【医学部入試】新課程でどう変わる?現行課程最後の入試と新課程入試

 2024年度の大学入試が本格的にスタートする。今年度は学習指導要領の旧課程最後の入試にあたり、来年度からは新課程入試が始まる。特に受験生の人気が高い医学部では、新課程入試はどのようなものになり、どう対策をしていくべきなのか。河合塾グループの医系専門予備校メディカルラボにて本部教務統括を務める可児良友先生に、新課程における医学部入試の変更点やそれに向けた対策などについて話を聞いた。

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メディカルラボ 本部教務統括の可児良友先生
  • メディカルラボ 本部教務統括の可児良友先生
  • 2023年 第2回全統共通テスト模試 学部系統別志望動向(国公立大学)
  • 2023年 第2回全統共通テスト模試 学部系統別志望動向(私立大学)
  • 2024年と2025年の大学入学共通テストの比較
  • 旧課程に基づく出題教科・科目等
  • 受験校や重点対策校の選定の方法

 2024年度の大学入試が本格的にスタートする。今年度は学習指導要領の旧課程最後の入試にあたり、来年度からは新課程入試が始まる。特に受験生の人気が高い医学部では、新課程入試はどのようなものになり、どう対策をしていくべきなのか。

 毎年高い合格実績を誇る河合塾グループの医系専門予備校メディカルラボにて本部教務統括を務め、医学部受験生のバイブルであるベストセラー 『「医学部受験」を決めたらまず読む本』 (時事通信社)の著者である可児良友先生に、新課程における医学部入試の変更点やそれに向けた対策などについて話を聞いた。

現行課程最後の2024年度入試は安全志向か、中位校以下も難化する可能性

--今年は現行課程最後の大学入試です。医学部受験にはどのような影響がありますか。

 現行課程最後の入試ということで、受験生が慎重になり、安全志向で出願する可能性があります。

 ただし、医学部の志願者自体は増えています。2023年11~12月にかけて実施された河合塾の全統プレ共通テストのデータからみると、国公立大学医学科の前期日程の志願者は全体でみると5%増で、そのうち現役生は1%増、浪人生は12%増。私立大学も同様で、一般方式の志願者が6%増、共通テスト利用方式は12%増で、他学部と比較すると顕著な伸びを示しており、医学部人気は変わっていません。また、医学部を目指す受験生は、確固たる意思をもって医師を目指している人が多いと考えられるため、容易に他学部に流れる可能性は低いと推測されます。

 そうした中での現行課程最後の入試ですから、新課程での浪人を避けるため、全体的に安全志向となり、上位の大学を目指していた生徒が、目標を下げて出願する可能性は高まります。中堅校以下の大学の医学部では、例年より競争が激しくなると予想されます

新課程入試では共通テストの科目数が増え、学習範囲が広がる

--新課程では医学部入試がどのように変わるのか具体的に教えてください。

 まずは共通テストの科目構成が大きく変わります。旧課程では、国語、数学2科目、英語に社会1科目、理科2科目という5教科7科目で900点満点でしたが、新課程では「情報Ⅰ」が加わって6教科8科目の1000点満点となります。時間割をみても、「情報Ⅰ」(試験時間60分)が増え、国語・数学2の試験時間が10分ずつ増えることにより、これまで以上に集中力・持続力が求められるため、まさに気力・体力勝負です。

 科目別の変更点をみると、国語、地理歴史・公民、数学、情報Ⅰの4科目が大きな変更がある教科です。

 まず国語では、旧課程入試で現代文2問と古文・漢文が各1問ずつだったのが、近代以降の文章の大問が1つ追加され、試験時間は10分増えて90分になります。追加問題は比較的実用的な文章になっており、試作問題では生徒がレポート作成やプレゼン準備をするなど、学校生活の中での活動を設定しています。

