【英語4技能】英語の民間資格・検定試験Q&A、回数制限や成績対象を詳説【大学入学共通テスト】

 2020年度からスタートする「大学入学共通テスト」。外国語「英語」については、4技能を評価するために民間の資格・検定試験を活用することが決まっている。受検のルールや年齢別おすすめ試験まで、関西学院大学の山田高幹氏に聞いた。

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大学入試英語成績提供システム参加要件を満たしていることが確認された英語の民間試験・検定試験の一覧(最終更新:2018/9/10)
  • 大学入試英語成績提供システム参加要件を満たしていることが確認された英語の民間試験・検定試験の一覧(最終更新:2018/9/10)
  • おもな英語資格・検定試験の2017年度受験者数(2018年8月1日公表時点のもの)※リセマム編集部調べ
 2020年度からスタートする「大学入学共通テスト」。国語と数学に記述式問題が出題されるほか、外国語「英語」については、「読む(Reading)」「聞く(Listening)」「話す(Speaking)」「書く(Writing)」の英語4技能を評価することを目的に、民間資格・検定試験の活用が予定されている。

 試験の仕組みはもちろん、受験生とその保護者が気になるのは具体的にどのような影響があるのかということ。よくある質問をまとめ、入試業務に携わる関西学院大学の山田高幹氏に話を聞いた。

 なお、大学入学共通テストにおける基礎知識や試験の仕組みは、2018年7月25日に掲載した記事で紹介している。あわせてご覧いただきたい。

英語4技能評価 よくある質問
1、小中学生も挑戦できる?
2、資格・検定試験の選び方
3、受験者が多い・人気な試験はどれ?
4、大学入試に利用できる成績の条件
参考:「英語4技能」に関するニュース
参考:「大学入学共通テスト」に関するニュース


1、小中学生でも挑戦できる資格試験



--Q、大学入学共通テストで利用できる英語の資格・検定試験を教えてください。

A、大学入学共通テストで利用できる英語の資格・検定試験は、ケンブリッジ英語検定TOEFL iBTテストIELTSTOEIC Listening & Reading TestおよびTOEIC Speaking & Writing TestsGTECTEAPTEAP CBT英検(1日完結型「英検2020 1 day S-CBT」、公開会場実施「英検2020 2 days S-Interview」、4技能CBT)の8種類です。合計24の資格・検定試験から申込みがあり、7実施主体による8種類22資格・検定試験が対象となりました。

 対象とならなかったのは、「リンガスキル」と「従来型の英検」です。その理由は、大学入試センターが2018年3月末に発表した資料が参考にできます。

 まず、「リンガスキル」は、日本国内における高校生の受験実績などが不足していたため、参加が見送られました。また、「従来型の英検」は、1回の試験で英語4技能のすべてを極端な偏りなく評価するものであること、という要件から外れてしまったため、参加条件を満たしませんでした。

 この「従来型の英検」は、1次試験の合格者のみが2次試験を受験できる仕組みを採ります。そのため、2次試験のスピーキングは受験者全員が受けることはできません。全国の高校生が多く受験する試験だっただけに、学校現場のショックは大きかったことと思います。

--Q、2020年からの大学入試を見据え、今からやっておくと有益な英語の民間資格・検定資格試験はどれですか。小学生からやっておくべきことがあれば教えてください。

A、まず、小学生は、IELTSやTEAPを除く各社ラインアップのうち、ほとんどが受験可能です。学齢に応じたテストレベルを告知している資格試験もありますが、近年では、学齢に関係なくさまざまなレベルのテストにチャレンジできるケースが増えています。たとえば、ケンブリッジ英検は年齢に応じた制限を設けておらず、受験目安をあえて公開していません。

 どの実施団体とも、小学生向けのものから作成しているため、入試を見据えて検定試験を早くから受験するのは、自分の力を知ることにおいて意味があるかもしれません。しかし、小さいころからなんらかの検定試験に偏って対策をしても、万が一、大学の指定する検定試験が受験時に変更となったらどうでしょうか。むしろどんな試験であっても対応できる力が必要です。

 大学入学共通テストでは、英語外部検定試験も必要ですが、共通テストによる英語の得点が全体のウェイトの多くを占めると想定されます(編集部注:詳しくは基礎知識編を参照)。そしてその内容は、学習指導要領に沿った内容になるはずです。そして、学習指導要領の内容をもっとも学習するのは、学校の授業です。つまり、学校の授業でしっかり力をつけ、その確認となる定期テストで抜け漏れをなくすことが重要です。そのあとで、英語外部検定試験を受験し、力を測る―というのは、高校になってからでも決して遅くはないと思います。急がば回れですね。

 検定試験対策に注力し、小・中・高校での授業を軽んじるようなことがあれば、学校の成績は当然下がります。特に低学齢時は、英語嫌いにならぬよう、知的好奇心を大切にしてあげることがのちのち生きてくるでしょう。

