【夏休み2018】どれにする?読書感想文「自由図書」 本のプロが選ぶ12冊

 2018年も「夏休みの読書感想文」の季節がやってきた。課題図書と自由図書の2区分あるうち、お子さまはどちらに応募する予定だろうか。自由図書選定の参考に、本のプロが選んだ12冊を発表する。

教育・受験 小学生
 2018年の夏休みも本番。自由研究と並ぶ「夏休みの2大宿題」に数えられるのが「読書感想文」だ。自分で選ぶ自由図書については、どのような本を選べばよいだろうか。子どもの感性を刺激するような本を、本のプロであるハイブリッド総合書店 honto、丸善、ジュンク堂書店の担当者にお勧めしてもらった。

2018年 夏休み読書感想文
本のプロが選ぶオススメ「自由図書」

1、読書感想文の基礎知識
2、「自由図書」にお勧めの1冊
・完訳 ファーブル昆虫記(集英社)
・ロアルド・ダールコレクション 2 チョコレート工場の秘密(評論社)
・エルと過ごした9か月 盲導犬のたまごがくれたもの
・命のバトン 津波を生きぬいた奇跡の牛の物語
・カブトムシ山に帰る
・川のほとりの大きな木
・ホワット・イフ? 野球のボールを光速で投げたらどうなるか
・黒部の太陽 新装版
・よだかの星(日本の童話名作選)
・考現学入門
・世界を救うパンの缶
・西の魔女が死んだ


読書感想文とは



 「読書感想文」とは、全国学校図書館協議会・毎日新聞社が主催する、青少年読書感想文全国コンクールが応募を受け付ける作文のこと。読書感想文は、コンクール主催者が指定した本を読んで書く「課題図書」と、自分で読みたい本を自由に選んで書く「自由読書」の2種類ある。

 「課題図書」には、本の専門家が新しく出版された本の中から年齢にあわせて選出した書籍が選ばれる。フィクション、ノンフィクション、外国作品など、毎年さまざまな書籍が選出されている。

 「自由図書」として選ぶ本は、フィクション、ノンフィクションを問わず、自由の好きな本を選んでよい。教科書、副読本、読書会用テキスト類またはこれに準ずるもの、雑誌、パンフレット類は対象外。日本語以外で書かれた図書や、課題図書も応募できない。ただし、課題図書であっても、該当する区分以外のものであれば、自由図書として応募できる。

 夏休みの宿題として広く認知されているからか、応募者は小中学生に限ると思う読者も多いだろう。しかし、応募区分は応募者の在籍する校種や年齢によって「小学校低学年の部(1・2年生)」「小学校中学年の部(3・4年生)」「小学校高学年の部(5・6年生)」「中学校の部」「高等学校の部」の5部に分かれており、高等学校に通う者も応募できる。

 作品の提出は、必ず在籍校を通じて提出すること。児童生徒からの個人応募は受け付けていない。応募締切日は都道府県によって異なる。応募要項の詳細は、在籍校の図書館に問い合わせること。2018年の課題図書は、「第64回 青少年読書感想文全国コンクール」のWebサイトで発表されている。

本のプロが選ぶ 自由図書にお勧めの1冊



 どの本にするか自由に選べるのが魅力の「自由図書」。何度も読み込んだ思い入れの強い本や、最近興味がある分野に関する本なら、子どもの筆も自然と進むことだろう。しかし、普段は読書習慣のない児童生徒や、大好きだからこそ言葉にできない、という子どもはどうだろうか。

 課題図書ではなく、自由図書での応募を考える児童生徒に向けたお勧めの本について、(1)あらすじ(2)オススメポイントと、本を読んでいる子どもの読書体験をより実りあるものとできるような(3)保護者から子どもへの声がけのヒントを聞いた。
※推薦者は敬称略


完訳 ファーブル昆虫記


著者:ジャン=アンリ・ファーブル(著)、奥本大三郎(訳)
出版社:集英社
推薦者:ハイブリッド型総合書店honto 本の通販ストア マーチャンダイザー 高橋亜悠子

