東京2020見据え「サマータイム」導入?繰上げ出勤との違いや子どもへの影響は

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に伴い、開催年の2020年とその前年の2019年の2年間限定で「サマータイム」を導入する検討が始まったとする報道が話題だ。「サマータイム」とは何か。また、学校への影響は。

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日の出、日の入りの時刻の変化とサマータイム
  • 日の出、日の入りの時刻の変化とサマータイム
  • サマータイム、フレックス、繰上げ出勤の区別
  • 世界における実施状況
 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に伴い、開催年の2020年とその前年の2019年の2年間限定で「サマータイム」を導入する検討が始まったとする報道が話題だ。サマータイムが導入される月は、最長で6~8月の3か月間とされる。そもそも、「サマータイム」とは何か。また、学校への影響は。

サマータイムとは



 環境省によると、「サマータイム」とは、日の出時刻が早まる時期(たとえば4~10月)には、全国の時刻を標準時より1時間進める制度のこと。夏時間制度。もともとは冬の日照時間の短い高緯度の地域に住む人々が採り入れた制度で、現在はアメリカやカナダなどの地域で「Daylight Saving Time」と呼ばれ、実施されている。

日の出、日の入りの時刻の変化とサマータイム日の出、日の入りの時刻の変化とサマータイム 画像出典:日本睡眠学会

 具体的には、全国の標準時を4月の第一日曜日、午前2時に時計の針を1時間進め、3時にする。そして10月最終日曜日の午前3時に、時計の針を1時間戻し、2時にする。こうすることで、サマータイム期間は起床・就寝時間などはいつもどおりでありながら、夕日の沈む時間が1時間遅くなる、という仕組みだ。

 夏の期間だけ出社時刻を繰り上げる「繰り上げ出勤」や、涼しい時間帯に働くよう就業時間を変更する「フレックスタイム」とは異なり、国(地域)の時間そのものを変更する点が特徴。

サマータイム、フレックス、繰上げ出勤の区別
サマータイム、フレックス、繰上げ出勤の区別  画像出典:日本睡眠学会

 実際に導入される年はいつだろうか。新聞・通信社報道によると、サマータイムは2019年に試験導入し、2020年に本格導入する案が上がっている。対象期間は6~8月繰り上げ時間は2時間が有力だという。

サマータイムのメリット…昼時間の活用、日本は猛暑対策



 元来、サマータイム導入のメリットは大きく分けてふたつあるとされる。

 ひとつは、夕方の明るい時間を増やし、太陽光を有効活用できない時間を減らすことから、朝の明るい時間を無駄にすることなく、終業後や放課後により多くの明るい時間を使うことができるということ。もうひとつは、地球温暖化対策の観点から、夕方の照明や朝の冷房用電力が節約されることにより、電力消費を削減できることだ。2011年3月の東日本大震災をきっかけに、省エネを目指したサマータイム導入論が注目されたのも、この面が大きい。

 本来のサマータイム導入がもたらすメリットは、以上2点。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会についてはさらに、猛暑対策としてのメリットが期待されている。

 たとえば、午前7時スタートだった屋外競技の場合、サマータイム導入により午前5時からのスタートとなることで、日が登りきる前に競技を終えることができる。検討されている導入年が2019年と2020年に限られていることから見ると、東京2020開催に伴う導入メリットはおもに、夏の暑さに対するものと考えてよいだろう。

サマータイムのデメリット…健康被害、日本は“残業”か



 しかしながら、インターネット上ではサマータイムの導入に対する反対の声もあがっている。たとえば、「サマータイム導入ではなく、競技の開始時刻を早めればいいだけでは」「東京五輪の猛暑対策のためだけに導入する必要があるのか」「高齢者は適応できるのか」といった感想だ。菅義偉官房長官も2018年8月6日、導入には否定的な姿勢を示したという。

 サマータイムは、これまでもたびたびその意義と是非が問われてきた。賛否両論あるなかで、2012年3月には日本睡眠学会「サマータイム制度に関する特別委員会」が「サマータイム ―健康に与える影響―」と題した資料を発表している。

 資料によると、これまでサマータイム制度を導入してきたロシアなどの一部では、切替え時期に救急車の出動心筋梗塞による死亡者が増加し、省エネ効果がほとんどなかったことから、2011年3月末の夏時間への移行を最後に、サマータイム制度を廃止しているという。

世界における実施状況
世界における実施状況 画像出典:環境省・経済産業省

 日本でも前例がないわけではない。1948年から1951年にサマータイムが実施されている。しかしながら、同特別委員会によると、導入後は残業量の増加労働条件の悪化が見られ、1952年以降に廃止された歴史を持つ。

 「サマータイム制度導入によるエネルギー消費節減が科学的に証明されておらず、実効的な労働時間規制がなされていない」ことから、2008年には日本労働弁護団が「サマータイム制度に反対する意見」を発表している。

学校・子どもへの影響は



 サマータイム導入に反対するネットの声の中には、「学校・病院・役所はどうなるか」といった不安も見られた。デメリットとしてあげられる健康被害への懸念からすると、子どもの生活(生体)リズムや睡眠の質への影響も気になるところ。

 日本睡眠学会「サマータイム制度に関する特別委員会」がまとめた資料によると、生体リズムへの影響は長年議論されていることで、イギリスではサマータイム制度の導入で「朝には眠気、ぼんやり感、集中困難などの気分変調」が見られたという。眠りの質の低下については、サマータイムの導入により「睡眠効率が10%低下」するというフィンランドの研究(2006年)もあるとのこと。

 体内時計と社会生活のスケジュールの間に生じる“ズレ”は、大人にとっても負担が大きいものなのかもしれない。大人より小さな身体なら、その負荷はなおさらだろう。睡眠の質とともに、学習効率が下がってはならない。世界各国から集まる選手・スタッフ・観客への健康被害を考慮するのはもちろん、日常生活を営む子どもたちへの影響などを含めた議論が必要そうだ。
《佐藤亜希》

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