【NEE2013】フューチャースクール3年間の統計学的分析結果…東工大 清水名誉教授

 New Education Expo 2013(NEE)の専門セミナーで、東京工業大学 名誉教授 清水康敬氏は、3年間のフューチャースクールの授業記録やアンケート結果についての統計学的な分析結果の発表を行った。

教育ICT 行政
東京工業大学 名誉教授 清水康敬氏
  • 東京工業大学 名誉教授 清水康敬氏
  • 総務省フューチャースクール推進事業が作成したガイドライン2013年版
  • 協働教育の場面の統計
  • 協働教育とICT機器の関係
  • 学年別協働教育の違い
  • 小学1、2年生によるICT教育の評価
  • 小学1、2年生によるICT教育の評価
  • 小学3~6年生によるICT教育の評価
◆中学生はグループ協働に効果

 続いて中学生の評価の傾向は、友人同士の話合い、必要な情報の発見、積極的な授業参加、学習目標の達成、考えを深める、自分に合った学習などの項目で増加が確認された(友人同士と積極的な参加は5%水準で有意、その他は1%水準で有意)。逆に評価の減少が見られたのは、電子黒板での話合い、自分専用のコンピューターへの意向、電子黒板授業への意向、画面の見やすさ、文字や図形の書きやすさ、コンピューターでの発表意欲などである(電子黒板での話合い、自分専用コンピューター、発表意欲は5%水準で有意、他は1%水準で有意)。

 清水氏が注目したのは、設問には、コンピューターでの友人の発表は聞きたいという意欲が高いのに、自分で発表する意欲の減少が確認されたことだ。減少といっても、自分でも発表したいという肯定的な回答は65%を超えており、高い水準であることには変わりない。

 なお、ここで紹介されない設問も多数あったが、それらはICT導入直後と1年目、2年目のアンケート評価で数値的な増加や減少が見られたものの、有意な差は確認されなかったものだ。これは前述の小学校での評価分析にも当てはまる。そして、評価の変化に有意な差は見られなかったが、肯定的な回答の割合は、多くの設問で80%を超えるものとなり、児童・生徒の声としての評価は高いといえる。また、肯定回答が90%を超えるようなもの(楽しく学習できた、など)は高率で安定しており、有意な差が出なかった可能性もあると、清水氏は指摘した。

◆児童用コンピューターと電子黒板に必須の機能

 小学校教員に対しては、児童用コンピューターと電子黒板に必要な機能についてのアンケートも実施された。児童用コンピューターに必要な機能として上位にあげられたのは、「安定動作」「フィルタリング」「教室内ネット」「安定無線LAN」「充電保管庫」などだった。電子黒板については、「実物投影機能」「映り込み防止」「領域拡大縮小」「内蔵スピーカー」などを必須と考えている教員が多かった。

 最後に、アンケートの「感想」欄について、テキストマイニングにより全体の肯定的意見、否定的意見やキーワードごとの肯定・否定を調べた結果についても発表された。

 全体的な意見について、ICT利用開始直後(スタート期)と1年後の変化を比較したところ、肯定的な意見はともに90%近くと高い水準ながら、1年後の割合に有意な差が見られなかった。逆に否定的な意見は1年で有意な増加を見せた(1%水準で有意)。これをキーワードごとに細かく分析すると、わかりやすい、便利といった単語での評価は1年で有意な増加を見せ(1%水準で有意)、楽しい、という評価が減っている(1%水準で有意)。そして、反応が遅い、ペン・タッチの操作性が悪い、不便である、などの意見が増えている(1%水準で有意)。

 清水氏は、今回の分析では「わかりやすい」という視点とキーワードで評価を行ったが、さらに「楽しい」「面白い」といったキーワードも加え、学習度の向上との関連を調査したいと思っていると言う。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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