「学習まんが」は、学力向上や受験対策のため多くの人に活用されている。その中でも「歴史学習まんが」は中・高・大学受験にどう活用できるのか。幼少期から受験期にかけて「まんが」を学びに取り入れていたという現役東大生3名に、当時を振り返りながら、角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』と『世界の歴史』の魅力や、日ごろの学習および受験勉強への活用法について話を聞いた。
【話を聞いた人】
原田莉沙さん:東京大学文科三類1年生
野村理玖さん:東京大学文科三類→(工学部システム創成学科→)工学系研究科修士1年
亀田崚さん:東京大学理学部物理学科4年生
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小学生で学習まんがに出会い、中・高・大学受験に活用
--初めて「学習まんが」を読んだ時期やきっかけを教えてください。
原田さん:私は小さいころから本や図鑑が好きで、小1のころに、学校の図書室にあった世の中の「もの」のひみつを探る学習まんがに出会い、夢中になったのを覚えています。その中でも科学系や動物系のテーマが好きでした。ペットに関する学習まんがを読み込んでいたおかげで、親に犬を飼うことを許してもらえたほどです。
野村さん:小1から学習まんがを読んでいたのは早いですね。僕は小5のときに、学校の教室に共有図書として置いてあった『日本の歴史』を読んだ記憶があり、それが最初の学習まんがだったと思います。
亀田さん:僕も野村さんと同じで、最初は小5のときですね。テレビCMで偉人の学習まんがシリーズが創刊されることを知り、親に頼んで買ってもらいました。創刊号の『エジソン』がとてもおもしろかったのを覚えています。科学が好きだからエジソンがおもしろかったのか、エジソンがおもしろくて科学に興味をもったのかわかりませんが、その後も毎週発売日を楽しみにしていました。
--皆さん小学生のときに「学習まんが」に出会っていたのですね。今でも印象に残っていたり、学習まんがを通じて影響を受けたりした人物や時代があれば教えてください。
亀田さん:医学の父とも称されるヒポクラテスを知ったのが学習まんがなのですが、当時は小学生なので「へー」としか思えなかったのですが、その後、高校や大学で講義を受けたときに「なるほど、ヒポクラテスが現代の医学の根幹を作ったというのは、こういう意味だったのか」と腑に落ちることがありました。幼少期に広く浅く知識をインプットしておくと、将来、思いがけないときに役立つことがあると感じます。当時は何かメリットがあるから読むというのではなく、ただ好きで読んでいましたね。
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野村さん:僕は最初に読んだ歴史学習まんがで伊能忠敬を知ったときに、「この人はスゴい!」と衝撃を受けました。日本中を計測しながら歩いて地図を作ったわけですが、「どういうモチベーションだったのだろう」と不思議で、今でもよく覚えています。
原田さん:中学受験に取り組み始めた小5のころ、当時は歴史が苦手だったんですが、母がどこからか「歴史まんがが効果的」という話を聞きつけ、角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』を全巻セットで購入してくれました。角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』は、歴史上の人物ひとりひとりがキャラ立ちしているというより、歴史の流れを説明することに重点を置いていると感じます。ですから、特定の人物や時代に影響を受けたわけではありませんが、全体的な流れを理解したり、各時代の登場人物を覚えたりする際に役立ちました。
--原田さんは角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』を中学受験に活用されたんですね。
原田さん:ちょうど創刊されたばかりで、当時「歴史まんが」の中でいちばん注目されていたのではないでしょうか。表紙の絵が楽しそうで、まんがの絵も新しくて綺麗で、本から「読んで」と訴えかけられているような感覚になったのを覚えています。まんががとにかくおもしろいので教科書と違って「勉強」という意識がなく、娯楽の一環として楽しめました。時代の流れがわかりやすく、誰が何をしたのかいつの間にか覚えていました。特に私は現代の政治っぽくて“歴史らしさ”が抜ける明治時代に入ると急に興味がもてなくなってしまったのですが、そうした部分をあえてまんがで読んで覚えるようにしました。そうしたらいつの間にか歴史が好きで得意科目になって、小6の模試では苦手な算数と社会の偏差値差が20も開くほどでした。中学受験で公立の中高一貫校に入ったので、高校受験はしていませんが、その後もずっと歴史は得意科目でした。
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亀田さん:僕は中学受験はせず、高校受験だったのですが、「歴史は苦手だな」と思いながらも、なんとか突破したという感覚があります。カタカナの名前は覚えられるのですが、僕は漢字が苦手で…。中学以降から今まで日本史を避けてきましたが、この『日本の歴史』を読んでいたら、僕ももう少し日本史に興味をもてたかもしれませんね。
--野村さんは、歴史学習まんがをどのように受験に活用したのでしょうか。
