現役医学生YouTuber藤白りりさん「受験当日に解法のストックを使い切る」勉強法

 現役医学生YouTuberでスタディサプリ中学講座「理科」の講師も務める藤白りりさん。医学部現役合格に至るまで、自分に合った勉強法をどのように見つけてきたのか。冬に向けて受験シーズンが本格化する今、受験生に役立つ勉強法や参考書選びについて話を聞いた。

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現役医学生YouTuber藤白りりさん
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 東京医科歯科大学で医師を目指す藤白りりさんは、和歌山県出身の医学生YouTuberだ。受験勉強法から趣味や買い物まで、医学生の日常を紹介するYouTubeチャンネル登録者数は、開設から2年で19.9万人にのぼり人気上昇中。現在スタディサプリ中学講座「理科」の講師も務め、この9月末には著書『いつも気分よく集中できる「必要なことだけ」勉強法』(KADOKAWA)も出版した。

 医学部現役合格に至るまで、藤白りりさんは自分に合った勉強法をどのように見つけてきたのか。受験シーズンが本格化する中で、受験生がより集中して過ごし、合格を引き寄せる勉強を進めていくためのヒントを聞いた。

豊かな自然に囲まれた環境で育ち、本を好きになった幼少期

--ご自身を振り返ると、どんなお子さんだったのでしょうか。

 私立の小学校に通っていたので近所に遊ぶ友達があまりいなくてひとりの時間が多く、本が好きになりました。恋愛小説や小学校で人気の文庫のシリーズ、歴史漫画などが好きでしたね。自分自身ではあまり覚えていないのですが、両親に聞くと幼稚園のころは近所の公園でどろどろになって遊んでいたそうです。ひとりの時は本を読んで、学校では友達と休み時間に走り回る元気な子供でしたね。生まれ育った和歌山は、たまに学校に猿が出ることもあり、遠くを見れば山が見えるのどかで自然豊かな環境でしたので、伸び伸びと育ったと思います。

--ご両親はどのような教育方針だったのでしょうか。

 「自分の人生だから、何でも自分で責任をもって決めなさい」と言われてきました。今、勉強したらこんな道がある、勉強しなくてもこんな道がある、何でも好きな道を選んでね、というように選択肢を数多く教えられ、与えてもらいました。

 習い事は公文とピアノと習字とそろばんをやっていましたが、どれも両親からこういうのがあるよと教えてもらい、体験に行ってみて私自身がやりたいと決めたものをやってきました。その中でも公文は一番長く続けて、幼稚園から高校1年生まで続けました。あまり勉強しなさいとは言われませんでしたが、公文が途中で嫌になってしまった時期があって、「やめたい」と言った時は「本当にやめたいの?」と母に諭されましたね。しんどい時や何かに迷った時には「逃げたいだけなのか、本当に必要なのかよく考えて選びなさい」と母に言われていました。

「自分の人生だから、何でも自分で責任をもって決めなさい」と言われて育ったという藤白りりさん

 智辯学園和歌山小学校の受験も、親が良い学校があるよと選択肢を出してくれました。当時の私は自分で学校を選んだと思っていましたが、もしかするとうまいこと乗せられたのかもしれませんね(笑)。でもいつも自分で選んだという記憶が残っていますし、両親も「行きたくて通っているんだよね」というスタンスでした。

受験塾で「わからない」が「わかる」に変わった

--智辯和歌山小学校に入学して、中学校、高校とエスカレータ式だったと思うのですが、初めての「勉強の成功体験」は記憶にありますか?

