首都圏模試センターに聞く【中学受験2020】人気校の傾向と入試本番前の注意点

 首都圏模試センターの取締役教育研究所長の北一成氏に変化の大きい中学入試の現状や、2020年受験の傾向などをうかがった。

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首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成氏
  • 首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成氏
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 首都圏模試は、塾主催の模試とは異なる立場で首都圏での合格判定を行う人気の高い模試だ。近年では、子どもの学力の新観点となる「思考コード」を模試に導入するなど、これからの大学入試にも通じる新しい学びにも対応している。

 そこで、変化の大きい中学入試の現状や、2020年の入試の傾向などを、首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成氏に詳しく聞いた。

中学入試は大学入試を先取りしている



--近年の中学入試全般における概要と、昨年度、入試問題で見られた傾向などのトピックス、それを受けて今年度の出願傾向、考えられる出題のトレンドなどを教えてください

 まず、5年連続で首都圏中学入試の受験生は増え続けています。特に、2020年の増え幅は例年よりやや大きい傾向にあります。

 出題の細かい分析は各進学塾が行っていますが、概観としては、今後変わっていく大学入試を先取りしているような、思考力や表現力、記述力を問うような問題が如実に増えています。今年度も同じような傾向が続くと考えられます。

--ほかに注目している点はどのようなことでしょうか。

 注目点は複数あります。

 まず、適性検査型などと呼ばれる公立一貫校の出題が、2021年から始まる大学入学共通テストの問題と非常に近い点です。つまり、この先の大学入試を、公立中高一貫校が先取りしていたといえます。このタイプの入試は岡山県や札幌市などでは「非教科型」と呼ばれ、全国で増えつつあります。

 首都圏では茨城県で大きな動きがあります。水戸一校や土浦一校といった、東京の日比谷や神奈川の厚木や湘南と並ぶ、公立の優秀校10校が3年間かけて中学募集を始めるため、茨城県では大きな話題になっています。

首都圏模試センター取締役教育研究所長の北一成氏

 現在、茨城県では低学年からの中学受験ブームが起きています。県立高校が中学募集を開始して公立中高一貫校が増えると適性検査の市場が広がり、私立中も公立と併願しやすい適性検査型入試を増やしてくる可能性は大きいと考えています。

 東京都では、2021年から2022年にかけて都立の併設型公立中高一貫校5校が高校募集を廃止し、実質的に完全中高一貫化します。そのぶんこれらの都立中高一貫校の募集定員が増え、中学受験での市場が広がりますので、公立中高一貫校の受験生の増加が見込まれます。

 さらに、東京と隣接する埼玉県川口市でも2021年に市立の公立中高一貫校が開校します。2020年受験の現6年生には直接関係ありませんが、市立高校3校が合併し、140億円ほどかけて建造している校舎は普通の学校の3倍ほどある大きな学校です。今後も川口市に新しい公立中高一貫校が増える可能性があり、市場はますます広がっていくでしょう。

 また、国の教育研究と教育実習のための機関である国立大学の附属中が4教科型から適性検査型にシフトしてきている点も注目です。すでに東京大学教育学部附属中学校や東京学芸大学附属国際中等教育学校などは、適性検査型の入試を行っています。来春2020年からは千葉大学教育学部附属中学校もユニークな入試を行いますし、2021年からはお茶の水女子大学附属中学校も適正検査へとシフトします。

首都圏初の公立IBスクールも登場



--公立校では、埼玉県に首都圏の公立中高一貫校では初めての国際バカロレア(IB)スクールが開校しましたね。

 中高一貫の埼玉市立大宮国際中等教育学校ですね。IBは、所定のカリキュラムを履修し所定の成績を収めることで国際的に認められる大学入学資格が得られるため注目を浴びていますが、これまで公立のIBスクールは札幌にしかありませんでした。しかし2019年は埼玉市立大宮国際のほか、大阪、広島と3校のIBスクールができました。大宮国際の入試では、適性検査の中に英語の問題も出題されます。

 このように、公立さえもIBのプログラムや英語入試を行う時代になってきており、新しい教育の波は私立中高一貫校だけでなく公立中高一貫校にもおよんでいます。これによって、中学受験において受験生が二極化しています。

