欧州全土ではしか感染急増、半数は5歳未満の子供…ユニセフ

 ユニセフ(国連児童基金)とWHO(世界保健機関)は2024年5月29日、ヨーロッパ全土ではしかの患者が増え続けており、2024年になって記録されたはしかの感染件数は、2023年1年間に報告された感染件数の合計を間もなく上回る、と予防接種率の低下に警鐘を鳴らした。

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ウジホロドで、はしかの予防接種前の診察を受ける6歳のミハイリクちゃん。(ウクライナ、2023年7月撮影) UNICEF_UNI430484_Hudak
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  • 日本ユニセフ協会

 ユニセフ(国連児童基金)とWHO(世界保健機関)は2024年5月29日、ヨーロッパ全土ではしかの患者が増え続けており、2024年になって記録されたはしかの感染件数は、2023年1年間に報告された感染件数の合計を間もなく上回る、と予防接種率の低下に警鐘を鳴らした。

 2024年1月から3月までの間で、WHOヨーロッパ地域事務局が管轄する53か国中45か国で、5万6,634件のはしか感染と4人の死亡が公式に報告されたという。2023年の1年間に報告された数は、41か国で6万1,070件の感染と13人の死亡であった。

 はしかは世界でもっとも感染力の強い疾病の1つで、感染した人が呼吸や咳、くしゃみをすることでウイルスが空気中に飛散し、ほかの人がそれを吸い込むことで感染が広がる。空気中や物質の表面についたウイルスは、最大2時間は活性があり感染力をもつ。わかりやすい症状は発疹だが、合併症として失明、脳炎、重度の下痢とそれにともなう脱水症状、耳の感染症、肺炎などが引き起こされる。

 はしかは、幼児が重篤な合併症を引き起こす危険性がもっとも高い感染症だという。入院にいたる割合は高く、子供の免疫力が長期にわたって低下することから、ほかの感染症にもかかりやすくなる。2023年にWHOヨーロッパ地域ではしかを発症した人の半数以上が入院している。

 2023年に報告された感染の半数近くが5歳未満の子供で、そのうち4分の3以上は、はしかの予防接種をまったく受けておらず、約99%は十分な抗体をつけるために必要な2回の接種を受けていなかった。これは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間に、ワクチンで予防可能なはしかなどの疾病に対する定期予防接種を受けられなかった子供が増加したことと、2021年と2022年に予防接種率の回復が遅れたことを反映している。

 ユニセフ欧州・中央アジア地域事務所代表のレジーナ・デ・ドミニーチスは「はしかの感染増加は、予防接種率低下の明らかな兆候です。はしかの感染件数が急増し続けている今、この危険でありながら予防可能な病気からすべての子供を確実に守るために、保健システムを強化するとともに、効果的な公衆衛生施策を講じる、政府の緊急行動が必要です」と述べている。

 はしかの感染件数は世界的に増加しており、2023年には世界中で30万件以上が報告された。今年に入って報告された件数からは、2024年は昨年の感染件数に匹敵するか、それを上回ることが予測されるという。

 現在、はしかの感染や集団発生が起きていない国々は、国外からウイルスが持ち込まれて国内で流行したり、さらに国外へと広がったりしないように、事前対策を講じる必要がある。また、集団発生が起きている国々は、感染リスクが高いすべての人に予防接種を行う取組みを継続し、感染者の特定と接触者の追跡を強化し、疫学的データを用いて予防接種率のギャップを把握する必要があるという。ユニセフとWHOは、ほかの地域的・世界的パートナーと共に、各国のこうした取組みを引き続き支援していくとしている。

《中川和佳》

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