ノーベル賞受賞者アジア最多の京大…卒業生が語る魅力とは

 日本国内はもちろん、アジアの大学でも最多となる11名ものノーベル賞受賞者を輩出する京都大学。その特長と魅力は、創立から120年余り受け継がれてきた創造性あふれる自由な学風にある。駿台予備学校「京大対策コース」を経て、京都大学に進学、卒業後はシンクタンクにて活躍している杉山桜子さんと、当時のクラス担任の川瀬裕樹氏に、京大合格までの軌跡、大学生活や同大学での学びについて話を聞いた。

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取材に応じてくれた駿台予備学校 京大対策コースを経て、京都大学に進学した杉山桜子さんと、当時の担任の川瀬裕樹氏
  • 取材に応じてくれた駿台予備学校 京大対策コースを経て、京都大学に進学した杉山桜子さんと、当時の担任の川瀬裕樹氏
  • 取材に応じてくれた駿台予備学校 京大対策コースを経て、京都大学に進学した杉山桜子さんと、当時の担任の川瀬裕樹氏
  • 当時を思い出しながら談笑する駿台予備学校 京大対策コースOG・杉山桜子さんと川瀬裕樹氏
  • 取材に応じてくれた駿台予備学校 京大対策コースを経て、京都大学に進学した杉山桜子さん
  • 関西圏の予備校ではなくあえて駿台お茶の水2号館で京大受験生活を過ごした杉山桜子さん
  • 取材に応じてくれた駿台予備学校 京大対策コース担任の川瀬裕樹氏
  • 自由な校風に惹かれて京大を目指す受験生をサポートする川瀬裕樹氏

 日本国内はもちろん、アジアの大学でも最多となる11名ものノーベル賞受賞者を輩出する京都大学。その特長と魅力は、創立から120年余り受け継がれてきた創造性あふれる自由な学風にある。

 駿台予備学校の「京大対策コース」では、京大入試突破に向けて万全を期すカリキュラムを提供。同コースを経て、京大に進学、卒業後はシンクタンクにて活躍している杉山桜子さん、当時のクラス担任の川瀬裕樹氏に、京大合格までの軌跡、京都での大学生活や同大学での学びについて話を聞いた。

【話を聞いた人】
杉山 桜子さん:お茶の水校2号館 京大対策コース出身、京都大学法学部卒。三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 政策研究事業本部地域政策部。
川瀬 裕樹氏駿台予備学校 お茶の水校2号館・校舎責任者

京大を目指す受験生の共通点

--杉山さんは仙台のご出身です。現役での大学進学は叶わず、東京で浪人生活を送ったそうですね。なぜ東京での浪人生活を選んだのか、そしてなぜ京大を目指したのか、お聞かせいただけますか。

杉山さん:東京には母方の祖父母の家があったこと、母が「駿台に通うなら、本校が良いのでは」と言ってくれたことから、寮に入ってお茶の水校の京大コースに通うことにしました。私は、「大学入学をきっかけに、自分がまったく縁のない環境に身を置きたい」「未知の文化に触れてみたい」という気持ちがあり、高校時代から京大を目指していました。特に日本史が好きだったので、教科書に載っているような歴史的な名所がたくさんあるという点で、京都は私にとって非常に魅力的な街でした。それに、モラトリアム(社会に出るまでの猶予期間)とも言われる大学時代こそ、首都圏のような大都会の喧騒から離れた京都で過ごすのは良い機会ではないかと思ったのです。

出身の仙台から、東京お茶の水での受験生活を経て、京都大学に進学した杉山桜子さん

川瀬氏:駿台お茶の水校というと、東大をはじめとした首都圏の大学を目指すイメージが強いかもしれませんが、実は杉山さんのように、京大を目指す生徒も毎年全国から集まっています

--東京の駿台校舎の「京大対策コース」に集まる生徒には、どのような傾向がありますか。特徴などがあれば教えてください。

川瀬氏:関西以外から京大を目指す人は、地元の関西から京大を目指す人以上に、京大への強いこだわりがあるような印象を受けます。京大を目指す理由は実に多様で、たとえば杉山さんのように京都の土地柄に魅力を感じ、そこでの暮らしに憧れる人もいれば、強豪のアメリカンフットボール部などで文武両道の学生生活を送りたい人、世界で活躍する研究者のもと、アジア最多のノーベル賞受賞者を輩出した環境で学びたいと考える人、自由で創造性あふれる校風に惹かれる人など、本当に人それぞれです。その多様さこそ、京大を目指す人たちの傾向の特徴かもしれません。