 小学6年生の時に一番印象に残った成功体験があります。小1から小4までは公文で先取りしていたのもあって、勉強で「わからない」となった経験がなく、暗記も得意でした。ですが、小学5年生、6年生と学年が進むうちに「わからない」問題が増えてきたんです。

 内部進学試験の算数や理科で思考力が問われる問題がどうしてもわからず、どう勉強したら良いのか……と勉強の仕方がわからなくなりました。当時、浜学園に通っていた友達がとても勉強が良くできていたので、「私も行ってみたい」と両親に相談したんです。そこで良い先生や参考書、勉強方法に出会って、勉強すれば伸びるという感覚がつかめました。数か月間の通塾でしたが、そこから急に成績が上昇したので、その時の成功体験はとても大きかったと思います。特に算数と理科では解法をストックするという考えにつながりました。浜学園では、解法を徹底的に覚えるというような指導ではありませんでしたが、参考書や問題集等の教材が本当にわかりやすくて、良く読んで「わからない時にはこう考えれば良いんだ」と理解できたんです。

--自分に合った参考書や問題集に出会えたことがきっかけで、自分で勉強を進められるようになったんですね。とはいえ医学部合格までは努力が必要だったのではと思います。「勉強の失敗体験」もあったのでしょうか。

 先ほどの成功体験でお話ししたように、小学生中学年ころまではあまり勉強しなくても良い点数が取れていたんですが、高学年になって勉強をしないで理科のテストに臨んだところ30点と学年最下位の点数になったことがありました。勉強しないとこうなるんだと、あの時はびっくりしましたし、とてもショックでした。

 他にも、高校2年生の時に、文化祭や体育祭等の行事が好きで文化委員になったんですが、とても忙しくて勉強時間が足りなくなってしまったんです。友達と一緒に過ごした行事はとても楽しかったのですが、抜け落ちてしまった勉強については反省して、行事が終わってから一生懸命勉強して空いた穴を埋めました。甲子園のチアリーダーに夏の2、3か月ほど参加したときも、朝から晩まで練習がきつくて、勉強時間がとれなくて。部活を理由に成績を落としたくなかったので、無駄な時間を徹底的に省いて必死に勉強し、結果、成績の下降を避けられました。

「良い先生や参考書、勉強方法と出会い、解法をストックできるようになった」という藤白りりさん。勉強だけでなく、学校行事やチアにも力を注ぎ、強い意志でやり抜いて医学部合格を掴んだ

--失敗というよりも苦労でしょうか。チアと勉強のどちらかではなく、両立というしんどい方を選んで、最終的にはどちらもやり切ったんですね。

 そうかもしれません。それから、もう1つあります。ぜひ受験生には参考にしてほしいのですが、高校3年生のときの志望校選びも迷い、多くの時間を調べる時間に費やしてしまい、勉強時間が減ってしまうという失敗もありました。志望校は高いところを目指しておいて損はありません。受験に向けての発展演習も必要ですが、個々の志望校に合わせた勉強は共通テストが終わってからの1か月でも十分に可能です。参考書ベースでしっかりと勉強して、共通テストの結果も踏まえて最終的な志望校を決めれば良いので、志望校選びにあまり時間をかけすぎないで、勉強時間を確保したほうが良いと思います。

--では医学部を志したのはいつごろなのでしょうか。

 お医者さんが良いな、と思ったのは中学1年生の時でしたが、お医者さんになろうという思いはまだ強くありませんでした。高校2年生までは、東大理IIに入り、進振り(進学振り分け)で文系に行って外交官になって省庁勤めという進路を描いていました。高校3年生の時に、医者は医学部に入らないとなれない、特異性が高いと思い、医学部に進むことを決めました。

自分に合った参考書を選ぶポイント

--「参考書との出会いで勉強人生が変わることもある」と著書にありましたが、参考書選びのポイントを教えてください。

 参考書も教科書的なものと演習問題集的なものがありますが、一番のポイントは「自分に合ったものを選ぶこと」です。教科書的なものの場合、自分がわからないと思う分野を書店などでのぞいてみて、わかると思えるものならば良いと思います。また演習問題集的なものならば、問題を見てすべて解ける問題集ではダメですね。逆にすべてわからなくて、解説を見てもわからないといった問題集もダメだと思います。そのバランスが良くて、若干わからない、わかりそうだけどわからないといったレベルのものが一番良いと思います。

 勉強をやろうと思うタイミングは、模試や試験で点数が取れないときが多いと思います。その場合は、そのテストの問題と似ている問題が掲載されている参考書を探してください。そうしたものを一旦、買ってみて、それでもわからなければ自分のレベルに合わせていくと良いでしょう。

