岡山大学、教育ビッグデータ活用のeラーニングで児童の意欲向上

 岡山大学は2018年9月27日、教育ビッグデータを活用したeラーニングで、児童の意欲を確実に向上させられることを実証したと発表。解析されたフィードバック情報を教師と保護者が指導に生かすことで、意欲低位層を平均レベルにあげるという結果が得られたという。

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岡山大学「教育ビッグデータを活用したeラーニングで、児童の意欲を劇的かつ確実に向上させられることを世界で初めて実証-意欲低位層を軒並み平均レベルに上げられる-」
  • 岡山大学「教育ビッグデータを活用したeラーニングで、児童の意欲を劇的かつ確実に向上させられることを世界で初めて実証-意欲低位層を軒並み平均レベルに上げられる-」
  • ある児童の成績の変化
  • 主体的学習態度得点の変化(平均)
  • 全児童と主体的学習得点が低い児童の得点推移
 岡山大学は2018年9月27日、教育ビッグデータを活用したeラーニングで、児童の意欲を確実に向上させられることを実証したと発表。解析されたフィードバック情報を教師と保護者が指導に生かすことで、意欲低位層を平均レベルにあげるという結果が得られたという。

 岡山大学によると、漢字や英単語などは、長い時間をかけて何十回も勉強しなければ覚えられないが、年間を通じて完全に習得するまでをサポートする方法はこれまでなかったという。教育の領域におけるさまざまな問題について、原因の多くは、精度の高いデータがなかったため、教育に科学的手法が導入できなかったことにあると分析している。

 そこで、岡山大学大学院教育学研究科寺澤孝文教授は、年単位でなされる何十万という学習やテストの詳細なスケジュールを緩やかに制御し、高精度の膨大な学習データ(高精度教育ビッグデータ)を収集する技術「マイクロステップ・スケジューリング」を確立。収集されたビッグデータを解析することで、これまで見えなかった微細な学習の積み重ねの効果を、子どもひとりひとりに対して可視化することを実現し、学習するほど成績があがっていくグラフをフィードバックできるようになった。

 2016年度に長野県高森町にて、このeラーニングシステムを初めて社会実装したところ、フィードバック情報を教師と保護者が指導に生かすことにより、主体的学習意欲が著しく低かった小学5年生の児童たちの意欲が半年間で着実に向上することを実証した。具体的には、毎日のeラーニング(5~10分)の最後に、意欲などを測定するアンケートを入れて、年間を通じてそのデータを収集。そのアンケート項目のうち、自主的学習態度の得点が極端に低かった児童の得点が、フィードバックを受けるタイミングに対応して上昇し、平均レベルに到達することが示された。

 寺澤孝文教授は、この成果を利用することで、いわゆる暗記学習といわれる学習はタブレットとビッグデータに任せ、学校では創造的思考力の育成や主体的学び、体験的学習などに時間を割けるようになるという。

 また、同様のeラーニングを行えば、同様の成果が期待できることから、岡山大学と高森町は、学力・意欲に関して問題意識の高い自治体に対して、同様の支援を広げていく考え。そのほかにも、「2秒に満たない学習で語彙力は確実に伸びていく」「同じ英単語は1日に5回を超えて反復しても実力には効果を持たない」などの事実を見つけたとしている。

 この研究成果については、仙台市で9月25日から27日に開催された「日本心理学会第82回大会」で発表されたほか、岡山市で10月5日に開催される「平成30年度情報教育対応教員研修全国セミナー 第2回教育セミナー in おかやま」における講演で紹介されるという。
《黄金崎綾乃》

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