ユニセフ(国連児童基金)は2019年3月1日、世界ではしかの流行が警戒すべき高いレベルで急増しており、増加数の74%が10か国に集中し、過去にはしか根絶を宣言した国にも拡大していると警鐘を鳴らした。 2017年と比べ2018年のはしかの症例数がもっとも増えたのはウクライナ、フィリピン、ブラジル。ウクライナだけでも2018年に3万5,120件のはしかの症例が報告されており、ウクライナ政府によると、2019年の1月から2月の2か月間だけで新たに2万4,042人が感染したという。また、フィリピンでは2019年に入り2月23日までに、はしかの症例が1万2,736件、死亡例は203件が報告され、2018年1年間の1万5,599件を大きく上回る勢い。 はしかは空気感染や飛沫感染、接触感染などさまざまな経路から感染する。その感染力は、エボラ出血熱、結核やインフルエンザよりも高く、感染者がいた部屋では感染者がいなくなったあとも最大2時間、ほかの者が感染する可能性が続くと言われている。栄養不良の子どもたちや予防接種を受ける前の新生児が感染した場合、その命を奪う可能性が高くなる。また、はしかに感染すると特定の治療方法がないため、子どもたちにとって予防接種が命を救う手段とされている。 ユニセフははしかと闘うため、各国政府、保健従事者、および子どもの両親に対し、病気の根絶のために、ワクチンが安全かつ効果的で子どもの命を守るものだということを理解すること、集団感染が発生している間は生後6か月から5歳までのすべての子どもたちに予防接種をすること、保健員が質の高いサービスを提供できるように研修し必要な機材を提供すること、命を守るすべてのワクチンを届けるために予防接種プログラムを強化すること、を緊急に呼びかけている。◆2017年と比較し2018年の症例数の増加がもっとも高い10か国(*)1.ウクライナ:30,338件2.フィリピン:13,192件3.ブラジル:10,262件4.イエメン:6,641件5.ベネズエラ:4,916件6.セルビア:4,355件7.マダガスカル:4,307件8.スーダン:3,496件9.タイ:2,758件10.フランス:2,269件◆2017年にはしかの症例の報告がなく、2018年に顕著な数の症例がある国ブラジル:10,262件モルドバ:312件モンテネグロ:203件コロンビア:188件東ティモール:59件ペルー:38件チリ:23件ウズベキスタン:17件*WHO(世界保健機関)による世界194か国におけるはしか・風疹のデータ(2017年・2018年)による分析