学校推薦型選抜・総合型選抜による大学への入学者が、大学入学者全体の半数を超え、注目度が年々高まっている。わが子はどんな大学・学部の入試に向いていて、いつ何を準備するべきなのか?
追手門学院大学客員教授、教育ジャーナリストとして現在、大学入試に関する記事を大手メディア中心に執筆しつつ、毎年、全国300塾の関係者を取材し、入試に関する「独自データ」を集め続けている西田浩史氏は、「思いつきや場当たり的な対策では総合型選抜での合格は難しい」と語る。
本記事では、総合型選抜の5つのステップを、西田氏の著書『総合型選抜は何を評価するのか ~いますぐ知っておきたい新しい大学入試のリアル』から紹介する。(本記事は、西田浩史の著書『総合型選抜は何を評価するのか ~いますぐ知っておきたい新しい大学入試のリアル』(かんき出版)の一部を抜粋・改編し掲載している)
前回の記事に続く本記事は、「総合型選抜の5つのステップ」のステップ3~5を紹介する。

ステップ3 エピソード集めと実績づくり
総合型選抜では自分の強みを示すエピソードや実績が武器になります。実はこのことを知らずに総合型選抜を受けようとしている人が多いのです。高校1、2年生のみなさんは、ぜひ積極的にいろいろなことに挑戦して、志望理由書や面接で「ストーリー(物語)」として自分を語れるネタを増やしておきましょう。とは言っても、なかなか最初はイメージできないと思います。ですから、可能であれば、合格した人の志望理由書を見せてもらうことをおすすめします。また、書店で売っている総合型選抜関連の本を見てみましょう。私が60の塾関係者(121人)を取材して、おすすめの本としてよく出てくるのが、河合塾小論文科講師・中塚光之介氏の『採点者の心をつかむ 合格する志望理由書』または『採点者の心をつかむ 合格する看護・医療系の志望理由書・面接』(いずれも、かんき出版)です(この本をはじめとして、総合型選抜などで役立つスキルを養える本がシリーズ化しています)。読みやすいので集中すれば数時間で読めます。この『中塚本』の読み方は、ひとまず、興味のある(自分と接点のある)章から読むこと。これで、理解度も深まるそうです。
さらに、本の中で志望理由書で使えそう(応用できそう)な自分がワクワクするフレーズにチェックしたり、付箋などでメモをたくさん書き込んだりすれば、それが後日の志望理由書執筆で役に立つと話す塾関係者もいました。メモは付箋にすることがここでのポイントです。あとで文章にするときに順番替えがしやすいからです。さらに、自分の体験をそこに書き込むことで文章の内容を深めることもできるでしょう。話を戻しましょう。興味のある分野であればコンテストに参加してみる、資格取得に挑戦する、ボランティア活動に関わってみる、研究・制作活動をしてみる、といった具合です。
実は、これらは直接合否を決める「ポイント制」の実績にはなりません。何かに打ち込んだ経験があるという事実そのものが、あなたの熱意や能力を裏付ける材料になります。高校3年生になって時間が限られている場合でも、できる限り過去の自分の経験を洗い出してみましょう。
前述した中塚氏も書籍の中で強調していますが、部活での役割や成長したできごと、文化祭や体育祭で努力したこと、 趣味に没頭した経験、家族の手伝いを通じて学んだことなど、視点を変えればアピール材料は身近にいくらでも転がっているはずです。みんなが驚くようなものすごいネタを準備しなくちゃいけないと思っている人は、ぜひ考え方を変えてください。大切なのは“ストーリー”なのです。
「その経験から自分は何を学び、どう成長したのか? どう入学後の学びにつながるのか?」
を“導線”語れるようにしておきましょう。
単に「○○をやりました」ではなく、「○○を通じて△△な力が身につき、志望分野に興味を持つきっかけになりました。これを将来○○になり、つなげて行きたい」といったように、経験を自分の感動ストーリーとして導線で語ることができる準備をしましょう。
ステップ4 志望理由書など書類作成とブラッシュアップ
エピソードや自己分析がまとまったら、志望理由書や自己PR書の作成に取りかかります。前述の『採点者の心をつかむ 合格する志望理由書』などの市販の学習参考書を参照しながら、下書きを早めに作りましょう。完成度が低いと感じたとしても、とりあえず担任の先生などに見せて、先へ進めましょう。夏休み前には初稿を書き上げるくらいの気持ちで進めてください。書類は一度で完ぺきに書けるものではありません。何度も推敲し、先生や信頼できる大人に読んでもらって意見をもらい、ブラッシュアップしていくプロセスが必要なのです。

