子供の学校適応能力、保護者の学校関与率と関係…文科省特別報告

 文部科学省は2023年3月24日、2001年(平成13年)出生児を対象とした「21世紀出生児縦断調査」で得られたデータを分析し特別報告として公表した。「保護者の学校とのかかわりや子供を取り巻く人間関係が学校へのポジティブな心情を育てる」等、4つの可能性が示された。

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 文部科学省は2023年3月24日、2001年(平成13年)出生児を対象とした「21世紀出生児縦断調査」で得られたデータを分析し特別報告として公表した。「保護者の学校とのかかわりや子供を取り巻く人間関係が学校へのポジティブな心情を育てる」等、4つの可能性が示された。

 「21世紀出生児縦断調査(平成13年出生児)」は、2001年に出生した子供の実態や経年変化の状況を継続的に観察するため、2001年から厚生労働省が毎年実施し、2017年から文部科学省が調査を引き継いで実施しているもの。対象は、2001年1月10日~17日、7月10日~17日に出生した子供。

 今回の調査では第20回までのデータ(調査対象者が20歳時点)をもとに、同一個人を追跡する縦断調査の特性を生かした分析を4項目で行い、特別報告として結果を取りまとめた。

 「子供の『孤独・孤立』に関する、社会関係資本・学校適応に関する分析」では、母親や父親が小学校1年生の段階で学校関与度合いが高い場合、その子供たちは小学校高学年や中学校に進んでも学校適応度合いが高い傾向にあった。また、小学校1年生の段階で近所の人が子育てに協力してくれる場合や、遊ぶ友達の人数が多い方が、小学校4年生段階での学校適応度合いが高い傾向があることが明らかとなった。さらに、小学校高学年や中学校の段階では、より多様な相手と遊ぶ方が適応度合いが高い傾向がみられた。

 「学童期の体験活動とその後の非認知能力等に関する分析」では、小学校高学年の時期に「自然体験」や「文化的体験」を経験することは、20歳までの時点で「自尊感情」「精神的回復力」「がまん強さ」「精神的健康」でいずれもプラス効果がみられた。一方、「社会体験」を経験することは、20歳までの時点で「精神的回復力」「がまん強さ」「精神的健康」にプラスの効果があることが示された。

 「高校の特性(スーパーサイエンスハイスクール)と理系進路選択に関する分析」では、中学校3年生時の成績や進学意欲を考慮した分析の結果、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校に進学・在籍することが、理系進路選択に効果があるという結果が得られた。男女共に効果があるが、男性の方が若干大きい可能性があるという。

 「高等教育機関への進学における修学支援新制度に関する分析」では、世帯年収210万円~370万円以下の世帯の準対象世帯において、修学支援新制度開始後に高等教育機関に進学した7月出生児の進学率が1月出生児と比較して高いことが明らかになった。この結果は、中学校3年生時の成績、高校等の大学進学率、保護者の学歴や進学期待等を統制した分析でも示唆された。また、準対象世帯では、7月出生児であり、かつ高校等において奨学金等に関する学習に積極的に取り組んでいた者では、高等教育機関に進学する割合が高いという結果も得られた。

 文部科学省は今回の分析結果から、「保護者の学校とのかかわりや子供を取り巻く人間関係が学校へのポジティブな心情を育てる」「体験活動の経験が子供の自尊感情やがまん強さを伸ばす」「先進的な理数系教育が高校生の適切な理系進路選択を促す」「授業料減免や給付型奨学金の充実が学ぶ意欲のある学生の進学を促す」とする4つ(ThemeA~D)の可能性が示唆されるとしている。

《川端珠紀》

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