「小学生がコーディング?」子どもへの効果と海外教育事情…小中学生プログラミング大会プレイベント

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子ども向けプログラミング教材体験コーナーのようす。ロボットプログラミング教材「アーテックロボ」(株式会社アーテック)に挑戦
  • 子ども向けプログラミング教材体験コーナーのようす。ロボットプログラミング教材「アーテックロボ」(株式会社アーテック)に挑戦
  • 子ども向けプログラミング教材体験コーナーのようす。「アーテックロボ」(株式会社アーテック)ロボットプログラミング教材の教材
  • 子ども向けプログラミング教材体験コーナーのようす。ビジュアルプログラミング言語「MOONBlock」(株式会社UEI)でゲーム制作
  • 子ども向けプログラミング教材体験コーナーのようす。ビジュアルプログラミング言語「MOONBlock」(株式会社UEI)によるプログラミング中の画面
  • 稲見昌彦氏(全国小中学生プログラミング大会実行委員長、東京大学先端科学技術研究センター教授)
  • 石戸奈々子氏(NPO法人CANVAS 理事長、慶應義塾大学准教授)
  • 漆紫穂子氏(品川女子学院 理事長・中等部校長)
  • 樹林伸氏(漫画原作者)
 浜離宮朝日ホールにおいて6月24日、「プログラミング体験キャラバン」が開催された。これは、「第2回全国小中学生プログラミング大会」のプレイベント。2016年夏に実施された第1回大会には、小学1年生から中学3年生まで約130点の応募があった。

 2020年からのプログラミング教育の必修化を前に、2017年8月1日から9月15日までを応募期間とする「第2回全国小中学生プログラミング大会」はいっそうの盛り上がりが予想される。また、そのことを反映し、プレイベントのプログラムとして実施されたシンポジウム「新しい学びと子どもたち」やプログラミング教材体験コーナーなどにも熱い視線が注がれた。

稲見昌彦氏(全国小中学生プログラミング大会実行委員長、東京大学先端科学技術研究センター教授)
「プログラミングというのは『読み書きそろばん』と並んで非常に重要なものかもしれません。また、よくよく考えてみますと、プログラムには『読み書きそろばん』が全部入っているといえるかもしれません。」と語る稲見昌彦氏

 午前10時半から行われたシンポジウム「新しい学びと子どもたち」では、全国小中学生プログラミング大会実行委員長の稲見昌彦氏(東京大学 先端科学技術研究センター教授)が登壇した。稲見氏は小中学生の年代で話題を集めているプロ棋士、藤井四段の快進撃をあげ、「Ponanza(ポナンザ)」というコンピュータ将棋ソフトウェアを開発した山本一成氏との会話を披露。急激にIT技術が進歩する中、子どもたちが自分がつくったプログラムで「自分も楽しく、周りも楽しく、そして世の中の人たちも楽しませられたら」と述べ、そのきっかけとしてプログラミング大会を活用してほしいとした。

◆「気前のいい子」はみんなを伸ばす

 シンポジウムでは続いて、壇上に漆紫穂子氏(うるししほこ/品川女子学院理事長・中等部校長)、樹林伸氏(きばやししん/漫画原作者)、石戸奈々子氏(CANVAS理事長、慶應義塾大学准教授)の3名が登場し、パネルディスカッション「これからの時代の“よく学び、よく遊べ”とは?」を行った。司会は全国小中学生プログラミング大会の実行委員でもある石戸氏が務めた。

 石戸氏はまず、漆氏と樹林氏に「子どもたちにどんな力が大事なのか。そして、そのために大人ができることは何なのか」と議題を提示。

 漆氏は、同様の質問は保護者からもよく問われる質問だという。問いに対する漆氏の答えは、「気前のいい子」に現れている。漆氏は「ラーニングピラミッド」という学習定着率に関する理論を用い、先生の話を聞くだけの一般の授業より、児童生徒同士教えあったほうが学習の定着率が高いという説を体現した、品川女子学院での取組みを紹介した。

漆紫穂子氏(品川女子学院 理事長・中等部校長)
会場では品川女子学院の生徒たちは「保護したペットを一時預かりするアプリ」や「お母さんの有給休暇を娘が申請できるアプリ」を作成したエピソードも披露された 写真:漆紫穂子氏(品川女子学院 理事長・中等部校長)

 漆氏の指摘する「気前のいい子」とは、たとえば定期テスト前にノートを貸してほしいとするクラスメイトの要望に応える子。保護者世代が直接手渡しでやっていたことを、現代の子どもたちはネット上で行っている。そこで、漆氏は品川女子学院の学習方法に「サイボウズを用いたSNS上に、ノートなどのコンテンツをアップして、教員も生徒も見られる」ようにした。「貸してといわれると、気前のいい子は自分のとったノートを出してくれ、そうすると、ほかの生徒が『先生、こういうことも言ってたわ』とSNS上でノートに上書きし、みんなのいいノートができあがります。」(漆氏)