「完訳 ファーブル昆虫記」 ※画像は20巻セットのもの 出版社:集英社

(1)あらすじ
 ハチの狩りはどのように行われるのか?何のためにセミは歌うのか?フランスの博物学者ファーブルによって書かれた100年前の昆虫の観察記録です。たかが虫と侮ることなかれ、小さな虫たちの生活を、ときに私たち人間の生活に重ねつつつぶさに記録していて、全編にわたって虫たちが暮らす自然への敬意と虫たちへの愛情があふれています。
(2)オススメポイント
 "いきものの生態に関する本は子どもたちに大人気。最近は、身近な動物にこんな変わった生態が、といった奇をてらった内容のものが多いように感じられますが、ファーブル昆虫記は、身近な虫の生活を事細かに記すことで、変わった生態を含め、意外な面を教えてくれます。読み進めるうちに、小さな虫でも一生懸命生きている、命の尊さも学べると思います。
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 NHK Eテレの「香川照之の昆虫すごいぜ!」が大人気です。ファーブル先生は、香川照之さん演じる“カマキリ先生”に通じるところがあります。カマキリ先生は、「人間は昆虫から学ぶことがたくさんあるんです!」と仰ってますが、ファーブル昆虫記を読むことで、その言葉の真意がつかめると思います。
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ロアルド・ダールコレクション 2 チョコレート工場の秘密


著者:ロアルド・ダール(著)、クェンティン・ブレイク(絵)、柳瀬尚紀(訳)
出版社:評論社
推薦者:ハイブリッド型総合書店honto 本の通販ストア マーチャンダイザー 高山瞳

「ロアルド・ダールコレクション 2 チョコレート工場の秘密」 出版社:評論社

(1)あらすじ
 チャーリーが住んでいる町には、チョコレート工場がある。世界一広大で、世界一有名なワンカ(ウォンカバー、ウォンカチョコレート)の工場。働く人たちの姿を誰も見たことがない、ナゾの工場だ!そこへ、5人の子どもたちが招待されることになった。招待状の入ったチョコレートは、世界にたったの5枚。大騒ぎになったけれど、チャーリーには望みがない。貧しいチャーリーがチョコレートを口にするのは、1年に1度、誕生日に、1枚だけなのだから…。
(2)オススメポイント
 チョコレート好きの子ども、必読の1冊!誰も入ったことのないチョコレート工場に潜入できるなんて、夢のようじゃないですか。ワクワクする場面も多いですが、ブラックなユーモアも多数ちりばめられています。夏休みの1冊にぜひ!
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 チョコレート工場に招待された子どもたちが、身勝手な行動をして次々に脱落していく場面や、最後まで残り、チョコレート工場を引き継ぐ権利を得た場面で、人間の悪い所や素直な心の大切さ、家族との触れ合いについて話し、人間にとって大事なものは何かを気づかせてあげてください。
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エルと過ごした9か月 盲導犬のたまごがくれたもの


著者:鹿目けい子(文)、松村沙耶香(監修)
出版社:国土社
推薦者:ハイブリッド型総合書店honto 広報担当 土佐勝彦

「エルと過ごした9か月 盲導犬のたまごがくれたもの」 出版社:国土社

(1)あらすじ
 「パピーウォーカー」とは、盲導犬候補の仔犬を育成するボランティアのこと。盲導犬不足を知った福祉コース担当の先生が、学校に盲導犬を連れてきた。前例のない取組みが始まる中、黒いラブラドールレトリーバーの仔犬「エル」と共に過ごすうちに、転校生や10年間不登校だった生徒に変化が現れる。楽しい時間は過ぎるのも早く、やがて訓練センターに「エル」を戻す日が訪れる…。
(2)オススメポイント
 「エル」の育成を通じて周囲との対話や気づきが増え、昨日までできなかったことができるようになる変化に小さな達成感を味わえます。思いやりを身に付け、自分で考えて行動するなど仔犬の「エル」と共に生徒も成長していく姿に心打たれます。
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 街中で視覚障碍者と盲導犬を見かけた時に、目が不自由なことについての不便さや危険性、盲導犬の重要な役割などをあらためて話すと共に、周囲への目配りと手助けも進んでできるように意識づけさせていきたいですね。
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命のバトン 津波を生きぬいた奇跡の牛の物語


著者:堀米薫
出版社:佼成出版社
推薦者:ハイブリッド型総合書店honto 広報担当 土佐勝彦

「命のバトン 津波を生きぬいた奇跡の牛の物語」 出版社:佼成出版社

(1)あらすじ
 東日本大震災で津波に襲われ、農業高校で飼育されていた乳牛34頭が流されたが、奇跡的に14頭が助かった。人間でさえも日々生きることに必死で過ごす中、牛の面倒は見れるのか。教師と生徒の奮闘が始まり、牛の品評会である「ホルスタイン共進会」に出場するまでに。果して結果は?
(2)オススメポイント
 生徒たちが協力し震災を乗り越えて前に進む姿が、被災地の人々をはじめ、全国に感動と勇気を与えてくれます。人々がピンチをチャンスに変え、未来に向かって進んでいく中で、子牛も次の子牛を産み、命のバトンが受け継がれていく姿に大きな感動を覚えます。
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 「家畜は可愛くてもペットではなく、いつかは肉になります。牛は食べられることで私たちの命になり、同じ命になり一緒に生きていく」というフレーズで、毎日の食事で命を食べていることの意味を考え感謝する心を育み、日々精一杯生きることをあらためて話してみてはいかがでしょう。
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カブトムシ山に帰る