 また、京大を目指す際、大学に入学する時点で自分の専門を決めなければいけません。東大では、希望する学部学科に進学できるかどうかは2年時の進学振り分け(進振り)次第であり、入学後も成績を意識した勉強を続ける必要がある一方で、京大は学部ごとに入試が異なり、入学時点で自分の専門を決めることになります。進路選択のタイミングが早ければ、その分専門的な学びを深める時間も多く確保できるわけです。逆のことを言えば、良し悪しはともかく、一般教養科目を3回生や4回生になってから学ぶことも可能です。京大を目指す人は、大学時代の4年間、競争なく、マイペースに専門的な学びに向き合いたいと思う気持ちが強いかもしれないですね。

杉山さん:今、川瀬さんがおっしゃったように、特に理系の場合、高校時代から学びたい分野が決まっている人にとっては、京大の方が合っているかもしれません。私は、受験の時点では学びたい分野や将来就きたい職業がそこまで明確ではありませんでしたが、京大の法学部は法律学科と政治学科といったところまで細分化されておらず、関心のある科目を幅広く履修できる点が自分には合っていると感じていました。

川瀬氏:京大は各学部・学科にそれぞれ特徴がありますね。目指すにあたっては、具体的に調べておくことはとても大事です。

東大コースと京大コース、どう違う?

--川瀬さんは、京大コース在籍時の杉山さんについて、どのような印象をおもちでしたか?

川瀬氏:高校を卒業し、国公立大の後期入試が終わった直後に、お母さまと一緒に入学相談に来られたときは「無口でおとなしい子」という印象でした。受験がうまくいかず、落ち込んでいるのかもしれないと感じるとともに、第一印象から、1年間毎日通うことができるのか、寮での一人暮らし生活は大丈夫なのかと不安を覚えたのも正直なところです。

 ところがそれはまったくの杞憂でした。朝は授業が始まる前に登校し、すべての授業をサボらず真面目に受け、空き時間には自習室も利用する。我々が理想とする模範生でしたね。後半にはメンタル的に心配な時期もありましたが、自分だけで抱え込まず、自分の弱さを面談で包み隠さず相談してくれたことで私たちもできる限りのサポートができました。授業、講師、環境、そして我々の支援含め、駿台の環境を最大限に活用してくれたという点で、今でもとても印象に残っている生徒です。

--お茶の水校2号館の京大対策コースはどのような雰囲気でしたか。東大対策コースと比べて異なると感じたところがあれば教えてください。

杉山さん:駿台のお茶の水といえば3号館の東大対策コースが有名で、全国から東大を目指すたくさんの現役生・浪人生が集まっています。東大対策コースは人数が多く、模試の結果によって成績順にクラスが決まるせいか、その分少し緊張感があるように感じました。一方で、2号館の京大対策コースは1クラスのみで、成績による振り分けがないため、過剰に競争を意識することがなく、同じ学部志望でも「一緒に頑張ろうね」「みんなで合格して京都に行きたいね」というアットホームな雰囲気でした。勉強に没頭している子もいれば、友達と賑やかに話すのが好きな子もいて、多様な個性が集まりつつも、お互い干渉せず、それぞれがマイペースに取り組めたと思います。

川瀬氏:確かにクラス分けの有無による違いはあるかもしれませんね。同じ駿台でも関西地区の京大対策コースは人数が多いことやカリキュラムの特徴によってクラス分けがあるので、お茶の水の京大対策コースとはまた雰囲気が違うかもしれません。私のイメージですが、京大を目指す人は周囲に惑わされたり、競争に踊らされたりせず、自分の決めた道を進んで行けるタイプが多いように感じます。

「多くの受験生指導を経て、京大志望者の共通点がある」と語る川瀬裕樹氏

京大入試にはどんな人が向いている?

