中学受験専門の個別指導教室 SS-1 副代表で、理科指導の経験が豊富な辻義夫先生に、過去の入試問題を自由研究のテーマに選び、実験とレポート作成を通じて受験対策とする方法を聞いた。辻先生が用意してくれた4つのテーマより、ここでは「飲み物容器の科学」を紹介する。身近な缶とペットボトルを用い、その形状や材質について調査、実験、考察をする。
◆SS-1辻先生による中学受験対策&夏休みの自由研究シリーズ一覧
・夏休み自由研究…理科(1)缶とペットボトルで「飲み物容器の科学」
・夏休み自由研究…理科(2)光の進み方:反射と屈折
・夏休み自由研究…理科(3)使い捨てカイロを調べる
・夏休み自由研究…理科(4)朝顔の観察
・夏休み自由研究…(5)ペルセウス座流星群で天体と「放射状」をマスター
・夏休み自由研究…理科(1)缶とペットボトルで「飲み物容器の科学」
・夏休み自由研究…理科(2)光の進み方:反射と屈折
・夏休み自由研究…理科(3)使い捨てカイロを調べる
・夏休み自由研究…理科(4)朝顔の観察
・夏休み自由研究…(5)ペルセウス座流星群で天体と「放射状」をマスター
◆飲み物容器の材質や形状の違い
「飲み物容器の科学」では、アルミ缶、スチール缶の材質や構造の違い、ペットボトルの中身の飲料による材質や形状の違いを調べ、実験結果や異なる理由をレポートにまとめる。
実験では、ペットボトルの材質と固さの違いを調べる。そのため、ペットボトルに熱湯を入れ、1分ほどしてから熱湯を捨ててフタをする。中の空気が冷えてくると密閉されたペットボトルは内側にへこんでいく。この実験をミネラルウォーター、炭酸飲料、お茶・果汁飲料といくつかの種類について行えば、内容物によるペットボトルの固さや耐熱性の違いが比較できる。
◆2013年の麻布中学入試で出題
実は、熱湯を入れたペットボトルを空にしてフタを閉めるとへこんでいくという問題は、2013年麻布中学の入試で出題されているそうだ。へこむ理由は、高い温度で水蒸気を含んだ空気は、冷やされると気圧が低くなるからだ。このとき水蒸気は水滴となる。授業では気圧や圧力の単元で学ぶもので、気圧と空気中に含まれる水分との関係、降雨のメカニズムを応用した問題として出題された。
実験にかかる時間は3、4種類のペットボトルを調べても30分前後だろう。お湯を抜いてフタを閉めると、やわらかい材質のものは分単位で変形していく。なお、ペットボトルに熱湯を入れる際はやけどに注意が必要だ。保護者が付き添い、漏斗を使ったり、ペットボトルが倒れない工夫もしてほしい。
◆自分の仮説を調査と実験で検証する
レポート作成のポイントは、自分の仮説や考えをまとめ、それを実験や調査によって検証すること。そして、最後に自分の考えと結果の違いについての考察(なぜこうなったのか、こうならなかったのか)をしっかり書くことだそうだ。
まず缶やペットボトルの材質の種類や形状について分類し、その違いを調べ、なぜそのような違いがあるのか、その理由を考える。このとき、内容物(飲料)との関係はあるのか、材料の違いとの関係はあるのか、などをヒントに自分の考えをまとめる。続いてその考えが合っているかを確認する。
材質や形状の違いとはたとえば、アルミ缶とスチール缶の違い。マグネットがつくのがスチール、つかないのがアルミだ。スチール缶でも場所による材質の違い。ペットボトルならば、ミネラルウォーター、炭酸飲料、果汁飲料による形状の違い、表面の模様や凹凸、固さの違いなどである。なお、スチール缶の上部はアルミを使っているが、これはプルタブ部分の加工のしやすさが関係しているという。ペットボトルの形状や材質は、店頭で加温するかどうか、内容物に加熱(殺菌)処理をするかどうか、また、充填時の液体の温度による違いもあるそうだ。
詳細については、インターネットや本、メーカーへの問合せ(お客様相談窓口)などで調べることになる。問い合わせる場合は、質問事項をあらかじめ整理しておこう。インターネットを利用する場合は、情報が正しいものかどうかの確認も必要だ。
余談だが、缶にしろペットボトルにしろ、炭酸系は内圧が高くなるが、加熱充填する飲料は冷却時に逆に内圧が低くなる。そのため、フタを開けたときの「プシュッ」という音は、炭酸系は空気が出る音であるのに対し、コーヒーなどでは空気が入る音との違いがある。辻先生によれば、これも実際の中学受験で出されたことのある問題だそうだ。