 ひとつは、サピックスや早稲田アカデミーなどの進学塾に通って難関校を目指す受験生層。もうひとつが、もう少しライトな受験勉強をして自分に合った学校をめざすボリュームゾーンの受験生です。

 前者は、親も子も割り切って低学年から塾に通っています。後者は、習い事などをやっていて、早期からの塾通いは選ばない。6年生ギリギリになって、「やっぱり中学を受けたい」といって目指すタイプです。保護者の世代が若くなればなるほど、後者のスタイルを望む家庭が増えていることを感じています。

--二極化したのはなぜでしょうか。

 リーマンショックや東日本大震災などを体験して以降、価値観が崩れ、いい学校に行ったからといって幸せな人生が待っているわけではないということを感じたのでしょう。だからこそ、子どもが小さいときは親子で一緒にいる、子どもがやりたい習い事を応援してあげるといったことに価値を見出すようになってきたのです。

 この先、「何がなんでも難関校」という家庭は減っていくかもしれません。一方で、サピックスなどの授業や課題をこなせる子であれば、やはり難関校を目指すこともひとつの選択肢だと思います。

ダブルディプロマ導入校やラウンドスクエア加盟校にも注目



--なぜ、新しいタイプの入試や新しいプログラムの導入校が増えてきたのでしょうか。

 新しい入試を導入することは、今までと違った評価軸で子どもたちを受け入れていこうという意図があります。ベースの4科入試を全部変えてしまうのではなく、定員の一部を適性検査型や英語入試にするなどして、今の入試の在り方と、今後求められる入試の在り方を手探りし、学校としてのメッセージを出しているという状態だと思います。

--新しい入試の形態(新タイプ入試)には目新しさもあり、注目されていますが、一方で始まったばかりなので出口が見えない、成果が見えにくいという意見もありますが、いかがでしょうか。

 新しいタイプの教育プログラムを導入する学校や新タイプ入試が始まったのは2015年ぐらいからで、成果がまだ出ていないので、そういった疑問はあると思います。

 しかし、たとえば「21世紀型教育」導入・実践校の代表的な存在である三田国際の一期生は現在高校2年生で、現時点での海外の留学希望者は100人を超えています。2年後の大学入試での海外進学がかなりの数になるのではと予測しています。

 また、文化学園大学杉並は高校に、日本にいながらにしてカナダBC州政府の“Bunka Suginami Canadian International School”にも在籍し、日本とカナダ両方の高校卒業資格を同時に取得できる「ダブルディプロマ」を導入して、その成果が出始めています。初年度の13人は、全員早慶や青山、ICUなどに進学しました。そういった成果を受け、ダブルディプロマを導入する麹町学園女子や神田女学園、国本女子などは志願者や入学者が増えていくでしょう。

--ダブルディプロマなどの制度を取り入れている学校に女子校が多いのは、理由があるのでしょうか。

 ある意味、生徒の募集に苦労して後がないという状況にならないと、学校としてもそこまで思い切った改革はできないという事情もあったかと思います。ただし、学校は15年あれば大きく変わると思っています。6年でも変わる。ですので、そうした改革を行っている学校に期待するか、常に成果が安定している学校を選ぶかは、それぞれのご家庭の価値観や選択になります。

 従来型の4教科入試は全体の約75%、新しい入試は20%を超えました。「市場全体の3割を超えると、どんな業界や商品でも一気に増える」といいますから、それまではどの学校も様子見している状態ともいえます。

--「ラウンドスクエア」とはどんなものなのでしょうか。

 ラウンドスクエアは、IB(国際バカロレア)機構をつくったクルト・ハーン氏が創設した、世界の高校生ネットワークのための私立学校連盟です。日本で加盟している学校はまだ少ないですが、玉川学園や八雲学園などがあります。さらに工学院大学附属や啓明学園も加盟の準備を進めています。

 加盟校は世界に150校ほどあり、毎年開催されている世界大会は模擬国連のような形で、各校の代表生徒が本格的な国際交流を行っています。英語で課題を話し合ったりするだけでなく、自国の文化を伝え合うアクティビティなどがあり、参加した生徒は見事な成長を遂げています。

