親子で学ぶ秋の「社会旅」京都編、中学入試頻出ポイントを指南…SS-1馬屋原吉博先生

 中学受験 個別指導のSS-1で社会の教務主任を務める馬屋原吉博先生に、中学受験と記憶に効く秋の親子「社会旅」について、中学入試の社会担当者として推薦したい行楽地を指南してもらった。

教育・受験 小学生
中学受験 個別指導のSS-1で社会の教務主任を務める馬屋原吉博先生に、親子で行く秋の「社会旅」のポイントを聞いた(画像はイメージ) 撮影:浜田尚志
  • 中学受験 個別指導のSS-1で社会の教務主任を務める馬屋原吉博先生に、親子で行く秋の「社会旅」のポイントを聞いた(画像はイメージ) 撮影:浜田尚志
  • 中学入試の「ド定番」!頻出はこの4選 監修:中学受験 個別指導のSS-1 馬屋原吉博先生
  • 中学受験 個別指導のSS-1 社会・国語教務主任 馬屋原吉博(うまやはら よしひろ)に話を聞いた
  • 平等院鳳凰堂 提供:中学受験 個別指導のSS-1
  • 聖徳記念絵画館 壁画「大政奉還」邨田丹陵 筆 公爵徳川慶光 奉納 慶応3年10月14日(大政奉還)京都二条城二の丸御殿大広間一の間 明治神宮聖徳記念絵画館
  • お母さまの悲痛な叫び、解決は「順番」に注目(画像はイメージ)
  • 「最澄」×「天台宗」→「比叡山延暦寺」!京都盆地との位置関係を確認しよう 画像出典:地理院地図3D「立体地図」
 読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋…。旅行や行楽シーズンに最適な季節がやってくる。この時期にしか見ることができない「紅葉」は、子どもにとって立派な教材になりうる。季節の移ろいを感じながら、親子で「社会旅」に出かけてみてはいかがだろうか。

 中学受験 個別指導のSS-1で社会の教務主任を務める馬屋原吉博先生に、中学受験入試と記憶力アップに効果的な親子旅のポイントと、中学入試の社会担当者として推薦したい行楽地を指南してもらった。

親子社会旅の課題:お母さまの悲痛な叫びあるある



 生徒さんと話している中で「地名」が登場すると、なにげなく「ここ行ったことある?」と聞いてみることにしています。そんなときにお子さんが見せる頻出のリアクションNo.1。それは「おそるおそる後ろにいる親御さんの顔色を疑う」です。
そのときのお母さまの、

お母さまの悲痛な叫び、解決は「順番」に注目(画像はイメージ)
「あんた、そこ連れて行ったじゃない!」

 というもの哀しいセリフ。今まで何度も耳にしてきました。将来的に中学受験に取り組もうとされている親御さんの多くが、早いうちから、お子さんをいろいろな場所に連れて行っています。

 ただ、残念なことに、その貴重な経験を自発的に社会の学習に結び付けているお子さんは非常に少ないのが現実。

 どうやらこれは順番の問題のようです。

 大人であれば誰しも経験したことがあるかもしれませんが、あらかじめ、知識として知っている場所に実際に行ってみると、「あぁ、ここがあの場所だったんだー」と感じるわけです。

 地名・建物名という固有名詞に、実際の場所の景観や空気感といったものが結び付くと、一気に忘れにくい記憶になります。逆に、知りもしない場所に連れて行かれても、よほどインパクトのある場所でない限り「ふ~ん」で終わってしまう可能性が高いわけです。

 そう考えると、中学受験生を旅行に連れて行くもっともよいタイミングは、地名に関する知識を叩き込まれた6年の秋ということになるのですが、それはそれで入試直前期。「旅行なんか行ってられるか!」ということで、なかなかうまくいかないものです。

親子社会旅のポイント:せっかく行くなら「記憶に残りやすいところ」



 では、お子さんがまだ小さいうちにいろいろなところに連れて行くのは「ムダ」なことなのでしょうか。

 すでにお子さんと多くの場所を回られているお母さま、お父さま、ご安心ください。お子さんたちとじっくり話していると、どうやらそうでもないようです。要するに、自分の体験はしっかり覚えているのだけれど、それが固有名詞と結びついていないだけ、ということがほとんどなのです。

 たしかに、ろくに知識もない状態で、日本各地の城に連れて行かれたとしても、姫路城くらいのインパクトがない限り、なかなか城同士の違いを認識できるお子さんは少ないでしょう。逆に言えば、お子さんたちは、インパクトのある経験自体は本当によく覚えています

