高校生が大腸癌の病理診断を行う体験セミナー開催、広尾学園

 広尾学園は10月12日、同校の高校生を対象とした「病理医による病理診断体験セミナー」を開催した。現場で働く現役病理医の指導のもと、大腸癌の診断を体験するという企画で、医学部を目指す高校生19名が参加した。

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長村義之氏の講義
  • 長村義之氏の講義
  • 検体の画像を見ながら診断について議論する生徒たち
  • 検体の画像を見ながら診断について議論する生徒たち
  • 自ら顕微鏡の調整をする長村氏
  • 検体
  • アドバイスをする長村氏
  • アドバイスをする小倉氏
  • 癌細胞を顕微鏡で観察
 広尾学園中学校・高等学校は10月12日、同校の高校生を対象とした「病理医による病理診断体験セミナー」を開催した。現場で働く現役病理医の指導のもと、大腸癌の診断を体験するという企画。参加者は同校医進・サイエンスコースで医学部を目指す高校1年~3年生約19名。生徒たちは、事前学習を済ませたうえで、セミナーに臨んだ。

 病理医とは、適切な治療のための診断「病理診断」をする医師を指す。つまり、患者の細胞を顕微鏡を用いるなどして観察し、癌などの疾患を調べ、治療方針を決定するための診断をくだす、専門性と決断力が求められるポジションだ。

 今回のセミナーは、その病理医の病理診断を実際に体験するという主旨のもと、医学部の学生や研修医たちが受講するセミナーと同程度の難易度で行われた。内容は、元日本病理学会理事長の長村義之氏による病理医の仕事についての講義と、順天堂大学医学部附属練馬病院の小倉加奈子氏による大腸癌診断に関する講義から始まった。その後、小倉氏の講義に基づき大腸癌の診断を実際に行い、診断結果を報告するカンファレンスが行われた。

 元日本病理学会理事長であり、国際医療福祉大学三田病院病理診断センターの長村義之センター長は、日本では病理への意識が低いと話す。欧米では、医科大学の学長や病院長などを病理医が務めることが多いが、認知と意識の違いから国内では担い手の育成が急務になっているとコメントした。

 次に、実際に行う大腸癌の診断について、順天堂大学練馬病院病理診断科准教授の小倉加奈子氏が講義を行った。小倉氏は、正常な大腸と異常な大腸の写真の比較や大腸の構造、大腸癌の診断のポイントなどを解説。そして、今回の診断体験には実際の患者の検体が使用されること、病理医の診断は患者の生命を左右することを説明し、現場と同じような倫理観と責任で診断を行うよう促した。

 診断は、4人1組のチームで行われた。チームは、1年生から3年生の混合だが、生徒たちは積極的にコミュニケーションを取り、スムーズに作業をはじめた。まず、配られたのが実際の現場でも利用される「大腸癌取扱い規約」。生徒たちは本物の規約を手にし、用意された検体を調べ、癌であるかの診断、どのような癌であるか、どれだけ深いところまでできているか、転移はあるかなどを診断する。

 パソコンに映し出された検体の画像を見ながら議論し、顕微鏡を用いて検体をのぞいては、また議論する。生徒たちはこの日のために、事前学習で専門用語を勉強していたが、難易度は高いようで、実際の検体を前にしてからは多少の戸惑いも見られた。しかし、長村氏や小倉氏を含めた5人の医師の声に耳を傾けながら、懸命に作業を進めていた。

 すべての検体をチーム内の生徒全員が見なければならない。誤診をなくすためだ。また、今回はさまざまな検体に触れることができるよう、各チームに別々の検体が用意され、ほかのチームの検体とも比較することができるようになっていた。

 難易度が高いうえ、生徒にとっては不慣れな作業のため、生徒たちは昼食を交代で取りながら作業に取り組んでいた。午後には、それぞれのチームがひとつの診断を下し、実験で得られた結果をカンファレンス形式で発表した。

 カンファレンスとは、病院内でさまざまな治療科に分かれている医師が集まり、1人の患者の治療について検討する会。高校生たちは、病理医としてカンファレンスに参加し、長村氏、小倉氏など5人の医師の前で診断結果を発表した。発表では、大腸癌の進達度、リンパ節移転の有無と広がり、遠隔転移の有無や移転箇所などが診断され、長村氏を中心とした医師が診断の根拠などについて説明を求めた。

 「生徒たちに、診断というものの大切さや医者になったときのために知識や判断力の重要性を学習してほしい、手術においての外科技術と同様に、研究、実験の能力の重要性に気づいてほしいと思い、このセミナーを企画しました」と、広尾学園医進・サイエンスコース教諭の木村健太氏は語る。そして、「今回は高校生には少し難しい内容です。ですが、背伸びすることによって見える景色もあります。それを体験してほしかった」と続けた。

 医学部を目指すための勉強は、知識をインプットすることが多く、アウトプットする機会は少ない。その中で、このような体験学習は、生徒にも刺激になるだけでなく、医師になることを目指している生徒が当事者意識を持って取り組める絶好の機会になったに違いない。また、1、2年生だけでなく、受験を控えた3年生が参加している点にも、広尾学園が推し進める先進的な教育の一端を垣間見たような気がする。
《苅谷崇之》

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