 地理歴史・公民は、「地理総合/歴史総合/公共」の必履修科目ができ、勉強する範囲が現行課程よりも広くなります。歴史総合では近現代の世界史・日本史両方が出題範囲となりますし、公民も今までの現代社会が公共に形を変えて「公共、倫理」「公共、政治・経済」になり、学習範囲が広がるので、早くから準備を進めておきたいところです。

 数学は、旧課程の「数学Ⅱ・数学B」が、新課程では「数学Ⅱ・数学B・数学C」となり、大問は5問から7問に増え、試験時間は10分追加されます。数学B ・数学Cは、「数列」、「統計的な推測」、「ベクトル」、「平面上の曲線と複素数平面」の4項目のうち3項目を選択解答する形で、大問が2問も増えるわりには試験時間は10分しか増えず、負担は大きくなるでしょう。

 最後は「情報Ⅰ」。旧課程の「社会と情報」と「情報の科学」が統合され、さらに新たな内容が追加されており、こちらも幅広い範囲が対象となります。

2次試験では情報処理力に加えて思考力・表現力も

--共通テストは新課程になると科目数や問題数が増え、学習範囲が広くなるのですね。では2次試験における新課程の影響はいかがでしょうか。

 国立大学協会が出した入試の基本方針によると、2024年度以降、「論理的思考力、判断力、表現力を評価する高度な記述式試験を課す」としています。高度な記述式試験とは、「複数の素材を編集・操作し、自らの考えを立論し、さらにその過程を表現する能力を評価できる問題」です。

 この傾向は早くも入試に反映されていて、河合塾が調べた2023年度における主要大学医学部の科目別分量の前年比較をみると、やや増加・増加の大学が多く、情報処理力と共に、「思考力・判断力・表現力」も個別試験でも見ようとしています。

 たとえば千葉大学の2023年度の生物では、生徒と教師の会話を読んで問いに答える形式の問題が出されました。鳥取大学の2022年度の物理では、衝突事故の調査で、ドライブレコーダーの記録とクラクションの音を頼りに、波動の知識を用いて事故直前の自動車の速度を割り出すという問題が出題されています。 共通テストと同じように、文を読み、図から情報をつかみ取って、自身が持つ知識を組み合わせて解いていくという、情報処理力に加えて、思考力や判断力が問われる難しさがあるのです。

 私立においても、たとえば関西医科大学の英語では、これまでやや難しい読解の大問が3問出題されていましたが、2023年度は読解が2問になり、新たに「医師の人生における回復力の重要性について」という自由英作文が出題され、表現力が問われました。また、東京医科大学の2023年度英語では発音・アクセント問題がなくなり、読解問題が長文化しました。

 国公立・私立ともに、2次試験でこうした新しい傾向の問題が出る可能性は今後高まると見込まれます

メディカルラボ 本部教務統括の可児良友先生

基礎をきちんと理解し素早くアウトプットできる土台が重要

--新課程入試になり、医学部受験生にはどのような力が求められますか。

 入試で求められる学力は、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体性」の3要素です。センター試験ではおもに「知識・技能」を測っていましたが、共通テストでは「思考力・判断力・表現力」を測ります。したがって、各大学の個別試験もこれを重視したものとなり、高度な記述式問題も出題されます。そこで求められているのは、各教科の基本的な原理・原則をきちんと理解したうえで、それを使って考え、判断し、表現する力です。

 実際に出題された問題を見ると、グラフや図など、たくさんの情報を読み取り、素早く情報処理できる応用力を身に付けなければと気が急いてしまうところですが、実は基本的な原理・原則の土台がないと、こうした力はいくら頑張っても身に付きません。

 では、その土台はどうやって学ぶべきか。ここは付け焼き刃に公式や解法を丸暗記するような勉強ではまったく意味がありません。各教科とも、教科書の内容から基礎的な典型問題まで、原理・原則をしっかりと理解し、さらにそれを「アウトプット」するトレーニングが欠かせないのです。