 探すには書店で実際に手に取って見るのがベストですが、その前にインターネットなどで検索し、自分の志望校に進学した先輩のブログなどで問題集が紹介されている記事を見て、その中から目星をつけると探しやすくなります。多くの人が使っているものは良い問題集の場合も多いので、まずメジャーなものから見て、それが合わなければ違うものに手をつけるのも良いと思います。また、適度にキャラクターや絵などでわかりやすいものも、中にはあると良いかもしれません。私の場合は、大学受験までにレベル別にピックアップして、この時期までにこの参考書をやると計画を立てて進めました。はじめてみると自分のキャパシティがどれだけで、1日でどのくらい進められるかがわかってきますので、勉強量を調整しやすくなってきます。

--勉強に欠かせないアイテムを教えてください。

 ルーズリーフです。問題を解くときは用紙に書いて、あとで綴じる場所を選んでルーズリーフに整理していました。ただ中学の時は学校の授業でノートの提出もあったのでノートを使いましたが、徐々に受験勉強に向けて、自分用に整理しやすいルーズリーフに変わりました。

--ノートやルーズリーフなどをきれいにまとめすぎると、そこに時間が奪われて意味がなくなると言われますが、藤白さんはどのように活用していましたか。

 まとめること自体にはあまり意味がなく、まとめるときに、いかに自分の頭の中にインプットできるかが大事だと思います。ただ暗記ものでは、自分の頭の中で整理できるようにまとめるのは大事ですね。暗記では反復と関連付けを大事に、覚えやすい語呂を書いたり、なぜそうなったか理由を付け足したり、表にしてスッキリわかりやすくまとめたりしていました。学校の先生がノートに2:8程の割合で線を引いて、いろいろメモを取ると良いアドバイスされたこともありましたが、私は線を引かなくても困らなかったですね。

「若干わからない、わかりそうだけどわからないといったレベルの参考書や問題集がお勧め」

 特に大学受験の勉強に関しては、たとえば化学だと「大学受験Doシリーズ」(旺文社)という参考書の中に書き込んで覚えて、ルーズリーフで数学や理科の計算問題や演習を解きました。そこには何か間違えた時、わからなくて行き詰まった時に、次にどういうことを考えれば問題が解けるようになるかを、解いた式のすぐ横に、赤ペンでメモをしていました。数学で公式等の暗記事項も忘れていたら書きました。

 大事なことはできているのに、最後の方で計算ミスをして最初から全部を解き直そうとする場合がありますが、私はその問題でもっとも問われていること以外はあまり気にしませんでした。本当に自分が勘違いしただけなのか、本当にわからなかったのかは、同じ「できなかった」でも違います。逆に本質的にはわかっていないのに、ケアレスミスだと軽く見てしまうこともありますが、さすがにそれを2回、3回と間違えれば、それはもう勘違いではないので、「本当にわからなかった」と認めて、わかるまで頑張ってほしいです。

--大学受験では勉強時間をどれぐらい確保しましたか。

 高校2年生の秋から始めましたが、学校が終わって自習室に行き、休憩含めて毎日5時間ほど自分で勉強して、家に帰ってぱっとその日の復習をするのがルーティンでした。受験が終わるまでこのルーティンを続けていましたね。

--高校2年生の夏休みまでに、おおよその基礎事項はクリアできていたのでしょうか。

 はい、できていました。やはり基礎ができていたのはかなり大きいです。学校でも英語は高校2年生までに完成すると言われて、高校3年生のころは英語の長文を読みこむ学習がメインでした。ただ理科は基礎ができていないことに気づかずに難しい問題集をやっていた時期もあって、最後に基礎を固めなおしました。数学は高校2年生までに数IA、IIBを定期テストの度にチャート式を解いてプラスアルファのところを固め、残りは数IIIという流れでした。大学受験はやはり早め早めにやったもの勝ちだと思います。

