【大学受験2024】国公立2次対策、共通テストと模試を活用して最終点検を…駿台

 2024年度(令和6年度)大学入学共通テストについて、駿台予備学校 入試情報室部長の城田高士氏に、出題傾向や難易度といった問題分析、2024年度受験生の国公立大学個別(2次)試験・私立大学入試への心構え、来年度以降の受験生に向けたアドバイスなどについてお話しいただいた。

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駿台予備学校 入試情報室部長の城田高士氏
  • 駿台予備学校 入試情報室部長の城田高士氏
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  • 共通テスト 最終志願状況
  • 国公立大 学部系統別志望動向
  • 共通テスト利用私立大 学部系統別志望動向
  • 難関国立大 志望動向【文系】
  • 難関国立大 志望動向【理系】

 2024年1月13日・14日に実施された2024年度(令和6年度)大学入学共通テスト(旧センター試験、以下、共通テスト)。駿台予備学校 入試情報室部長の城田高士氏に、出題傾向や難易度といった問題分析、2024年度受験生に向けて今後の国公立大学個別(2次)試験・私立大学入試への心構え、来年度以降の受験生に向けたアドバイスなどについて聞いた。

文系・理系ともに5教科総合平均点は上昇

--1月13日・14日に共通テストが終了しました。2024年度共通テストの志願者数と、昨年からの推移を教えてください。

 2024年度の共通テストの確定志願者数は、49万1,914人となりました。2月5日に発表された受験者数は457,608人で、受験率は93.03%となりました。今年の志願者のうち、現役生の比率は85.3%です。近年は少子化が進み、既卒生は年々減少傾向にありますが、今年も同様の傾向が続いています。

共通テスト 最終志願状況 画像出典:データネット2024

 保護者世代の大学受験は、優秀な既卒生が多い中で現役生が奮闘しなければいけませんでしたが、近年では「ほとんどのライバルが現役生」という状況になっています。

--大学入試センター試験(以下、センター試験)から共通テストに変わって4回目、新課程入試への移行前最後の共通テストとなりましたが、出題傾向に変化はありましたか。

 2024年度の共通テストは、難易度および出題傾向ともに大きな変化はありませんでした。一部で「新課程入試を先取りする形で、新たな傾向の問題が出題される可能性がある」との予測もありましたが、実際には前年度と類似した傾向でした。共通テストが始まってからの3年間は平均点がアップダウンすることがありましたが、4年目で安定したという印象です。奇をてらうような問題もなく、受験生の実力がきれいに反映されるような出題だったのではないでしょうか。5教科の予想平均点は、文系の5教科8科目で536点、理系の5教科7科目で559点(駿台予備学校/ベネッセコーポレーションによるデータネット実行委員会の推定)となり、文理とも前年比で上昇しています。

難易度はほぼ昨年並み。得点調整は無し

--2024年度共通テストの難易度はいかがでしょうか。

 今年の共通テストでは、「現代文が解きやすかった」と感じる受験生が多く、国語が全科目の平均点を押し上げました。次に、英語のリーディングの分量が昨年に比べて約400語、つまり1割弱ほど単語数が増加したことから、「解き終わらなかった」「大変だった」という声が受験生から多くあがりました。ボリュームのある文章を速く読む能力が要求されましたが、難易度と出題傾向はそれほど変わらず、今回も資料を参考に読み解いていくスタイルが継続されました。リーディングの平均点は2.3点ほど下がりました。一方で、リスニングは少し解きやすかった印象で、リーディングのマイナスをリスニングがカバーする形となっています。数学については、数学I・A、数学II・Bともに大きな変化はないものの少し解きにくい問題があり、いずれも平均点は下がりました。

 昨年は生物と物理の平均点差が大きく理科で得点調整が行われましたが、今年は科目間の差が縮まりました。地歴についても科目間の平均点差は少なく、得点調整は行われませんでした。こうしたことからも、共通テスト4年目にして出題が安定してきたことが読み取れます。

--2024年度共通テストを振り返って、もっとも重要視されたのはどのような力だと思われますか。

 共通テストでは、思考力・判断力・表現力が重視されますが、今回の共通テストでもこれらの能力がしっかりと求められました。たとえば、数学I・Aでは図が示され、電柱の高さを、その影の長さと太陽光度を利用して求めるといった問題が出題されました。高校での学習内容を理解することは当然の前提ですが、単に教科書の内容を暗記して問題を解くのではなく、本質を理解したうえで身の回りの事象に当てはめて考える力が問われたと感じています。共通テストは高校から大学へのスムーズな移行をするための橋渡しとしての目的が明確になり、その目的に沿った出題が行われています。つまり、高校までの学習を、大学での学びに生かす能力を測るための出題が行われたと言えるでしょう。

新課程入試を意識した安全志向はみられず

--2024年度受験生の志望動向について教えてください。

 新課程入試の前年となる今年は、かなりの安全志向が働くのではないかと思われていましたが、安全志向の受験生の多くがすでに年内に入試を終えることを選んだようです。例年ですと共通テストまで残ってきた受験生が、共通テスト後に志望校を下げることが多いのですが、平均点が上がった今年は全体的に強気の出願がされるのではないでしょうか。

国公立大 学部系統別志望動向 画像出典:データネット2024

 自己採点時の動向について、国公立大学の昨年の志望者数を100とした今年の対前年指数は98でした。全体の受験者数が減っていますので、ほぼ昨年並みとなります。国公立大学の学部系統ごとの状況を見ますと、昨年よりも志望者数が多いのは国際関係学です。コロナ禍以降、国際関係学や語学の人気が低迷していたのですが、ここにきて回復の兆しを見せています。