 この基礎トレーニングはまさに「筋トレ」と同じで、学力における「筋力」を鍛えるようなものです。非常に地道な作業なので、根気が続かない生徒が少なくないのですが、メディカルラボはマンツーマンで、基本的な原理・原則を正しく理解できているかを生徒に自分の言葉で説明させ、「対話」を通じて理解を深めています。理解したことを把握しながら授業を進め、演習課題が個人別に出されるので、確実に定着していきます。「基礎知識を組み合わせて考え、アウトプットする」というトレーニングをしっかりやっていくのは、集団予備校とは違う良さだと思います。

 新課程入試は、より一段と「思考力・判断力・表現力」を問う問題が増えるので、今まで以上に基本の土台作りが重要になっていくと言えるでしょう。

小論・面接対策は新課程入試に役立つ

--医学部入試は他学部入試に比べ、共通テストと本試験対策に加え、出願書類から二次試験での小論文や面接など、準備が多岐にわたります。何から手を付けて、どう時間配分をすれば良いでしょうか。

 まずは1日も早く医学部に行く決意を固めて、すぐに勉強をスタートすること。これに尽きます。準備することが多いので、できれば高1、遅くとも高2になるあたりで医学部に行く決意を固めてほしいところです。

 そして、少しでも早く志望理由や小論文、面接の対策に取りかかることを勧めます。これは入試直前に取り組む生徒が多いのですが、直前だとどうしても勉強だけで手一杯になり、落ち着いて取り組むことが難しいのです。
志望理由を考えると、医者になる自覚が湧いてくるので、早い段階で始めるほど勉強へのモチベーションが上がります。医学に関する関心も広がり、自分の意見を考える機会が多くなる分、面接や小論文で求められる主体性や思考力、表現力などを磨くことにつながります。こうした力は一朝一夕では身に付かず、長いスパンで取り組む方が効果的です。

 では、具体的にどうするか。それは、医学部に行くと決めたら早速小論文の過去問を使って、月に1回でも書いてみること。実は小論文の課題には、図表やグラフも多く、新課程の入試対策にも役立つ内容が多いのです。 

 学習時間の配分については、生徒1人1人で学習課題が異なるため、難しいところです。メディカルラボでは、合計点をいかに伸ばすかという「合計点主義」のもと、生徒1人のために担任と各科目のプロ講師がチームになって全体で見ていくオーダーメイドチームを作っています。

 苦手科目の克服だけに囚われて、得意科目を伸ばさないというのも効率的ではありません。科目間で仕上がりのバランスを見ながら、その都度学習の優先順位を付け、効果的なスケジュールを組む必要があるのです。

 また、受験校を選ぶ際には問題との相性があるため、総合的にどの大学が生徒にとって相性が良く合格しやすいのかというところまで見なければいけません。その点、メディカルラボだと、学習計画から出願先選びまで、医学部受験に精通した複数のプロ講師の目で最適化した学習を進めることができます。

新課程では一層の思考力・表現力が問われる

--教科ごとにはどのような準備が必要でしょうか。

 英語については、読解問題が長文化している傾向があります。共通テストでも年々単語量が増えていて、2023年は80分の試験時間で6000語超。センター試験最後の年が4400語だったのに比べると、共通テストの英語は「速読力」が鍵だと言えます。この傾向は、2次試験や私立大学の個別試験にも当てはまります。速読では英語を英文のまま読み取るので、五感を使った音読やシャドーイングなどの勉強法が重要になってきます。

 数学と理科では、日常生活に絡めた問題が頻出で、先ほども話したように、公式や解法をただ丸暗記するだけでなく、なぜそうなるかを理解し、すぐにアウトプットできるようなトレーニングが不可欠です。新傾向の問題として、たとえば兵庫医科大学の2023年度の数学では、高校・旧制中学卒業の男性・女性の年収と、専門学校・短大・高専卒業の男性・女性の年収を比較したデータ分析が出題されました。これは、社会的な背景を考慮したうえでデータをどう読み解くかという問題で、単に公式をあてはめるだけではできない柔軟な思考力が問われています。

