PISA2022の男女スコア差を独自分析…山田進太郎D&I財団

 山田進太郎D&I財団は、2023年12月に発表されたPISA2022(国際学習到達度調査)における男女のスコア差に焦点をあてた独自の分析を実施し、2024年1月24日結果を公開した。女性が読解力で優位性を示し、男性が科学・数学においてスコアが高いのは、国際的なトレンドと整合するが、男女のスコア差は縮小傾向にあるという。

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PISA2022(国際学習到達度調査)分析レポート
  • PISA2022(国際学習到達度調査)分析レポート
  • 日本におけるPISA調査項目3分野の平均点数(OECD加盟国における日本の順位/全参加国・地域における日本の順位)
  • 日本におけるPISA調査項目3分野の男女スコア差

 山田進太郎D&I財団は、2023年12月に発表されたPISA2022(国際学習到達度調査)における男女のスコア差に焦点をあてた独自の分析を実施し、2024年1月24日結果を公開した。女性が読解力で優位性を示し、男性が科学・数学においてスコアが高いのは、国際的なトレンドと整合するが、男女のスコア差は縮小傾向にあるという。

 PISAは、OECD(経済協力開発機構)が実施する15歳の生徒を対象にした世界的な調査。今回の分析では日本の順位と男女のスコアの概要のほか、数学分野における男女のスコア差が日本より大きいが、STEM分野(工学部)に占める女子の大学入学比率が日本より大きい19か国のうち、オーストラリアとカナダに注目し、その要因を分析した。

 日本からは182校、5,760人の生徒がPISA2022に参加した。前回調査(2018年)と比べると、日本は数学・科学・読解のすべての分野で平均得点が向上した。特に、数学と科学においては2012年のPISAへの参加以来の過去最高スコアを記録。なお、今回の結果に関しては、新型コロナウイルス感染症の休校期間が他国に比べて、比較的短かったことが成績向上に寄与した可能性がある。

 世界的なトレンドは、女子のほうが読解力が高く、男子のほうが数学が高い傾向であり、日本も同様のトレンドであることが明らかとなった。ただし、その差は読解力、数学、科学のすべての項目において年々縮まりつつある。また、PISA2015にて、学業成績の男女格差は生まれつきの能力差によるものではないとの見解が示されており、教育制度や学習環境が男女のスコア差に影響を及ぼしていると考えられる。なお、日本は、PISAのSTEM 分野(数学と科学)のスコアが世界ランキングの上位に位置しているのにも関わらず、OCED諸国におけるSTEM分野の女性大学入学比率は最下位である。

 日本は、PISA2022数学の男女スコア差が9ポイントだが、工学部の女性入学比率の変化をみると、2015年の14%から2021年時点では16%となっており、2%アップしたものの、OECD諸国の中で最低ランクとなっている。オーストラリアは2030年までのビジョンを掲げ、政策を軸にした産官学連携、カナダはCanCodeプログラムなど、主要な指針と大規模な予算のもと、非営利団体や各州の大学等の中枢機関による連携・協力などの取組みを実施している。

 報告書では日本の課題と可能性について「日本は一部の政府機関や教育機関が女性のSTEM推進に取り組むものの、国全体としての統一方針が欠如している。ジェンダーに関するステレオタイプが社会に根強く残っているが、PISA結果からは15歳の理系学力は男女共高く、男女スコア差は縮小傾向にある。オーストラリアのように産官学連携の中で比較的自由度が高い産業界が、教育プログラムやツールの提供など、本テーマの課題解決に向けて寄与できる可能性がある。政府予算を確保できれば、カナダのように大学や非営利団体との連携による活動の加速もありうる」とまとめている。

 同財団は今後、政府および産業界に対して、課題に取り組めるように働きかけ、性別などの背景にかかわらず誰もが「好きなことを目指せる社会」の実現に向けて、ダイバーシティ&インクルージョンの側面からその推進を行うという。

《中川和佳》

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