野村さん:小学生のころは教科書を読むのが嫌いだったので、まんがに助けられたと思います。中学受験の日本史の記述問題では、まんがの絵を思い浮かべながらストーリーを思い出して書いた記憶があります。原田さんと同じで、僕も歴史は苦手科目だったのですが、まんがを読んでいたおかげもあり、中学受験では第一志望の私立中高一貫校に合格しました。
高校生になってから、有名人が「受験のために歴史まんがを読んでいた」と言っていたことに影響を受けて、あらためて「まんがで日本史をもう一度全部読んでみよう」と思い立ち、自分のお小遣いで角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』を購入したんです。東大の二次試験の日本史対策では、細かい知識を覚えるよりも背景のストーリーを理解することの方が重要だったので、歴史の大きな流れがつかめるKADOKAWA版は受験対策にピッタリでした。一旦まんがでストーリーを頭に入れてから教科書を読むようにしていました。
原田さん:東大入試は教科書を理解していれば解けると言われていますよね。とはいえ、教科書は長い歴史を400ページほどに収めているので、それだけで理解するのは無理があります。教科書を理解するために「歴史まんが」を読むのは良い活用法だと思います。
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東大入試と角川まんが学習シリーズ『世界の歴史』は親和性が高い
--原田さん、野村さんは東大入試で社会の選択科目はどの科目を選びましたか? また、どのような勉強をしていたか教えてください。
原田さん:世界史と地理を選びました。世界史を選んだのは、高1のときに世界史を少しだけ勉強する機会があり、おもしろいと感じたからです。私は高2で文転したのですが、世界史と日本史の2科目だと覚える量が多くて大変だと思い、地理を加えることにしました。世界史の参考書を読んで勉強していましたが、文字ばかりですし、あまり効率的ではありませんでした。今思えば、絵もあった方が効率的なので、日本史と同じく学習まんがを活用すれば良かったかもしれません。
野村さん:僕は日本史と世界史で受験しました。東大受験の日本史は、地理よりも覚える量が少ないように感じます。東大の二次試験の日本史はセンター試験や私大入試とは違い、単語は中学受験レベルで良く、むしろ細かい単語を書くと間違っていて減点されることや、文字数が足りず重要な部分が抜けて点数につながらないことがあります。世界史は同じ時代に他の国ではどういうことがあったのかという、横軸に注目するグローバル・ヒストリーを理解しておくことが重要です。
--今回、角川まんが学習シリーズ『世界の歴史』を読んでいただきました。感想を教えてください。
亀田さん:角川まんが学習シリーズ『世界の歴史』の良いところは、各国史ではなく、「フランスはこういう情勢でした。一方そのころスペインでは」という感じで、時間軸を横のつながりで捉えているところだと感じます。たとえば第11巻の3章では僕の好きな科学史が取り上げられていますが、第1章ではアヘン戦争、第2章ではヨーロッパの革命、第4章はインド大反乱と同時代の世界の出来事が覚えやすい構成になっています。最初の見返しページに登場人物が並んでいるのもとてもわかりやすくて良いと思います。
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野村さん:確かに、顔のイラスト付きなのはイメージしやすいですよね。僕が使っていた世界史資料集は、人物の顔がわからず覚えにくいなと感じていました。僕の大学受験のときには、角川まんが学習シリーズ『世界の歴史』は創刊されていなかったのですが、今回初めて読んでみて、「世界史をまんがで読むべきだった」と思いました。世界史は出てくる国も、カタカナの名前も多すぎて混乱してくるので、まんがだと理解しやすいと思います。まんがのストーリーで横のつながりをつかみ、巻頭のパノラマ年表が頭に入っていれば、大論述ももっと書けたかもしれません。
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原田さん:私も野村さんと同様に、「受験のために読んでおけばよかった」と思いました。『世界の歴史』で取り上げられているストーリーには、東大入試の過去問の解説で見たことがあるような要素がたくさん詰まっていると感じました。監修を務めているのが東大名誉教授なので、少なからず東大入試につながる要素はあるかなと思います。
たとえば12巻に「アメリカの民主主義は、西ヨーロッパから渡ってきた男性主体のもの」という趣旨の記述がありますが、2018年の東大入試では、女性参政権など女性史についての出題がありました。もし私が受験者ならまったく回答できなかったと思いますが、『世界の歴史』を読んで記憶に残っていた人であれば、何かしら書けたのではないかと思います。また、『世界の歴史』には「テーマ史」も掲載されているのがすばらしいと思います。「鉄の歴史」というコーナーもありますが、2004年の東大入試の世界史では、「銀」がテーマの出題がありました。
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新課程「歴史総合」にも対応する『日本の歴史 別巻 よくわかる近現代史』
--2025年度の共通テストから「歴史総合、日本史探究」「歴史総合、世界史探究」など新課程科目がスタートします。もし皆さんがこの科目を受験することになったら、まずどんな勉強をしますか?
