子どもにはいつも減点法ではなく加点法で
私は、親戚のなかで勉強もスポーツもいちばんできない子どもでした。姉もいとこたちも学校トップの成績で、それに比べてお前は、と言われ続けてきたのです。
でも本当に小さな成功体験をきっかけに、少しずつ変わっていったように思います。
小学生の時、先生が冗談で算数の難しい問題を黒板に書いて、
「これが解けたらすごいぞ」
と言い残して出ていったことがありました。友だちと休み時間に遊びながらも、私はその問題をずっと考え続けていました。その結果、解くことができ、先生からものすごくほめてもらいました。それから算数が好きになったように思います。
また、スポーツはずっと苦手だったのですが、中学生の時、勇気を出してバスケットボール部に入りました。練習するうち、やがて意外にも自分が走れることに気づきました。そして、短距離はその頃も遅かったけれど、長距離なら何とかなるかもしれないと、がんばったのです。するとそのうち1,500メートル走で、クラスで一番になることができました。
さらに、今度は筋力を鍛えてみようと思い立ちます。昔は鉄棒にぶら下がったらそのままで、逆上がりすらできなかったのです。ところがトレーニングを続けたところ中学3年生の運動能力検定では、すべて1級を取ることができました。
私の例に限らず、このような経験をされた方は多いのではないでしょうか。子どもはほんの少しのきっかけで大きく変わります。だから減点法ではなく、いつも加点法で考えてあげてほしいのです。
自分の子どもなんだから絶対に大丈夫
100点という満点から比べるのではなく、たとえ30点でも「ここまでできたね」といったんは認めてあげます。そのうえで改善点を探っていくのです。
時には、勉強しているお子さんの横に座り、
「がんばってるわね。でもこの式を書いてから、次に進めなくて困っているみたいね。この式で何が出たの?」
とか、
「問題文をもう一度読み直して、使ってない数字や条件があるか確認してごらん」
というようなアドバイスをしてあげてください。
そこで子どもがもし質問にうまく答えることができなくても、
「惜しかったね。でも、ここまで考えられたんだから大したものよ」
「ちゃんと納得できるまで考えようとしているのね。感心ね。そういう努力は必ず実を結ぶわよ」
というほめ言葉を子どもにかけます。なかなかほめることができない時でも、
「一生懸命お母さんに説明しようとしてくれたのね。そういう気持ちがうれしいわ」
と、ねぎらってあげてください。
必要なのは、自分の子どもだから大丈夫という絶対的な信頼感です。それにより子どもも、自信を失った時やつらい時でも、自分を信じてがんばり続けることができるのです。
御三家・灘中合格率日本一の家庭教師が教える 頭のいい子の育て方
<著者プロフィール:西村 則康(にしむら のりやす)>
名門指導会代表 中学受験相談局主任相談員 塾ソムリエ.。30年以上、難関中学・高校受験指導を一筋に行う家庭教師のプロフェッショナル。一つの解法を押しつけるのでなく、その子に合った方法を瞬時に提示する授業で毎年多数の生徒を最難関中学の合格に導く。これまでに男子御三家の開成、麻布、武蔵、女子御三家の桜蔭、女子学院、雙葉をはじめ、灘、洛南高附属、東大寺学園、神戸女学院などの難関校に合格させた生徒は2,500人以上にものぼる。受験学習を、暗記や単なる作業だけのものにせず、「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込んでいく「名門指導会」の授業は、いずれの講師も翌年まで予約が殺到するほどの人気を誇る。また、授業を通して親子の絆を深めてほしいと、父母と子どものコミュニケーション術や声かけ法についてもアドバイスしている。家庭教育雑誌や新聞などに頻繁に登場し、情報発信も積極的に行う。特に16万人のお母さんが参考にしている中学受験No.1サイト「かしこい塾の使い方」では、保護者の質問一つずつに丁寧に答えることをライフワークとしている。