 漆氏は、これからの時代を「集合知の時代」と称する。気前のいい子がいたり、みんなで共有する雰囲気があったりすると、より良い情報が集まってくるという。そのうえで、集合知の発展に欠かせないのは「シェアする力」や「共感力」、「問題発見力」であると説く。このうち、共感力や問題発見力は人工知能(AI)にない力だ。

 これからの時代の課題解決には子どもたち本来の力とテクノロジーの両方を活用することが効果的であり、テクノロジーの活用にはプログラミングという手段が有効と指摘。漆氏は、これからの子どもたちが「みんなが幸せになれる」ようなプランを考えるようになってくれれば、との願いを込めた。

◆「プログラミングを学ぶ」でなく「プログラミングで学ぶ」

 天樹征丸(あまぎせいまる)名義の漫画原作を始め、小説も書き、新作歌舞伎の原作も担当するなど、多彩な活動をする樹林伸氏。同氏はまず、学びは教育から入るのか、興味から入るのか、そのどちらが良いかについて述べた。

樹林伸氏(漫画原作者)
「興味から入って熱中したら、時間を忘れますよね。たとえば、プログラミングに興味を持った子どもは寝るのも忘れて、食べるのも忘れて、集中しますよね。そういうこと。」 写真:樹林伸氏

 樹林氏によると、「人が才能を発揮するのは、明らかに興味から入ったケース」であり、興味をもとに学習した場合は「子どもの熱中力」が発揮される。「集中力というより熱中力ですよね。よく子どもに『勉強に集中しなさい』という親がいますが、勉強に集中するはずがないですよ。嫌いなのに、親に言われて我慢してやっているわけですから。」(樹林氏)

 石戸氏から質問された子どもに必要な能力については、「子どもたちを伸ばすのに何が大切かなと考えると、いちばん大切なのは機会をあたえることでしょうか。いろいろ経験させて、引っかかったらそこに集中させることだと思います」と回答した。

 司会進行の石戸氏は、漆氏と樹林氏による回答ののち、自らが理事長を務めるCANVASが2012年から展開しているプログラミング学習普及プロジェクト「PEG programming education gathering(プログラミング・エデュケーション・ギャザリング)」を紹介。活動が大事にしていることは2つ。「基礎教養としてのプログラミング」と、「プログラミングで学ぶということ」だ。

石戸奈々子氏(NPO法人CANVAS 理事長、慶應義塾大学准教授)
デジタル時代に新しい学びの場を産学連携でつくるため、2002年にNPO法人CANVASを立ち上げた石戸奈々子氏

 「(プログラミングが)必修化されるというと『小学生がコーディングするのですか』とよく質問されますが、音楽の時間があるからといって、みんながミュージシャンになるわけじゃないし、国語の授業を受けたからといってみんなが作家になるわけではありません。それと同じように、基礎教養としてのプログラミングを大事にしています。もうひとつ(大事にしていること)は、あくまでもプログラミングはツールである、ということ。それを使って何を作っていきたいか、何を表現していきたいか、何を学んでいきたいかを大事にしていくことをうたっています。」(石戸氏)

◆早期プログラミングはもはや先進国のスタンダード

 パネルディスカッションに続き、上松恵理子氏による講演「海外のプログラミング教育の最新事情とその背景」が行われた。教育学博士の上松氏は、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授であり、早稲田大学情報教育研究所招聘講師・研究員でもある。

 上松氏が大学の教員になったのはここ数年のこと。それまでは中学・高校で国語の教員をしており、海外のいくつもの国で行われるプログラミング教育を見てきたという。上松氏は当日、各国の教育事情について紹介した。たとえば、イギリスは1995年に「ICT」という教科を作り小学校で教えていたが、2014年に廃止した。

上松恵理子氏(教育学博士、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部 准教授、早稲田大学情報教育研究所招聘講師・研究員)
上松恵理子氏による講演「海外のプログラミング教育の最新事情とその背景」でのようす

 「それでびっくりして、イギリスで取材をしたのですが、廃止になった理由はこうです。それまではWord、Excel、PowerPointの使い方を小学生に教えていたそうですが、そんなものはこれからの未来には何の役にも立たない、ということでした。これからはWordを使ってどうするか、Excelを使ってどうするか、PowerPointを使ってどうするかということが大事で、ただ使いこなせるだけでは仕方がないというのです。そこで、ICTの授業を廃止して、コンピューティングという教科にしたのです。」(上松氏)