原田さん:まずは世界史から勉強すると思います。帝国主義の時代、日本は西洋諸国の動向に大きく影響されていました。そのため、まずは世界の動きを覚え、その上で日本の動きを把握するのが効果的だと思います。近年の東大入試では、2000年代にまで踏み込んだテーマが出題されるようになってきました。そのため、他大学でも近現代史の出題が増えてくるかもしれませんね。
亀田さん:『日本の歴史 別巻 近現代史』を拝見しましたが、現在も実在している人物も登場しているのがおもしろいですね。日本史を中心に、1/5ほどが世界史パートで、時間軸でストーリーが展開しているようですね。新課程の学習や受験にももちろん役立つと思いますが、これらの内容は、中高で学習を進めていくうえでの基本となる知識だと思います。特に3巻の1980年以降の話題については、OPECなど現代社会を生きていくうえで知っておくべき内容も含まれています。
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--受験以外で「歴史学習まんが」が役に立ったことはありますか。
亀田さん:僕はそもそも受験がゴールではないと思っています。「歴史学習まんが」に出ているようなことは、受験するしないに関わらず、知っていると人生をより楽しめると思います。たとえば、鉄の歴史のところでカーネギーが出てきましたが、ニューヨークのカーネギーホールを見たときに、「カーネギーっていうのは鉄鋼王で有名な人物の名前で、その人が建てたからこの名前になっているんだな」とが結びつけば楽しいですよね。
原田さん:小学生のときに『日本の歴史』を読んで、早い段階で歴史が好きになったのは、その後の私に大きな影響を与えてくれました。高2で文転して現役で東大に合格できたのは珍しいケースだと言われますが、歴史が好きだったことが功を奏したのかなと思います。亀田さんからも、知っていると楽しめるというお話がありましたが、私も歴史が好きなので神社仏閣に行っても楽しめますし、戦争の資料館の展示にも興味をもてます。こうした場所を楽しめる自分の感性に誇りをもっています。
野村さん:僕も昨年の3月に国際研修でエジプトを訪問した際に、原田さん、亀田さんと同じようなことを感じました。どうしてイスラーム教が多いのか、何がタブーなのかなど、歴史を知っているかどうかでおもしろさが違います。
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--子供が「学習まんが」を活用するために、保護者はどのように準備・サポートすると良いと思いますか。ご自身の経験もふまえて教えてください。
亀田さん:僕は自分で読みたい本を買いに行っていましたが、親も同じ本を読んでいました。親も楽しそうに読んでいる姿を見せることが大事だと思います。僕は世界の偉人の伝記は好きで読んでいましたが、日本人の伝記はまったく読みませんでした。やはり、子供は興味がないと読まないと思います。中高生になると、大河ドラマや朝ドラ、アニメなどを通じて歴史に興味をもつかもしれません。そのときに「歴史まんが」がすぐ手に取れると良いと思います。
原田さん:小さいうちからいろいろなことに興味をもたせることが理想的だと思います。「読ませる」というスタンスは良くないので、日常的に子供が本を読むきっかけを散りばめてあげると良いのではないでしょうか。私の場合、親が電車での移動時間に本を渡してくれたので、本を読む習慣が身に付きました。その延長で、高校時代には通学の電車の中では本を読んだり勉強したりしていました。
野村さん:せっかくの「学習まんが」も、本棚にきれいに並んでいると、そこから自分で取り出して読むというのは、かなりハードルが高いと思います。ダイニングテーブルやソファの横にさりげなく置いておくと、自分のタイミングで手に取ってくれるかもしれませんね。今は参考書や教科書も電子版が多くなっているので、学習まんがの電子版もスマホやタブレットで手軽に読めて良いと思います。
また、「歴史の途中が抜けている」というのはあり得ないので、購入するなら『日本の歴史』『世界の歴史』シリーズ全巻を揃えてあげてほしいと思いますね。『日本の歴史 別巻 よくわかる近現代史』まで揃えておくと完璧だなと思いました。僕は中学受験の前に、塾から時事問題対策の冊子をもらいましたが、この『近現代史』を読んでおくと、時事問題にもさらに興味をもつきっかけになるかもしれません。
--ありがとうございました。
「学習まんが」との思い出を楽しそうにお話してくださる現役東大生の皆さんを見ていると、目を輝かせながら知的好奇心を満たしていた子供時代の姿が想像できた。おもしろくて夢中になって得た知識が、学力向上や受験勉強に役立つだけでなく、さらには人生を豊かにするという話には説得力がある。大人になった私も、角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』『世界の歴史』を手に取ってみたくなった。
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