SNS活用で「いじめ相談体制」H30年度より試行開始

 文部科学省は8月28日、「SNSを活用した相談体制の構築に関する当面の考え方」に関する中間報告を文書で公表した。児童生徒がいじめなどの悩みについてSNSを活用して相談できる体制を構築していくにあたり、来年度を目処に試行的に実施する際の留意点などをまとめている。

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  • 「SNSを活用した相談体制の構築に関する当面の考え方」中間報告(画像は中間報告の一部、全文は文部科学省Webサイト内で閲覧できる)
 文部科学省は8月28日、「SNSを活用した相談体制の構築に関する当面の考え方」に関する中間報告を文書で公表した。児童生徒がいじめなどの悩みについてSNSを活用して相談できる体制を構築していくにあたり、平成30年度(2018年度)を目処に試行的に実施する際の留意点などをまとめている。

 文部科学省では、いじめなど児童生徒からのさまざまな悩み相談に関してSNSを活用する利点・課題について検討を行う「SNSを活用したいじめ等に関する相談体制の構築に係るワーキンググループ」を開催しており、今回ワーキンググループが取りまとめた中間報告を公表した。近年スマートフォンの普及に伴い、若年層が用いるコミュニケーション手段としてSNSが圧倒的な割合を占めていることから、従来の24時間子どもSOSダイヤルなどに加え、今後SNSを活用した相談体制の構築を行うことが喫緊の課題だという。

 体制構築にあたり、将来的には24時間365日相談を受け付ける体制が望ましいが、相談員のマンパワーや人件費などを考慮し、中間報告では、平成30年度を目途に国によるモデル事業として試行的に一部の学校や地域で実施する案を提示。相談体制の構築に対する当面の考え方や具体的な留意点などを示した。全国展開については、試行的な実施結果を検証し、技法の改善を図ったうえで検討すべきとしている。

 相談システムに用いるSNSやアプリの選定については、現時点で未定。児童生徒への普及の度合いや学校を通して普及させることの実現可能性、児童生徒の活用のしやすさ、適切かつ円滑な対応が可能かどうかなど、多方面から課題を考慮し、多様なSNSやアプリの中から今後具体的に選定するという。運営にあたっては、システム設計や構築を含め、SNSやアプリ事業者の協力が得られることが望ましいとし、知見や技術を有する民間団体への相談業務委託や民間団体と連携をはかりながら相談体制を構築することも有効であるとしている。

 相談対象者は当面、児童生徒のみを想定。学校へのスマートフォン持込みや深夜使用の弊害があることから、相談時間は平日の午後5時から午後10時程度に限定することや、児童生徒の気持ちが落ち込みやすい長期休業明け前や日曜日などに受け付ける案を提示。緊急の相談に限り24時間365日受け付ける方法も検討するという。SNSによる相談は、気軽に自分の気持ちを伝えられるメリットがある一方、電話と異なり声から児童生徒の心理状態を把握できないデメリットもある。匿名性を確保しつつ、まずは相談にのってほしいという気持ちに寄り添いながら、状況に応じて音声通話や面接での相談につなげることも考慮するという。

 なお、従来の24時間子どもSOSダイヤルでは、知識や経験を有する臨床心理士・教員経験者などが相談に対応しているが、SNS相談体制では加えて「SNS世代」の学生など若年層のコミュニケーション事情に精通した人物を組み合わせた相談体制を整備することが効果的であるとしている。SNSをめぐる環境は目まぐるしく変化しているため、相談員に対して定期的な研修を実施するなどフォロー体制も必要となる。

 利用にあたっては、児童生徒が安心して相談できるよう、個人情報や相談内容などプライバシーが確実に守られることを明確に示す必要がある。ただし、児童生徒の生命や身体の安全が害されるおそれがある場合や、緊急の対応が必要な場合には、児童生徒を守るために学校や関係機関と情報共有しつつ対応する必要もある。SNSでは位置情報の開示が原則困難であることから、特に、自殺をほのめかすなど命に関わる相談で地域が特定できないケースも想定される。そうした場合の対応要領について事前に決めておくことが必要だとしている。

 実施にあたっては、スマートフォンを所有しない児童生徒への対応や、時間外の相談への対応、同時に複数の相談が来た場合の対応など、さまざまな課題が浮き彫りになっている。SNSによる相談体制を新たに構築することで、24時間子どもSOSダイヤルなど現在実施されている相談窓口をさらに充実させ、悩みを持つ児童生徒の選択肢を増やす相乗効果を生み出すことが望ましい。そのため、利用開始にあたっては、すぐに対応できない場合もあること、緊急時は必ず24時間子どもSOSダイヤルなどを用いることなどを児童生徒にわかりやすく伝えることが必要であり、配布物などを用いて周知徹底することが重要だとしている。

 中間報告の文書は、文部科学省のWebサイトで閲覧できる。
《畑山望》

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