偏差値は「たかが偏差値」として割り切ることも大切



--模試の活用について教えてください。

 模試は、あくまでも同じような目標をもっている子どもたちの中での相対的な位置を見定めるものです。偏差値は出ますが、ひとつのものさしで見たときの合格のしやすさ・しにくさを判定しています。この点をきちんと割り切ったうえで、利用してほしいですね。

 合格の可能性が低ければ、自分の課題を見つけてそれを埋めていく努力をしてほしい。判定が80%を超えていたら自信をもってよいでしょう。

 でも、実際の試験とは異なります。これは当たり前のことなのですが、それを伝えていない塾もあり、若い保護者のほうが偏差値を信じてしまいがちな傾向にある気がします。模試で偏差値を出している我々が言うのも変な話ですが、「たかが偏差値」です。そこは、入試が近づくほどに割り切ったほうがよいです。そして、私たちは偏差値が5足りなかろうと、受けたいなら「受けてみよう」と言い続けています。

--それはなぜでしょうか。

 子どもが行きたいと思っている学校だからです。

 6年生は現在、第一志望の過去問に一生懸命取り組んでいる時期だと思いますが、そこで力が付けば、実際の入試をクリアすることも可能です。さすがに偏差値10の差は難しいかもしれませんが、5ぐらいはなんてことはないのです。

 だから、第一志望でどうしても行きたい学校があるなら、偏差値や合格可能性にとらわれないで思い切って受けてほしいと思います。

 ただ、その子にとってベストの学校は、第一志望校に限られるわけでもありません。似たタイプの学校など、本人が気に入りそうな学校で、家庭の教育方針に合った学校を親が探して、上手に併願を組んであげることです。そうすれば、第一志望に思い切ってチャレンジできますし、もし合格できなかったとしても納得のいく学校に進学できるでしょう。

 模試を受けて、できなかった出題については見直すことで力が付きます。「あと何点取れれば、偏差値がいくつ上がる」とか「志望校の合格80%ラインにいくまでにはあと何点取ればいい」といったことを確認し、それを活用してほしいと思います。また、保護者の方は、模試の際に開催される保護者会などで新しい情報を収集して生かしてほしいと思います。

首都圏模試の「思考コード」の意味と活用法



--首都圏模試では「思考コード」というものを採用していますが、それについて教えてください。

 「思考コード」とは、首都圏模試センターが独自につくった偏差値や点数に代わる新しい学力の基準です。A領域「知識・理解」、B領域「応用・論理」、C領域「批判・創造」という3つの領域を、「単純」「複雑」「変容」と操作/関係で分け、計9つのマス目に区切った力の領域を表します。

 今までの大学入試やセンター試験では、A領域やB領域の真ん中ぐらいの問題しか出されていませんでした。しかし今後の大学入試では、C領域のほうまで問われるようになってくるのです。

 たとえば、ザビエルの写真を見せて「誰ですか」と問うのは、A領域の問題です。これがC領域になると、「もし、あなたが知らない土地で、ザビエルならどうするか」という問題を600字で記述する、といったふうになります。これからの大学入試ではこうした、答がひとつに定まらない問題や、創造力や「あなただったらどうする?」という、"自分軸"が問われる問題が増えてきます。

 これにより、今までのように点数だけの判断では評価されにくかった子も評価できるようになる。たとえば、知識のところは弱いけれど、B2の問題に関してはすごく成績がいいといったことが「思考コード」では見えてくるのです。実際に麻布や栄光、武蔵などは大型記述を通して、受験生のそういったところも見ています。とはいえ合格最低点が設定されていますので、合格に至らないこともあります。

 首都圏模試でもそういうものさしを出し始めているので、今後はそれを生かしてほしいと思います。解答と解説の中に、その問題が思考コードのどの問題なのかを明記していますので、これを意識しながら振り返りをしてもらうことで、その問題を解いていくヒント、そこで必要な思考スキルとは何かがわかるはずです。

 なお、「思考コード」のベースになっている「ブルームのタキソノミー(教育目標分類学)」は、文部科学省がめざす今後の教育改革の評価基準のベースにもなっているもので、大学入試で求められる資質・能力とも一致しています。新しい入試のバリエーションが生まれていますが、プレゼンテーション型やアクティブラーニング型は、今後の大学入試で問われるC領域の力を試しているものです。この先の教育、大学入試ではこのような変化があるということを意識して、中学受験でも学校選びをしたほうがいいと思います。

