【中学受験2025】天王山をどう乗り越える…浜学園に聞く「夏の目標」と「親のサポート」

 受験の天王山とも称される夏休み。受験生にとっては、この夏の過ごし方が受験本番へつながる重要な時期となる。鍵となる夏の時期を、受験生はどのように過ごすべきか、そして保護者はどのような視点でサポートするべきか。2025年度の関西・中学受験動向の予測とともに、浜学園・松本茂学園長に話を聞いた。

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  • 浜学園学園長の松本茂氏
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 受験の天王山とも称される夏休み。受験生にとっては、この夏の過ごし方が受験本番へつながる重要な時期となる。鍵となる夏の時期を、受験生はどのように過ごすべきか、そして保護者はどのような視点でサポートするべきか。

 2025年度の関西における中学受験動向の予測とともに、浜学園・松本茂学園長に話を聞いた。

新たな難関校が台頭…2024年度入試を振り返る

--2024年度の中学受験はどのような傾向がみられたのでしょうか。概況をお聞かせ下さい。

 2023年秋の時点で、中学受験はコロナ禍以前の様相に戻るだろうと予測していましたが、関西は上位校が軒並み志願者を増やし強気の入試傾向となりました。最難関校が各府県に散らばる関西では、県境受験できる状況が戻ってきたことにより、第1志望を強気に狙いに行く傾向が戻ってきた印象です。

--2023年度入試で少し緩めに振れた関西学院や同志社香里が、2024年度は難化へと揺り戻しがあるかもしれないとの予測を立てていらっしゃいましたが、実際の入試結果はいかがだったのでしょうか。

 関西学院や同志社香里といった関西の大学附属エスカレータ校については、2024年度は受ける層のレベルが上がったという印象です。結果、この2校は他校より頭ひとつ抜けて難しくなりました。そのほかの学校でいうと、法人全体で入試改革などに取り組んでいる立命館が台風の目となりましたね。特に2日目、3日目の入試はかなりレベルアップしていて、最難関受験者の併願校となりつつあるというのが、2024年度入試結果の特徴の1つです。

 コロナ禍で動きが取りづらくなったこの数年間に、学校改革を進めてきた立命館や高槻などが人気とレベルを上げ、新たな難関校として台頭してきているのが今の関西の状況といえるでしょう。

浜学園学園長の松本茂氏

気になる2025年度の入試動向は

--今の時点で見えている2025年度の志望校動向についてお聞かせください。

 2024年度から段階的に始まった高校の授業料無償化が後押しとなり、関西で唯一、大阪の私立校の人気が戻ってきています。無償化ならば私立を受験してみようという層も多く、前年を上回る志願者が集まる見込みです。トップ校の大阪星光学院を筆頭に、共学化した高槻、南部の清風南海など、安定して志願者を集められる学校が揃っていることもあり、大阪では府内志向の高まりが見られます。

 また、首都圏でもそうであったように、特に女子の共学志向が高まっており、男子校・女子校共に、別学校は今が我慢のしどころといえます。そうした中で、今後、新たに共学化する学校が出てきたときは、流れを注視する必要があるでしょう。

 共学校については引き続き人気が継続しています。高槻はすでに安定期に入ろうとしていますが、大阪の北部に隣接する兵庫の雲雀丘学園は、ここからもう1ランク、レベルが上がりそうな気配です。

 エスカレータ校では、同志社香里を筆頭に、地の利も得ている立命館が今年も人気となりそうです。エスカレータ校は、2025年度の大学入試改革*の影響も少なからず受けているでしょう。「大学入試が大きく変わる」という漠然とした印象が先行している中、大学受験への不安感からエスカレータ校の人気が強まる傾向は当然あると思います。
*大学入試改革:共通テストに情報Ⅰが追加されるほか、思考力や表現力を測る問題が増えるなど、大学入試が2022年4月からの新しい学習指導要領に対応すること

