【私塾界プレミアムセミナー2011】大震災から学んだこと…仙台進学プラザ 阿部代表

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仙台進学プラザ 代表取締役 阿部孝治氏
  • 仙台進学プラザ 代表取締役 阿部孝治氏
  • 東北各地の被害状況
  • 宮城県の状況
  • 進学プラザの状況
  • 塩釜市の教室の被災写真
  • 福島県の教室の被災写真
  • 地震発生当日のようすと処置
  • 3月15日に開催した全社員集会の内容
 私塾界 Premium Seminar(私塾界プレミアムセミナー)において12月8日、仙台進学プラザの代表取締役 阿部孝治氏が、「大震災から学んだこと」と題して、3月11日の東日本大震災の状況や塾が受けた被害とその後の取り組みについての講演を行った。

 阿部氏は、宮城県の被災状況について次のように報告した。

 まず、宮城県で被害が大きかったのは石巻市であると、市町村別の被害状況のグラフを示しながら語った。また、10月20日時点の情報として、宮城県の死者・行方不明者は11,502人に達し、被害総額は7兆円に上るという。

 仙台進学プラザの被災状況は、社員とその家族の死亡は0人だったが、1名の生徒が亡くなったという。塾の校舎のうち全壊となったものはなかったが、塩釜、石巻の2校は半壊状態になった。

 他にも若林東教室、名取駅西教室も大きな被害を受けたという。しかし阿部氏によれば、全体として生徒の被害が少なかったのは、地震発生時刻が学校の授業中であることが大きいと見ている。学校は設備や緊急時の体制なども整備されているが、塾の場合、教室の規模や立地などによって大きな被害が出てもおかしくなかったと述べた。

 生徒にも自宅を流されたり、半壊になった家庭も少なくないが、保護者の会社が流されたり業務ができなくなることによる、家庭や塾への影響が大きいことも報告された。家は仮設住宅など緊急避難が可能だが、保護者が職場を失うということは、安定した収入が確保できず、生活に直接影響が出るからだと説明された。

 進学への影響については、震災により国立大学以外への進学が不可能になった家庭や、被災により子どもに残されたもの、残せるものは教育しかないと考える親もあり、むしろ塾に対する期待は高くなったと阿部氏は認識を新たにしたのだという。

 先生や職員の中には諸般の事情により、退職や転勤を希望する者も出てきた。阿部氏は、できるだけ希望に沿うようにしたが、企業としての対応の限界があり、授業再開へ向けて先生不足という問題も抱えることになったという。それでも、生徒・先生・職員に対してはいくつかの支援策を講じていった。

 生徒・保護者については、昼間の時間に無料の勉強会を、実施可能な校舎において開催、また社員に対しては給与の前払いや炊き出しなどを行ったという。当時は、ガソリンや米、その他の物資が不足しており、おにぎりの炊き出しは非常に喜ばれたそうだ。食糧や物資の支援は、全国の進学プラザや他塾の援助がなければ実現できなかったものだ。

 最終的な授業の再開は4月12日となった。まだ完全に元通りというわけではないが、震災後に感じたこととして、阿部氏は、災害に対して塾は思ったより強いということをあげた。前述した子どもへの教育投資への意識が高まることや、かえって先生や塾との絆が深まる現象も現場からは報告されているという。阿部氏の感覚では、「衣・教育・食・住」という優先順位を持つ保護者が少なからず存在するという。

 また、先生たちも経験がないため、思ったより何もできない大人が多いという問題点が浮き彫りになった。既存の防災マニュアルは実際にはほとんど機能しなかったという。授業再開にあたっては、新しいマニュアルを整備した。

 何より、厳しかったのはある程度の復旧に達するまで、売上が落ち込んだことだそうだ。今回の震災では宮城・福島の両県では2か月間、売上がゼロという状態で、復旧の手立てをしなければならなかった。その中には、職員への給与、被災した職員や生徒への支援やお見舞金の給付、給与の前払い、設備・備品の復旧、借入金の返済などが含まれる。

 このような事態には、現金の存在が不可欠であり、いざというときを考えると、借入金としてでも、手元で動かせる現金が3~6か月分は必要なことがわかったという。

 これに関連して、塾経営のドミナント方式の見直しについても言及した。通常、効率経営を考えるとひとつの地域に資産を集約したほうがよいのだが、今回のような災害では、この戦略は致命的になる。進学プラザでは、全国に拠点が分散しているため、全体としてはなんとか危機をしのいでいるが、そうでなければ授業再開どろこではなかったかもしれない。

 しかし、だからといってステレオタイプ的に分散方式がよいかどうかの正解は存在しない。最終的には、塾ごとのポリシーや理念にも通じる部分であり、経営者ごとの判断になるだろうとした。
《中尾真二》

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