奨学金という「借金」、20年間返済できるか考えて…弁護士がアドバイス

 「奨学金」は、学生が勉学に励めるよう経済的に支援する大切な制度。しかし、最近は、奨学金の「滞納」や「ブラックリスト入り」といった社会問題が起きている。アディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士に奨学金を利用するにあたり留意したい点について聞いた。

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弁護士 篠田恵里香氏
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 「奨学金」は、学生が勉学に励めるよう経済的に支援する大切な制度。しかし、最近は、奨学金の「滞納」や「ブラックリスト入り」といった社会問題が起きている。似たような制度として「教育ローン」もあるが、こういった制度を利用するためには、まず制度の概要や注意点をしっかり把握しておくことが大切だ。

 家庭の問題はもちろん、教育トラブルにも詳しいアディーレ法律事務所の篠田恵里香弁護士に奨学金を利用するにあたり留意したい点について聞いた。

--私立の学校に進学するに当たり、奨学金か教育ローンを借りる予定。奨学金は誰でも借り入れできますか。

 奨学金も教育ローンも、学生が就学する際の「貸与金」ということになります。ただ、「奨学金」は、(1)学生本人が、(2)毎月一定額を借入れ、(3)卒業後に、(4)本人が返済していく一方、「教育ローン」は通常、(1)学生の親が、(2)一括で全額借り入れをし、(3)就学中から、(4)親自身が返済していく、という違いがあります。

 奨学金は、日本学生支援機構のものが有名ですが、「経済的条件」や「成績」などの条件をクリアしないと利用できないという制限があります。教育ローンの場合は、「経済的条件」をクリアすれば借り入れができます。奨学金は、金利がゼロから3%程度ですが、国の教育ローンでは2~3%程度、銀行などの金融機関の教育ローンでは3%を上回る金利が通常です。将来の返済を考えると、金利の比較はとても重要となってきます。

 月々10万円の奨学金を4年間借りると、合計480万円となります。これを2%の金利で20年間返済するとなると、返済総額は約587万円となり、月額返済額も約2万4,500円と決して低くありません。借りている当初は、「多額の借金」という認識は薄いかもしれませんが、いざ返済するとなると相当な高額となっており、「滞納問題」が社会問題となっているのもうなずけます。

--子どもが将来、自分自身で返していく予定だが、払いきれなくなった場合はどうなるのか。

 実際に何十年も一定額の返済を続けるのは容易ではありません。余裕をもった返済計画を立てないと、「今月は出費が重なった」となった途端、「返済できない」状況に陥ります。

 仮に、滞納が続き返済不可能となった場合、ブラックリスト(信用情報機関の事故情報)にも当然のりますし、遅延損害金(延滞利息)も付与されます。裁判を起こされたり、「自己破産」という方法を選択せざるを得なくなったりするケースも増えています。

 自己破産すると、その後しばらくローンが組めなかったりカードが作れなかったりと、お子さま自身の生活にも大きな影響が出ます。奨学金といえども、この点は通常の「借金」と同じという意識を忘れないようにしましょう。

--万が一払えなくなってしまった場合、救済措置などはありますか。

 奨学金の返済が困難な場合は、「返還期限の猶予」を願い出る方法や、「返済金を半額に減額する」方法が用意されています。災害、傷病、経済的困窮等により奨学金の返還が困難等の要件が必要ですが、猶予や減額等の方法で支払いを継続することも視野に入ります。

 奨学金の滞納トラブルは、年々増加しているようです。もちろん、頑張っているのに返済できないというケースもありますが、「奨学金の返済」を軽視して安易な滞納に陥っているケースも少なくないようです。奨学金も法的には「借金」であり、返済義務もあります。返済計画はしっかりと余裕をもって立て、完済するように努めましょう。

 卒業後返済される奨学金は、後輩の奨学金として再び活用されます。借入れの際も、返済の側面でも、そのことを忘れず、人生設計、生活設計、返済計画を常に念頭に置いて、慎重に利用・返済するようにしましょう。ただ、計画通りにいかないのも人生です。もしも、ご自身で解決するのが難しいという場合は、弁護士に早めに相談すると良いでしょう。
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篠田恵里香(弁護士)
 東京弁護士会所属。外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。夫婦カウンセラー(JADP認定)資格保有。独自に考案した勉強法をまとめた「ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法」(あさ出版)の執筆ほか、「Kis-My-Ft2 presentsOLくらぶ」(テレビ朝日)などメディア出演も多い。
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