アドビ、教員向けコミュニティサイトを展開…奈良県教委・ライフイズテックが参加

 10月11日、アドビシステムズは「Adobe Education Exchange(AEE)」の国内展開を開始すると発表した。スタート時のメンバーとして奈良県教育委員会がすでに登録し、活動を始めている。教材やワークショップのパートナーには、Life is Tech(ライフイズテック)が協力する。

教育ICT 先生
Adobe Education Exchange発表会
  • Adobe Education Exchange発表会
  • マーケティング本部 副社長 木ノ本尚道氏
  • Adobe Education Exchange発表会
  • マーケティング本部 教育市場部 増渕賢一郎氏
  • 奈良県教育委員会事務局 学校教育課 課長 深田展巧氏
  • 奈良県の取組み
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  • 奈良県教育ICTエバンジェリストの一人、松下征悟教諭(奈良県立磯城野高校)
 10月11日、アドビシステムズは「Adobe Education Exchange(AEE)」日本語版の展開を開始すると発表した。スタート時のメンバーとして奈良県教育委員会がすでに登録し、活動を始めている。教材やワークショップのパートナーには、Life is Tech(ライフイズテック)が協力する。

 AEEは、アメリカ本社が2010年に運用を開始して以降、すでに世界で31万5千人が登録しているという教員向けのコミュニティサイト。ポータルサイト上で、教材や指導書など、学校を超えたリソースの共有、情報交換、QAなどが可能だ。

◆教材や資料を検索&ダウンロード、シェアも可能な教員向けサービス

 アドビでは、これからの児童生徒、学生に必要なスキルとして「問題解決能力」「コミュニケーション能力」「プレゼンテーション能力」が重要だと考えている。そのため、アクティブラーニングがひとつの鍵になるとして、同社のAdobe Creative Cloudに教育機関向けのディスカウントライセンスを用意。フォトショップ、イラストレーター、プレミアプロなど同社のクリエイティブツールが、アクティブラーニングやこれからのICT教育でより広く活用されるよう推し進めていく。しかし、「国内にはまだまだアクティブラーニングの教材が不足している状態」(マーケティング本部 副社長 木ノ本尚道氏)だという。

 AEEは、Adobe IDがあれば無料でアカウントを作成できる。メンバーになれば、AEEにアップロードされている教材や資料を検索したり、ダウンロードが可能になる。コミュニティに質問を投げたり、情報交換も可能だ。必要ならグループを作成し、個別のプロジェクトやコミュニティを作ることもできる。もちろん自分が作った教材や指導書、資料などをアップロードしてもよい。アップロードされるコンテンツは、CCL(クリエイティブコモンズライセンス)に準拠し、作成者がどのライセンスにするかを選択できる。

 国内オープン時は、奈良県教育委員会とライフイズテックの協力により、高校授業向けの各種教材、チュートリアル、教員向けの研修資料などがアップロードされていくほか、大学からのコンテンツ提供も見込まれている。

 アドビが注力するのは、次期指導要領に追加されるカリキュラムの教材だ。具体的には、「アクティブラーニングと情報デザインに関するコンテンツを充実させていく」(マーケティング本部 教育市場部 増渕賢一郎氏)予定だという。プログラミング学習については、同社が開発したPostScriptというページ記述言語を利用した教材を検討中とのことだ。

◆教材やワークショップはLife is Tech(ライフイズテック)が協力

 ライフイズテックは、全国の中高生向けにさまざまなワークショップやセミナーを提供するベンチャー企業。AEEでは、同社が開発した教材やワークショップカリキュラムなども利用できるようになる。記者発表のプレゼンテーションでは、文化祭のポスターをAdobe Creative Cloudのツールを使って作成するというワークショップが紹介された。フォトショップやイラストレーターのチュートリアルになっており、文化祭ポスターを作りながら、文字やイラスト、写真の処理が学べるようになっている。

 奈良県教委は、AEEの国内ローンチにいち早く対応する形になるが、奈良県は都道府県別のICT利活用では最下位となるなど、教育現場のICT化が課題だった。この状況を打開するには、「単にタブレットを導入したりネットワークをつないだりするより、まず教員の教育から始めるべきだ」(奈良県教育委員会事務局 学校教育課 課長 深田展巧氏)と考え、20名の教育ICTのリーダ(エバンジェリスト)を選び、指導方法の転換を図っている。

 今後はAEEの初期メンバーという立場から、奈良県の取組みの中で作られた教材や資料などを積極的に共有展開していく予定だ。アドビとしても、メンバーの拡大、コンテンツの充実などによりコミュニティの活性化を進めるとした。

 実際のコンテンツの事例としては、すでに「奈良TIME」というARコンテンツが出来上がっている。奈良県の依水園という庭園を紹介するもので、スマホを庭園にかざすと説明文などが画面に表示され、立て看板や説明ボードなどの代わりをする。景観を乱したくない、あるいは看板が禁止されている、立てられない場所で役立つだろう。説明文は英語版も用意され、地元のテレビ局でも取り上げられるなど、本格的なコンテンツだ。

 奈良TIMEは、奈良県教育委員会が包括契約したAdobe Creative Cloudによって、学校内の端末でフォトショップ、イラストレーター、プレミアを駆使して作られた。ライフイズテックが担当したワークショッププログラムはAEEに登録すれば利用可能になる。

 アドビでは、1年後を目安に千人のAEE登録メンバーを目指すという。
《中尾真二》

中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。エレクトロニクス、コンピュータの専門知識を活かし、セキュリティ、オートモーティブ、教育関係と幅広いメディアで取材・執筆活動を展開。ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から使っている。

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