公立中の制服、競争で安価に…学校8割は販売店の定期見直し実施せず

 公正取引委員会は平成29年11月29日、公立中学校における制服の取引実態に関する調査結果を公開した。学校に対し、コンペや入札、相見積もりといった方法で制服メーカーや指定販売店などを選ぶように要請している。

教育・受験 中学生
制服メーカーの指定の状況
  • 制服メーカーの指定の状況
  • 学校が指定している制服メーカー数
  • 指定販売店等の定期的な見直し
  • 学校が案内する指定販売点等の販売店数別の平均販売価格
  • 制服一式の販売価格
  • 制服一式の種類別の販売価格
 公正取引委員会は平成29年11月29日、公立中学校における制服の取引実態に関する調査結果を公開した。公立中学校の制服取引において独占禁止法または競争政策上問題となるおそれのある取引慣行の有無を調査したもので、競争が有効に機能するよう、学校が取り組むべき内容などを取りまとめた。

 公立中学校へ入学する際、一般的に保護者は学校が指定した制服を購入する。しかし、制服の購入にかかる費用は比較的高額であることに加えて、近年は生地価格値上げの影響を受けて、制服販売価格が上昇傾向にあるという。総務省統計局調査をもとに公正取引委員会が制服販売価格の全国平均額推移をまとめたところ、男子生徒制服は平成19年に2.8万円だったところ、平成28年には3.3万円へ、女子生徒制服は平成19年に2.7万円だったところ、平成28年には3.2万円へ上昇していることがわかった。

 このような状況を踏まえ、公正取引委員会は平成28年12月から平成29年7月にかけて、公立中学校の制服取引の実態を明らかにするため、入学者選抜を実施していない公立中学校600校と制服メーカー、販売店などを対象に、書面調査および聴取調査を実施。このうち、書面調査を行った学校からは447校の回答を得た。

メーカー指定校は21.3%、指定社数最多は1社のみ



 回答があった学校のうち、制服を指定している学校441校。制服メーカーを指定している割合は21.3%だった。そのうち、メーカーの指定数は1社がもっとも多く68.1%。指定メーカーを増やしたほうが価格面での競争効果が期待でき、保護者の選択に幅が生まれるなどの理由から、2社もしくはそれ以上を指定しているという学校は28.7%だった。また、公正取引委員会によると、制服メーカーを指定している学校はメーカーの見直しを行っていないことが多く、指定の経緯が不明瞭であることもあった。

指定販売店の見直し、8割は定期的に行わず



 学校に対し、指定販売店などの定期的な見直しを行っているか聞くと、83.6%は定期的な見直しを行っていないと回答。定期的に見直しを行っているとした16.1%の学校でも、見直しの対象は指定販売店の経営状況や取扱商品の確認を行うのみで、直近5年における指定販売店の変動はあまりみられなかった。

 定期的な見直しが行われていない理由には、「地域の販売店が限られている」「現状の販売店について不都合がない」「保護者からクレームが寄せられていない」「ほかの販売店からの参入の申入れがない」「『代々ここの業者だから』とか、3年間着用できるものを提供してもらわないと困るという事情があるので、価格についてあまり言えていないのかもしれない」などがあがっている。

 なお、学校が案内する指定販売店が4販売店以上の場合の平均販売価格は、案内する指定販売店が1販売店の場合の平均販売価格よりも安い傾向にあった。

ブレザーや独自仕様で高額傾向



 制服一式のもっとも多い販売価格帯は、男女ともに3万円以上3万5,000未満。男子は詰め襟、女子はセーラー服よりもブレザー一式の場合に高価格になる傾向が見られた。これはブレザー一式の場合、学校独自の形状や色柄、エンブレムやボタンだけでなく、ネクタイやシャツ、ベストなども指定されることに理由がある。

 公正取引委員会は調査を受け、制服価格の決定には制服メーカー間および販売店間の競争が有効に機能するよう、学校に対しコンペや入札、相見積もりといった方法で制服メーカーや指定販売店などを選ぶように要請。学校が指定販売店を案内している場合は、指定販売店を増やすことが望ましいとした。

 同委員会はTwitter公式アカウントで「競争が促進されることにより、保護者が安価で良質な制服を購入することができるようになることが期待されます」とコメント。今後、学校関係者らに対して積極的に調査結果を周知し、制服の取引における公正な競争を確保していくとしている。
《佐藤亜希》

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