【NEE2016】筑波大附属小のICT活用公開授業、“反応率100%”が続出の100分

 「NEE2016」(New Education Expo 2016)東京会場最終日の6月4日、会場の東京ファッションタウンビルにおいて、筑波大附属小学校による公開授業が行われた。国語と算数を1コマずつ、同じ4年生の1クラスに対し行ったが、それぞれに特徴のある授業となった。

教育ICT 先生
生徒のタブレットへの集中度も高い(国語・青山先生)
  • 生徒のタブレットへの集中度も高い(国語・青山先生)
  • 振返りで「千手観音」と形容されたように、生徒のタブレットへの書込みをすべてを把握できる(国語・青山先生)
  • 生徒同士が相談するなど、ペアワークやグループワークもひんぱんに盛り込まれる(国語・青山先生)
  • 生徒の書き込みをピックアップし比較(国語・青山先生)
  • 生徒の書込みを、ほかの生徒が内容を予想し解説(国語・青山先生)
  • 「マイ黒板」を利用し、自分の考えを整理したり書き加えたりできる(国語・青山先生)
  • 生徒の間を歩きながら授業(算数・夏坂先生)
  • アニメーションにより生徒の注意を惹き付ける(算数・夏坂先生)
■算数「図形が増えていく法則を考え、数式で表す」

 続いて、夏坂先生の授業。こちらの授業では、最初はテーブルにタブレットはない。児童は全員タブレットをしまっており、紙のノートのみを用意している状態からスタートした。7本の棒を使って作った、正三角形が3つ繋がった形「△▽△」を見せ、どういう形かを児童に説明させる。

 このとき、ただ出来上がった図を見せるのでなく、赤いカーテンが開くようなアニメーションを見せ、そこから図形を順に作っていくという流れで、児童の興味を惹き付けるとともに、その思考の方向性を導いていた。最初から出来上がった全体像「△▽△」を見せるのでなく、「△」→「△▽」→「△▽△」と変化するアニメーションで、これはが徐々に増えていくことを想像させる。

 児童は「3つの三角形」「7本の棒」「台形」「ひし形と三角形」などの意見を出すが、台形、ひし形などはまだ習っていないので、ここでは、「3つの三角形」「7本の棒」ということをベースに話を発展させていく。これが「△▽△▽」になったら、どういう図形になるかを説明させる。そしてさらに「△▽△▽△」の段階になって、パソコンが登場し、自分の思う数字、さらにはその法則を、パソコン内の教材に児童が書き込む。ここで、「割り算」に繋げようというのが、この授業の目論見だ。

 各児童の思考はさまざまに分かれ、単純に数字が増えていくその法則を考える児童から、図形を区分けする児童、三角形ごとにカラーを変えて塗り分け説明しようとする児童まで登場し、それぞれが主張を繰り広げる。先生がピックアップした児童のPCが切断されてしまい、説明が止まるハプニングもあったが、逆にそれを想像させるなど、状況に応じた対応もあった。

 終盤には「棒が21本あったとき、三角形はいくつになるか」という質問が提示された。答えは10だが、どうしてそうなるかの説明・数式での表現は複数考えられ、大人でも意見が分かれるところだろう。夏坂先生が選んだ数式は、記者は最初ピンとこなかったが、その数式を提示した児童がキチンと説明することで、なるほどと思えるものだった。実際、その過程を踏んで納得している児童も多かった。

◆両授業を通じて

 途中のハプニングもあったせいか、夏坂先生の授業は少し時間切れ。このとき、児童が不満のブーイングを行った。進んで授業を受け、その続きを知りたい、という気持ちが自然に高まっている証だが、ここまで児童の興味を惹き集中させるのは、通常授業では難しい。もちろん、夏坂先生の授業展開の妙もあるが、児童が“解決への手応え”を感じているからこそだろう。

 またこれは青山先生の授業でも共通していたが、とにかく子どもたちがしっかりと手を挙げ、意見を表明しようとする。その割合が非常に高く、ほぼ全員が手を挙げている状態も少なくなかった。公開授業ということで、児童も無意識に張り切っている部分もあるかもしれないが、反応率が高くなるのも、やはりICTを利用した授業の特長だ。教育ICT活用によるアクティブラーニングが実現し、筑波大学附属小学校の児童が、大きく恩恵を受けているのは間違いなさそうだ。

 東京会場に続き、NEE2016は6月17日と18日に大阪マーチャンダイズ・マート(OMM)でも開催。6月17日は、午前10時から11時50分まで大阪教育大学附属池田小学校による算数の公開授業を実施する。公開授業後には授業研究会が実施され、放送大学教育支援センター教授の中川一史氏と神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授の岡部恭幸氏が授業の振返りを行う。公開授業のほか、基調講演や特別セミナーの詳細や事前申込みはNEE2016のWebサイトで確認できる。
《冨岡晶》

冨岡晶

フリーの編集者/ライター/リサーチャー。芸能からセキュリティまで幅広く担当。

+ 続きを読む

【注目の記事】

特集

編集部おすすめの記事

特集

page top