プログラミング教育で何をする?何が身に付く? 保護者の疑問を解決

教育・受験 小学生

LITALICOワンダー サービス開発G 和田沙央里氏。LITALICOワンダーでは「さおりん」と呼ばれ、子どもたちから親しまれている。
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  • IT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」
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 2020年にプログラミング教育が小学校で必修化になる動きにあわせて、不安に感じている保護者さまもいらっしゃるのではないでしょうか。首都圏で1,700名の子どもたちが通うIT×ものづくり教室「LITALICOワンダー」でプログラミングのコース設計に携わるなかで、私が出会ってきた子どもたちのお話を紹介しながら、「プログラミング教育って何?」という疑問にお答えしたいと思います。

◆プログラミング教育って何?

 「プログラミング」とは、コンピュータに指示を出して人間の思い描いた働きをさせる方法のことです。少し専門的な話をすると、プログラミングに用いる「プログラミング言語」は一種類ではなく、用途にあわせてたくさんの種類があります。C言語、Java(ジャバ)、Ruby(ルビー)、Python(パイソン)など、耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。ほとんどの言語は別の言語から派生したものなので、1つの言語を習得すればほかの言語を理解するときにも役に立つことが多いです。ただし、より使いやすく、より用途に合った形に向けて現在も言語は進化し続けているため、今流行っている言語も、将来は使われなくなる可能性はあります。

 プログラミングは、プログラマやエンジニアなどの専門職がプログラミングの技術を扱うのはもちろんですが、そのほかの職業でも扱うことはあります。たとえば、一般企業の情報システム課へ配属された、業務効率化でシステム導入することになったなど、身の回りのIT化が進むとそのようなことも増えるでしょう。

 しかし、それだけではありません。テクノロジの発展により、ロボットやAI(人工知能)が人間の仕事に取って代わるということを聞いたことがあるでしょうか。ニューヨーク市立大学大学院センター教授のキャシー・デビッドソン氏は、「子どもたちの65%は将来、今は存在していない職業に就く」と予測しています。既存のルールでできる仕事をコンピュータに作業させ、新しいルールを生み出し、コンピュータと共にまだ見ぬ仕事を創造するのは次世代の子どもたちなのです。

 こういったお話をすると、プログラミング教育が2020年から小学校で必修化される、という話題も手伝い、保護者さまから「早いうちから言語を学ぶべき?」「何歳から始めるのがいいのでしょう?」と聞かれることがよくあります。

 しかし、2020年に小学校で必修化されるプログラミング教育については、文部科学省が6月に公表した新学習指導要領解説のなかで「プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動とは,子供たちが将来どのような職業に就くとしても,時代を超えて普遍的に求められる力としての『プログラミング的思考』の育成を目指すものであり,プログラミングのための言語を用いて記述する方法(コーディング)を覚え習得することが目的ではない。」(文部科学省「小学校学習指導要領解説」総合的な学習の時間PDF 60頁)と明記されています。

 つまり、プログラミング教育とはプログラミング言語を覚えたり、プログラミングの技能を習得したりといったことが目的ではなく、プログラミングを体験しながら、コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けることだと示しているのです。

 これは、小学校教育におけるプログラミング教育とは、プログラマになるための専門技術を覚えることが目的ではない、という意味だととらえられます。実際に、たとえばプログラミング言語もMITメディアラボが開発して日本語にも翻訳されているブロック型の「Scratch(スクラッチ)」、文字のないビジュアル言語の「Viscuit(ビスケット)」、ロボット制御型の教材など、教育現場ではコーディングにこだわらずとも論理的思考力を身に付けることができるさまざまな教材が利用されています。

◆プログラミングで身に付く「論理的思考力」とは

 プログラミングの基本的な考え方には「ルールに従って過不足なく指示を出すこと」と「なるべく抽象化して指示を短くすること」というのがあります。たとえば、料理が得意な人に「カレーとサラダつくっておいて」と言えばよしなにやってくれるはずですが、料理をしたことない人につくってもらうことを想像してください。「まずカレー用の野菜を洗って、まな板と包丁を使って切り…」と説明しなければなりません。そのうち、「あ、先にご飯を炊いておくよう指示出すんだったんだ」という『指示の抜け漏れ』や『順序間違い』、そして「カレーとサラダどちらも人参を入れるから最初に別々に切っておいてもらえばよかった」という『効率の悪さ』が出てきます。コンピュータは料理をしたことない人と同じ状態のため、抜け漏れなく効率的に指示を考える必要があります。

 これを論理的思考力そのものだと私たちは考えています。実際にLITALICOワンダーに通っている小学生の子のなかには、スポーツクラブでエラーをしたときに、「プログラミングのように何かエラーの原因があるにちがいない!」とチームメイトと考えるようになったり、とパソコンに向かってゲームをつくるスキル以外の力が養われていることを実感しています。