--新たに設定された試験回や試験科目の変更、新設コースや改編など、2025年度注目のトピックスがあれば教えて下さい。

 1つは、兵庫の歴史ある女子校・親和が、女子部を残したまま共学部を設置するという、全国でも例を見ない新たな試みを行うことです。これが2025年春にどのような影響をもたらすのか、注目すべきトピックスです。同じく兵庫では、2024年春に名門男子校の滝川が共学化し、非常に賑わいました。まだ情報解禁されていない部分もありますが、共学コースの募集枠を増やす可能性もあるようです。

 もう1つ、入試自体に大きな影響を与えそうなのが、入試の期間が一層短くなりそうだという点です。関西は1月中旬に一斉に入試解禁日を迎え、そこから約1週間かけて受験するのがこれまでの流れでしたが、進む少子化の中、首都圏と同様、多くの学校で午前・午後入試を設定するようになりました。

 一方で、関西の最難関校の灘や甲陽学院では、今でも2日間にわたって入試が行われています。第1志望以外の子たちにとっては、1校に2日間取られるというのは受験チャンスに直結する大きな選択です。2日入試をするとそれだけ結果が出るのも遅くなりますので、他の学校が前倒しで志願者を確保しようとする流れの中、「2日間入試のあり方」は、今後問われてくるのかもしれません。

--2024年度入試でもすでにその傾向は出ていたのでしょうか。 

 もちろん見受けられました。他校はやはり灘や甲陽学院を受験する子たちを狙っていますから、同日の午後に入試を設定するわけです。併願になるであろう学校の入試時間を考慮しながら試験時間を3区分にしてみたり、科目を減らしてみたり。結果、解禁日から3日間、多くの子供たちが1日中どこかに行って受験をしているという状況になります。短期決戦による厳しさは、今後、関西の受験の特徴となってくるかもしれません。

天王山の夏をどう過ごす…キーワードは「得点力」

--これから、6年生は「天王山」の夏を迎えます。この夏はどのような観点で学びを進めるのが良いでしょうか。アドバイスをお聞かせください。

 夏前ぐらいまでは、出された課題をきっちりこなしていくことで定着を図る、前を向いて新しいことを学んでいく段階にあります。そして、夏休みあたりから多くの塾で志望校別のクラスが取り入れられ、今までの学習を土台に入試本番に近いレベルの問題に取り組む機会が増えてきます。浜学園においても、夏期講習では新しいことをどんどん習うという感覚ではなくなるため、その時に勉強の仕方を大きく変える必要があります。

 特に秋からは過去問や本番の入試を意識したレベルの問題に取り組んでいくことになりますが、そこで突然成績が下がる、偏差値が下がってくる子が出てきます。これはその子の学力のレベルが下がったのではなく、問題の解き方に問題があるといえます。本来、手を出すべきではない問題に手を出してしまい、丁寧に点を取るべきところ、取れるところを落としてしまったために、結果として偏差値が下がっているように見えるのです。言いかえるなら、「得点力」が磨かれていないということなのです。

 秋以降のこうした事態を回避するために、この夏の目標を立てるとすれば、1つは「弱いところを補う」、1つは「限られた時間の中で問題を取捨選択する力を鍛える」、この2つです。

--なるほど。それぞれ詳しくお聞かせください。

 夏は、弱いところを補える最後の時間です。夏期講習やテキストを使ってこれまでの学力をしっかり定着させレベルアップしながら、弱いところを補う時間にしてください。理科などは大問ごとに単元が違うため、苦手な単元をまるまる落としている場合もあります。まずは苦手な単元を把握し、夏の間にそこそこ戦えるレベルまで持っていくことで点数の穴を埋められるようにする。これまでの模試や塾での確認テストなどを見直してみると、きっと数字が正直に苦手を教えてくれるはずです。

 もう1つ、夏は自分の力がどの辺りにあるかを知るために、限られた時間の中で問題を解く訓練が必要になります。入試本番では、時間内に解ける問題と解けない問題を見分ける力、そして時間内にどれだけ処理できるかも実力となります。レベルの高い層になればなるほど、解けるか解けないかのギリギリの問題が目の前を大量に通りすぎていく。そうすると、普段の勉強も「あと1問」を意識して時間内に早く処理する、解けないなら飛ばして確実な問題数を増やす、という勉強方法に変わってきます。