 たとえば、そこが「十勝平野」であると認識していなくても、空が暗くなるまで一心不乱にじゃがいもを掘った経験は覚えている。そこが「佐渡島」であると認識していなくても、目をキラキラさせながら川で砂金を探した経験は覚えている…。それが多くのお子さんたちの等身大の姿です。

 そう考えると、中学入試の社会担当者としてオススメできる行楽地は、「中学入試で話題に上がる頻度が高い場所」で、かつ「記憶に残りやすい場所」ということになりそうです。

 必然的にド定番ともいえる場所が多くなりますが、今回はその中でも定番中の定番、「京都」付近のオススメ行楽地をいくつかあげてみたいと思います。


中学入試頻出地名:京都市編



 中学入試で頻繁にお目にかかる京都市付近の地名や建物名は以下の通りです。

・「足利義満」×「北山文化」→「鹿苑寺金閣」
・「足利義政」×「東山文化」→「慈照寺銀閣」
・「舞台」×「坂上田村麻呂」→「清水寺」
・「徳川慶喜」×「大政奉還」→「二条城」


 観光地としても定番なこの4か所が、そのまま入試でも「定番」のラインナップです。

 また、京都市からは少しだけ離れますが、

・「藤原頼通」×「宇治」×「浄土」→「平等院鳳凰堂」
・「最澄」×「天台宗」→「比叡山延暦寺」


 あたりも頻出です。

 それぞれ、それなりに離れた場所にあるので、一回の旅行で上記のすべてを回るのは難しいでしょう。とはいえ、せっかくお子さんと旅行に行かれるのであれば、上記のうちのいくつかは行程に加えてみてください。

 それでは、それぞれの地名や建物について、中学受験のみならず、お子さんがわくわくするようなネタをハサミながら解説します。

中学入試の「ド定番」!頻出はこの4選 監修:中学受験 個別指導のSS-1 馬屋原吉博先生
中学入試の「ド定番」!頻出はこの4選

金閣・銀閣


 公家の文化と武家の文化が融け合う「鹿苑寺金閣」と「慈照寺銀閣」は、それぞれ室町時代の「北山文化」と「東山文化」を代表する建造物です。見た目のインパクトが強い方が記憶に残る(=連れて行く甲斐がある)と考えると、やはり金閣を優先することになるでしょうか。てっぺんで羽を広げる「鳳凰」の姿も目に焼き付けておきましょう。慈照寺の中にある観音堂(銀閣)や書院造の体現ともいえる東求堂も入試では頻出ですが、実際に足を運ぶのは、「わび・さび」の良さが感じられるようになってからでも良いかもしれません。

清水寺


 「十一面千手観世音菩薩」、通称「観音さま」をご本尊とする「清水寺」。ことわざで有名な「清水の舞台」にのぼる経験は、お子さんの記憶にも残りやすいでしょう。秋の紅葉はもはや絶景です。ちなみに、この「舞台」で行われる舞や雅楽などは観音さまにご覧いただくものなので、この清水の舞台は外を向いています。人間用の客席はありません。また、この寺は、平安時代初期の征夷大将軍・坂上田村麻呂ゆかりの寺でもあります。「舞台」を降り、音羽の滝を過ぎたところに、坂上田村麻呂率いる朝廷軍と戦った蝦夷の指導者アテルイと、彼の右腕であったと言われるモレの慰霊碑が立っています。知らなければ素通りしてしまう可能性もありますので、受験生は“勉強”としてしっかり見ておきましょう。

二条城



聖徳記念絵画館 壁画「大政奉還」邨田丹陵 筆 公爵徳川慶光 奉納 慶応3年10月14日(大政奉還)京都二条城二の丸御殿大広間一の間 明治神宮聖徳記念絵画館
「大政奉還」筆:邨田丹陵

 江戸幕府十五代将軍・徳川慶喜が「大政奉還」を発表した「二条城」も、中学入試に登場しやすい場所です。有名な「大政奉還図」に描かれている二の丸大広間を、その豪華な障壁画とともに目に焼き付けておけば、「大政奉還が行われた二条城はどこにありますか?」という問いにもすぐに答えられそうです。

平等院鳳凰堂



十円玉にデザインされている「平等院鳳凰堂」

 京都駅から電車で約30分かけて宇治に行くと、十円玉にデザインされている「平等院鳳凰堂」があります。混雑時には少し大変かもしれませんが、せっかく行くなら鳳凰堂の内部まできちんと拝観しておきましょう。内部を見るのと見ないのでは印象が大きく変わるので、ここで拝観料300円(小学生)をケチってはいけません。

