こども家庭庁創設に向けた「聴覚障害児ことば教育五策」の提言

 インフォメーションギャップバスターは、「こども家庭庁」創設にあたって、「多様性をもつこどもの家庭の子育てをいかに支援するか」について、言語(視覚・聴覚)・コミュニケーションの手段の観点から、「聴覚障害児ことば教育五策」を提言する。

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提言書「聴覚障害児ことば教育五策」
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 インフォメーションギャップバスター(IGB)は、「こども家庭庁」創設にあたって、「多様性をもつこどもの家庭の子育てをいかに支援するか」について、言語(視覚・聴覚)・コミュニケーションの手段の観点から、「聴覚障害児ことば教育五策」を提言する。

 2022年6月15日、子供政策の総合調整・司令塔機能を担う「こども家庭庁」の設置法、および、子供施策の基本理念となる「こども基本法」が、参議院本会議にて可決、成立した。「こども家庭庁」の創設にあたり、重要なのは「多様性をもつこどもの家庭の子育てをいかに支援するか」。「こども基本法」では、今後の「こども政策」の基本理念として、「誰1人取り残さず、抜け落ちることのない支援」を行うとしている。

 IGBは、聴覚障害児の人工内耳や補聴器等の聴覚活用の早期療育がはじまる前の前言語期(0~1歳)での視覚的コミュニケーション(おもに「手話」)の重要性を訴えてきた。言語と思考は互いに結びついていて、世界を知覚する際には自身が使う言語(第一言語)の影響を受けている。そういう意味で、聴覚障害児にとって、視覚を活用する言語である手話は、世界を知覚し、思考を深めるために必須であるという。

 現状では、言語(視覚・聴覚)・コミュニケーションの手段が限定されることはないが、手話言語で育てたい親、学びたい子供の選択肢がなく、地域の状況によっては、「その選択肢は」保証されていない。また、聾学校で手話言語を推奨しないところがある。教育の現場における情報保障は義務ではなく、各機関あるいは各家庭の努力に任せている。聴覚活用と比較して、手話については、絶対的に教育的資源が不足している状況であり、視覚活用する子供は情報障害という第二次障害被害を受けやすい。

 これまでの難聴児教育方針の議論が「聴覚活用」に集中していて、「視覚活用」の子供への学習支援の教材や人材の不足の懸念があるため、提言を出すに至った。

 提言1は、「療育に必要な情報を提供する体制の確立をする」。「療育に必要な情報を得るための負担が重い」という課題がある。療育方針を決める時に、親自身が専門家のように知識を学んで判断するのではなく、偏りのない情報提供を行う体制を創設すること。提言2は、「療育環境の地域格差解消・親の経済的支援をする」。「良い療育環境を与えるための負担が重い」という課題に対して、療育で選べるオプションの地域差を解消するために、療育実施主体への療育助成を拡充する。また、オプションを選択するための聴覚障害児への親への負担を軽減するための精神・経済支援を行う。

 提言3は、「聴覚障害児のアセスメント・介入体制の確立をする」。「聴覚障害児の言語獲得の遅れに気付かない」という課題に、アセスメント・介入を行う体制を創立すること。提言4は、「聴覚障害児のセルフアドボカシー教育の確立をする」。「聴覚障害児の周辺の人々の理解が得られにくい」という課題のため、聴覚障害児のセルフアドボカシーを教育するプログラムを開発・実践すること。提言5は、「聴覚障害児の情報保障体制の確立をする」。「聴覚障害児の生活の質(QOL)は低水準」という課題には、聴覚障害児のコミュニケーションを支援するための多角的な支援サービスをコーディネートする体制を作ること。以上の5つの提言をした。

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