著者:山口進
出版社:汐文社
推薦者:ハイブリッド型総合書店honto 広報担当 土佐勝彦

「カブトムシ山に帰る」 出版社:汐文社

(1)あらすじ
 小学生が大好きなカブト虫。昔は雑木林などで目にすることが多かったカブトムシですが、ここ10年程で小型化し、身の回りから姿を消し始めていることに気づいた昆虫カメラマンが原因を考察します。昔とは環境が大きく変わっていく中、カブトムシはどのように適応しようとしたのでしょうか。
(2)オススメポイント
 夕方の山梨の雑木林で見る樹液にカブトムシやカミキリムシが群れ集う光景を思い浮かべると、昆虫採集がしたくなります。昆虫の生活環境における樹液の影響を感じられます。
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 雑木林は人の手が入らないと荒れ始め、やがて消えてしまいます。人間の暮らしと共に変化する自然環境にあわせてカブトムシも適応し、奥山から里山へ進出が進み、今また環境変化により人里から奥山へ戻り始めています。カブトムシを例に、自然破壊ではない人と自然との共生で両方が幸せに生きていくには、これから人間はどうしていくべきかを話し合ってはいかがでしょうか。
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川のほとりの大きな木


著者:クレイトン・ベス(作)、秋野翔一郎(訳)
出版社:童話館出版
推薦者:ハイブリッド型総合書店honto 広報担当 土佐勝彦

「川のほとりの大きな木」 出版社:童話館出版

(1)あらすじ
 現在では撲滅宣言がなされた「天然痘」。物語当時は、致死率も高く悪魔の病気と恐れられていました。アフリカのリベリアで父親が幼いころに体験した、若い時の自分の母親・ハウが天然痘の赤ん坊に下した選択とその後について子どもたちに語ります。
(2)オススメポイント
 若い母親と赤ん坊と老婆が一夜の宿を乞い家にやってきたのち、「天然痘」に感染している赤ん坊だけが残された。祖母が示した「埋める」ことを拒み、子どもたちを安全な場所へ逃がし自分だけが離れた場所で面倒をみる、という選択をした母親・ハウ。何が正しくて、何が悪いことなのかわからないが、「そのときに自分がしなければと思うことを、するほかはない」という学校で本を読み学び、身に付けたゆるぎない信念にグッときます。
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 西アフリカのリベリアで3年間教師として派遣された作者のクレイトン・ベスが、子どもたちに「ハウの選択」について、尋ねたところ、「できる」と答えた児童は25%、「できそうもない」と答えた児童は75%、そして、どちらの児童も自分の選択に不安なようすだったということです。私たちは、日々小さな選択を繰り返しながら過ごしていますが、自分にとって不利な選択であっても、信念を持って生きていくことを話し合いたいですね。
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ホワット・イフ? 野球のボールを光速で投げたらどうなるか


著者:ランドール・マンロー(著)、吉田三知世(訳)
出版社:早川書房
推薦者:ハイブリッド型総合書店honto 広報担当 土佐勝彦

「ホワット・イフ? 野球のボールを光速で投げたらどうなるか」 出版社:早川書房

(1)あらすじ
 ウェブ漫画家のランドール・マンローが、「もしこうだったら?」という空想的な質問に対して、数学と物理学を駆使し、論理的にシンプルな線画マンガで回答しています。「人類総がかりでレーザーポインターで照らしたら月の色は変わる?」「お茶を必死にかき回したら沸騰させられるかな?」「光速の90%の速さで投げられた野球のボールを打とうとしたら、どんなことが起こりますか?」「もしも僕のプリンターで本当にお金が印刷できたら、世界を揺るがすことができるでしょうか?」など、大人でも簡単に答えられない質問が満載で、ユニークな回答にクスっとさせられる1冊です。
(2)オススメポイント
 回答内容の理解ができてもできなくても構いません。やっかいな質問でも物事への視点や切り口に気づき、回答への糸口をみつけることで、楽しみながら興味喚起と科学的思考が身に付きます。
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 どの質問でも良いのですが、子どもが興味を持った質問に対して親子で回答へのアプローチ方法について話し合ってみてください。そのうちに自分でも奇抜な質問を考えて、その回答までも見つけられるようになれば言うことなしです。
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黒部の太陽 新装版