受験当日は普段と変わらず、すべてを出し切る気持ちで臨む

--受験当日に「気分よく集中」するために用意したアイテムや心構えを教えてください。

 私の勝負飯はカレーライスです。大切な日だからこそ、食べ慣れているものを食べることが大事だと思いました。カツ丼もよく言われますが、逆に胃もたれしそうで。私は普段と同じものが一番良いのではと思います。ただ母はゲン担ぎでカツを一切れで良いから食べてと用意していましたね(笑)。あとは、いつもお正月にお参りに行くお寺で買った鉛筆を持っていきました。寒い時期なのでレッグウォーマーなどの防寒対策にも気を遣いましたね。

 東京での二次試験は緊張しましたが、今まで辛い思いをして勉強してきたので、最後は思いっきり楽しもうという気持ちでした。試験で一番残念なのは、問題を解ける実力があるのに解けなかったことなので「今までのことを楽しむ」とプラスに変える心構えが良いと思います。また解けないものがあっても、自分の解法ストックを思い返しても見当たらない場合は引きずらないようにしました。受験当日は自分の中のすべてを出すことに尽力していましたね。普段から問題を解いていてわからなければ、こういう選択肢があると自分の中で解法を積み上げていたので、解くときに何を思い浮かべるかが定着していたのはとても役立ちました。

--これからの夢を教えてください。

 まず一人前の医者になるのが目標です。医者も一人前になるまでには長い道のりがあるので、まず良い診療ができる医者になりたいと思います。また一人前になったあとに世の中に役立っていけることをしたいと思います。今は勉強法を教えることで、皆さんにお役に立てている面もあると思いますが、次は医者になって医療の方面で貢献できればと思います。

--夢に向かって頑張っている受験生、中高生に応援メッセージをお願いします。

 一番大事なのは「自分を信じること」です。途中で行きたいところに手が届きそうにないと不安になることもあると思いますが、自分とは違った勉強法や勉強時間で成績が上がる子がいたとしても、自分に合うやり方を信じて、後悔しないように自分が甘えない環境を頑張って見つけてほしいです。高校3年生や浪人生の方ならば、残り4か月でやるべきことは自分が一番わかっていると思います。優先順位をつけて最後まで計画性を忘れずにやり抜いてほしいと思います。

「受験直前に自信がなくなったとき『大丈夫、あなたが行きたいんだから最後まで意志を貫きなさい』と背中を押してくれた母が一番強い」と語る藤白りりさん。母娘の絆を感じるエピソードだ

 それから、受験生にとって一番うれしいのは「あなたならできるよ」と親に信じてもらうことだと思います。受験のストレスからイライラするお子さんもいると思いますが、私自身の受験を振り返ると、親のサポートがあってこそでした。「絶対に受かるよ、大丈夫だよ」といった声掛けが一番うれしかったです。

 実は私は第一志望の東京医科歯科大学1校しか受験しなかったんです。後期の点数が足りずに、第一志望に出せそうになくて、他の大学にも出願しようとした時に「大丈夫、あなたが行きたいんだから最後まで意志を貫きなさい」と母に背中を押してもらえました。前期で決めようと、私よりも強い気持ちをもった母の言葉から勇気をもらえました。ただ、人によってはそれがプレッシャーに感じる場合もあると思いますので、ご家族で声を掛け合い、なんでも話せるよう日頃からコミュニケーションを大事にしてほしいなと思います。

--ありがとうございました。

 藤白さんとのお話では一貫して、自分に合った勉強法を見つける大切さと信じたことをやり抜く気持ちの強さが感じられた。また決して押し付けることなく、子供の選択を大切にしたお母さまのサポートがとても心強い。勉強法などで迷いがある中学生、高校生は、藤白りりさんの『いつも気分よく集中できる「必要なことだけ」勉強法』(KADOKAWA)を手に取って、自分に合った勉強法や参考書を見つけるヒントを探ってみることをお勧めしたい。


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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《佐久間武》

佐久間武

早稲田大学教育学部卒。金融・公共マーケティングやEdTech、電子書籍のプロデュースなどを経て、2016年より「ReseMom」で教育ライターとして取材、執筆。中学から大学までの学習相談をはじめ社会人向け教育研修等の教育関連企画のコンサルやコーディネーターとしても活動中。

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