 難関中学の入試では、日本における仏教の変遷についても大まかに扱われます。平安時代中期、阿弥陀如来を信仰することで浄土へ行くことを願う「浄土教」が、おもに貴族の間に広がります。父・道長とともに藤原摂関政治の全盛期を築いた関白・藤原頼通が地上に浄土を再現しようとしたのが、この平等院鳳凰堂です。ちなみに、受験生には、同時期、同じく阿弥陀さまを信仰するために奥州藤原氏が平泉に建てたのが「中尊寺金色堂」だというところまで教えます。

 鳳凰堂の中央部には高さ約27メートルの阿弥陀さまの像が安置されています。そしてその阿弥陀さまの頭上を飛び交う(レプリカも含めて)52体の「雲中供養菩薩」も必見です。

 また、鳳凰堂の奥にある博物館「平等院ミュージアム鳳翔館」もスルーしてはいけません。ここには国宝が3つ(3セット)も展示されています。そのうちのひとつは、先ほどの「雲中供養菩薩」です。52体のうちの実物26体が展示されていて、間近で見ることができます。観光地に行ったときに「国宝」と聞いただけで少し鼻息が荒くなるようでしたら、立派な社会オタクです。残念ながら(?)鳳翔館はカメラ撮影禁止ですので、目に焼き付ける準備をしましょう。「国宝」の認定を受けるのはそれだけ大変なことなのです。とはいえ、特に目に焼き付ける準備などしなくても、平安時代に生まれ、今もなお静かにたたずむ一対の「鳳凰」の姿は、お子さんにも何かを訴えてくるものと思います。

比叡山延暦寺



「最澄」×「天台宗」→「比叡山延暦寺」!京都盆地との位置関係を確認しよう
比叡山はどこ?京都盆地・琵琶湖との位置関係を明確に 画像出典:地理院地図3D「立体地図」

 「平安時代初期に最澄が開いた寺は何か」「白河上皇の天下三不如意の一つ、山法師とはおもにどこの寺の僧兵を指すか」「織田信長が焼き討ちにした寺は何か」など、さまざまな角度で問われる「比叡山延暦寺」。ここは滋賀県ですが、金閣や清水寺などとともに世界遺産「古都京都の文化財」の中に含まれます。そのため、複数の都道府県にまたがる世界遺産を問われた場合、この「古都京都の文化財」も解答の対象になります。要注意です。

 比叡山に至る交通ルートはいくつかありますが、秋の紅葉を楽しむのであれば、大きい窓から絶景を楽しめる叡山電鉄がオススメです。叡山電鉄で八瀬比叡山口まで行き、そこからケーブルカーとロープウェーで比叡山頂を目指しましょう。

 中学受験を意識した場合、ここに行くことの価値は、歴史はもちろん、地理の理解を深められることにもあります。京都(平安京)から北東に山ひとつ越えれば、そこにはもう琵琶湖が広がるということ、そして後ろを振り返れば、盆地というものがどういうものかを体感で理解することができます。まさしく「百聞は一見に如かず」です。

親子社会旅へ出発:学習効果を高めるこの一言



 さて、いかがでしたでしょうか。秋の京都というと、やはり紅葉。受験などを意識しなければ、東福寺や天龍寺、実相院といったお寺巡りも良いですね。

 もちろん、上記の内容が参考になればうれしく思いますが、せっかくお子さんと旅行に行かれるのであれば、受験はそこまで意識せず、親子で行ってみたいところに行くのがいちばんかもしれません。

 最後にひとつだけ。

 どこに行かれるにせよ、実際に家を出る前に、「今回はここに行こうと思っているんだ、お母さん・お父さんはここにいってこれを見たいんだ!」という話ができていると、よりお子さんの印象に残りやすいのは確かなようですよ。

 この秋、親子で良い時間が過ごせると良いですね。

中学受験 個別指導のSS-1 社会・国語教務主任 馬屋原吉博(うまやはら よしひろ)
中学受験専門のプロ個別指導教室SS-1で教務主任として社会と国語を担当し、筑駒・開成・桜蔭をはじめとする難関中学に多くの生徒を送り出している。必死で覚えた膨大な知識で混乱している生徒の頭の中を整理し、テストで使える状態にする指導方法が好評。バラバラだった知識と知識がつながりを持ち始め、みるみる立体的になっていく授業は、生徒はもちろん参加している保護者にも人気がある。中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員。近著「CD2枚で古代から現代まで 聞くだけで一気に分かる日本史」(アスコム)、「頭がよくなる謎解き社会ドリル」(かんき出版)はいずれも版を重ねている。
《馬屋原吉博》

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