◆プログラミングだからこそ伸ばせる主体性創造性

 実際のところ、論理的思考力はプログラミングだけで伸びるものでもありませんし、もしかしたら論理パズルや数学、作文などの方が効果的かもしれません。一方でプログラミングだからこそ伸ばせる力もあります。

 まずはプログラミングの体験が子どもにとって圧倒的に好奇心をかきたて、主体性を引き出すものだということです。「この習い事だけは続くんです」という保護者さまの声や、ゲームを制作するなかで自然と高校数学の三角関数を学ぶに至った中学生もいました。

 ほかにも、子ども自身の手で大人をも驚かす何かを創造する(たとえそれがゲームであったとしてもその子の身の回りの大抵の大人はつくれないでしょう)機会や経験を手に入れられることです。前述の通り、将来まだ見ぬ仕事を創造するのは今の子どもたちです。子どもたち自身がクリエイティブな発想を形にする手段を持つことは大きな力になると考えています。

◆プログラミング教育の可能性…才能を秘めた子どもたち

 LITALICOワンダーには、学習することが得意で大好きな子どもたちだけが通っているわけではありません。むしろ、勉強や運動、コミュニケーションなどに苦手があり、家でゲームばかりしているような子たちも多く通っていています。

 なかには、ADHD、自閉症などといった発達障害のある子どもたちもいますが、持ち前のこだわりの強さや過集中、視覚情報の強さなどが「障害 」ではなく「強み」として発揮され、大活躍しています。人との会話にしんどさを感じる子が作品を通して自然と他人に話しかけられるようになったケースや、長らく不登校の子がインターネットを介して作品を発信し、教室内だけでなく国内や海外からも高い評価コメントをもらって自信がついた結果、高校進学を決めたケースもあります。学校などの日常生活では勉強や運動が得意な子の個性は注目されますが、そうでない子は埋没してしまいます。プログラミング教育が広まるということはそういった子どもたちの個性が注目される新しい機会ができたとも言えます。

 教室に通っている子どもたちのなかには中学生のうちからゲーム会社で働くことが夢だという子もいますし、実際に専門的に学べる高校などを受験し、進路を決めた子もいます。一方で、「プログラミングを続けてみて、やっぱり自分はプログラミングじゃなくて絵を描くことが好きだとわかった」という子もいました。プログラミングで何かをつくるということは、文章を構成することも絵を描くことも計算することも実験することも音楽をつくることもデザインすることも経験します。さまざまなことを横断的に経験するなかで、その子自身が心から好きなことや得意なことを見つけることが、その子の将来の幸せにつながるのではないでしょうか。

◆2020年のプログラミング教育、一体何が行われるのか

 総務省の「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業で、LITALICOワンダーが小学生向けのプログラミング講座を実施したところ、学校現場の先生から一番に言われたのは「こんなに子どもたちが目を輝かせて休憩もとらずに集中するなんてびっくりです」ということでした。

 一方で「理想的だとは思いますが、とても学校現場では実施できるイメージが持てません」という厳しいお言葉もいただいています。学校にもよるかと思われますが、小学校のプログラミング教育では専門技術の習得を目的とせず、子どもたちが教科をまたいで学ぶことができ、教えられるだけではなく、自ら学んでいく力が育ち、論理的思考を育むためのツールとして徐々に導入されるのではないでしょうか。すべての子どもたちがプログラミングを好きになる必要はありませんが、せめて「プログラミング」が何モノなのか知る、最初のきっかけは、難しくて遠いものではなく、楽しくて身近なものであってほしいと願っています。

◆まだ見ぬ社会にわくわくすること

 私自身、子どものころにまさか大人になって小学生向けのプログラミング教室の指導員の仕事をやっているとは思いませんでした。入塾したてのある男の子の最初の夢は「ゲーム会社の人になること」だったのですが、プログラミングが得意になり、同じようにプログラミングが得意な異年齢の親友ができたことで「2人で会社を立ち上げること」が夢に変わった例もあります。 プログラミングという、何かを自分でつくるための武器を手に入れることによって、「もしかしたら身の回りの社会は自分たちの手でいい方向に変えられるかもしれない」と希望を持つ子どもたちが増えたらいいなぁと感じています

LITALICOワンダー サービス開発G 和田沙央里(わだ さおり)
広島県生まれ。神戸大学発達科学部にて発達心理学・教育心理学を専攻し、卒業後は都内の大手IT企業で金融系基幹システムの開発に携わる。2014年に株式会社LITALICOに入社。開設当初のIT×ものづくり教室LITALICOワンダーでゲーム&アプリプログラミングコースのカリキュラム・授業設計を統括する。2016年度は総務省「若年層に対するプログラミング教育の普及推進」事業のプロジェクト責任者を務めた。自宅でWebサイトのつくりかたを独学で学び、コンピュータを使ってゼロから何かをつくり、世界へ発信することの面白さを子どものころに体験した。

《和田沙央里》

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