【EDIX2016】教育ICT機器の進化に変化、「やさしさ」やハイブリッド教育家具を発見

 日本最大、教育分野の専門展「第7回 教育ITソリューションEXPO(EDIX:エディックス)」の開催も今年で7回目。会場で聞こえた「真新しい製品が何かわからない」「目移りする」という声をもとに、EDIX2016で展示されているICT機器の“進化”を探した。

教育ICT 先生
イトーキ「Face Up Table(フェイスアップテーブル)」
  • イトーキ「Face Up Table(フェイスアップテーブル)」
  • パナソニック カラーユニバーサルデザインを採用したタッチスクリーン液晶ディスプレイ「BF1」
  • 色名も「あか」「あお」と表記 パナソニック カラーユニバーサルデザインを採用したタッチスクリーン液晶ディスプレイ「BF1」
  • イトーキ 新しいチェア「scrum(スクラム)」
  • イトーキ 「LANシート」 敷くだけで無線LAN環境に近い通信環境が整う
 日本最大、教育分野の専門展「第7回 教育ITソリューションEXPO(EDIX:エディックス)」の開催も今年で7回目。毎年足を運んでいると、展示されているICT機器の充実に驚くこともあるだろう。一方で、会場で聞こえた「真新しい製品が何かわからない」「目移りする」という声をもとに、EDIX2016で展示されているICT機器の“進化”を探した。

◆新機能重視から多様性へ パナソニック「人にやさしい電子黒板」

 電子黒板の進化には目を見張るものがある。近年では、ホワイトボード一体型、テレビ型、ユニット型、電子黒板システム内蔵型プロジェクターなど、教室や講義室での利用を研究しつくされた教員目線の商品が発表されている。厚みを軽減したものや省エネルギータイプのものなど、機能だけではなく費用面も考慮した必要最小限のラインアップも目にする。ただし、「もうICT機器は高品質にするか、大きくするか小さくするかしか面白みがないのではないか」といった声があることも現実である。

 パナソニックは、高機能だけの追及とは一線を画し、色覚の個人差を意識しないで利用できるよう配色に配慮したタッチスクリーン液晶ディスプレイ「BF1」を展示している。これまでも色弱者に配慮したオプションやソフトはさまざまな企業が発売していたが、カラーユニバーサルデザイン内蔵型の液晶ディスプレイの発売はこれが日本初となる。

 誰でも見やすい描画ツールを搭載し、教師が選択したペンの色を「あか」「あお」と文字でも表記することで「人にやさしい」ディスプレイにした。通常は緑色と赤色を灯す電源のオンオフ表示も、青とピンクで表現。これにより、教師が色覚に困難を抱えている場合でも、容易に見分けがつく。パナソニックによると、現代では濃い赤と薄い赤の区別がつかない、赤色が認識しづらいなど、色覚に困難をもつ児童・生徒は1クラスに1人はいるといわれている。教育ICT機器の進化は今後、今までは取りこぼしていた細かな要望にも対応していくのかもしれないと思わせる新商品だった。

◆従来の教育家具とICT機器をひとつに…老舗オフィス家具メーカーのハイブリッド教室家具

 教育業界や教材メーカー関係者では気付きにくい課題を解決するのは、もしかすると異業界の企業なのかもしれない。EDIX2016では、世界最大手の自動車部品メーカー、デンソーが教育業界向けの本格ロボットを展示したり、掃除機でおなじみのダイソンの教育系財団「ジェームズ ダイソン財団」がエンジニア育成キットを発表したりと、意外な企業の姿もある。オフィス家具メーカーとして125年の歴史をもつイトーキも、そのひとつだ。

 イトーキは、オフィス家具メーカーの知見を生かし、アクティブラーニングを促進する教育環境の提案を行っている。机と椅子が一体になった軽量・堅牢な新しいチェア「scrum(スクラム)」を代表に、学びを加速させるような斬新なデザイン家具の数々は思わず「ありそうでなかった」(都内・大学教諭)と参加者をうならせていた。

 注目を集めていたのは、グループワークにおけるアイデアを活性化させる共創促進型テーブル「Face Up Table(フェイスアップテーブル)」。机の中心部には46型ディスプレイが内臓されており、持ち寄ったデータを全員で共有しながらデスク部分では通常の読み・書きといった作業ができる。すでに東京都多摩市の愛和小学校で導入実績があり、児童たちのアクティブラーニングの場で活用されているという。

 「無線LANの導入には費用がかかる」といった教育現場の悩みを解決する、国内初の商品となるネットワーク通信システムシート「LANシート」も見逃せない。導入の際に必要な物は、LANシートと有線LANだけ。机にシートを敷き、PCやタブレットを置くだけで機器がネットワークにつながる仕組みだ。今ある通信機器を最大限に活用しながら、無線LAN環境に近い通信環境を整えることができる。

 EDIX2016の参加出展数は、5月18日発表時点で過去最大の680社。ひとつひとつのブースをめぐるのは苦労するが、学びNEXTと本会場をめぐれば、教育ICT機器の進化が向かう方向が少しずつ変化してきていることに気付くだろう。
《佐藤亜希》

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