【自由研究・化学】洗剤がよごれを落とすメカニズムを知る(中学生向け)

 毎年夏休みに小中学生の宿題に出される「自由研究」は、普段はなかなか時間をかけて取り組むことが難しい研究や実験に挑戦できるチャンス。化学、物理、地学、生物…さまざまな分野から、おすすめのテーマをご紹介する。

教育・受験 中学生
【化学】洗剤がよごれを落とすメカニズムを知る~よごれが落ちるしくみを調べよう~(中学生向け)
  • 【化学】洗剤がよごれを落とすメカニズムを知る~よごれが落ちるしくみを調べよう~(中学生向け)
  • 用意するもの
  • 実験1 手順1
  • 実験1 手順2
  • 実験1 手順3
  • 実験1 手順4
  • 実験1 手順5
  • 実験1 手順6
 毎年夏休みに小中学生の宿題に出される「自由研究」は、普段はなかなか時間をかけて取り組むことが難しい研究や実験に挑戦できるチャンス。化学、物理、地学、生物…さまざまな分野から、おすすめのテーマをご紹介する。

 ここでは、家庭にある素材ですぐにできる「よごれが落ちるしくみ」の実験方法をご紹介。自由研究テーマ選定の参考にしていただきたい。

自由研究:中学生向け 小学生向け

洗剤がよごれを落とすメカニズムを知る~よごれが落ちるしくみを調べよう~


第1分野【化学】実験・観察


制作時間:1時間 難易度:★



 よごれた皿や衣類を洗うときに欠かせないのが洗剤です。水だけで洗うよりも、きれいによごれが落ちるからです。では、なぜ洗剤はよごれを落とすのでしょうか。よごれが落ちるしくみを調べてみましょう。

用意するもの


白い綿の布 毛糸(ウール100%) 洗剤 コショウ ゴマ油 透明なコップ(6個) わりばし
そのほかのもの 水(900mL)、布きれ
用意するもの

実験1 やってみよう よごれの落ちかたを比べる



★手順 全5工程
 洗剤を加えた水(A)と、水だけ(B)のコップを、それぞれ3つずつ用意しましょう。そこに毛糸やよごれを加え、洗剤がもっているさまざまな作用を、実験で確かめてみましょう。

実験1 手順1
水450mLに洗剤を4mL溶かす。その液をコップ3つに150mLずつ注ぐ。残り3つのコップには、水だけを150mLずつ入れる。

実験1 手順2
よく洗って乾かした毛糸を、A-1とB-1のコップに入れ、毛糸のようすを観察する。

実験1 手順3
A-2とB-2のコップにゴマ油を数滴入れ、わりばしでかき混ぜる。混ざりかたを観察する。

実験1 手順4
A-3とB-3のコップに、コショウをひと振り入れる。コショウがどのように広がるかを観察する。

実験1 手順5
4で使ったAとBのコップに、布きれをひたして引き上げる。コショウのつきかたを観察する。

うまくいかないときには



毛糸の油脂を落としてから

●新品の毛糸と布の場合、油脂が表面についていることがあるので、いったん洗って乾かしたものを使いましょう。

●ゴマ油は、色が濃いものを使うと観察しやすいでしょう。

実験1 手順6

なぜそうなるの? ~洗剤がよごれを落とすしくみ~



洗剤の成分「界面活性剤(かいめんかっせいざい)」の3つのはたらき

 服のよごれを落とすのは、洗剤のおもな成分である界面活性剤です。服のよごれを落とすには、まず洗剤液が細かな繊維のすき間まで届かなくてはなりません。界面活性剤のひとつめのはたらきは「浸透作用(しんとうさよう)」で、そのはたらきで洗剤液を繊維のすき間まで入りこませるのです。

 水と油は混ざりませんが、界面活性剤の親油基(しんゆき/油となじむ部分)が油を取り囲み、外側の水に対して親水基(しんすいき/水になじむ部分)が向きをそろえるため、水と油が均一に混ざります。界面活性剤にとり囲まれたよごれは、服を離れ、小さな固まりとなって、水の中に広がります。これが界面活性剤のよごれを落とす2つめのはたらき「乳化作用(にゅうかさよう)」です。

 また、コショウのような粉末は、水に混ざらずに表面に浮いてしまいます。界面活性剤は、このような粉末をとり囲んで水の中に散らします。これが、よごれを落とす3つめのはたらき「分散作用(ぶんさんさよう)」です。

 これら界面活性剤の3つの作用がはたらいて、よごれが落ちます。そして、落ちたよごれは、界面活性剤に囲まれているため、ふたたび繊維につきにくいのです。

●界面活性剤がよごれを落とすしくみ
実験1 手順7

実験2 やってみよう 界面活性剤がよごれを落とすようすを見る



★手順 全4工程
 実験1の結果で、洗剤には、よごれを落とすための3つの作用があることがわかりました。

 これは、洗剤に含まれる界面活性剤のはたらきによるものです。界面活性剤は油(よごれ)のまわりをとり囲み、よごれを衣類から引き離します。油よごれが、丸い粒になり浮き上がるようすを観察してみましょう。

用意するもの


白いウールの毛糸(1.5mのものを2本)、使用済のプリペイドカード、透明のコップ(2個)、水、合成洗たく洗剤、ゴマ油*、スプーン、はさみ
*色つきの油なら、ゴマ油でなくても実験に使えます。

実験2 手順1
使用済のプリペイドカードを半分に切り、それぞれにすき間ができないように毛糸を巻きつける。

実験2 手順2
2つのコップに水を8分目まで入れる。片方のコップに、洗剤をスプーン2はい加えて混ぜる。

実験2 手順3
2枚のカードの毛糸に、ゴマ油をぬりつける。

実験2 手順4
それぞれのコップに立てかけるようにカードを静かに入れ、ゴマ油のようすを観察する。

そうなんだ! ~水鳥の羽毛の油と界面活性剤~



 水鳥が水に浮いていられるのは、羽毛に水をはじく油の膜があるからです。さらに水鳥の羽は、水にぬれることなく空気をためられるようにもなっているのです。ところが、界面活性剤を使うと、羽毛の水をはじく油の膜が失われ羽が水にぬれてしまいます。つまり、洗剤を混ぜたプールでは、水鳥はおぼれてしまうのです。

 石油タンカーが座礁して重油がもれるという事故がありました。重油は、水鳥の羽をべっとりとぬらすので、水鳥は体温が下がって死んでしまいます。被害を受けた水鳥を助けるのに使われたのが洗剤です。水鳥についた重油を落とすため、反対に界面活性剤が役に立ちました。

実験2 手順5

レポートのまとめかた



 実験1で、しみこみかた(浸透)、混ざりかた(乳化)、広がりかた(分散)について、水だけのものと洗剤を加えたものとを比較し、ちがいを表にまとめましょう。

 実験1で、布へのコショウのつきかたは、水と洗剤液とではどのようにちがうでしょう。観察して記録しましょう。

 実験2で、洗剤の量を少なくしたり、多くしたりして、よごれの落ちぐあいを比べてみましょう。

自由研究 中学生の理科 Newベーシック

発行:永岡書店

<著者プロフィール:野田 新三(のだ しんぞう)>
1970年大阪生まれ。不思議に思ったことは「自分で確かめたい」という気持ちから、理科に興味を持つ。95年千葉大学大学院教育学研究科を修了後、理科の教諭として教壇に立つ。

《リセマム》

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