 国語や小論文についても同様です。共通テストの国語では、新課程の試作問題で初めて横書きの文章が登場し、資料と図・グラフの情報から必要なものを組み合わせて考えさせています。共通テストが始まる際にも、市の条例や駐車場の契約書といった文章が題材となっており、従来の国語の問題とは違い、実社会に出たときに必要な情報処理能力を身に付けさせようとする意図が見えます。医学部の小論文でも、グラフや表から情報を読み取り、素早く自分の考えを表現する力を求められています。

 このように、新課程の医学部入試では、一層の情報処理能力、そして思考力、表現力が問われることになりますが、こうした力を身に付けるうえで、個別指導は効率が良いと思います。集団授業では先生の解き方を模倣して学習することになりますが、そのやり方だと先生の解き方の再現にとどまってしまい、他の問題に応用できない生徒が少なくありません。その点、マンツーマンでは、ひとりひとりの解答を添削し、どこでつまずいているかをすぐに指摘できるので、きめ細やかな指導から応用力も身に付きます。考え方のプロセスが重要になっている中、それぞれ違う課題点をもつ生徒ひとりひとりに対して、一緒にその課題を確認し、解決していけるので、非常に効率的なのです。

親の受験とは「まったく異なる」意識をもって応援

--共通テストに「情報Ⅰ」が加わるなど、新課程への移行に多くの受験生が不安を感じているようです。新課程での浪人は避けるべきでしょうか。

 現行課程の受験生が万が一浪人した場合は、1年のみ経過措置があり、旧課程の内容が選べるようになっているので、過度に不安を感じる必要はありません。新課程よりも旧課程の方が出題範囲が狭く、不利にはならないでしょう。

 「情報Ⅰ」については、新課程も旧課程も初受験となるため、大学側も配点のウエイトを下げ、素点より配点が低い大学がほとんどです。さらに初年度というのは、比較的易しい問題が出題されるのではという見立てがあり、「情報Ⅰ」も新課程の問題も、全体的に易化に振れる可能性があります。

 したがって、新課程への移行を避けるため、医学部から他学部に進路を変えてまで入学を急ぐ必要はありません。進路変更した後に後悔し、医学部を再受験するケースはとても多いので、焦らずしっかり準備していきましょう。

--最後に、保護者と受験生に対してメッセージをお願いします。

 保護者の方々には、自分たちが経験した受験と今の受験がまったく違うということを認識していただきたいと思います。今の子供たちは、保護者の世代よりも難しい受験に取り組んでいることを理解し、目先の偏差値に振り回されず、最後まで伸び続けると信じてあげてほしいです。受験直前は子供たち自身、非常に気持ちが揺れ動くものです。ですから、保護者の方こそ焦らず落ち着いて、「大丈夫だよ」と見守ってあげること。保護者の方が決して「もう駄目だ」と思わないでください。

 受験生には、とにかくあきらめないこと。そして新課程への移行にも臆することなく、基礎をしっかり固めて、医学部にチャレンジしてほしい。そうやって努力すれば、合格できるチャンスは必ずあるので、あきらめないで頑張ってほしいですね。

--ありがとうございました。



プロの伴走者に頼って自分に最適な学習計画を

 新課程の医学部入試は科目数や学習範囲が増え、これまでと同様に教科の基礎を深く理解するとともに、多くの情報を素早く処理し、アウトプットする力が求められる。ますます準備が必要になる医学部入試だが、だからこそ1人で抱えず、プロの伴走者に頼る方が効率的だろう。マンツーマンのメディカルラボだからこそできる最適学習プロデュースで医学部合格を勝ち取ってほしい。

医系専門予備校 メディカルラボ
《羽田美里》

羽田美里

執筆歴約20年。様々な媒体で旅行や住宅、金融など幅広く執筆してきましたが、現在は農業をメインに、時々教育について書いています。農も教育も国の基であり、携わる人々に心からの敬意と感謝を抱きつつ、人々の思いが伝わる記事を届けたいと思っています。趣味は保・小・中・高と15年目のPTAと、哲学対話。

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