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妊娠中の母親のチーズ摂取量、乳幼児の発達に影響…富山大ら研究

 富山大学学術研究部医学系 小児科学講座の平井宏子 医師らのグループは、2024年8月20日、妊娠中の母親の発酵食品の摂取量と、生まれた子供の3歳時点の神経発達の関連について研究結果を発表した。チーズの摂取量が多い母親から出生した子供は、3歳時点での神経発達の遅れが少なくなることが示されたという。

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妊娠中の母親の発酵食品の摂取と子供の3歳時点における神経発達の関連:エコチル調査
  • 妊娠中の母親の発酵食品の摂取と子供の3歳時点における神経発達の関連:エコチル調査
  • 妊娠中の母親のチーズの摂取量とASQ-3で評価した3歳時の神経発達の関連
  • 妊娠中の母親のチーズの摂取量とASQ-3で評価した3歳時の神経発達の関連
  • 妊娠中の母親のチーズの摂取量とASQ-3で評価した3歳時の神経発達の関連

 富山大学学術研究部医学系 小児科学講座の平井宏子 医師(現 富山赤十字病院小児科医員)らのグループは、2024年8月20日、妊娠中の母親の発酵食品(味噌、納豆、ヨーグルト、チーズ)の摂取量と、生まれた子供の3歳時点の神経発達の関連について研究結果を発表した。チーズの摂取量が多い母親から出生した子供は、3歳時点での神経発達の遅れが少なくなることが示されたという。

 同グループは以前、妊娠中の発酵食品(味噌、納豆、ヨーグルト、チーズ)の摂取量が多いと、子供の1歳時点での神経発達の遅めの子の割合が少ないという関連を報告しており、今回、子供が3歳になった時点でもその関連がみられるかについて、環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加した6万910組の母子を対象に検証した。

 発酵食品の摂取量は、食物摂取頻度調査票を用いて調べ、摂取量ごとに4群に分類、神経発達は、Ages Stages Questionnaires Third Edition(ASQ-3)を用いて評価し、各年齢のカットオフ値よりも点数が低い場合に発達が遅れていると定義した。ASQ-3は、コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人、社会の5つの項目にわかれており、それぞれを評価した。

 各発酵食品において、それぞれもっとも摂取量が少なかった群を基準(1.0)として、発酵食品の摂取量と子供の神経発達が遅めの子の発生率を比較したところ、チーズではすべての群でASQ-3の各項目の神経発達が遅めになる子供の割合が少ないことが示されたという。そのほかの食品では、味噌とヨーグルトでは、部分的に同様の関連がみられたが、納豆では発達の遅れとの関連はみられなかったという。

 同研究からは、母親の発酵食品の摂取が、子供の神経発達にも有益な関連をもたらす可能性が示唆された。その理由として、これまでのほかの研究成果から、発酵食品の健康効果は、発酵というプロセスを経ることで、もとの状態と比較して栄養価が高まることや、腸内細菌そうを改善させることで得られると考えられていることがあげられる。

 なお、同研究からは、妊娠中にチーズなどの発酵食品を摂取することが、その後の神経発達遅滞を予防するといった直接的な影響を与えるとは結論付けることはできなかった。今後は実際に便を用いた検査などを行い、腸内細菌そうの変化を調べるなど、発酵食品の摂取と発達についてのより詳しい関連を確認する必要がある、としている。

 研究の結果は6月21日、米国科学専門誌「PLOS ONE」にオンライン掲載された。なお、今回の研究は環境省「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを用いたもので、論文の見解は著者自らのものであり、環境省の見解ではない。

《中川和佳》

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