 理系分野では、コロナの影響を受け、ここ数年は医療全般への関心が高まり、特に製薬分野を志望する受験生が増加していました。しかし、その傾向は一段落し、今年は薬学部の指数が92となっています。ただし、これからも社会に必要とされる分野であることは変わりませんし、人気の落ち着きは志望者にとっては好材料と言えるでしょう。理学は指数101で、昨年並みの志願者が集まっています。

共通テスト利用私立大 学部系統別志望動向 画像出典:データネット2024

 共通テスト利用方式を採用している私立大学の志望動向は、文系では法学が増えており、国際関係学も国公立大学と同様に戻ってきました。ちなみに、私立大学全体の志望者数の指数は95です。私立大学の受験生の傾向として共通テスト離れが出てきているのに加えて、今年は年内入試へシフトした受験生も多いのではないかと考えられます。

難関国立大 志望動向【文系】 画像出典:データネット2024
難関国立大 志望動向【理系】 画像出典:データネット2024

 難関国立大学の学部系統ごとの志望者数指数については、模擬試験でも志望者が多かった東北大学に比較的受験生が集まっていますが、全体的に昨年と同水準です。

 共通テストの平均点は上がったものの、共通テストの結果を受けてこれまでの志望校からさらに上のレベルの難関大学にチャレンジする受験生が大幅に増えることはないと思います。今年に関しては、元々の志望どおりの出願をされるのではないでしょうか。

例年よりも長い国公立大学の個別(2次)試験までの期間、挽回の余地も

--受験生は、今回の共通テストを今後の試験にどのように生かしたらよいのでしょうか。

 共通テストも模擬試験と同じように、自分の苦手分野を確認するために活用することができます。得意だと思っていたけれど、共通テストで思ったような点数が取れなかった科目や分野があったかもしれません。これらを「たまたま」や「ケアレスミス」として軽視するのではなく、「まだ自分はそこがしっかり身に付けられていないのではないか」と謙虚に受け止め、点検していただきたいです。私立大学の入試はもう始まっていますが、今年は国公立大学の個別(2次)試験まで共通テスト実施日から約40日あります。例年に比べて時間がありますので、この時間を使って共通テストでできなかった分野をしっかりと復習し、演習を行って、個別(2次)試験や私立大学入試に臨んでいただきたいと思います。

--2024年度受験生に、残りの試験を乗り切るためのアドバイスをお願いいたします。

 すでに気持ちの切り替えはできているころかと思いますが、共通テストの結果で浮かれたり、落ち込んだりすることなく、本番に向けてできることに取り組んでいただきたいです。

 難関大学を目指している受験生の中には、共通テストで点が取れていても、「みんなもできているので、やはり自分は不利ではないか」と不安になる人もいるかもしれません。それでも、せっかくがんばってきたので、最後までご自分の志望を貫いて、悔いのない受験にしてください。

 共通テストで思うように実力が発揮できず落ち込んでいる人も、まだまだ挽回のチャンスはあります。高校3年生になってから本格的に受験勉強を始めたとすると、1月で10か月目になります。そう考えると、これからの約1か月の大切さは理解していただけると思います。

 過去問は出題傾向に慣れるためには有益ですので、国公立大学、私立大学の併願校ともに、できるだけ2~3年分は解いておくべきですが、過去問だけで実力がつくわけではありません。ここから本番までの時間の中でできることは限られていますので、過去問で本番に慣れることと、実力を上げるという両輪をしっかりと整えてください。

 実力をつけるためには、これまで取り組んできた問題集や模擬試験を振り返り、解けなかった問題に再度取り組むことが重要です。繰り返しになりますが、今回の共通テストも、得意だと思っていたのに解けなかった分野の見直しや、苦手な分野の克服のために活用してください。苦手科目の勉強は大変ですが、苦手科目のほうが伸びしろは大きいです。得意科目と交互に取り組むなどの工夫しながら、最後まで苦手なところを潰していくことが合格への近道です。そして最後は、「なんとしてもこの大学に入りたい」という気持ちです。「自分はなぜこの大学を目指しているのか」そこに立ち返りながら勉強することが大切だと思います。

 私はこれまで、センター試験や共通テストで思ったような点が取れなくても、その後、がむしゃらに勉強して合格を勝ち取った生徒をたくさん見てきました。こうした生徒に共通しているのは、あきらめなかったこと。とにかく最後まであきらめないでください。

--2025年度以降の受験生に向けて、共通テスト対策のアドバイスをお願いいたします。

 2025年度からの新課程入試では、科目の追加や数学の範囲変更などがありますが、全体が一変するわけではありません。過去問は充分に役立ちますし、新課程に対応した問題集も販売されていますので、それらも有効に活用してください。ただし、教科書の内容をしっかりと理解できないまま問題集で対策をしても、共通テストの点数は取れません。けっして学校の勉強も疎かにしないでください。

 国語では大問が1問追加されて5問構成となりますが、解答時間は10分しか増えませんので、時間に追われる可能性もあります。数学もIIBCでは問題数がやや増加するかもしれません。特に夏以降は、模擬試験の復習時に時間を短縮して訓練するなど、時間を意識しながら本番に備えてください。

--ありがとうございました。


 共通テスト直後、関係者の興奮が冷めない中で取材のお時間をいただいた。共通テスト4年目にして、安定感のある出題だったとの総評。残りわずかな期間、受験生はゴールに向けて走り続ける必要がある。数多くの受験生を見守ってきたプロの「まだまだ実力は伸びる」という言葉を励みに、多くの受験生が最後まであきらめずに受験を乗り切ることを願っている。

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《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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