ワンランク上を目指す【大学受験】…偏差値38から東大現役合格の浜田氏

 東大理IIに現役合格という経験をもつ浜田先生に、高校受験、大学受験のための勉強法を聞いた。

教育・受験 受験
浜田一志先生
  • 浜田一志先生
 2009年に出版した「部活しながら東大に受かる勉強法」(中経出版)が話題となった浜田一志先生。1994年に開業した、文武両道を目指す「部活をやっている子専門の学習塾」は、年中満席の人気塾だという。ご自身は、野球漬けの高校時代を送り、偏差値38から一念発起、東大理IIに現役合格という経験をもつ。その浜田先生に、高校受験、大学受験のための勉強法を聞いた。高校受験に続き、ここでは大学受験について紹介する。

--ワンランク上の大学を目指すためにはどうすればいいでしょうか。

 「もしダメだったら浪人してでも合格する!」という覚悟をもつことです。ただし、最初から浪人するつもりで計画を立てるのではダメです。

 浪人してでもチャレンジしたい、という人は、現役のときにどんな勉強をするか。それは、野球にたとえるなら「狙い球を決める」ことです。つまり、この球がきたら絶対ホームランを打てるというパターンを、すべての教科でもっておくこと。

 ここは絶対大丈夫だ、というのができたら、次はその周辺を勉強していくというやり方をすると、のんべんだらりと勉強するよりも達成感ができます。

 よく「なんであの人が現役で合格したの?」という人がいますが、そういう人はこういう戦略をもっている人です。もちろんこの方法は、狙い球が外れたらアウトですから、浪人の人にはお薦めしません。浪人生は、確実にすべての球でヒットを打てるようにしておかなければなりません。

--絶対に浪人したくないという人はどうすればいいですか。

 ならばワンランク上を目指さないことです。確実に、この大学の問題だったらどの問題が出ても大丈夫、という大学をすべりどめに受けてください、としか言いようがないですね。

--具体的にどういった勉強法が有効ですか。

 大学受験でワンランク上を目指す勉強法については、高校受験の場合と同じように、教科書に付箋を貼って、模試と過去問を分析する方法が有効です。

 模擬試験と志望校の過去問を1週間かけてじっくり分析。まず、模擬試験で間違った問題について、教科書の該当するページを探して付箋を貼ります。さらに、過去問に出ている問題に該当する教科書のページにも付箋を貼ります。付箋が重なるところが、自分ができていなくて、かつ過去に入試問題に出たところですので、ここを、次の1週間で重点的に復習するのです。期間を1週間と短く限ることで集中して取り組め、達成感もあります。

 ポイントは、教科書をしっかりやること。東大の入試問題でも、平均して約半分は教科書からの出題です。化学は6割、地学は実に7割が教科書から出ています。東大合格者の平均点は57%ですから、いかに教科書が大事かわかるでしょう。

 教科書で基本をきちんとマスターしないうちに、予備校で発展問題などに手を出すから余計難しくなるのです。

--記述問題については、どのような対策がありますか?

 まず、きちんと文章をまとめる能力を鍛える必要があります。要は、昨日見たドラマのあらすじを友だちに上手く伝える能力を身につけることです。また、質問から「何を聞かれているか」を的確に聞き取る力を養う。たとえば、「これおいしいね、どうやって作ったの?」と言われたら、聞かれているのは「作り方」です。「どこから取り寄せたの?」なら「材料」を聞かれている。それを聞き分ける能力ですね。こういう力は練習で鍛えることができます。

--志望大学を決めるためのポイントは何でしょうか?

 医者、弁護士を志望する生徒については、医学部、法学部がある大学を選ぶしかないので迷う余地がありません。問題は、それ以外の場合です。生徒に聞いても「自分の適性がわからない」と言う人がほとんどです。

 多くの高校では2年のときに、理系か文系かの選択があります。そのときに、数学ができるかできないかで決めている学生が非常に多い。たとえば文系を選択する生徒で、文学が好きだからという人はごく少数で、多くは数学が嫌いだから文系を選んでいる。そうすると、高3になって「文系なんだけど行きたい大学がない」ということが起きる。

 ですから、文理選択の段階で、数学ができる、できないで選ぶのはやめたほうがいい。私は「食べられるものは何?」という聞き方をするのですが、「私ができるものは何だろう」という考え方で選択するといいと思います。

 「得意なものは何?」と聞くとほぼ100%の子が「何もないと」答えるので、「何ならできる?」と聞くことですね。

--親としては、今就職が大変なので、なるべく就職に有利な進路を選んでほしいと考えがちです。一方で、理系出身のほうが生涯年収が高い、いや低いなど、その時々のマスコミの情報に惑わされる。そのような親たちへのアドバイスをお願いします。

 学部や学科によって就職に有利とか不利ということは現実にはほとんどないと思います。実際に会社で働いてみると、出身学部を意識することはないし、問われることもまずありません。

 就職に関しては、親の感覚は30年ズレていますから、下手に助言しようとせずに、近所のお兄さん、お姉さんや、先輩に話を聞いてみなさいと、出会いを提供する役割に徹したほうがいい。そのほうが間違いがないし楽だと思います。

--大学にかかる費用について教えていただけますか?

 一般的には、国立大学の授業料は約60万円。私立文系で80万~150万円、私立理系で120万~200万円と言われています。ただし、理系でも医学部、歯学部、薬学部は別格です。

 生活費は、下宿生で月12、3万円といったところです。仕送りは平均10万円前後、私がスカウト部長を務める東大野球部の学生も多くが生活費のためにアルバイトをしていますね。

--最後に、受験生と親御さんに送るメッセージをお願いします。

 最近、高校で講演をすることがあるのですが、最近の高校生は、能力はあるのに、まあこの辺でいいかなという志望校で妥協する子が多いように感じます。本音はもっと上を目指したい。でも勇気がない。勇気というのは合格する勇気のことではなくて、努力をする勇気がない。

 ですから、「キミ、才能あるね」「こうすればできるよ」と、声をかけてあげる人が必要なのです。そういう人がいれば、もともと能力はあるのだから頑張れるのです。

 それは、親や塾の先生だけでなく、学校のOBや、部活の先輩でもいい。私が受験生に部活との両立を勧める理由は、実はそこにあるのです。部活には、いろいろな人との出会いがあるし、出会いの中から学ぶ機会がたくさんあります。

 人とのつながりをしっかりもてる子は、受験だけでなく、将来の人生においても、きっとうまく切り拓いていけると思います。

--ありがとうございました。
《石井栄子》

石井栄子

子育てから、健康、食、教育、留学、政治まで幅広いジャンルで執筆・編集活動を行うフリーライター兼編集者。趣味は登山とヒップホップダンス、英語の勉強。「いつか英語がペラペラに!」を夢に、オンライン英会話で細々と勉強を続けている。最近編集を手掛けた本:『10歳からの図解でわかるSDGs「17の目標」と「自分にできること」』(平本督太郎著 メイツ出版)、『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(増田史著 ナツメ社)『13歳からの著作権 正しく使う・作る・発信するための 「権利」とのつきあい方がわかる本』(久保田裕監修 メイツ出版)ほか多数

+ 続きを読む

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top