【NEE2013】フューチャースクール3年間の統計学的分析結果…東工大 清水名誉教授

 New Education Expo 2013(NEE)の専門セミナーで、東京工業大学 名誉教授 清水康敬氏は、3年間のフューチャースクールの授業記録やアンケート結果についての統計学的な分析結果の発表を行った。

教育ICT 行政
東京工業大学 名誉教授 清水康敬氏
  • 東京工業大学 名誉教授 清水康敬氏
  • 総務省フューチャースクール推進事業が作成したガイドライン2013年版
  • 協働教育の場面の統計
  • 協働教育とICT機器の関係
  • 学年別協働教育の違い
  • 小学1、2年生によるICT教育の評価
  • 小学1、2年生によるICT教育の評価
  • 小学3~6年生によるICT教育の評価
◆教員のICT指導力向上は確認された

 まず、授業におけるICT活用の目的のひとつである協働教育について、小学校では同じ課題に対する話合いや、1人の提案を全員で考えるという場面の割合が多く、中学になると数名での教え合いや議論の場面が多くなった。相互に教え合う場面は小中学校での差はみられなかった。清水氏は、これはICT利用による傾向ではなく、年齢に応じた授業スタイルや指導要領の影響もあるだろうとした。

 協働教育と機器利用の関係では、少数によるグループ協働ではタブレット、およびタブレット+電子黒板が活用され、全体協働では電子黒板が活用された(ともに1%水準で有意)。小学校の学年別の傾向は、1、2年が全体協働、4年から6年がグループ協働に1%水準の有意が認められた。3年生は有意水準での傾向は認められなかった。小中学校における教員のICT指導力の変化だが、教材研究、授業への利用、情報モラルの指導、校務利用などすべてにおいて能力向上が確認された(1%水準で有意)。

◆小学生は全体協働に効果、デバイスの不満解消が課題

 小学生による評価についてもアンケート結果の分析がされた。小学校のアンケートは、低学年は2択、中学年以上は4択の設問で行われた。低学年(1、2年)は、考えること、友達との話合い、集中力などの項目に効果があったことが確認された(1%水準で有意)。反面、もっと勉強したいという設問では効果の減少(同前)、コンピューターに文字を書きやすいという設問では効果が減少したあと(同前)、増加(同前)が見られた。

 清水氏は、文字の書きやすさについては、デバイスに慣れることでいろいろな応用が広がり、不満が出てきたところにソフトウェアの更新や改良などが行われた結果ではないかと分析した。

 中・高学年では、友人の発表を聞いてみたい、授業に集中できる、自分に合った方法・スピードで勉強できる、などの項目で評価の増加が確認された(集中の項目は5%水準で有意、そのほかは1%水準で有意)。コンピューターの画面は見やすいかという設問は評価が減少した(1%水準で有意)。ディスプレイについては電子黒板、タブレットともに、大きさ、照明の映り込み、画面デザイン等に課題があることが示唆されているとし、こうしたところに改善点やビジネスのヒントがあるかもしれないとした。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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