【NEE2018】英語4技能、大学入試改革のこれまでとこれから…吉田研作氏・青山智恵氏・Qu Min氏

 東京ファッションタウンビル(TFT)で行われたNEE2018のうち、上智大学言語教育研究センター長である吉田研作氏による講演のようすを取材した。

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NEE2018のセミナーで登壇した、上智大学言語教育研究センター長の吉田研作氏
  • NEE2018のセミナーで登壇した、上智大学言語教育研究センター長の吉田研作氏
  • CLILの可能性 画像出典:上智大学言語教育研究センター長 吉田研作氏 NEE2018講演スライド
  • SELHiは生徒の大学受験に有益だったか
  • 生徒の英語能力は向上したか
  • 生徒の学習意欲や態度は向上したか
  • ケンブリッジ大学英語検定機構 試験開発部門 日本統括マネージャーの青山智恵氏
  • ゲストスピーカーとして登壇した、ケンブリッジ大学英語検定機構 東アジア統括ディレクターのQu Min氏
 「これまでリーディングとリスニングだけだった英語が、2020年のセンター試験からは、スピーキングとライティングも必要になるらしい」―。2017年から2018年にかけて、そのような話題が子どもと保護者の間でも注目されるようになった。

 より詳しく記すならば、現行の大学入試センター試験に代わり、2020年度(平成32年度)から導入される新テストである「大学入学共通テスト」では、センター試験の運営主体である大学入試センターが出題する問題と併用し、「読む(Reading)」「聞く(Listening)」だけでなく、「話す(Speaking)」「書く(Writing)」も加えた「英語4技能」を測定する民間の英語資格・検定試験のスコアを活用する方針が定められている、ということ。英語だけでなく、数学と国語で記述式を導入する点も注目されている。新テスト1期生となるのは、2018年度時点で高校1年生に相当する生徒。何がどう変わるのか、情報収集に熱心な家庭も多いことだろう。

 2018年6月7日から9日まで、東京ファッションタウンビル(TFT)で開催された教育関係者向けイベント「New Education Expo 2018(NEE2018)」では、上智大学言語教育研究センター長である吉田研作氏が登壇し、これまでとこれからの英語教育について展望を述べた。

過去にも議論、英語教育の重要性



 吉田研作氏は過去、文部科学省「『英語が使える日本人』の育成に関する行動計画」第1研究グループリーダーや、SELHi企画評価会議協力者を務めた経験を持つ。

 「SELHi(セルハイ)」とは、文部科学省が2002年(平成14年)から2007年(平成19年度)まで実施した事業。英語教育の先進事例となるような学校づくりを推進するため、英語教育を重点的に行う高等学校等を指定し、英語教育カリキュラムの開発や大学および中学校等との効果的な連携方法などについて実践研究を行った。指定校は「スーパーイングリッシュランゲージハイスクール(SELHi)」と呼ばれる。

 すでにSELHi事業は終了しており、2014年度(平成26年度)には保護者にも耳馴染みであるだろう「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」事業がスタート。SGH指定校においては、社会課題に対する関心や深い教養、英語などの語学力を含めたコミュニケーション能力、問題解決力など、国際舞台で活躍できる人材育成のためのカリキュラム開発や研究が行われている。SELHiとSGHの違いは、前者はおもに英語教育および教育研究に注力していたところ、後者は英語教育も含めたグローバル人材の育成に焦点が当てられていることだ。

 吉田氏は、4技能を育成しようと思いと、生徒の進路への不安に板挟みとなった教育現場の悩みに寄り添いながら、「大学入試が変わらなければ、教育も変わらないということで、今回の大学入試改革が始まった」と述べ、日本の英語教育は「戦後最大の変革期」にあり、英語4技能評価の導入は然るべきものであるとの意を示した。

出口が変わらないと、現場は変わらない



 吉田氏によると、SELHi事業を通じた英語教育改革が始まった当時、教育現場から不安視されていたのは「入試に影響はないのか」という点。これからのグローバル社会では英語4技能が必要と理解しながらも、指定校以外の高校では読み書きを中心とした“センター試験対策”をしているなら、大学入試、つまり卒業後の「出口」へ影響が出るのではないかという懸念があったそうだ。

 そういった事情に鑑みれば、英語4技能指導者の人的確保や教材、評価に関する論議などは当時もなされており、現場の不安や課題も十分出尽くしているはず。今回の大学入試改革では、過去の取組みから得た調査結果や実践研究成果が存分に生かされればと願ってやまない。

英語「で」何をするか



 ただし、吉田氏は英語“を”学ぶだけでは不十分だと警鐘を鳴らす。言語やある分野における知識技能(Language of learning)は、思考力・判断力・表現力(Language for learning)と一体となって始めて生かされるものであり、議論や創造に欠かせない教養なくしては英語も生きてこない。

 吉田氏は上智大学で取り入れられている内容言語統合型学習(CLIL、クリル)について触れ、英語は学びや考えるための道具であり、4技能は「習う」だけでなく、英語を使って何をするか、といった中身の重要性についても考慮する必要があるとしている。

 なお、文部科学省が2008年(平成20年)11月から12月まで、SELHiの実施による成果について161校を対象に行ったアンケート結果を見ると、SELHiが生徒の大学受験に有益だったか、との質問に「そう思う」と答えたのは81%。大学入学共通テストの実施に始まる大学入試改革を受け、今後、英語4技能評価を重視する大学も増えるならば、「読む」「聞く」「話す」「書く」を総合的に伸ばしていこうとする児童生徒も増えるかもしれない。

 これから進む大学入試での英語4技能評価については、講演当日、ケンブリッジ大学英語検定機構 試験開発部門 日本統括マネージャーの青山智恵氏が登壇し、世界的に活用されている「ケンブリッジ英語検定」と大学入試について述べた。

 ゲストプレゼンターとして、同機構 東アジア統括ディレクターのQu Min氏も登壇し、英語検定をきっかけとした非英語圏での英語教育改善とその効果について言及。指導者の英語力アップも課題である点について述べ、中国・河北省で行われた教師向けの「英語教授知識認定テスト(TKT)」を活用したプロジェクト成果を発表した。

 講演の終わりに寄せ、青山氏は教室単位でも個人単位でもすぐに利用可能な「Cambridge English Write & Improve」を紹介した。これはケンブリッジ大学出版、ケンブリッジ大学英語検定機構が共同開発した自動フィードバックシステム。英作文を入力すれば、AIが瞬時にライティング能力を判定する。無料で利用できるので、一度試してみるとよいかもしれない。

 大学入試改革に先駆け、英語の民間資格試験を活用した入試を展開している大学も多く存在する。2019年度(平成31年度)入試の募集要項も出始めていることから、気になる大学の要項は早めにチェックしておきたい。
《佐藤亜希》

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