2、受験する資格・検定試験の選び方



--Q、大学入試だけでなく、高校・大学での留学や、通学している中高の姉妹校へ交換留学を考えています。入試も見据えながら、できるだけ受験回数や受験費用などの負担を少なく受験するには、どういった資格・検定試験の選び方が考えられますか。

A、大学入学後の留学において、その基準で使われるケースが多いのはTOEFLやIELTSです。しかし、TOEFLやIELTSは、その難易度の高さや受験料が高額であることから、高校生や小中学生が気軽に受験するにはハードルが高いと言えます。

 よって、英検GTECを受験する高校生が多いのが現状です。いずれの試験とも、自分の得意不得意な分野におけるスキルが点差として表れるので、受験結果を用いた事後の学習に生かしやすいのが大きな特徴といえるでしょう。自分のスキルを確認し、復習することを目的とするならば、英検やGTECを活用するのが適しています。

3、各資格・検定試験の受験者数



--Q、全国でもっとも多くの児童生徒が受験している資格・検定試験はどれですか。

A、受験者数は、各実施主体のWebサイトに公表されている数字が参考にできます。受験者数や導入校数の観点から「人気」を測るとすると、学校単位では英検・GTECの導入が進んでいます。

 ただし、これらふたつの検定を入試活用する際には注意が必要です。たとえば、英検は「受験」だけではなく「合格」しておくこと、GTECは検定日受験による「オフィシャルスコア」を保有しておくことが求められます。

おもな英語資格・検定試験の2017年度受験者数(2018年8月1日公表時点のもの)※リセマム編集部調べ
編集部補足 2017年度の各資格・検定試験 受験者数※2018年8月1日時点で公表されているもの

 なお、大学共通テストにおいて、英検は「特別準会場」という、学校や団体を会場に行ってきた「従来型の英検」は対象外となりました。よって「従来型の英検」を学校導入していた高校は、今後それに代わるものを検討する流れにあります。こうした状況から、各社の受験者数や導入校数はまだ変わっていくと思われます。

4、大学入試に利用できる成績の条件



--Q、チャンスがあるなら何度も資格・検定試験を受験し、もっとも良い成績を残した試験を入試に利用したいです。利用できるスコアや評定に、受験期間などの制限はありますか。

A、大学入学共通テストにおいては、高校3年生における4月から12月の間に受験した、2回までの英語外部検定試験のスコアのみが成績の対象になります。高校2年生で高得点を得ても、大学入学共通テスト利用では意味をなしません。ただし、学校推薦型選抜(現 推薦入試)や総合型選抜(現 AO入試)、一般選抜における各大学の指定については個別に確認が必要です。

 高校1・2年生は何回でも受験できますが、入試利用ではなく実力を確認するということなら、学期に1度程度の受験で十分です。

 そもそも、受験生にとっては、英語外部検定の銘柄選びよりも、学校推薦・総合・共通テスト・一般のどの入試で大学を受験するのかが大事になるでしょう。たとえば、一般選抜の場合、出願は12月から1月にかけてとなります。そうなると、英語外部検定試験は、高校3年生の秋までが受験チャンスとなるでしょう。一方、総合型選抜の出願は9月からです。総合型選抜での活用を考える生徒にとっては、高校3年生の1学期が受験のラストチャンスになりそうです。

 なお、47都道府県で受験できる資格・検定試験は、GTECと実用英語技能検定(英検)の2つです(※)。そのほかの試験は試験会場が限られており、受験機会の格差が課題にあげられています。

 そこで、文部科学省は現在、全国の高校を対象に学校導入を念頭に置いたニーズ調査を進めています。その集計をもとに各実施団体に働きかけ、会場整備を求める流れとなっています。

※編集部注:初出時、誤りがありました。掲載時点において47都道府県で受験できる試験にTEAPは含みません。訂正のうえ、お詫び申し上げます。なお、日本英語検定協会によると、TEAPは今後、全国に会場を拡張予定とのことです。(2018年9月10日訂正)

---
 山田氏による回答は以上のとおり。

 なお、今回の回答はすべて、大学入学共通テストにおける英語外部検定試験の指定にとどまる。よって、各大学が個別に実施する「学校推薦型選抜(推薦入試)」「総合型選抜(AO入試)」の英語や、「一般型選抜(一般入試)」で使われる英語外部検定試験は各大学が別途指定するため、山田氏は志望する大学ごとに入試要項を確認するようアドバイスしている。

 2020年度以降の入試については、各大学が徐々に募集要項を公表している。英語4技能 資格・検定試験懇談会が運営するWebサイト「英語4技能試験情報サイト」や、リセマムで掲載した記事英語4技能評価の基礎知識とあわせ、募集要項と突き合わせながら念入りな受験計画を練っていきたい。

 ただし、山田氏は資格・検定試験の対策ありきの英語学習は本末転倒である、とも注意している。英語の資格・検定試験は、英語学習の達成度や実力を測るツールとして、また、目標のひとつとして扱い、上手に付き合っていきたいものだ。
《編集部》

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