著者:木本正次
出版社:新潮社
推薦者:ハイブリッド型総合書店honto 広報担当 土佐勝彦

「黒部の太陽 新装版」 出版社:新潮社

(1)あらすじ
 今では年間約100万人が訪れる人気観光スポット「黒部ダム」ですが、当時は人を寄せつけない人跡未踏の地でした。昭和30年(1955年)代に電力不足の日本を救うため、黒部の山奥に巨大ダムを造る一大プロジェクトがスタートしました。莫大な費用と人員を投入し、殉職者も多数発生した「黒四ダム(くろよんダム)」工事に挑んだ人々の苦労と情熱を描いています。
(2)オススメポイント
 大自然の脅威にさらされながらも自分の役目を果たすべく黙々と働く作業員の姿に頭が下がります。トンネル貫通時に全員でバンザイするシーンには、日本人の勤勉さと情熱が溢れ出て、皆で力をあわせれば物事を成し遂げられるということを実感できると思います。
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 日本で唯一のトロリーバスである「関電トンネルトロリーバス」乗車中に見える大出水に襲われた「破砕帯(はさいたい)」通過時や、展望台から巨大ダムを見下ろす時に、雄大な自然を前にこれだけの建造物を作った人間の凄さと自然に対するちっぽけさ、困難に立ち向かう勇気について話してみるのはいかがでしょうか。迫力に圧倒され記憶にも刻まれると思います。なお、関電トンネルトロリーバスは平成30年(2018年)が運行最終年にあたります。
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よだかの星(日本の童話名作選)


著者:宮沢賢治(作)、中村道雄(絵)
出版社:偕成社
推薦者:ハイブリッド型総合書店honto 広報担当 木佐貫貴子

「よだかの星(日本の童話名作選)」 出版社:偕成社

(1)あらすじ
 地味でみにくい見た目のため、ほかの鳥から疎ましがられる「よだか」。漢字では「夜鷹」と書きますが、強く勇ましい印象の鷹の仲間ではありません。ある日、鷹から「名前を返せ、できなければ“おしまい”」だと迫られ途方にくれてしまいます。鷹に命の決断を迫られてはじめて、よだかは自分が生きるために多くの虫の命を奪っていることに気づき、鳥の世界を離れ遠く遠くの空の向こうへ行くことを決意します。
(2)オススメポイント
 「よだか」は見た目と名前で鳥の世界から孤立させられましましたが、現実社会でも誰か一人を下の存在に見ることで、自分を守ろうとすることはあります。「人を見た目で判断すること」や「弱いものいじめ」の危うさを読み取れるか、あるいは「わたしも『よだかの星』のようになりたい」と思うかは、読む人・読むタイミングによって捉え方が違う本かもしれません。悲しい運命にあろうとも、命の限りをつくしたからこそ訪れる「よだか」の輝きは、夏の星空とともに心に強く残ると思います。
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 小学生低学年から中学年くらいのお子さんについては、「読ませる」のではなく、一緒に「読む」ことをおすすめします。「よだか」についてどう思ったか、を聞いてみると今お子さんがどんな状況で学校生活を送っているかわかるかもしれません。よだか(ヨタカ)は地味ですが、色鮮やかなカワセミなどの仲間なので、鳥図鑑やお話の終盤に出てくる星座について物語と見比べながら会話を広げてみてください。
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考現学入門


著者: 今和次郎(著)、藤森照信(編)
出版社:筑摩書房
推薦者:ジュンク堂書店池袋本店 雑誌担当 齋藤加菜

「考現学入門」 出版社:筑摩書房

(1)あらすじ
 「考古学」という言葉をご存知の方は多いことでしょう。遺跡や遺物を調査して過去の人類がどのような生活・文化を築いてきたのか研究する学問です。では、「考現学」という言葉はいかがでしょう?考現学とは、現代の社会現象を場所や時間を定めて研究し、世相や風俗を分析する学問です。この学問を提唱したのが、民俗学研究者の今 和次郎(こん わじろう)です。彼は大正12年(1923年)の関東大震災後の直後、東京が復興されていくようすを目にする中で、その歩みを記録していこうと思い立ちます。そうして彼が記録したものの一部を収録し、考現学とはどのようなものかまとめたものが、この「考現学入門」です。この本が刊行されたのは昭和62年(1987年)とだいぶ前のことですが、今読んでも今和次郎の町ゆく人の髪型や服装等への細かい観察記録は興味深いものです。「関東大震災の時代の“考現学”をなぜ今?」と思うでしょうか?町は時代とともに刻一刻と変化していきます。もちろんそこを歩く人々の服装も、国籍も…。この数年間で何度かの大きな地震を経験し、復興が続く現代の日本。その一方でオリンピックを控え、町の景観は日々変化し、住む人もさまざまです。そんな今、改めて“考現学”が注目されてもいいのではないでしょうか。
(2)オススメポイント
 高校生以上の方へオススメします。情報だけなスマートフォンで簡単に手に入ってしまう今、果たして周りの景色の移り変わりや、人々のようすをどれくらい見ることができているのでしょうか?「考現学入門」を読んで、今あなたの近くの町に(もしくは、人の多い都心でもおもしろい観察ができるかもしれません)どんな人がいて、それはなぜなのか、考えてみましょう。時間のある夏休みの課題にぴったりです。ただし、熱中症には気を付けて。
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 お子さんに観察してみてどうだったか結果を聞いてみてください。ご両親が見てきた10年前の風景とどう変わっているか感想を伝えてあげましょう。時が経つにつれて、町がどう変わってきたのか研究の糸口になります。また、一緒に町に出て、親子で研究しても楽しいことでしょう。
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世界を救うパンの缶詰