誤字脱字がないか? 伝わりにくい表現をしていないか? アピールしたいポイントがぼやけていないか? など、細かくチェックして完成度を高めてください。特に志望理由書はあなたの熱意と人柄と志望大学との「接点」を伝える最初の関門です。ここがしっかり練られていることで、後の面接もスムーズに進みます(面接では志望理由書の細かい部分を深掘りして質問されることが多いため、自分で書いたことを自分で十分理解して話せるようにしておく必要があります)。他の提出書類(活動報告書等)も、それぞれ書式や字数制限を確認し、漏れなく準備します。
▼面接・小論文・プレゼンなど実践練習
書類審査を通過すれば、次はいよいよ面接や小論文などの試験です。『螢雪時代』(旺文社)の臨時増刊号などを読むと、面接室内の状況(面接官は何人か、受験者は一人で面接か、それとも複数かなど)を確認することができます。これは、たいてい学校に置いてあります。確認することをおすすめします。このような実技的な対策も書類準備と並行して進めておきましょう。面接練習は場数をふむことが重要です。学校や塾の先生、保護者などにお願いして模擬面接をくり返しましょう。自分を動画にとって何度も見直す、一人練習もおすすめです。
ポイントは、いろいろな人と練習することです。場所を問わず、練習しましょう。時間も数分から20分程度まで、さまざまなパターンで試してください。毎回同じ人が面接官役だと慣れてダラけてしまいます。本番では初対面の面接官と話をするので、何人かの相手との練習が有効です。ちなみに、注意されて怒ったり、ふてくされたりするのはNGです。面接では冷静さが試されます。間違いを注意されたら、謝罪し、面接後に調べましょう。わからないことを質問されたら、少し考えたフリをして、正直に「わからない」と言いましょう。知らないことを答えようとがんばっても無理です。知らないのですから。知らないことを、正直に知らないと言えることは、大学に入ってからの研究にとても有効です。知らないこと自体が問いになる可能性があるからです。だから、自分がそれを知らないことは、新たな知識を得るチャンスだととらえ、今は知らないことを素直に認めることが大切なのです。
話がそれました。何度も練習して緊張をコントロールする術を身につけましょう。大学によってはプレゼンテーションやグループディスカッションが課されることもあります。この場合、他の人の意見を「論破」することはもってのほかです。他人の意見を尊重しつつ、自分の意見を言いましょう。プレゼンの場合は制限時間内に伝えたいことを整理し、パワーポイントなどで資料(スライドやレジュメ)を作成して発表する練習も必要です。グループディスカッションの場合は、友達同士でテーマを決めてディスカッションの練習をしてみたり、日頃から友達と意見交換する場を作ったりして、人の話を聞きつつ自分の意見を述べる訓練を積みましょう。本番で求められるであろう状況を精一杯、妄想(シミュレーション)して事前に経験しておくことが鍵なのです。小論文は、過去問題(複数年の問題を、大学のホームページからダウンロードできる場合が多いです)を手に入れましょう。

そして、出題テーマを調べ、時間を計って書く練習をしましょう。内容によっては、関連書籍を複数読む必要も出てきます。まずは、過去問を見て分析してください。出題形式は、大学・学部によってさまざまです。中には一般選抜の現代文のような出題の仕方をする大学があるので、注意してください。小論文は、書き慣れていないと時間内にまとまった文章を書くのはほぼ不可能です。そのため、さまざまなジャンルの問題で練習しておくことが大切です。書いたら学校の先生などに添削をお願いし、改善点からいろいろ学びましょう。
▼体調管理とメンタル準備
最後は体調とメンタルの管理です。面接当日は緊張するのが当たり前です。これを少しでも軽減する方法は、「やり遂げた」と思えるまで完成度を高めることです。つまり準備をしっかりすることです。準備はいくらしてもしすぎることはありません。そして、深呼吸をする、ゆっくり話すよう心がける、直前に軽いストレッチをするな
ど、自分なりに用意しておくといいでしょう。模擬面接の場でもあえて緊張する状況をシミュレーションして、本番で実力を発揮できるようにしておくと安心です。
もし、自宅から遠方の大学(電車で片道2時間以上)へ行くならビジネスホテルに前泊した方がいいでしょう。本番ギリギリまで復習などができますから。ホテルはなるべく、大学の最寄り駅がベストです。最寄り駅が難しい場合、また駅から遠い場合はタクシーを使う(ホテルのスタッフに相談する)ことも考えましょう。
ステップ5 合格後、部屋探しや海外留学や旅行などの計画
見事に合格! その後も油断してはいけません。大学入学後に一人暮らしをする場合、即物件探しをしてください。3月に入ると好条件の物件が少なくなります。専用のアプリで探すこともできますが、おすすめは、大学の近くにある地元密着の不動産屋などに行き、実際の物件を見てから決めることです。アプリやネットの写真では良さそうに見えても、実際に行ったら大きな道路の脇で騒音がひどい、大きな建物のすぐ近くで午前中の数時間しか陽が当たらない、駅から家までの道が暗く、夜一人で歩くのは少しこわそう、など細かいことがわかる場合が多いです。
そして、留学する人は、英語の勉強なり、即準備モードに入ってください。入学式まで短期で海外に家族で行くのもいいでしょう。親子で思いっきり思い出を作ることをおすすめします。ここまで合格までの5つのステップを紹介しました。最後にもう一度言います。準備にかけた時間は合格率に直結します。がんばってください。