--京大入試に向いているのは、どのようなタイプの人でしょうか。

川瀬氏:東大入試は問題の分量が非常に多く、限られた時間内でその膨大な情報を最大限効率的に処理する力が問われます。一方で京大入試は、時間をかけてじっくりと考え、自分なりの答えを導き出し、その際の自分の考えを正確に表現できる力が求められます。たとえば京大と東大の数学を比較しますと、東大は計算量が多く、複雑な問題の設定や誘導の意図を正しく読み取り、それを着実に利用しながら正解にたどり着けるかがポイントのように思います。京大は計算量はそう多くはなく、問題の設定も東大ほど複雑ではありませんが、誘導がほとんどないことが特徴だと思います。つまり京大では、誘導によって解き方を制限せず、どんなに遠回りや、愚直な作業の積み重ねをしたとしても、自分が編み出した方法で解き進め、解を導くことが求められているのです。

 これは、京大が掲げる「自由の学風」の表れでもあるように思います。「これまで学んできたことを駆使しながら自由に考えてごらん」という大学からのメッセージです。こうした出題傾向を好む人には、京大の校風も魅力的に映るのではないでしょうか。

杉山さん:おっしゃる通り、京大入試では柔軟に考えられるかどうかが重要な要素だと思います。英語だと、過去の出題で「積読(つんどく)」に関する英作文がありました。「積読」とは、手に入れた本を読むことなく自宅で積んだままにしている状態を意味する言葉ですが、これがそのまま直訳できる英単語はありません。だからこそ、日本語のその特殊な言葉を、自分が知っている英単語や使いやすい構文を使ってわかりやすく説明できるかという柔軟性が問われるんですよね。

川瀬氏:また、そもそも東大の2次試験では英語でリスニングの試験があり、文系では地歴が2科目課されますが、京大は1科目のみなど、出題形式や科目数の違いもあります。もちろん、リスニングがないから、あるいは1科目少ないからといって、京大の方が東大より入りやすいということはありません。しっかりと基礎固めをすること、合格者最低点は小数点以下まで出ますので、試験では最後まで諦めず、少しでも部分点をもぎ取ろうとする粘り強さが必要であることなどは、どの大学を受験する場合にも共通して欠かせないものです。ですから、多くの人が京大を選ぶのは、こうした入試の傾向よりも、校風や環境が大きな要因だと思いますね。

ゆったりとした時間の流れで自分の「軸」を見つける

--杉山さんが京大に入学したのは2020年。まさにコロナ禍の真っ只中でしたが、どのような大学生活でしたか。

杉山さん:授業はすべてオンラインで、部活やサークルも対面での活動が禁止されていたため、最初の半年は新しい出会いもほとんどなく、1人で過ごす時間が多かったです。でも、駿台の京大対策コースで知り合い、一緒に合格した友人たちとは交流が続いていたので、孤独を感じることはありませんでした。「せっかく憧れの京都に引っ越してきたのだから、京都を満喫しよう」と思い、当時は人影もなかった人気の観光地周辺をジョギングしたり、鴨川でのんびりと本を読んだりして過ごしました。

--コロナ禍が明けた今となっては世界中から観光客が押し寄せる京都。ある意味とても貴重な時間でしたね。

杉山さん:はい。普通の大学生活は送れませんでしたが、今思えば、ほぼ貸し切りのような状態で名所を堪能できるなんて(笑)本当にかけがえのない時間でした。コロナ禍での学生生活には哀れみの目が向けられがちですが、私はそれなりに充実した生活ができたと思っています。コロナ禍が落ち着き、大学に通えるようになってからも、授業後に友達と鴨川で過ごす時間は大好きでした。

 実は大学生らしいこともやっていて、2回生の後半には、他大学の学生と一緒に防災に関する学生団体を立ち上げました。防災への啓蒙活動から、実際に防災用品を企画・製作して販売するなど、大学生活の後半はとても忙しかったです。でも、京大の法学部はカリキュラムの融通が効く学部で、3回生までに必要な単位をすべて取得したので、4年目は思い切り自分がやりたいこと、好きなことに時間を費やせました。自分の探究心を満たすための自由な時間がたっぷりつくれるという点でも、京大はとても魅力的な環境だと思います。

当時を振り返り、まるで実家に帰ってきたかのような表情の杉山さんと、川瀬氏

--大学の4年間、あえて京都に住み、京大に通うという選択によって、自分はどう成長したと思いますか。

杉山さん:あらためて4年間を振り返ると、好きなことを好きなだけできた幸せな毎日だったなと思います。特に京都にいると、時間の流れがゆったりと緩やかに感じられるんですよね。鴨川の川べりでおしゃべりしたり、楽器やダンスをやっている人をぼーっと眺めていたり、夜は花火をしたり、みんながそれぞれ自分のペースで好きなことを追求している風景が本当に好きでした。

