記者発表会では、セイコーエプソン 代表取締役 専務執行役員 プリンティングソリューションズ事業部長 久保田孝一氏、エプソン販売 代表取締役社長 鈴村文徳氏が登壇。新商品の特長や今後の戦略などを説明した。ここでは、新商品の特長や学校専用の新プラン「アカデミックプラン」を中心に紹介する。
インクジェット化で持続可能な社会の実現へ
記者発表の冒頭、セイコーエプソン 代表取締役 専務執行役員 プリンティングソリューションズ事業部長 久保田孝一氏からエプソンの目指す方向や環境対応に関する試みなどが説明された。
熱を使わずにインクを吐出するインクジェット方式は、プリンター選びの新基準であり、ほかのプリンター方式に比べて圧倒的にシンプルな構造で低消費電力を実現できるという。安定的な高速印刷で業務効率の向上が図れ、低消費電力でエネルギーとコストを削減。環境に対する負荷も低減され、低メンテナンスにより生産性が向上するなど、環境に適応した商品群はSDGsの実現にも寄与しているという。
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機能の進化した新商品
新商品のA3高速ラインインクジェット複合機/プリンター、LXシリーズ「LX-10050MF/LX-7550MF/LX-6050MF」は、最大100枚/分の高速印刷の価値を最大限に発揮するという。
高い生産性が実現できるため、オフィスや学校現場のセンターマシンとして位置付けられている。同シリーズはカラー、モノクロともに従来機よりも高速化を実現しており、スキャン画質やコピー画質も再現性が向上。オプションのフィニッシャーは、ステープルと中綴じの2種類が用意され、パンチユニットを装備すると2穴・4穴の穴あけも可能で、業務の効率化にも繋がる。
なお、中速機に位置付けられる新商品PXシリーズ「PX-M7090FX/PX-M7080FX/PX-S7090X」も省スペース化と機能が進化し、ラインアップが充実した。
これらの新商品は、国内教育機関でも採用が増えつつあるGoogle Chromebookに対応予定。ネットワーク経由でのChromebookからの直接印刷やChrome OSの標準ローカルプリンタードライバーの対応も予定されている。
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働き方改革と教育の質の向上への寄与を目指す
続いて、エプソン販売 代表取締役社長 鈴村文徳氏から、新商品の基本戦略や月額の基本利用料金「オール・イン・ワン」プランを中心とした各種購入プランの概要、教育市場での導入が進展していることなどが説明され、新たに学校向けの特別なプランとして「アカデミックプラン」を提供することが発表された。
この「アカデミックプラン」は、学校現場におけるさまざまな印刷における課題を解決するために提供される。
新学習指導要領ではICT環境の整備が急務、また学校の働き方改革では教職員の長時間労働の是正が叫ばれている。「学びの質を向上させたい、印刷業務の負担を解消したいというニーズは強く、困っている学校現場を一刻も早く改善し、学校現場を笑顔にしたい」と鈴村氏はいう。
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今の学校現場には数多くの印刷物が存在する。たとえば、学校だよりや教材、校務支援システムの導入による帳票印刷(通知表/指導要録/名簿)など。約500校にエプソンが実施したアンケートでは、その約65%で印刷渋滞の発生が「ある」と回答しているという。
また、教員の印刷業務にかかる時間も紹介された。
教員の印刷業務では、職員室のレーザープリンターで原本を印刷、配付分の印刷のために印刷室に移動して多量の印刷という工程が一般的。大量印刷(10~20枚以上)の場合、孔版印刷機による1回の印刷で約5.5分かかるという。
印刷回数は平均4.6回/日、毎月平均92回となり、毎月8.4時間(5.5分×92回=506分≒8.4時間)もの時間を印刷業務に費やしている計算になる。また消耗品の数だけ在庫管理や発注業務、交換作業が発生する。働き方改革が叫ばれる中にあって、教員は印刷業務に多大な労力を費やしているともいえる。
一方で、子どもたちの“教材”の現実に目を向けると、ほとんどの配付プリントやテストがモノクロのまま。先生の資料はカラーなのに、宿題や理科、社会の資料はモノクロのままであれば、とてもわかりにくいといわざるをえないだろう。記者発表会の展示コーナーで紹介されたテスト問題では、モノクロとカラーの違いがより鮮明に理解できた。
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今回新たに提供される「アカデミックプラン」は、初期費用は不要で月額定額制。規定の上限枚数まではカラーとモノクロの制限はなくコストが同一だ。複数校の契約で学校間や季節による使用量の多少を平準化し、消耗品は自動配送されるなど、各学校や地域の印刷環境や利用状況に応じて最適なプランが提案されるという。
学校現場におけるメリットもわかりやすい。
100枚/分の高速出力により印刷時間は大幅に短縮できる。PCからダイレクトに多部数の印刷が可能となり、職員室にプリンターが置かれることで先生方の移動距離や時間も短くなる。オプションでフィニッシャーを用意すれば、多くの教育機関でもっとも煩雑かつ時間のかかる、丁合い作業(印刷物を1冊になるようにページ順に集める作業)の効率化も実現できる。
教員だけでなく生徒や保護者にもやさしい。モノクロのためにメリハリがなく重要な事項を見落としがちだった教材や連絡物は、カラー化すれば明らかな“見やすさ”を確保できるだろう。
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SDGsに向けたエプソンの取組みにも期待
記者発表後に、エプソンが新宿ミライナタワーで実証実験している「環境配慮型オフィスセンター」を見学した。
水を使用しない乾式オフィス製紙機「PaperLab」で使用済みの社内文書が再生紙へと生まれ変わる。大量の印刷物が存在する学校現場こそ、「PaperLab」が導入されると良いのではないだろうかとも感じた。
また、この「環境配慮型オフィスセンター」は、教育現場で環境問題を捉えるきっかけや教材にできる可能性もある。今後も持続可能な開発目標(SDGs)に向けたエプソンの取組みにおおいに期待したい。
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