著者:"菅聖子(文)、やましたこうへい(絵)
出版社:ほるぷ出版
推薦者:"ジュンク堂書店池袋本店 児童書担当 小川萌

「世界を救うパンの缶詰」 出版社:ほるぷ出版

(1)あらすじ
 東日本大震災や熊本地震など、多くの被災地で役立ってきたパン・アキモトの「パンの缶詰。現在は被災地だけでなく、世界中の災害現場や飢餓に苦しむ地域の人々にもそのおいしさを届けています。このパンの缶詰を生み出したのは、栃木県でパン職人として働く秋元義彦(あきもと よしひこ)さん。きっかけは、「乾パンのように長期保存ができる、やわらかくておいしいパンはありませんか?」という、阪神淡路大震災の被災地の人の声でした。保存期間が短く、その食感を保つのも難しいパンを、どのように長期保存可能で風味の落ちない缶詰にしたのか。そして、一見想像のつかないパンの缶詰をどのように日本へと、世界へと広めていったのか。その軌跡を描いたノンフィクション読み物です。
(2)オススメポイント
 「夢を持ち、具体的にえがけば、一つひとつ実現していく」という秋元さんの哲学は何事に対しても通じることであり、大切なことであると思います。どんな困難な状況でもあきらめず努力を続ける秋元さんの仕事をぜひ見ていただければと思います。
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 最後まで読み終えたあと、「どんな人になりたいと思った?」「どんなことをがんばりたいと思った?」などと聞くと、ただの感想だけでなく自分の考えも書けるようになると思います。
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西の魔女が死んだ


著者:梨木香歩
出版社:新潮社
推薦者:ジュンク堂書店池袋本店 理工書担当 理工書担当 小林綾乃

「西の魔女が死んだ」 出版社:新潮社

(1)あらすじ
 学校で授業が始まろうとしていたとき、主人公まいのもとに「魔女が倒れた」という知らせが入る。魔女というのは、大好きなおばあちゃんのこと。まいを迎えに来た母親とともに、おばあちゃんのもとへと向かう。その道中、まいは2年前の夏のことを思い出していた。中学校へ入学してまもなく、心が疲れて学校に行けなくなったまいは、夏の1か月間をおばあちゃんの家で過ごすことになる。ある時、おばあちゃんから「先祖に魔女がいた」という話を聞き、「自分にも魔女の血が流れているの?」と驚く。自分にそんな力はないと思ったまいは、おばあちゃんに“魔女修行”を願い出る。魔法や奇跡を起こすために一番大切だという「自分で決める力」を身に付ける、まいの魔女修行が始まるのだった。
(2)オススメポイント
 “魔女修行”と聞くと、空を飛んだり、物を浮かせたり、呪文を唱えたり…ということを想像するかもしれません。しかし、主人公まいが行う魔女修行では、空を飛ぶことも、物を浮かせることも、呪文を唱えることもありません。朝早く起きる。そうじや畑仕事をする。午後には勉強や読書をする。どれも特別なことではありませんが、こうした生活の中でまいが少しずつ元気を取り戻していく姿に、「大切なもの」に気づくことができるのではないかと思います。
(3)保護者から子どもへの声がけのヒント
 本書の中で「自分で決める力」がキーワードとして出てきます。物語の中でも、主人公まいが「自分で決める」場面が所々に出てきますが、自分が同じ状況ならどうするか、どのような選択をするかというのをぜひ話し合ってみてください。また、物語の中でまいがしたように、一日のスケジュールを決め実行するということをやってみるのはいかがでしょうか。
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《編集部》

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