日本人は発達に伴い声の感情に注目…東女ほか研究チームが発見

 東京女子大学は2021年5月19日、日本人とオランダ人の子供と大人を対象とした国際比較実験によって、相手の感情を読みとる際に、日本人は大人になるにつれて徐々に相手の声の調子に敏感になっていくことを発見したことを発表した。

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実験イメージ
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  • 声の感情を選んだ割合
 東京女子大学は2021年5月19日、日本人とオランダ人の子供と大人を対象とした国際比較実験によって、相手の感情を読みとる際に、日本人は大人になるにつれて徐々に相手の声の調子に敏感になっていくことを発見したことを発表した。

 東京女子大学の田中章浩教授、東京女子大学大学院生の河原美彩子氏、アムステルダム大学(オランダ)のDisa Sauter准教授の研究チームは、顔と声から読みとった感情の情報をどのように結びつけて、相手の感情を判断するのかを調べる実験を、日本人とオランダ人の児童期の子供と大人の計296名を対象に実施した。

 実験では、登場人物が顔と声によって怒りまたは喜びの感情を表しているビデオを視聴して、その人物が「怒っている」のか「喜んでいる」のかを判断してもらった。実験で使用したビデオには、顔と声の表す感情が一致しているビデオ(例:喜び顔+喜び声)と不一致のビデオ(例:怒り顔+喜び声)があり、感情が不一致のビデオへの回答から、参加者が相手の顔の表情と声の調子のどちらに注目していたかを検討した。

 実験の結果、11~12歳と大人では、日本人はオランダ人よりも声の感情に注目しやすいという文化差が示された。一方、5~6歳の時点では日本人もオランダ人も顔をより注目する傾向にあり、文化差はみられなかったことから、顔と声から読みとった感情の情報の結びつけ方の文化差は、幼少期から存在するものではなく、発達に伴って出現することが明らかとなった。

 東京女子大学は実験結果を受けて、「日本人の大人が本心を顔に出さない傾向にあるとすると、偽りの表情に隠された本心を声から読みとろうとする経験を大人になる間に積むことで、徐々に声に注目するようになっていく可能性」が考えられると分析。日常生活で日本人の母親が子供に注意をするときに、他人の目を気にして笑顔のまま厳しい言い方で叱っても伝わらないのは、子供は表情から感情を判断しやすいためだと説明できるとした。

 なお、この研究成果は英科学雑誌「Cognition and Emotion」に掲載された。
《桑田あや》

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