子どもの強みを生かした中学受験ができる時代になった



--併願校の選び方も重要ですね。

 併願校については、午後入試や、算数1教科などの"得意科目選択型"も増えていますので、しっかり選んでほしいと思います。2月1日や2月入試の後半には、公立一貫校を受ける子が併願しやすい入試が多くなっています。そうしたチャンスを併願に入れていくと、子どもの強みを生かして合格を勝ち取ることができるでしょう。

 共立女子は、インタラクティブ入試と名付けられた英語入試がとても人気があります。この試験は英語のペーパーテストがなく、算数1教科を受けて、英語はグループワークで行います。ただし、合格者のレベルはかなり高く英検2級以上~準1級相当ですが、英語が得意な難関校受験者も多くなっています。

 選択肢が増えたということは、受験生にとってよい時代になったと思っています。4教科でも受けられるし、記述が強ければそういった入試を目指せるし、英語が強ければそれを生かすことも可能です。

--その子にしかない能力を生かせる受験になってきたということですね。

 そうです。たとえば、入試の種類がもっとも多い宝仙学園理数インターは、今年は9種類でしたが、来年は10種類になります。この学校は、プレゼンテーション型を最初に始めた学校でもありますが、それによって、今まで出会えなかった受験生と出会うことができたそうです。現在は、世界レベルの子も混ざってきて、自分のやりたいことを追求しています。

--新しい入試によって、学校の中でも化学変化が起きているということですね。

 これまでの中学受験での学校の選び方は、大学合格実績の良さ、学習の量、面倒見の良さなどに焦点があたっていました。現在は、子どもが自主的に学んでいけるような環境づくり、モチベーションを高めていけるといったことや、逆に教えないで自分たちで考えさせる、失敗してもいいからチャレンジさせるといった学校に注目が集まっています。

 特に、日本の子どもは自己肯定感が低いと言われていますので、「失敗してもいいから何度もチャレンジしていく」ことを推奨する学校の人気が高くなってます。また、開成や栄光学園、麻布などの最難関校も「教え込まない=生徒に自ら考えさせる」スタイルの授業をどんどん取り入れています。

保護者も子どもも明るく挑んでほしい



--これから受験日までラストスパートをかける小学6年生と、保護者へのアドバイスをお願いします。

 明るくやることですね。模試の合格判定を見て悲観的になってしまうこともあるでしょうが、親も子も追い詰められてしまうことはよくありません。

 保護者会などで、「第一志望に入れる子は3割」と明言すると、場の空気が一瞬凍り付くようになります。でも、もとからそういうものだと思ってチャレンジすれば良いのです。第1志望に合格できれば喜べばいいし、もしだめだったとしても、それで子どもの人生が終わりかといえば絶対そんなことはありません。

 むしろ、ここまできたら、子どもがこれまで頑張ってきた過程を評価し、同時にそれを支えてきた保護者の方も、自分自身をほめてほしいと思います。残り1~2か月は子どもの成長を信じ、あとは親もふくめて体調管理などに集中したほうがいいと思います。

 12歳の子が臨む中学入試というものは、早熟な子が有利です。特に男の子は、6年生の10月の段階でも受験生っぽくない子がたくさんいます。本当に気合が入るのは11月以降で、最後に急激に伸びる子もいますので、親としては信じてあげてほしいと思います。

 ただし、併願校選びについては親の責任でしっかり選んでください。子どもが決めるのは第一、第二志望ぐらいでよいでしょう。学校選びは、「うちの子が、6年間で伸びていけるようなタイプの学校」というものを親の目で見て考えて選んであげてほしいと思います。

--ありがとうございました。

 大学入試改革をはじめ、教育の大きな転換期にいる受験生とその保護者にとっては、色々な情報が錯綜し、日々迷うことも多い。しかし、新しい入試スタイルが増えているということは、可能性、選択肢が増えているという見方もできる。

 知識を生かす従来の4教科型が主流ではあるが、子の強みを生かした併願を組むなど、親としても柔軟に考えていくことで、我が子に合った学校への合格を掴むことができるだろう。
《相川いずみ》

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