 時間内で解くことを意識した勉強を取り入れて点数が上がりはじめたら、それは「得点力」が上がった証拠です。夏はぜひ、この得点力を意識した勉強に励んでください。

 得点力は、解ける解けないのちょうど頃合いの問題に数多く取り組むことで身に付いていきます。その頃合いは、レベル別に異なります。志望校別やレベル体系別のテキストが6年生になると用意されるのは、そのためです。

 難しいなと感じる問題が、粘ったら解けるものなのか、粘っても解けないものなのかは、限られた時間の中で実際に解いてみて体感しなければわからないことです。何度も繰り返し取り組むことで、「こういう系統の問題はいつもてこずったな」という感覚が身に付いていきます。「得点力」は、多くの問題に向き合って努力した人にしか身に付かない大事な力であり、意識が変わればきっと結果がついてきます。

厳しい夏、保護者はどうサポートすべきか

--大変な受験生を支える保護者は、夏の時期どのようなところに気を付けて我が子をサポートするのが良いでしょうか。

 1番は体調面です。夏は受験の天王山といわれているため、少しくらい体調が悪くても頑張り抜かなければと無理をしがちです。体調が悪そうだと思ったら、1日くらい休ませても何ら問題ありません。無理をするより、少し休んで体調を戻してほしいと思います。

 受験の天王山というのは、何も難しいことをするという意味ではありません。天王山は京都と大阪の境いにある、標高270m程度の決して高くない山です。場所が良く、多くの人が足を運べる山なのです。受験においての天王山も、そびえ立っているようなものではなく、重要な位置にありますよ、というだけのこと。これは次のような理由です。

 勉強の頑張りが成績に反映されてくるのは2か月後、3か月後です。入試本番から逆算すると、2・3か月前は10月ごろ。ですので、少なくとも10月には受験校を決めて、全力で頑張るぞ、という充実した状態であることが望まれます。すると、10月の2・3か月前にあたる夏が重要な位置付けになってくるのです。前を向いて進んでいく勉強と、自分の弱いところを補い得点力を上げるという「レベル上げ」のための勉強の基盤をこの夏に作っておくことで、肝心な10月からの時期に頑張ることができる。ターニングポイントとなる位置付けとして、夏が受験の天王山といわれているのです。

 この天王山では、難しい問題ばかりにチャレンジさせるのではなく、「きっちりとやり遂げた」という感覚を子供に持たせるように意識してみてください。体調が悪いのを我慢して問題をこなすよりも、しっかり休んで残りの期間を前向きに頑張れた方が、その後の10月や入試本番に、良い状態で持っていくことができます。

--10月に志望校が固まっている状態にするために、夏のうちにするべきことは何でしょうか。

 すでに志望校が決まっている場合は、お子さんも保護者の方も覚悟が決まっていると思いますが、まだ志望校に悩んでいるという場合は、ぜひ気を付けていただきたいポイントがあります。それは、模試やテストの結果を見て志望校を変えないでほしいということです。テストの結果だけを見て「こんな結果ならこの志望校は諦めなさい」と言われたら、子供は反論できないんです。挽回もできない。急に目標を変えられて、勉強しろ、と言われても無理なんです。

 ですので、夏の間に1度、厳粛な家族会議を開いてみてください。大手の塾などでは、夏の終わりから秋の初めに大きな模試をやりますので、そこでの結果がこうだったらこの志望校でいこう、届かなかったら志望校をここに変えよう、と家族で夏のうちに約束をしてほしいのです。

--保護者と一緒に真剣に考える場を設ける、ということですね。

 そうです。子供は志望校が固まって覚悟が決まると、成績に大きなぶれがなくなってきます。目指す点数を明確な基準として目標に置けるようになるからです。子供のためには、少し先のテストでこうなった時にはこうしよう、と明確にしておき、その後は保護者の方も一喜一憂せず腹を括って動じないことです。すると、テストの結果が少しくらい悪くても、今回はどこが足りなかったかな、次に向けてどうしようか、という前向きで建設的な話ができます。