 イギリスの小学1年生は、日本でいうと幼稚園年長児にあたる。イギリスやオーストラリアでは、その歳ですでにプログラミング教育が必修化されているのだ。これらの国に限らず、上松氏によると、先進国では「小学校1年生からプログランミング学習に取り組むのはすでに一般的」。

 プログラミング学習の導入にあたり、教員の指導力について不安の声があがっていることについては、「いいヒントがイギリスにありました」と述べる。「それは小学生が、高校生の授業を見学すること。そうすることで、小学生の子どもたちは高校生になるとこんなことをやるのか、と憧れを抱くことにもつながりますし、引率する小学校の先生にとっても、高校のプログラミング学習のようすは、自らの指導の参考になります。」

 同様に、北欧のフィンランドでは2014年からプレ教科としてプログラミング学習に取り組み、2016年から本格的に学校に導入された例をあげた。フィンランドの塾などでは3歳からプログラミング教育を提供しており、BYOD(Bring Your Own Device)も取り入れ、スマートフォンやタブレットなど個人のデバイスを学校に持っていき、クラウド化しているという。同時に、「教員のために教育研修にも力を入れていて、世界の名門大学の講義などをインターネットで無料受講できるMOOK(ムーク)も活用している」という。

 上松氏は海外教育事情について言葉を続ける。

 「先生の負担について、フィンランドは日本よりも恵まれているかもしれません。先生は午後5時くらいに帰れますし、封筒に入った教材費を徴収するといった雑事もありません。フィンランドの保護者は、教材費の支払いなどもクレジットカードで決済できます。

 スウェーデンでは小学校で起業家教育を行い、プログラミングを学び、アプリを開発しています。デンマークは国の政策として2010年から、BYODを100%活用するということを打ち出しています。また、デンマークは試験にスマートフォンの持ち込みが認められています。試験中にインターネットを見てもいいし、トイレに行ってもいいというので、どういうテストかと思ったら、研究論文を書くような問題でした。

 ニュージーランドでは公立小学校5・6年生の正規のカリキュラムで、Fintech(フィンテック)を学んでいます。現金を使わなくなるだろう、ということを学習していました。オーストラリアではひとり1台のデジタルデバイスの使用が学習指導要領に明記されており、幼稚園の年長クラスのときにメールアドレスの使用をはじめ、小学2年生の国語の授業でメールについて学びます。

 シンガポールではAR、VRを授業で活用するのが一般的で、それらを活用し、空気抵抗などを学習。エストニアは小学1年生のスマートフォン普及率90%、小学1年生からプログラミングを学んでいます。」

 上松氏の発言に、教育関係者が多いと思われる会場から軽いどよめきが起こった。海外におけるプログラミング学習が想像以上に進んでいることからくる衝撃だろうか。また、日本では小学校低学年の生徒のスマートフォン普及率はそれほど高いとは思えないので、「小学1年生のスマートフォン普及率90%」に対する驚きも含まれているのかもしれない。

 「世界各国では圧倒的にプログラミング教育が進んでいます。小さいうちから創造力や論理的な力をつけるのは良いことだと思います。親がいなくなってから生きていくためにもプログラミングは大切ですし、これからの時代に必要な基礎的な教養だと思います」とし、上松氏は講演を締めくくった。

◆プログラミングで表現するものは100人100通り

全国小中学生プログラミング大会審査委員長の河口洋一郎氏(CGアーティスト、東京大学大学院情報学環 教授)
全国小中学生プログラミング大会の審査委員長を務める河口洋一郎氏

 シンポジウムの最後には、全国小中学生プログラミング大会の審査委員長を務める河口洋一郎氏(CGアーティスト、東京大学大学院情報学環教授)が登壇。「プログラミングで何をつくるか、何を表現するかというのはとても重要なことです。基礎は同じ数学的・物理的・化学的な世界かもしれませんが、表現するというのは個人の問題。何をプログラミングして表現するか、というのか100人いたら100通りあるはずです。子どもたちに勇気を与えるためにも、プログラミングと表現に期待したいと思います」と述べ、のびのびとした発想に基づく作品の応募を歓迎した。

 2020年から小学校での必修化が検討されているプログラミング教育。その影響からここ最近、各地でプログラミング体験イベントなどが行われたり、プログラミング学習が話題になったりすることが増えてきた印象がある。この先やることになるなら、早くやってみるのもいい。夏休みを活用して、自由研究や工作を交えながら全国小中学生プログラミング大会に応募してみてはいかがだろうか。
《大倉恭弘》

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