警視庁は平成28年7月1日~20日、都内の中高生4,969名を対象にアンケート調査を実施した。有効回答率は95.7%。「けんかをして相手を殴る」「家のお金をだまって持ち出す」など、中高生がしてしまいがちだという11個の問題行動についてどのように考えるかを聞き、「してはいけない」と答えた数が多いグループ(高規範群)、中間のグループ(中規範群)、数が少ないグループ(低規範群)に分けて比較した。
◆高規範群は成長とともに減少
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校種別規範意識
全体では低規範群35.6%、中規範群31.6%、高規範群32.7%とほぼ同じ割合に分かれたが、学年別に見ると、高規範群は中学2年生が43.8%であるのに対し高校3年生は20.8%。低規範群は中学2年生が27.0%であるのに対し高校3年生は49.9%と、高規範群は学年が上がるごとに減少し、低規範群は学年が上がるごとに増加していることがわかった。
さらに、「夜遅くまで友達と遊ぶ」「同級生の1人を仲間はずれにする」などの問題行動9個について、「1人でもしてしまうかもしれない」「友達が一緒ならしてしまうかもしれない」「絶対にしない」のどれに当てはまるかを聞いたところ、「1人でもしてしまうかもしれない」と答えた割合が1割を超えている項目が高規範群はなかったが、低規範群では6個あった。「友達が一緒ならしてしまうかもしれない」と答えた割合が1割を超えている項目は高規範群で2個、低規範群で7個だった。
◆家族との関係が倫理観、将来観にも影響
小学生のころまでの保護者との関係について、「誕生日は家族に祝ってもらった」「保護者は話を聞いてくれた」「困ったとき、保護者に助けてもらった」「良いことをして保護者に褒められた」経験はいずれも低規範群よりも高規範群のほうが多く、「理由がわからず保護者に叩かれた」経験は高規範群よりも低規範群のほうが多かった。
現在の家庭生活は、「友達や学校のことを話す」「家族そろって食事をする」「自分から手伝いをする」は高規範群が多く、「保護者とけんかする」「自分の部屋などで1人で過ごす」「保護者から一方的に叱られる」は低規範群が多かった。高規範群は保護者らと良い関係の中で生活しており、家庭が「居場所」になっているようすがうかがえる。また、「身の安全に気をつけなさい」「決まりや約束は守りなさい」「人には親切にしなさい」など、家族からしつけられた経験も高規範群のほうが多かった。
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「約束を破られた」などの悔しい思いをした経験
一方で、「友達に約束を破られた」「悪いことがしていないのに保護者に疑われた」「学校で持ち物を盗られた」などの悔しい思いをした経験は、低規範群のほうが多かった。
◆低規範群の4人に1人「子どものままでいたい」
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将来の目標や「こうありたい」という気持ち
高規範群は、決まりを守るメリットや「たいていの人は決まりを守っている」などの思いを強く持っており、良くないことをして後悔したなどの経験も多かった。また、将来の目標や理想の人物像など、将来「こうありたい」という気持ちも強かった。低規範群では、「子どものままでいたい」という回答が4分の1を占めた。
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少年が考える「非行などをしない理由」
非行をしない理由を聞くと、高規範群では「家族を悲しませる」「被害者に迷惑をかける」など他者の気持ちへの配慮を選ぶ回答が多かったが、低規範群では「法律で罰せられる」「将来がダメになる」など、自分のことを考える回答が多かった。
調査結果から、高規範群の少年は幼少期からの家族との良好な関係により家族を思いやる心が育まれ、さらに周囲の人たちにも心配りをする態度が形成されたと考えられるという。子どもと保護者の強い絆から他者を思いやる心が育むことができれば、子どもは「してはいけないことは、絶対にしない」という強い心を身に付けてくれるのではと分析している。