 そして、夏前に志望校を話しあった際には、この夏みんなで頑張ろう、お父さんお母さんも一緒に頑張るから精一杯頑張りなさい、と背中を押してあげてください。そうすると秋の初めの模試で出た結果で目標を達成できていても、いなくても、納得のいく形で志望校が決められるわけです。夏に頑張った結果をもとにしっかりと志望校が固まった状態で10月を迎えることができれば、そこからは脇目もふらず走れるようになっているはずです。

 夏は頑張りどき。闇雲にこなしていくだけにならないよう、

補わなければならない弱点を夏前に洗いだす

志望校について話し合い目標を明確にする

そこに届くための得点力を上げる


という3つのポイントを、しっかりと家族でおさえていただきたいと思います。

 保護者の皆さんには、ぜひお子さんの伴走者として覚悟を決めていただいて、目標に向かって一緒に頑張ろうねと言ってあげてほしい。そこで初めて、きつい夏を乗り切れる力が湧いてくると思いますので、ご家族でそうした場を設けてみてください。

秋の時点で焦りは禁物…合格点に達していなくても大丈夫な理由とは

--先ほどお話しいただいたように、9月早々に模試が行われるところが多いと思います。その時、気を付けておきたいことや、秋以降、過去問に取り組む際の学習方法についてご意見をお聞かせください。

 模試は、普段通っている塾で受けているような慣れている模試と、業者や受験先の中学校で受けるプレテスト的な模試の2種類に分けられます。特に9月から11月ぐらいは続けてプレテストのような模試が行われるので、都度受けてみた感覚をもとに、次はこうしようと経験値を積んでいけたら良いと思います。

 秋以降は過去問中心の学習になってきますが、この時に合格点を取れているかどうかを気にしない、という点もポイントです。過去問の合格最低点は、実際に受験した子供たち…秋の時点ではなく、その後3か月、4か月と努力した子たちが出した結果です。ですので、秋の段階では時間の感覚と問題の取捨選択、つまり得点力を上げることを意識してください。

 何度もチャレンジしていると、何が足りないかを知ることができます。つまずいた単元や時間の使い方など、過去問では足りないことに価値があると考えて、次のステップにつなげてほしいと思います。そして、最終的に合格最低点の前後近くに収まるようになっていたら、それで十分だと思って大丈夫です。

--最後に受験生と親御さんにこの夏を乗り切るためのメッセージをお願いします。

 受験に向けて当然プレッシャーを感じる部分もあると思いますが、これまでの頑張りは間違いのないことですので、自分の弱いところから目をそらさずに立ち向かってほしいと思います。今はまだ弱いところを補う時間が十分残っていますので、焦る必要はありません。

 うまくいかないことがあると壁にぶち当たった気持ちになると思いますが、それは壁ではなく、必ず開くことができる扉なのです。この先の人生、壁の前から動けないことなんて絶対にありません。必ずどこかが扉になっていて、開くものなのです。

 一生懸命押してるけど実は引き戸かもしれない、取手の場所に気付いていないだけかもしれない。扉を開くための鍵は自分が勉強していく中で見つかるかもしれないし、もしかしたら塾の先生が持っているかもしれません。そう思って、諦めずに押したり引いたり必死になってやってみてほしい。いつか必ず扉は開きます。絶対に前に進めますので、自分自身を信じて、体調管理には気を付けながら、この夏さらに伸びていってほしいなと思います。

 そして、保護者の皆さんの頑張りや想いは、親が思ってる以上に子供たちに伝わっています。子供たちはちゃんと親御さんの苦労を感じ取っています。その感謝の気持ちは数年後に伝えられると思いますので、保護者の皆さんにもぜひ一緒になって戦っていただきたいと思っております。

--貴重なお話をありがとうございました。


 目の前にあるのは壁ではなく“扉”だと力強く語ってくださった松本先生の言葉が、1人の親として心に刺さった。首都圏を中心に中学受験率は年々上昇しているが、受験を乗り越えることは並大抵のことではない。親子で目標を共にし、目の前の結果に一喜一憂せず、これまでの努力と扉の先の未来を信じて突き進む勇気が、この夏を乗り切るための最大の武器になるのではないだろうか。受験生の皆さんと親御さんがそれぞれの天王山を制する夏になることを願ってやまない。

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《畑山望》

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