 私はもともと、「なぜ人は罪を犯してはいけないのか」というような答えのない哲学的な問いをぐるぐると考えることが好きなのですが、こうした問いに向き合う時間も気持ちの余裕もありましたし、友人たちが対話の相手になってくれました。夜な夜な語り合った後、明け方から近くの大文字山に登って朝焼けを眺めたのも良い思い出です。

 現代社会のあふれんばかりの情報や慌ただしい時間の流れに巻き込まれることなく、思う存分自分のペースで自分自身と向き合えたことで、地に足がついたというか、自分なりの人生の「軸」のようなものを見つけられた気がします。

--今はシンクタンクにお勤めですが、今後はどのような仕事をしていきたいですか。

杉山さん:先ほどお話ししたように、立ち上げた学生団体での活動を通じて、労災、福祉、教育などに興味・関心が深まったこともあり、今は自治体の街づくりをお手伝いする仕事に携わっています。京都での学生生活を通じて経験できた、心身だけでなく、人との関わりという意味で社会的にも満たされていると感じられるような、人としてのウェルビーイングを高める環境づくりに関わっていけたらと思っています。

進路選択は自分で、保護者は情報提供のサポートを

--進路をこれから決める受験生に向けて、そしてそれをサポートする保護者に向けて、アドバイスをお願いします。

杉山さん:進路を決めるうえでいちばん大事なのは「自分で」決めること。親や先生のアドバイスを鵜呑みにするのではなく、なぜその大学に行きたいのか、自分なりの理由をよく考えた上で、最終的には自分の判断で選択することだと思います。

川瀬氏:進路は、自分で主体的に決めたかどうかで取り組む際の覚悟が違います。それに、自分で決めないと、もしうまくいかなかったときに、親や周りの大人のせいにしてしまいますからね。お子さん自身が行きたい大学を決め、保護者がそれをサポートする形が理想的です。

杉山さん:ただ、そうは言ってもまだ高校生なので、視野が広いとは言えません。ですから保護者の方には、お子さんが視野を広げるためのサポートをしてあげてほしいです。

 私も高校時代に、「京都が好きだから」「自宅の近くに裁判所があって法曹に興味があったから」という理由で京大の法学部に憧れを抱いたものの、まだ動機が漠然としていたこともあり、親からは、「他にどんな学部があるのか、東大と京大の入試はどう違うのか、もう少し踏み込んで調べてみよう」と言われました。そのアドバイスのおかげで、大学を選ぶ際にはもう少し解像度を上げた方が良いと気づき、いろいろと詳しく調べたうえで進路を決めることができました。

川瀬氏:京大対策コースでは、基礎固めから入試対策まで、京大進学に特化したカリキュラムを強化しています。杉山さんが在籍していた当時はなかったICT教材も、今は非常に充実しており、より一層きめ細やかで手厚いサポート体制を整えています。杉山さんのように寮での浪人生活には不安を感じる保護者もいらっしゃると思いますが、校舎への入館・退館記録から学習の進捗、成績表など、随時オンラインの専用ページでお子さんの状況を確認することができますし、その他心配なことや困りごとには担任をはじめとするスタッフが相談に応じる体制を整えています。

 アジアの大学では最多の11名ものノーベル賞受賞者を輩出してきた自由な学風に身を置く4年間は、他では経験できない京大の唯一無二の魅力です。ぜひ1人でも多くの受験生が京大にチャレンジしてほしいですね。

--ありがとうございました。


 杉山さんのお話を聞いていると、京都という魅力あふれる街を舞台に、いかに充実した大学生活を送ったかが鮮明に伝わってきた。進路選択においては「どこの大学で学ぶか」とともに、「どこの街で学ぶか」も重要な要素だ。行動範囲の広がる大学生という年齢にとって、街全体が学び舎であり、そこでの経験が卒業後のキャリアにもつながるのだとあらためて思った。これを読んでいる受験生の皆さんも、自分らしい選択をして、好きな街で好きな大学に通う日々を楽しみに、がんばってほしい。

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《なまず美紀》

なまず美紀

兵庫県芦屋市出身。関西経済連合会・国際部に5年間勤務。その後、東京、ワシントンD.C.、北京、ニューヨークを転居しながら、インタビュア&ライターとして活動。経営者を中心に600名以上をインタビューし、企業サイトや各種メディアでメッセージを伝えてきた。キャッチコピーは「人は言葉に恋♡をする」。

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