか」、「模試でどれだけ取れていれば大丈夫ですか」といった質問は本当に多いですね。特に最近の生徒は数値データを欲しがるので、目安としては示すものの、「それがすべてではないよ」と伝えるようにしています。

西岡氏:受験生として「いち早く安心を得たい」と焦る気持ちもわかります。でも、完璧な勉強法なんてありませんし、たとえ志望校に合格したとしても安心できる未来なんてないんです。望ましい学びのプロセスは、不安な状態で、自分がどうすべきか考え、次に進み、ときに立ち戻りながら、行ったり来たりして、深め、広げていくことだと思います。

不安だからこそ、模索しながら学び続ける…それこそが「東大で学ぶ」ことにもつながる

「今の自分に自信がない」からこそ、東大を目指そう

--どんな人に東大を目指してほしいですか。

西岡氏:僕は誰でも東大を目指せば良いと思っているんです。中でも今の自分に自信がない人にこそ目指してほしいと強く思います。僕自身、自分の人生で一度もいちばんになった経験がなかったからこそ、「どうせ受験するなら日本最難関の東大を目指してみよう」と決めました。「どうせ野球をするなら甲子園目指せば?」というのと同じ感覚です。一度でも自分が輝けるものを得たいなら、その手段として東大受験を活用してみると良いのではないでしょうか。

--西岡さんは今年度から駿台で東大受験生のメンターとしても活躍中ですが、日本中の高校生・浪人生、さらに保護者に向けて、E判定でも東大を目指す価値はどこにあると伝えたいですか。

西岡氏:自分が大学生活、そしてその先の将来、どういう人に囲まれて生きていきたいのかを考えれば、東大を目指す価値が見えてくるのではないでしょうか。僕が2浪までして東大に入って良かったと思うのは、いろんなことに秀でている仲間に囲まれることで、自分の目線が上がったことです。人の成長って自分ひとりの力では案外難しくて、周りの環境が大きく影響すると思うんです。

堤氏:私はもっと女子生徒にも東大に挑戦してもらいたいです。駿台でも、女子は理系クラスにおける比率が低く、現役志向の子が多いです。もう1年頑張れば東大に合格できるくらいの力をもっている人が毎年何人もいるので、自分の進みたい道をあきらめることなく、ぜひチャレンジしてほしいですね。

西岡氏:東大の女子学生は総じて優秀で、積極的に海外留学に行くなど、男子学生も良い意味で刺激を受けています。多様性の観点からも、もっと女性比率が高まると良いですよね。

 確かに僕の周りでも、女の子の方が真面目で完璧主義なのか、現役の1年で燃え尽きて再チャレンジをあきらめたり、「キャリアの空白期間を作りたくない」と浪人を避けたりするケースが多いと感じました。そして保護者の方の中には、未だに「女の子だから浪人はさせたくない」「東大卒の女子は結婚できない」などという価値観をおもちの方も少なくないですね。

不安は成長の証、夏は基礎固めと弱点の洗い出しを

--受験の天王山と呼ばれる夏。逆転合格を目指す上で、夏休みの過ごし方についてアドバイスをお願いします。

堤氏:逆転合格を目指そうとしている人は、周りでどんどん自分の先を行く人たちを見ると、自信を失ったり焦ったりしがちです。それゆえ、実力に見合わないことに手を出したり、できない計画を立てて睡眠時間を削ったりする傾向がありますが、それらはすべて逆効果。まずは生活習慣を整えることが第一です。そして焦らずコツコツと基礎固めを優先してください。

西岡氏:僕からは「とにかく勉強してください」ということです。特に夏は、共通テストの過去問を解き始めると良いと思います。また、8月には駿台の東大入試実戦模試(以下、東大模試)がありますので、それまでにできれば東大の過去問もまずは1年分やってみて、自分に欠けているところはどこなのか、そこを埋めていくにはどうすれば良いのかを分析してください。これは、夏休みの勉強を進める上での大事な指針となるはずです。

 ちなみに、東大模試は問題が難しいうえに採点も厳しく、多くの人が思ったような点数を取れずに心が折れます。けれどここで大事なのは、1つ上の判定を取るにはどこを得点しておくべきだったか、きちんと振り返っておくこと。それをやるかやらないかで、秋以降の伸びが大きく変わってきます。

堤氏:模試では「この問題は、今は解けないけれど解くべき問題だ」と感じることがあると思います。おそらくそれは正答率が高い問題のはずです。その感覚が正答率とズレていなければ大丈夫。本番までにその問題が解けるようになれば良いわけですから。

 模試は試験の出来不出来よりも、その後いかに丁寧に復習して身につけるかが重要です。逆転合格していく人たちは、これをもれなく必ずやっています。模試の振り返りこそ、合格へのいちばんの近道です。

「夏は焦らず、夏は基礎固めと弱点の洗い出しを」と声を揃える二人

--最後に全国の受験生、そして保護者に向けて、メッセージをお願いします。

西岡氏:僕は現役のときは受かる気すらせず、あきらめていました。逆に一浪のときは受かると思って高をくくっていました。僕の感覚では、受験勉強は不安な状態のときにいちばん伸びると思っています。ですから、最後まであきらめず、おごらず、不安な状態に留まり続けてください。不安の中でも希望を抱き、頑張り続けられる人はきっと合格します

 保護者の方は、お子さんが苦しんでいたら「E判定だから志望校を変えなさい」などと言わず、むしろ苦しんでいることを密かに喜んでください(笑)。お子さんは間違いなく、苦しんだ分だけ成長しますから、辛抱強く見守ってあげてほしいです。

堤氏:西岡さんが今日話していたように、東大を目指すうえで「大丈夫」という満足感を得ることはありません。マラソンで走らずにタイムを縮めようとする人はいないと思いますが、なぜか勉強になると楽な方法ばかり考えがちです。けれど、受験勉強に王道はなく、むしろ勉強すればするほどわからないことが増えて不安になるものです。でも、不安は成長の証であり、正しい方向に進んでいるということ。

 そうした中で駿台は、ひとりひとりに合った最適な道のりを示しながら、合格というゴールに向かって地道に伴走していきます。保護者の方には我々と一緒に、お子さんにとってのいちばんの応援者になっていただけたらと思います。

--本日は貴重なお話をありがとうございました。


 ご自身も逆転合格を果たした西岡氏、多くの生徒さんの逆転合格を見守ってきた堤先生、お二人が口を揃えて「マインドの重要性」を強調されていたのが印象的だった。不安の渦中にいる受験生には、「不安は成長の証」という言葉を胸に、受験のプロが示してくれた道筋に倣って、合格というゴールを目指していただきたい。

西岡壱誠が語る!東大合格のために「今やるべきこと」
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《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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